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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第10章  国際化・情報化への対応
第1節  国際交流・協力の充実に向けて
3  相互理解を深める国際交流



(1) 留学生交流の推進

{1}留学生受入れの現状

 留学生を通じた国際交流は,我が国と諸外国相互の教育・研究の国際化・活性化を促すとともに,国際理解の推進と国際協調の精神の醸成に寄与します。また,開発途上国の場合には,その国の人材養成に大きく貢献します。さらに,帰国留学生が,我が国とそれぞれの母国との友好信頼関係の発展・強化のための重要な架け橋となることも期待されています。

 これまで文部科学省では,昭和58年に策定された「留学生受入れ10万人計画」 に基づき,「知的国際貢献」の観点から,渡日前から帰国後まで体系的な留学生受入れのための施策を総合的に推進してきました。

 我が国の大学などで学ぶ外国人留学生の数は,平成15年5月1日現在で前年比14.6%増の10万9,508人に上り,目標とされた10万人を超えています( 図2-10-3 ,参照: 表2-10-1 表2-10-2 )。

表2-10-1 主要国における受入れの状況

 これらの留学生は,その約9割がアジア地域より渡日した留学生であり,中でも中国,韓国,台湾の3か国(地域)で全体の約83.0%を占めています( 表2-10-3 図2-10-4 )。

図2-10-3 留学生数の推移

表2-10-2 在学段階別留学生数

表2-10-3 出身国(地域)別留学生数

図2-10-4 外国人留学生数(出身地域別)

九州大学国際理解教育の様子

日本留学説明会(日本留学フェア)

{2}留学生受入れ体制の整備充実

(ア)留学情報提供体制の整備

 (財)日本国際教育協会の国内外にある留学情報センター(東京(青海地区),兵庫(神戸),マレーシア(クアラルンプール),タイ(バンコク),インドネシア(ジャカルタ),韓国(ソウル))を開設し,留学に関する内外からの様々な照会に対応するとともに,現地の関係機関と協力し,海外の日本留学希望者や進学指導者などを対象に,直接,日本の教育機関などに関する情報や各大学の教育・研究上の特色などに関する情報の提供を行うため,毎年,日本の多数の大学などの参加を得て,「日本留学説明会(日本留学フェア)」を実施しています。平成15年度は,韓国,ベトナム,タイなどで開催しました。

 また,日本語以外に,英語,中国語,韓国語などによるホームページ(http://www.aiej.or.jp)を開設し,日本留学に関する基本情報をはじめ,大学情報や奨学金など留学生の入学や生活を支援する情報の提供を行っています。

(イ)日本留学試験の実施

 従来,我が国の大学への留学生の入学選抜においては,受験のために渡日する必要があるなど,欧米諸国の大学への留学に比べて手続が煩雑で,留学希望者にとって負担が大きいと指摘されていました。このため,文部科学省では,(財)日本国際教育協会と協力して,海外で広く実施され,渡日前に入学許可を得ることを可能とし,留学希望者にとって利用しやすい試験として「日本留学試験」を開発し,平成14年度から実施しています。本試験の平成15年度の受験者数の合計は,国内3万1,903人,海外3,208人の計3万5,111人(14年度は国内2万4,689人,海外1,432人の計2万6,121人)でした。

 また,本試験の利用大学は367大学(国立83校,公立49校,私立235校),96短期大学(国立2校,公立13校,私立81校)(平成15年10月15日現在)で,さらに,本試験を利用した渡日前入学許可制度を導入している大学は42大学(国立11校,公立1校,私立30校),10短期大学(すべて私立)(15年10月16日現在)となっています。今後,本試験がより多くの大学で利用され,渡日前入学許可が実施されることが望まれます。

<日本留学試験>

実施時期

平成14年から年2回(原則として6月・11月の第3日曜日)

実施地

国内:北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,九州,沖縄

海外:アジアを中心に当面10都市程度

(平成15年度は,インドネシア(ジャカルタ,スラバヤ),ベトナム(ハノイ,ホーチミン*),韓国(ソウル,プサン),シンガポール,(シンガポール),タイ(バンコク),台湾(台北),フィリピン(マニラ),マレーシア(クアラルンプール),モンゴル(ウランバートル)) *ベトナム(ホーチミン)は平成15年11月から開始。


試験科目

文系:日本語,数学,総合科目
理系:日本語,数学,理科(物理,化学,生物から2科目を選択)

その他

科目選択制や成績の複数年(2年間)利用を導入。本試験の成績優秀者を私費外国人留学生学習奨励費の給付予約者とする。


(ウ)留学生に対する支援措置

(i)国費留学生受入れの計画的整備

 国費留学生制度は,文部科学省(当時文部省)が,諸外国の次代を担う優れた若者を我が国の高等教育機関に招聘し,教育・研究を行わせる制度として創設され,昭和29年度に開始されました。現在,研究留学生(大学院レベル)や学部留学生,アジア諸国などの若年指導者を対象とするヤング・リーダーズ・プログラム など7種類のプログラムにより実施されており,これまでに約6万人の国費留学生を支援してきました(参照: 図2-10-5 )。

図2-10-5 文部科学省による留学生支援状況

2)私費留学生などへの援助

 文部科学省では,私費留学生に対して,従来から,学習奨励費(奨学金)の給付,優れた私費留学生の国費留学生への採用,授業料減免措置を講じた学校法人への助成などの施策を実施することにより,私費留学生が安定した生活の中で勉学に専念できる環境の整備に努めています。

 さらに,大学進学を目指す日本語教育機関で学ぶ就学生に対しても学習奨励費の給付を実施しています。また,(財)日本国際教育協会では,個々の支援企業名や個人名を冠した「顔の見える」奨学金支給事業,医療費の80%を上限とした補助(全留学生対象)を実施しています。

3)宿舎の安定的確保

 文部科学省では,国立大学の留学生宿舎の建設(平成14年度末までに7,049戸を整備)を進めているほか,一般学生寮への入居を促進しています。また,(財)日本国際教育協会では,留学生宿舎の建設などを行う地方公共団体などに対する建設奨励金の交付を,(財)留学生支援企業協力推進協会では,保有する社員寮に留学生を受け入れる民間企業に対する助成を,(財)内外学生センターでは,指定宿舎制度や留学生住宅総合補償制度などの施策をそれぞれ実施しています。

<(財)内外学生センターによる指定宿舎制度>

 外国人留学生の宿舎の安定的確保を目的に,(財)内外学生センターが適切な民間宿舎を開拓し,家主との間に外国人留学生専用の指定宿舎契約を締結するとともに,家主に対して協力金(指定契約金)を交付する制度です。

<(財)内外学生センターによる留学生住宅総合補償制度>

 外国人留学生の民間宿舎などへの円滑な入居を促進することを目的に,留学生が保証人を探す困難さと保証人の精神的・経済的負担を軽減するための住宅総合保険と保証人補償基金を組み合わせた制度です。具体的には,留学生がこの制度に加入することで,失火などにより家主への損害賠償をしなければならない場合や,家賃の未払いなどにより保証人が家主から債務の履行を請求された場合に補償を行います。

(エ)大学などにおける受入れ体制の整備

 文部科学省では,大学などにおける指導援助体制の整備のため,国立大学に対して,留学生センターや留学生課の設置をはじめとする人員・経費面での措置を行うとともに,私立大学などに対しては,各大学などの受入れ留学生数などを考慮した私立大学等経常費補助金の特別補助を行っています。

(オ)留学生のための教育プログラムの充実

 近年,我が国への留学形態が多様化する中,留学生のニーズ(需要)に応じた魅力ある教育プログラムを提供する大学が増えています。具体的には,現在,大学院研究科では,40の国私立大学において,留学生のために,英語による学位取得が可能な67のコースを開設しています。また,学部レベルでは,24の国立大学と24の私立大学において,短期留学生のために英語によるプログラムや特別コースを開設し,英語による授業を実施しています。

(カ)地域における留学生支援

 地域における留学生支援に当たっては,留学生とその同伴家族を地域の住民,すなわち社会の構成員として迎え入れ,あわせて,異文化を積極的に受け入れる意識が重要です。具体的には,ホームステイなど留学生と地域住民との交流,留学生に対する奨学金や宿舎の提供などを積極的に推進することが必要です。

 このためには,各地域における官民一体となった推進体制づくりが重要であり,その組織として,全都道府県に,地域の大学,地方公共団体,経済団体,民間団体などによって構成される留学生交流推進会議が設置されています。

日本文化との交流(金沢大学)

(キ)帰国留学生に対する援助の充実

 帰国留学生が留学の成果を更に高め,母国において活躍できるように,文部科学省では,専門誌・学会誌の送付,短期研究のための帰国留学生招聘事業,研究支援のための指導教官の派遣など,帰国留学生の希望に応じて援助しています。

{3}海外留学支援体制の整備

(ア)海外留学の現状

 近年,我が国において,海外の大学などに留学する学生が増加してきています。各国などの統計によれば,平成12年に海外に留学した日本人は,主要32か国において約7万6,000人です。留学先別に見ると,その約8割が欧米諸国となっています( 表2-10-4 )。

(イ)海外留学に関する施策

 文部科学省では,大学間交流の促進,国際的視野を有する教員の育成,地域研究者の養成などの観点から,国費による日本人学生の海外派遣制度を設けています。

 また,外国政府などの奨学金により,平成14年度は,約40か国に約406人の日本人学生などが留学しており,文部科学省では,その募集・選考に協力しています。

 さらに,海外留学の大半を占める私費留学について,(財)日本国際教育協会の留学情報センターを通じて,留学情報の収集・整理を行い,平成11年度からは「海外留学説明会」を開催するなど,留学希望者に対する情報提供を行うとともに,留学に関する相談に応じています。

表2-10-4 日本人の主な留学先・留学生数(2000年)

{4}留学生相互交流(受入れ・派遣)の推進

(ア)短期留学の推進

 短期留学とは,主として大学間交流協定などに基づき,母国の大学に在籍したまま,他国の大学で1年間程度,教育を受けて単位を修得したり,研究指導を受けるものです。文部科学省では,短期留学を推進するために,大学間交流協定などに基づき,諸外国の大学へ派遣される日本人学生や諸外国の大学から我が国の大学に受け入れる外国人留学生を支援する奨学金制度として「短期留学推進制度」を設けています。この制度によって,平成14年度には,1,760人の留学生を受け入れ,658人の日本人学生を派遣しました。

(イ)最先端分野の学生交流

 文部科学省では,社会的要請があり,推進を図る必要のある最先端分野の先導的人材の養成に寄与することを目的として,「最先端分野学生交流推進制度」を平成14年度に創設しました。

 この制度により,ライフサイエンス,情報通信,環境,ナノテクノロジー・材料などの最先端分野において,我が国の大学と外国の大学,研究機関との共同教育研究に参加するなど,我が国の学生と外国人留学生との大学院レベルの学生交流を支援しています(参照: 第2部第6章第2節 )。

(ウ)先導的留学生交流の支援

 文部科学省では,我が国の複数の大学のコンソーシアム(連合体)と外国の複数の大学のコンソーシアムとの間で行う学生交流を支援するための「先導的留学生交流プログラム支援制度」を平成15年度に創設しました。

 この制度により,大学コンソーシアム間で締結される協定に基づき実施される学生交流を支援しています。

{5}国際研究交流大学村の現状

 国際研究交流大学村は,文部科学省と経済産業省が連携協力し,東京都江東区の臨海副都心青海地区に,国際交流,情報発信,産学官連携の機能を有機的に連携させ,国公私立大学の留学生や外国人研究者との交流も含め,国内外の産学官の融合を図るとともに,世界に向けた知的ネットワークの整備・情報発信を行っています。


* 「留学生受入れ10万人計画」

 昭和58年8月の「21世紀への留学生政策に関する提言」などを踏まえ,21世紀初頭における10万人の留学生受入れを目標とした計画。


* ヤング・リーダーズ・プログラム(YLP)(平成13年度創設:大学院レベル)

 アジア諸国などにおける将来の指導者として活躍が期待される若手の行政官などを我が国に招聘し,日本に対する理解を深めることを通じて,世界各国の指導者などの人的・知的ネットワークを創り,我が国を含む諸国間の友好関係の構築,政府立案機能の向上に寄与することを目的とする。専攻分野は,行政,地方行政,医療行政,ビジネス,法律の5コース。すべて英語による1年間のプログラム。受入れ大学より「修士」が授与される。


(2) 教育の国際交流

{1}教員等の国際交流

 文部科学省では,小・中・高等学校教員の現職研修の一環として,国際的視野に立った識見などを高めさせるため,毎年,教員を海外に派遣しています。また,諸外国との間の相互理解の増進と相手国を理解する教育の推進のため,中等教育段階の教員をオーストラリア・ニュージーランドなどに派遣しています。

 大学教員・研究者については,文部科学省の在外研究員制度(平成12年度は723人派遣)や外国人教師制度(12年度は398人受入れ),日本学術振興会の事業(14年度は3,620人派遣,4,296人受入れ)などを通じて,派遣・受入れを行っています。

 特に,日米間では,昭和26年に発足した「日米教育交流計画」(フルブライト計画)により,平成14年度までに両国合わせて約9,100人の研究者・大学院生・ジャーナリストなどの交流が行われています(14年度は合計108人)。また,「日米国民交流」の包括的取組の一環として,日米教育委員会を実施主体とした「フルブライト・メモリアルプログラム」が,9年度から開始されました。この事業は,両国の教育制度などに関する相互理解を深め,日米間の教育分野での円滑で効果的な交流を促進することを目的としているもので,14年度においては,アメリカの小・中・高等学校教員など約600人を我が国に招致するとともに,日米の学校間による環境分野の共同プロジェクトの実施などの事業を行いました。

 また,社会教育に関しては,我が国の社会教育指導者を海外に派遣して,各国の社会教育関係者との意見交換を行う事業などを実施するとともに,各地域において女性の国際交流が活発になっていることを踏まえ,女性団体の国際交流事業に対する助成を行っています。国立女性教育会館では,平成14年度において,「女性情報国際フォーラム」を実施し,日本を含め23か国約132名の参加を得るとともに,アジア太平洋地域の女性行政担当官などを対象とする「国際女性情報処理研修」,開発途上国における女性教育の推進を支援することを目的とした「女性の教育推進セミナー」などの各種研修を行いました。

{2}青少年の国際交流

 文部科学省では,(財)世界青少年交流協会や,(財)ボーイスカウト日本連盟,(社)日本青年奉仕協会,(社)中央青少年団体連絡協議会などが実施する青少年の国際交流事業に対して助成などを行っています。

 また,国立オリンピック記念青少年総合センターなどの国立青少年教育施設においても,「アジア地域青少年教育指導者セミナー」,「青少年国際ネットワークフォーラム」など種々の国際交流事業を実施しています。

 このほか,全国各地では,各都道府県・市町村や社会教育関係団体,民間団体が積極的に青少年の国際交流を実施しています。


(3) 日本語教育の振興

{1}日本語学習者の現状

 近年,我が国における外国人の増加や諸外国との国際交流の進展により,日本語学習者は増加しており,海外で約210万人(平成10年国際交流基金調べ),国内で約12万6,400人(14年11月文化庁調べ)に上っています。

{2}地域における日本語教育の支援

 最近,日本で働いたり,日本人と結婚して来日する人も増加していますが,このような人に対する日本語教育については,多くの場合,それぞれの地域の実情に応じ,取り組まれています。

 文化庁では,地域の特性に応じた外国人に対する日本語教育を支援するため,日本語ボランティアなどの中核となる者(地域日本語支援コーディネーター )の研修や,日本語学習支援に関する相談事業・シンポジウム(公開討論・協議会)を実施しています。

 また,地域に居住する外国人の親と子が共に日常生活に必要な日本語を学ぶための「親子参加型日本語教室」事業を実施し,地域における日本語教育の一層の充実を図っています。

{3}日本語教育機関(いわゆる日本語学校)の質的向上

 我が国で日本語を学習する者のうち,大学などの高等教育機関への進学を目指すなど,ある程度体系的に学習しようとする者の多くは,留学生・就学生として日本語教育機関で学習しています。

 このうち,(財)日本語教育振興協会が一定以上の水準にあると認定した機関は,平成15年3月末現在で381機関となっており,在籍者は14年7月1日現在で3万9,205人(対前年度比5,448人増(16.1%増))となっています。

 (財)日本語教育振興協会では,認定した日本語教育機関を紹介する「日本語教育施設要覧」の作成や日本語教材の研究・開発,教員などに対する研修会の開催などの諸事業を行っており,文部科学省は,これらの諸事業に対し助成を行っています。

{4}日本語教育に携わる者の養成・研修等

(ア)日本語教員の養成

 文化庁の日本語教育実態調査によれば,平成14年11月現在,日本語教員養成課程・コースなどは,国公私立の大学の学部で152,大学院で25,短期大学で22となっており,これらの機関における受講者数は2万4,585人となっています。また,大学以外の一般の日本語教員養成機関の数は159,受講者数は1万1,516人となっています。

(イ)日本語教員の研修等

 国立国語研究所においては,現職の日本語教員などを対象にした日本語教育上級研修(10か月)や,教師・教師志願者・学生・一般人を対象にした日本語教育短期研修(1〜2日,年間6回)などを実施し,平成14年度は817人が参加しました。また,諸外国の日本語教育の中核的な指導者を育成することを目指す大学院課程を,国立国語研究所,政策研究大学院大学,国際交流基金日本語国際センターが連携して運営しています。14年10月から9名の前期(修士)課程第2期院生を受け入れて指導を行っています。

(ウ)日本語教育能力検定試験の実施

 日本語教育能力検定試験は,(財)日本国際教育協会により,日本語教育の知識・能力が,日本語教育の専門家として最低限必要な水準に達しているかどうかを審査し,証明することを目的として実施されています。平成14年度は,国内外で約6,000人が受験しました。

{5}その他の日本語学習環境の整備

(ア)日本語教授法・教材の研究開発等

 文化庁や国立国語研究所では,日本語教授法・教材の研究開発を進めているほか,日本語教育に関する研究協議会や国際的な公開討論,協議会などを積極的に進め,関係者間の情報交換や普及啓発活動を推進しています。

(イ)情報通信技術を活用した日本語教育への支援

 文化庁では,国内外の日本語教育の多様な需要や要望にこたえるため,「日本語教育支援総合ネットワーク・システム」を開発しました。これは,電子化された多様な日本語教育教材用素材や日本語教育関係情報を,インターネットを通じて簡単な手続で提供するもので,現在,国立国語研究所において管理運営しています。

 また,同研究所では,諸外国で日本語教育が円滑に行えるよう,日本語ソフトなどを提供したり,情報通信技術を用いた指導能力向上のための研修などを行っています。

(ウ)日本語能力試験の実施

 日本語を学習する外国人を対象に,日本語能力を測定し,認定することを目的として,国内では(財)日本国際教育協会が,海外では現地関係機関の協力を得て国際交流基金が,日本語能力試験を実施しています。この試験は,1級(日本語学習時間900時間程度)から4級(同150時間程度)までの試験レベルに分かれており,平成14年度には国内外で約24万2,000人が受験しました。

{6}インドシナ難民・中国からの帰国者等に対する日本語教育の推進

 文部科学省は,閣議了解に基づき,我が国に定住などを希望するインドシナ難民や条約難民 を対象として,(財)アジア福祉教育財団に委託して,約4か月間の集中的な日本語教育を行うなど,社会生活に必要な日本語能力の維持向上を図っています。また,中国からの帰国者に対しては,日本語教材や指導参考書を作成し,無償配布しています。

第10回国立国語研究所国際シンポジウムの模様

「文化庁日本語教育大会」の模様

{7}海外における日本語教育への協力

 文部科学省と総務省の協力の下で,地方公共団体は,「外国教育施設日本語指導教員派遣事業」(REXプログラム)を実施しています。

 このプログラムは,海外における日本語学習の需要の高まりにこたえるとともに,教育・文化交流活動を通じて,我が国の学校教育の国際化と地域での国際交流が促進されるよう,我が国の公立中・高等学校の若手教員を海外の中等教育施設に2年間派遣し,日本語教育や日本文化の紹介などを行うものです。

REXプログラム(オーストラリア・クイーンズランド州・マルーチドー高校)


* コーディネーター

 物事を調整し,まとめる人のこと。


* 条約難民

 「出入国管理及び難民認定法」第61条の2によって難民である旨法務省によって認定された者のこと。


(4) 外国人児童生徒に対する日本語指導など

 日本語指導が必要な外国人児童生徒は,平成14年9月時点で,公立小・中・高等学校に1万8,734人在籍し,在籍校数は5,130校に上っています。これら外国人児童生徒のほとんどは,来日前に日本語教育を受けないまま言語も生活習慣も異なる環境に入ってくることから,適切な日本語指導や学校生活への適応指導を行うことができる体制を整備していくことが重要です。

 このため,文部科学省では,{1}学校教育におけるJSL(第2言語としての日本語)カリキュラムの開発,{2}帰国・外国人児童生徒と共に進める教育の国際化推進地域の指定,{3}日本語指導などに対応した教員の加配,{4}外国人児童生徒等教育相談員派遣事業の実施,{5}校長,教頭,指導主事や担当教員を対象とした講習会・研究協議会の実施などの施策を行っています。


(5) 文化の国際交流・協力

 今日の国際化の流れの中で,文化活動においても国際的な広がりが進展しており,我が国としても魅力ある文化芸術を創造し,世界に発信していくことで,世界の文化の発展に貢献していくことが大切です。

 このため,文化庁では,芸術家や芸術団体の派遣・受入れ,国際的な芸術フェスティバルの開催・参加,海外の文化遺産の保存修復への協力など,様々な施策を実施しています。

{1}今後の国際文化交流の推進について

 文化庁長官の私的懇談会である国際文化交流懇談会(座長:平山郁夫東京芸術大学長)は,平成14年4月22日に発足し,官民を通じた我が国全体の国際文化交流を計画的に推進する上での理念や具体的な施策などについて取りまとめ,報告書を15年3月24日に発表しました( 図2-10-6 )。

図2-10-6 国際文化交流懇談会報告のポイント−「今後の国際文化交流の推進について」−

{2}日本文化の発信による国際文化交流の推進

(ア)文化庁「文化交流使」の派遣等

 「文化交流使」は,芸術家・文化人・研究者など文化に携わる方々を,一定期間「文化交流使」として海外に派遣するなどして,世界の人々の日本文化への理解を深めることや,日本と外国の文化人のネットワークの形成・強化につながる活動を展開していただくことを目的とした事業です。

 「文化交流使」の活動には,(i)日本在住の芸術家・文化人が海外に一定期間滞在し,日本の文化に関する講演や講習,実演などを行う「海外派遣型」,(2)海外在住の日本文化に深い知見を持つ芸術家・文化人が,講演,講習,現地報道機関への投稿,出演などを行う「現地滞在者型」,(3)公演などで来日する諸外国の著名な芸術家が,日本滞在期間を利用して学校などを訪問して実演・講演などを行う「来日芸術家型」の三つの類型があります。

 文化庁では,これまでに,「海外派遣型」12名,「来日芸術家型」2組の指名を行いました。シナリオライター,小説家,落語家,俳優,指揮者など様々な分野で活躍中の方で,文化交流使として,従来の海外公演や展示事業ではできないきめ細かな文化交流と発信活動を行っています( 表2-10-5 )。

平成15年度文化庁「文化交流使」指名書交付式

表2-10-5 平成15年の文化交流使

(イ)国際文化フォーラムの開催

 文化庁では,国際的に著名な内外の芸術家・文化人などを招聘し,座談会,対談,講演などの形式により,世界の文化芸術の最新の諸相や動向について語り合ってもらうことを目的として国際文化フォーラムを実施しています。国際文化フォーラムを継続して実施することにより,「文化を大切にする国」のイメージを海外に発信するとともに,日本文化について世界の注目を集めることが期待されます。

 平成15年11月に,関西地区で,世界の様々な分野の著名な文化人・芸術家などが,「文化の多様性」の共通テ−マの下に,「文化芸術と科学技術の関係」,「文化・文明間の対話・協調」,文化の交流・融合から生まれる「美術」,「音楽」,「思想」,「現代日本文化」などについて話し合いました( 表2-10-6 )。

表2-10-6 平成15年国際文化フォーラム行事

{3}芸術文化交流

 芸術文化の国際交流の推進は,我が国の芸術文化の発展のみならず,我が国が世界の芸術文化の発展に貢献していく上でも重要です。

 このため,文化庁では,「文化芸術創造プラン(新世紀アーツプラン)」において,新進芸術家海外留学制度や海外芸術家招聘事業,優秀指導者特別指導助成,舞台芸術の国際フェスティバルの開催,優れた芸術の国際交流への支援などの施策を推進しています。また,海外の青少年やアマチュア文化団体の招聘,派遣・研修事業などを実施する「国民文化国際交流事業」において,高校生の文化交流の推進を図るため,「日中高校生文化交流事業」,「日韓高校生文化交流事業」を実施しています。

{4}文化財保護に関する国際交流・協力

(ア)在外日本古美術品の修復

 文化財研究所などでは,欧米諸国を中心とする諸外国の博物館・美術館が所蔵する日本古美術品の修復協力を進めてきており,平成14年度は,絵画7件,工芸品5件を修復しました。15年度は,絵画7件,工芸品5件の修復を行います。

(イ)海外の文化遺産の保護への協力

 文化庁では,アジア・太平洋地域の文化財建造物の保存・修復に対する技術協力を実施しています。平成15年度は,ベトナムの農村集落の保存修復事業への技術協力,インドネシアの歴史的建造物の共同調査などを実施しています。また,相手国の文化財専門家・技術者を招聘しての研修を行っています。

 文化財研究所では,平成15年度に,東京文化財研究所において,第27回文化財の保存及び修復に関する国際シンポジウム「漆が語る国際交流―海を渡った文化財情報」を開催しました。奈良文化財研究所では,15年度は「アンコール遺跡近隣の文化遺産の保護協力」など8件の協力事業を行っております。

インドネシアでの保存修復に関する研修会の様子

 また,我が国は,政府間国際機関である文化財保存修復研究国際センター(ICCROM)に加盟し,国際的な研究事業などに協力を行っており,平成12年度からは同センターに文化庁の職員を派遣しています。

 さらに,アジア太平洋地域の世界遺産などの文化財保護に関する国際協力の充実強化を図るため,平成11年8月に(財)ユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所を開設しました。同事務所は,世界遺産をはじめとする遺跡などの保護を主な対象としており,15年度には,アジア太平洋地域諸国の文化遺産保護担当者を招聘し,遺産の保護,調査,修復などをテーマとした集団研修や個人研修などを実施するとともに,アジア太平洋地域の文化財保護関連の資料収集やデータベースの構築,国際会議の開催を行いました。

(ウ)海外展

 文化庁は,従来から諸外国において,国宝・重要文化財を含む大規模な展覧会を開催しています。平成14年度は,ロサンゼルス・カウンティ美術館(アメリカ)において「能装束」展を開催しました。また,15年度は,ニューサウス・ウェールズ州立美術館(オーストラリア)において「日本美術における四季」展を,トルコ国立美術館及び絵画と彫刻美術館(トルコ)において「日本陶磁の至宝5000年」展を開催します。

平成14年度海外展「能装束」展(於米国)

 また,国立博物館は,諸外国の博物館・美術館において「海外交流展」を実施しており,平成14年度は,キンスキー宮殿(チェコ)において,京都国立博物館の収蔵品による特別展覧会「京都からの美のたより」展を開催しました。15年度は,ドイツ連邦共和国国立芸術展覧会ホール(ボン)で,東京国立博物館の収蔵品による「日本の美 日本のこころ―15〜17世紀」展を,韓国国立慶州博物館(韓国)において,奈良国立博物館の収蔵品による「仏教美術の名宝」展を開催します。

(エ)国際民俗芸能フェスティバル

 文化庁では,国内の民俗芸能と外国(主にアジア)の民俗芸能が一堂に集まって公演する「国際民俗芸能フェスティバル」を行っており,平成15年度は宮崎県で開催しました。

(オ)地方公共団体における国際協力の支援

 文化庁では,総務省と(財)自治体国際化協会が行う「自治体職員協力交流事業」に協力し,地方公共団体が受け入れる諸外国の文化財保護行政担当者,遺跡発掘技術者,博物館・美術館の専門職員などに対する研修を行っています。

(カ)アフガニスタンとイラクへの文化財協力

 アフガニスタンなどにおける文化財保存修復に関する国際的な協力を行うため,文化庁では,平成14年9月から,「アフガニスタン等文化財国際協力会議」を開催してきました。会議では,アフガニスタンへ調査団を派遣した結果などを基に,15年8月に具体的な協力分野を提言する報告書をまとめました。

 また,平成15年4月に,人類の貴重な遺産であるイラクの文化財が略奪や破壊の被害を受けたことを契機に,ユネスコを通じ,現地へ2度にわたる専門家の派遣を行いました。また,国内においても,イラク文化財の不法取得防止に向けた関係機関への通知を出すとともに,8月1日には,ユネスコと共同で「第3回ユネスコ・イラク文化財保護国際会議」を東京で開催するなど,イラクの文化財の保護・保全のための様々な働き掛けを行ってきました。

(キ)韓国との文化財交流

 平成15年4月に,文化庁長官と韓国の文化財庁長は,日韓の文化財全般の交流に関する討議の記録に署名を行いました。今後は,合意された討議の記録を踏まえ,専門家などの交流や,有形・無形の文化財の交流,国際機関の取組への協力などを推進していく予定です。

{5}世界遺産の登録・推薦の推進

 「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)は,顕著な普遍的価値を有する文化遺産・自然遺産を,人類全体のための世界の遺産として,損傷・破壊などの脅威から保護し,保存することを目的として,昭和47年の第17回ユネスコ総会において採択されました。我が国は,平成4年に同条約を締結し,15年10月現在で締約国は177か国に上ります。15年9月現在で,我が国では11件の遺産(文化遺産9件,自然遺産2件)が登録され,世界遺産全登録件数は754件(文化遺産582件,自然遺産149件,両方に該当するもの23件)となっています。

世界遺産(琉球王国のグスク及び関連遺産群(識名園)

 また,我が国は,今後の世界遺産の候補として,「平泉の文化遺産」,「紀伊山地の霊場と参詣道」,「石見銀山遺跡」などを選定し,ユネスコ世界遺産暫定リストに掲載されています。このうち「紀伊山地の霊場と参詣道」については,平成15年1月にユネスコに対し推薦書を提出したところであり,16年6月ごろの世界遺産委員会において,登録の可否が決定される予定です。

{6}人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言

 「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」とは,平成13年度からユネスコが始めた事業で,口承と無形遺産の継承,発展を図ることを奨励するため,ユネスコが定める基準を満たすものを隔年で「口承及び無形遺産の傑作」として宣言するものです。

 加盟国は2年ごとに1件の候補を推薦(あわせて,今後10年間にわたって推薦を計画している候補の暫定リスト(一覧表)を提出)し,ユネスコの選考委員会が「たぐいない価値を有する無形の文化遺産が集約されていること」,「歴史,芸術,民族学,社会学,人類学,言語学,文学の観点から,たぐいない価値を有する民衆の伝統的な文化の表現形式」の観点から選考します。

 平成13年5月の第1回宣言において,日本から推薦をしていた能楽を含む19件が傑作として宣言されたのに引き続き,15年11月7日にユネスコ本部にて行われた第2回宣言式典では,日本の「人形浄瑠璃文楽」を含む28件が宣言されました。

{7}無形文化遺産保護条約への対応

 近年,ユネスコにおいて,無形の文化遺産保護のための新たな国際的枠組みを構築するための取組が進められてきました。条約策定に当たり,我が国が,本分野において世界に先駆けて半世紀前から保護制度を整備してきた知見を生かし,主導的な役割を果たした結果,平成15年10月のユネスコ総会で本条約は採択されました。

人形浄瑠璃文楽「本朝廿四孝」

{8}文化財の不法な輸出入等の規制

 不法な文化財取引を実効的に防止し,各国の文化財を不法な輸出入などの危険から保護することを目的として,我が国も「文化財の不法な輸入,輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」を締結するとともに,「文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律」を制定し,あわせて文化財保護法の改正を行いました。同条約と法律は,平成14年12月9日から施行されています。

 これらの法律に基づき,外国の博物館などから盗取されたもので文部科学省令で定める文化財(特定外国文化財)については,原則として輸入が禁止されることになり,特定外国文化財の盗難の被害者については,回復請求期間を延長することになりました。また,重要有形民俗文化財の輸出について,届出制から許可制に改められました。


(6) スポーツの国際交流

 スポーツは人類共通の文化であり,スポーツを通じた国際交流は,諸外国との相互理解と友好親善の促進に大きな役割を果たすものです。

{1}スポーツ団体における国際交流事業

 (財)日本体育協会では,青少年スポーツ指導員の受入れ・研修やアジア地区のスポーツ交流などの国際交流事業を実施しています。また,(財)日本オリンピック委員会においては,各種国際競技大会への選手派遣や競技力向上スポーツ交流事業などを実施しています。文部科学省では,(財)日本体育協会や(財)日本オリンピック委員会をはじめとするスポーツ団体が行う国際交流事業について支援を行っています。

{2}国際競技大会への支援

 我が国では,大阪市で開催された2003年世界柔道選手権大会をはじめとして,数々の国際競技大会が開催されています。これらの国際競技大会の開催は,我が国のスポーツの普及や振興のみならず,スポーツを通じた国際交流として国際親善の推進に大きく寄与するものです。文部科学省では,これらの国際競技大会について支援を行っています。


(7) 二国間交流

 2002年は,「日韓国民交流年」の取組や,ワールドカップ・サッカー大会という国際的スポーツ・イベントの日韓共同開催を契機として,様々な分野での交流が実施されました。特に,文化の分野においては,日韓宮中音楽演奏会の両国での開催,相互の古美術品の交流展である「日本美術名品展」や「日韓文化交流特別展『韓国の名宝』」の開催,日韓合同企画作品である演劇「その河をこえて,五月」の公演など,交流年事業の中核を担うような日韓共同公演や国立博物館・美術館間の交流展などの催しが活発に行われました。

 また,2002年は日中国交正常化30周年,2003年は日中平和友好条約締結25周年に当たり,2000年の日中首脳会談で,2002年を「日本年」「中国年」とすることが合意されました。2002年には,中国では,我が国の優れたメディア芸術を紹介する「日本メディア芸術作品展2002」をはじめとする多くの催しが行われました。我が国でも,中国国家交響楽団特別演奏会をはじめとする様々な催しが行われました。

 さらに,2002年1月の小泉総理の東南アジア5か国訪問時における首脳会談などにおいて,日本とASEAN諸国の「未来への協力」の一つとして「日本ASEAN交流年2003」が提案されました。これを受けて,2003年は,政治,経済,社会,教育,科学技術,文化,芸術など幅広い分野において,二国間,多国間,地域レベルで,様々な交流事業・活動を行っています。特に,文化分野においては,日・ASEAN合同舞踊「虹の舞」,ASEAN現代舞踊公演「ラーマーヤナ」をはじめとする多くの催しを行っています。

 その他の国々についても,文化協定に基づく文化協議の機会をとらえて,両国間の教育・文化・スポーツ交流の推進と相互理解の増進,友好関係の発展を図っています。


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