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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第10章  国際化・情報化への対応
第1節  国際交流・協力の充実に向けて
4  開発途上国への協力



(1) 国際教育協力における取組

 2000年4月に,セネガルの首都ダカールにおいて世界教育フォーラムが開かれ,181か国の政府からの代表,31の国際機関,NGOなどから約1,500名が参加しました。同フォーラムでは,2015年までの初等教育の完全普及や2005年までの初等・中等教育における男女就学格差の是正などを目標する「ダカール行動枠組み」が採択されました。途上国における教育の現状を改善し,万人に教育機会を提供できるよう,途上国と先進国が共に行動を起こすことが約束され,ユネスコを中心とした「万人のための教育(Education for All)」達成に向けた取組を促進するため,2002年6月に,カナダで行われたカナナスキス・サミットにおいて,我が国は「成長のための基礎教育イニシアティブ(BEGIN)」を発表しました( 図2-10-7 )。

図2-10-7 成長のための基礎教育イニシアティブ(BEGIN)

 このような内外の状況の変化に対応するため,文部科学大臣の私的懇談会である「国際教育協力懇談会」が平成14年7月に取りまとめた最終報告書では,

{1}初等中等教育分野などでの協力強化のための「拠点システム」構築
{2}我が国の知的資源を国際協力に活用していくため,大学における国際開発協力を促進する「サポート・センター」の整備
などについて提言されており,我が国による国際教育協力の質的転換を図るための国内体制の抜本的な整備の必要性を訴えています。

 また,アフガニスタンなどの紛争終結後の国づくりにおける協力は,教育が1日たりとも休むことのできない営みであることにかんがみ,平和国家である我が国が,積極的に取り組んでいくべき課題とされました。

 さらに,国際機関との連携を通じた我が国の教育経験の活用も有意義とされました。これに関しては,我が国として協力経験の浅い健康教育分野において,開発途上国での実績を有している世界食料計画(WFP)やユネスコとの連携を図りながら,我が国の学校給食を含む学校保健教育の経験の活用など,どのような協力が可能か検討が行われています。平成15年9月には,健康教育の先進的な取組事例の視察として,東南アジア諸国が日本の学校や調理師施設などを訪れ,学校における健康教育を充実するための当該諸国の実状に合わせた体制整備の在り方や具体的な実施方法などについて意見交換を行いました。

 国際教育協力は,学校やNGOなどを含め,我が国のあらゆる層の国民が参加可能な協力分野です。協力活動を通じて,我が国の「内なる国際化」を促すことや,開発途上国と我が国の国民の共生を深めていくという意義は極めて大きいものです。


(2) 我が国の教育経験を生かした国際教育協力―「拠点システム」―

{1}拠点システムの構築

 文部科学省は,国際教育協力に実績のある広島大学と筑波大学を中核拠点に,国公私立大学やNGO,民間企業などからなるネットワークを形成し,関係機関の協力の下で事業を進めるべく,初等中等教育分野などの協力強化を目的とした「拠点システム」を構築しました。これまで多くの場合,個別の要請に応じて個々の協力の活動内容や教材などの検討が行われ,しかも,派遣される専門家やボランティア個人による現地での努力に負うところが大きいものでした。これに対し,「拠点システム」の構築によって,あらかじめ我が国の協力経験やノウハウを整理・蓄積して,教育協力関係者がこれらを自由に参照・活用できるようになり,途上国の要請に対し,組織的かつ体系的に対応することが可能となりました。

{2}具体的な機能と活動

(ア)我が国の主力となる教育協力分野を強化するための「協力経験の共有化」

 我が国において協力経験が豊富な分野である「理数科教育」,「教員研修」や,分野横断的課題である「学校運営」,「教育行政」に関して,これまでの我が国の協力経験を整理し蓄積するとともに,他援助国の協力実績分析も反映させつつ,教育協力に共通して活用できる協力モデル(教育協力マニュアルや具体的な教材)を開発します。これにより,多様な案件に応じて選択可能な教育協力マニュアルや教材を複数用意し,それらを適宜組み合わせることによってより効果的な協力を推進することが可能となります。

(イ)派遣される現職教員への支援(共有化された協力経験の伝達)

 青年海外協力隊として派遣される現職教員に対して,蓄積された経験や協力モデルを,派遣前研修やインターネットなどによる派遣中の指導・助言を通じて伝達しています。また,途上国での協力経験の浅い現職教員の適格性を培うことにも貢献しています。今後は,伝達した協力モデルの成果を検証し,上記(ア)の協力モデル開発へ反映させることによって,協力モデルの質を更に向上させることを目指します。

(ウ)協力経験の浅い分野の活用促進に対する支援

 我が国として協力経験は浅いものの,将来,協力が有望視される分野(障害児教育,環境教育,健康教育,幼児教育,家庭科教育など)に関して,大学などからなるグループを分野別に形成し,我が国における教育経験の整理と途上国ニーズの分析・研究を行っています。今後は,その成果をワークショップ の開催などを通じて途上国に普及するとともに,実際に現地で実証することによって,これらの分野における途上国に対する教育協力の効果的な進め方を調査・研究します。

(エ)拠点システムのハブ機能,情報発信(中核拠点の役割)

 中核拠点である広島大学と筑波大学は,拠点システムの活動に参加する団体の糾合・連携を図るとともに,個々の活動を取りまとめ,情報の共有化を行っています。具体的には,拠点システムにおいて得られた成果を集積し,WEBサイトなどを通じて関係者・利用者が自由に閲覧できる環境の整備を進めています。また,協力経験の浅い分野の取組に対して,教育協力の国際動向や途上国の教育セクター(部門)分析に関する指導・助言を行っています。さらに,定期的な国際フォーラムの開催によって,得られた成果を幅広く途上国・国際援助機関などに紹介する予定です( 図2-10-8 )。

図2-10-8 途上国に対する協力強化のための「拠点システム」の機能〜初等中等教育分野の協力強化〜


* ワークショップ

 研究集会や講習会のこと。


(3) 現職教員の活用による日本の教育経験を活かした協力の促進

 従来,現職教員のODA事業への参画は必ずしも活発ではなかったため,文部科学省は,外務省や国際協力機構(JICA)と協力して,現職教員が青年海外協力隊に参加しやすくなることを目的として,青年海外協力隊に「現職教員特別参加制度」を創設しました。

 現職教員が青年海外協力隊に参加することの意義については,平成14年7月の「国際教育協力懇談会」の最終報告において,(ア)教員が開発途上国において国際教育協力に従事することによって,コミュニケーションや異文化理解,概念化の能力を身に付け,国際化のための素養を児童・生徒に広めることにより,「内なる国際化」を促進し,相互理解と相互依存の必要性がますます高まる国際社会に対応できる日本人の形成にも資すること,(イ)開発途上国と我が国との間では,教育の背景となっている歴史や社会・文化が大きく異なることから,我が国から派遣された教員が,両国の教育経験を比較することにより,我が国の教育の良い点を再認識したり,国内の教育に生かせる点を見いだすことができるようになり,我が国の教育の質を結果的に高める効果も期待されること,(ウ)現職教員が開発途上国において,言語・文化の壁などを乗り越え,教育協力を実践することにより,教員の質が向上するなど,日本の教育現場においても様々な効果が期待されることなどが指摘されています。

 この制度では,文部科学省から国際協力機構(JICA)に推薦した教員については,1次選考(筆記試験)を免除するほか,通常は派遣前訓練と派遣期間を合わせると2年3か月であるところを2年とし,派遣前訓練を4月から開始して帰国を翌々年3月までとするなど,現職教員がこれまでよりも参加しやすい内容にしています。平成13年度と14年度には,青年海外協力隊を活用した「現職教員特別参加制度」によって,現職教員計119名を開発途上国へ派遣しています。

 なお,「現職教員特別参加制度」の応募対象となっていない40歳以上の現職教員についても,実際に,参加を強く希望する声が多く出されていることから,新たな枠組みによる参加促進が課題となっています。


(4) 大学における国際開発協力の促進

{1}「サポート・センター」プロジェクトの実施

 我が国の知的資源である大学における国際開発協力を促進するため,平成15年から,「国際開発協力サポート・センター」プロジェクトの活動を開始しています。

 大学による国際開発協力を推進することは,(ア)大学の国際競争力の強化,(イ)大学による社会貢献の促進,(ウ)学生に対する実践的な教育の提供などに寄与します。また,大学との協力関係の構築により,安定的な協力体制を援助機関に確保するとともに,我が国の知的資源を活用した「顔の見える援助」が可能となります。

 サポート・センターでは,特に大学による国際開発協力プロジェクトの受託支援に力を入れていくほか,大学の国際開発協力を促進するため,国際開発協力に関心を有する大学や教員のデータベースの整備や,大学や教員の紹介を通じた内外の援助機関との関係の構築,国際開発協力の広範なニーズに対応するための国内大学間,大学とコンサルタント企業・海外の大学・NGOとの間の連携の促進,国別・分野別の開発協力ネットワークの形成を支援していきます( 図2-10-9 )。

図2-10-9 大学における国際開発協力促進のためのサポート・センター


(5) 紛争終結後の国づくりにおける国際教育協力の取組

 アフガニスタン復興をはじめとする紛争終結地域に対する教育協力に関しては,平時の対応を応用しつつ関係機関と連携して具体的な施策を検討することが,平成14年7月の「国際教育協力懇談会」報告書で提言されました(参照: 第2部第10章第1節4(1) )。

 文部科学省では,アフガニスタンの教育支援に関し,副大臣を本部長とする「アフガニスタン復興のための教育支援プロジェクトチーム」を平成13年11月に設置し,アフガニスタン教育関係者が強く願望しているように,NGO・国際機関に依存しないしっかりとした公教育システムの再建が最優先されるべきであり,そのためには{1}教育行政システムの再建,{2}学校の教育環境の改善,{3}教員養成システムの再建,{4}高等教育の復興などが最も重要な課題であるとして,具体的な支援を行ってきました。

 また,イラク戦争終結後の復興支援については,文化財保護・教育の二つの分野を中心にユネスコなどと連携を図りつつ取り組んでいくこととし,平成15年4月25日には,副大臣を本部長とする「イラク復興支援のためのプロジェクトチーム」を設置し,検討を行っています。

 なお,文部科学省は,ユネスコがイラク国内で実施する教育分野の緊急ニーズ調査に参加するため,平成15年6月に,文部科学省参与を派遣しました。このように,紛争終結後の国づくりに関しては,日本の人材や経験を生かした支援を進めています。


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