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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第11章  新たな時代の文教施設を目指して
第2節  特色ある学校施設の整備充実
2  未来を拓く教育研究環境の創造



(1) 教育・研究環境の整備充実に関する基本的視点

 我が国の大学などの施設は,高等教育や学術研究の進展に対応し,様々な時代の要請にこたえながら,教育研究と一体的に整備が進められ,これまで大学などの教育研究活動を支える基盤を形成してきました。

 文部科学省では,その基盤を成す大学などの施設が,独創的・先端的な学術研究や創造性豊かな人材養成のための知的創造活動や知的資産の継承の場であり,大学施設の整備充実が我が国の未来を拓くものであるとの認識に立ち,積極的な整備充実に取り組んでいます (図2-11-2)

{1}国立大学などの施設の現状

 国立大学(平成16年4月より国立大学法人。以下同じ)などは,現在,延べ約2,500万m2 の建物面積の施設を保有していますが,建築後25年以上経過し,一般的に大規模な改修が必要とされる建物が640万m2 となるなど,老朽化や機能劣化が進行しています。さらに,大学改革による大学院の新設,学部・学科の改組や教育研究の変化,学術研究の進展による研究設備の増加や大型化などに伴い,施設の狭隘化が生じており,施設の老朽化・狭隘化の解消が大きな課題となっています。

図2-11-2 国立学校建物経年別保有面積(平成15年5月1日現在)

{2}教育・研究環境の整備充実のための方策

(ア)第2期科学技術基本計画において,科学技術振興のための基盤の整備として,大学などの施設の老朽化・狭隘化の改善が,国の最重要課題として位置付けられました。これを受けて,文部科学省では,世界水準の教育研究成果の確保を目指し,平成13年4月18日には「国立大学等施設緊急整備5か年計画」を策定し,現在,国立大学などの施設の重点的・計画的整備を実施するとともに,施設の効率的・弾力的利用を目指すシステム改革を行っているところです。

 また,大学改革の一環として,国立大学が平成16年4月から法人化することを踏まえ,法人化後の国立大学などの施設の整備充実を図るための施設整備,管理運営の在り方などについて,有識者による検討を行い,15年7月に「知の拠点−国立大学施設の充実について」を取りまとめました (図2-11-3)

図2-11-3 知の拠点―国立大学施設の充実について(概要)

(イ)大学などにおける安全衛生管理は,教職員や学生の安全と健康を確保するとともに,快適な教育研究環境を形成する上で不可欠なものです。各大学においては,全学的な安全衛生管理体制の下で,関係法令の遵守を基本とし,国際的に見ても適切な安全衛生管理の水準を確保するよう,積極的に取り組んでいくことが求められています。

 文部科学省では,国立大学の法人化に伴い,安全衛生管理に関する法令が人事院規則から労働安全衛生法に代わることもあり,安全衛生管理が着実に推進されるよう,平成15年5月には,「国立大学等における安全衛生管理の改善対策について」を取りまとめ,15年度内に改善がなされるよう各大学に積極的な取組を求めるとともに,文部科学省としても必要な支援を行っています。


(2) 国立大学等施設緊急整備5か年計画に基づく整備

 国立大学等施設緊急整備5か年計画においては,次のような観点から整備対象を明確化しています。

{1}大学院充実等に伴う大学院施設の狭隘解消等(約120万m
2

 国際社会で活躍できる豊かな創造性を持った優れた研究者や,社会的要請に的確かつ機動的にこたえる高度専門職業人の養成,独創的・先端的な学術研究の推進など,大学院への期待はますます増大していますが,大学院施設については,大学院学生や留学生数の急増による狭隘化などの問題が深刻化しており,その改善が強く求められています。このため,文部科学省では,大学院施設の整備に重点的に取り組むとともに,整備に当たっては,施設の効果的・効率的な利用を図る観点から,各部局が共有する総合的・複合的な研究棟などの整備を実施しています。

 また,施設の老朽化・狭隘化解消などの観点から,新敷地への統合移転による施設整備を進めているものについても,引き続き,計画的に整備を実施しています。

大学院拡充への対応(千葉大学工学系総合研究棟)

{2}卓越した研究拠点等(約40万m
2

 我が国が世界に貢献し,国際的な責任を果たしていくためには,卓越した研究拠点に国内外の優秀な研究者や学生を集め,世界水準の学術研究を推進していく必要があり,それにふさわしい魅力ある研究環境を整えることが重要となっていますが,施設面において,老朽化や研究設備の大型化などに伴う狭隘化が大きな課題となっています。

 このため,文部科学省では,特に基本計画に基づき重点的に推進すべきとされる研究分野,国際共同研究において我が国が大きな役割を担い積極的に取り組んでいる分野,世界的に水準の高い独創的・先端的な基礎研究の分野などに関する研究施設や国立大学と地域との連携や国際学術交流を促進するための関連施設について,重点的な整備を実施しています。

卓越した研究拠点の整備(北海道大学創成科学研究棟)

{3}先端医療に対応した大学附属病院(約50万m
2

 国立大学附属病院は,先端医療の先駆的役割を果たすとともに,診療のみを行う一般の医療機関とは異なる臨床医学の教育研究の場であり,地域における中核的医療機関としての役割も果たしています。しかしながら,施設の老朽化や機能劣化が進み,近年の医学の進歩に伴う医療の専門化・高度化への対応が困難になるとともに,医療機器の増大,社会の変化に伴う患者数の増加などにより施設は狭隘となり,教育研究活動,医療活動,病院の管理運営に支障を来しています。

 このため,文部科学省では,逐次再開発整備を進めているところであり,引き続き計画的に整備を実施しています。

先端医療に対応した大学附属病院の設備(広島大学医学部附属病院)

{4}老朽化した施設の改善整備(約390万m
2

 老朽化した施設の改善整備に当たっては,昭和45年以前の施設のうち,耐震性能が著しく劣るものであることや,教育研究の活性度が高く,施設整備により一層の充実が期待されるものであることなどの要件を総合的に勘案し整備を実施しています。

 なお,本計画は以下の方針により実施することとしています。

(ア)整備に当たっては,当該施設の現況や利用状況の点検などを含む適切な評価・調査などを行い,それらの結果に基づき,真に重点整備を行うべき施設を厳選する。

(イ)施設の利用に当たっては,既存の組織の枠を越えた施設の利用を推進するとともに,大学などの組織全体の視点に立った施設運営を推進するためのシステム を確立し,既存施設の効率的な利用を促進する。

老朽化施設の改善整備(左:改修前,右:改修後)(富山大学総合研究棟)

(ウ)研究棟の整備に当たっては,総合的・複合的な研究棟やプロジェクト的な教育研究活動 *1 に供するスペースなど,弾力的・流動的に使用可能な共同利用の教育研究スペース *2 に重点化する。

(エ)国有財産処分収入や民間資金の確保はもとより,他省庁・地方公共団体との連携やPFI *3 など新たな整備手法の導入を検討することで,コスト縮減 *4 を図る。

 文部科学省では,本計画に基づく整備を着実に進めることにより,科学技術・学術振興のための基盤整備を推進しています。


* 施設運営を推進するためのシステム

 施設の利用者決定手続,利用期間,利用料などを定めた施設利用規則に基づいた管理運営を行うなど,施設の有効利用が進むようなルールづくりを行うこと。


*1 プロジェクト的な教育研究活動

 特定の目標達成に向けて,学部など既存の組織を越えて研究者のチームを編成するなどして行う教育研究活動。


*2 弾力的・流動的に使用可能な共同利用の教育研究スペース

 様々な分野の教育研究に対応できるよう,研究内容が変わっても空間を自由に設定できるように,固定壁を減らしたオープンな空間や汎用的な設備を備えるなどの工夫がされているスペース。


*3 PFI(Private Finance Initiative)

 公共施設などの建設,維持管理,運営などを,民間の資金,経営能力,技術能力を活用して行う手法であり,国や地方公共団体の事業コストの削減,より質の高い公共サービスの提供を目的としている。平成11年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」が制定,施行されている。


*4 コスト縮減

 施設に関する建設費の縮減。


(3) 「知の拠点」を目指した大学の施設マネジメント

 国立大学においては,世界水準の活発な教育研究を展開していくために,その基盤となる施設について,新たな施設の整備はもとより保有する膨大な既存施設の適切な維持管理や運用管理を行い,機能の維持・向上を図るとともに有効活用を行うことが重要です。このような観点から,文部科学省では,有識者による検討を行い,平成14年5月に「「知の拠点」を目指した大学の施設マネジメント」の報告を取りまとめ,国立大学においては,トップマネジメント *5 の一環として全学的な視点に立った「施設マネジメント *6 」の導入が必要との提言を示しました。

 また,新たな概念である「施設マネジメント」の理解と円滑な推進を図るため,学内組織の整備や施設管理システムの構築など先進的な取組に関する事例集を平成15年5月に作成し,国立大学に配布しました。

 さらに,法人化後の国立大学における施設の管理運営について,有識者による専門的な観点からの検討を行い,平成15年8月に「知の拠点−大学の戦略的施設マネジメント」の報告を取りまとめ,施設マネジメントを導入する際の基本的視点,目標としての施設水準に関する基本的な考え方や具体的な実施方策などを提示しました。文部科学省では,この報告を踏まえ,計画的な修繕を確実に実施するなど施設マネジメントの積極的な取組を国立大学に要請し,施設マネジメントの推進を図っています。


*5 トップマネジメント

 学部などの枠を越えて学内の資源配分を戦略的に見直し,機動的に決定,実行できるよう,経営面での学内体制を抜本的に強化するとともに,学内コンセンサス(了解)の確保に留意しつつも,全学的な視点に立ったトップダウンによる意思決定を可能とする大学運営の仕組み。


*6 施設マネジメント

 キャンパス全体について,総合的かつ長期的視点から,教育研究活動に対応して適切に施設を確保・活用するため,{1}教育研究活動に応じた施設の整備・管理に関する目標を設定し,{2}これに至る施設計画を策定し(Plan),{3}建物や屋外環境の新築・増築・大規模改修,修繕,点検保守,清掃,運転などを行い(Do),{4}これらの評価を実施し(Check),{5}評価結果を次期計画に反映させ(Action),教育研究環境の持続的向上を図る一連の取組。


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