ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第10章  国際化・情報化への対応
第1節  国際交流・協力の充実に向けて
2  国際社会に生きる日本人の育成



(1) 国際理解教育の推進

{1}国際理解教育の現状と施策

 国際社会の中では,日本人としての自覚を持ち,主体的に生きていく上で必要な資質や能力を子どもたちに育成することが大切です。また,我が国の歴史や文化,伝統などに対する理解を深め,これらを愛する心を育成するとともに,広い視野を持って異文化を理解し,異なる習慣や文化を持った人々と共に生きていくための資質や能力を子どもたちに育成することが重要となっています。

 現在,各学校においては,社会科などの各教科,道徳,特別活動の時間を通じて指導を行うとともに,新学習指導要領(小・中学校は平成14年度から,高等学校については15年度から学年進行により実施)の実施に伴い新設された「総合的な学習の時間」においても,このような視点に立った教育に取り組んでいます。

 文部科学省では,国際理解教育の推進のため,研究協議会を開催しているほか,平成11年度に国際理解教育指導事例集(小学校編)を作成しました。また,12年度には,国際理解教育に関するソフトウェアの開発を行い,配布しました。今後は,国際理解教育指導事例集(中・高等学校編)を作成することとしています。

{2}高等学校等における国際交流等の状況(留学交流,海外修学旅行)

(ア)高校生の留学

 高校生の留学については,平成12年度に外国の高等学校へ3か月以上留学した者は4,358人,海外学習旅行者(語学などの研修や国際交流などを目的として,外国の高等学校などに3か月未満の旅行に出た者)は3万9,310人となっています。

 文部科学省では,高校生留学の教育上の意義を考慮し,関係機関に対し,安全で有意義な留学ができるよう指導・助言に努めており,高校生留学プログラムを行う団体により設立された「全国高校生留学・交流団体連絡協議会」が行う諸事業を支援しています。

 また,高校生留学関係団体の責任者が一堂に会する「高校生留学等関係団体関係者研究協議会」の開催や「高校生留学交流研究指定制度」に対して補助を行っています。さらに,留学生交流の促進を図るため,(財)エイ・エフ・エス日本協会や(財)ワイ・エフ・ユー日本国際交流財団などが行う各種留学生の派遣・受入れ事業に対して補助を行っています。

 このほか,ノーベル賞受賞者らによって講義が行われる「内閣総理大臣オーストラリア科学奨学生事業」(主催:オーストラリアシドニー大学)に10人の高校生を派遣するための募集・選考などを行っています。

(イ)高校生の海外への修学旅行

 平成12年度において海外修学旅行を行った高等学校は延べ1,232校(公立531校,私立701校)です。参加生徒数は19万6,971人であり,主な行き先は,韓国241校,中国213校,アメリカ171校,オーストラリア131校などとなっています。

 海外への修学旅行は,外国人との交流の機会や外国の文物に接する機会を得,国際理解を深めるなどの意義がありますが,実施に当たっては,安全確保などに万全を期する必要があります。このため,文部科学省では,各学校が必要な情報を入手できるよう,外務省と連携して,情報提供を行う体制を整備しています。


(2) 外国語教育の充実

{1}「英語が使える日本人」の育成のための行動計画

 経済や社会などの様々な面でグローバル化が急速に進む中で,21世紀を生きる子どもたちが,広い視野を持ち,国際的な理解と協調を図る上で大切な英語のコミュニケーション能力を身に付けることが大切です。このため,文部科学省では,平成14年7月に打ち出した「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」に基づき,「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」を15年3月31日に策定しました。この「行動計画」は,今後5か年で「英語が使える日本人」を育成する体制を確立するため,20年度を目標に英語教育の改善の目標や方向性を明らかにし,その実現のために国として取り組むべき施策を具体的にまとめたものです。

 また,この行動計画に基づいて,英語教育改善の実現のための施策を積極的に進めていくと同時に,様々な機会を通じて,本行動計画について広く国民への理解を促すとともに,改善に向けた各種の取組状況などを評価し,毎年,計画を見直すこととしています。行動計画の主な施策は以下のとおりです。

(ア)スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール

 今後の英語教育の改善に資する実証的な資料を得るため,平成14年度から,英語教育に重点的に取り組む高等学校などを「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)」に指定し,英語教育を重視したカリキュラムの開発,一部の教科を英語によって行う教育,大学や海外姉妹校との効果的な連携方策などについて実践的な研究を行うこととしました。指定期間は3年間で,文部科学省は研究開発に関する経費を支出します。14年度の指定は16件(公立15校,私立3校),15年度は新たに34件(公立27校,私立8校)が指定を受け,取り組んでいるところです(参照: 第2部第2章第1節 )。

(イ)語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)の推進

 JETプログラム(「The Japan Exchange and Teaching Programme」)は,外国語教育の充実を図るとともに,地域レベルでの国際交流の進展を図ることを通じて,諸外国との相互理解を増進し,もって我が国の国際化の促進に寄与することを目的としています。この事業は,文部科学省,総務省,外務省,さらに(財)自治体国際化協会の協力の下に,地方公共団体が実施しています。

 JETプログラム参加者の職種は,ALT(外国語指導助手),CIR(国際交流員),SEA(スポーツ国際交流員)の三つがあります。平成15年度に新たに日本に来日した参加者は,ALTが2,802人,CIRが241人,SEAが14人となっています。

 文部科学省では,外国語教育の充実を図るため,生徒が直接ネイティブ・スピーカーから生きた言語を学ぶ機会を豊富に提供することを特に重視し,JETプログラムを推進しています。また,この事業により招致したALTの指導力の一層の向上を図るため,ALTに対する各種の研修,指導,カウンセリングを実施しています。ALTと日本人外国語担当教員によるティーム・ティーチング *1 は,生徒のコミュニケーション能力の育成について大きな成果を挙げています。

(ウ)英語担当教員の資質向上

 文部科学省では,「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」に基づき,新たに平成15年度から今後5年間に,すべての英語担当教員を対象とした研修を支援するために,これらの経費の2分の1を補助することとしました。また,研修を効果的に実施するため,「英語教員研修ガイドブック」や全国の講師となり得る方々をデータベース化 *2 した講師リストを作成・配付しました。

 さらに,引き続き,中・高等学校の英語担当教員を対象にした3週間の指導者講座や,米国・英国などの大学などで行う海外研修のより有効な活用を図るため,2か月研修を新たに設けました(2か月:200人,6か月:85人,12か月:15人)。なお,これらの研修は,平成13年度から教員研修センターを通じて実施しています。

(エ)小学校における外国語会話学習

 平成14年度から本格実施された新学習指導要領においては,「総合的な学習の時間」が新設され,小学校においても,国際理解に関する学習の一環として外国語会話などを取り入れることができるようになりました。

 このため,文部科学省では,外国語会話の中でも,特に国際的共通語として最も中心的な役割を果たしている英語によるコミュニケーション能力の育成を図るため,平成12年12月に小学校英語活動実践の手引を作成するとともに,13年度から小学校教員を対象にした英会話活動に関する研修を,教員研修センターとの共催で実施しています。

{2}外国語教育の多様化の推進

 国際化の推進に適切に対応するためには,近隣のアジア諸国の言語をはじめ,英語以外の多様な外国語教育についても重視する必要があります。このため,文部科学省では,高等学校教育の多様化・弾力化を図る趣旨から,英語以外の多様な外国語教育の振興を図っており,平成13年度には,全国の公・私立高等学校の598校において,22言語の授業が開設されています。

 文部科学省では,平成14年度から「高等学校における外国語教育多様化推進地域事業」を実施しています。この事業は,英語以外の外国語教育に取り組んでいる都道府県を推進地域に指定し,推進地域連絡協議会を設置するとともに,域内の高等学校を推進校として指定し,地域の関係機関との連携の下で,教育課程上の課題や地域人材の活用方法の在り方など,外国語教育多様化の推進について実践的な調査研究を行い,外国語教育の振興に資することを目的としているものです。指定期間は2年間で,文部科学省は調査研究に関する経費を支出します。14年度から指定されている地域は,中国語推進地域として神奈川県,兵庫県,和歌山県の3県,韓国・朝鮮語推進地域として大阪府の計4府県です。


*1 ティーム・ティーチング

 複数の教師による協力的な指導のこと。


*2 データベース化

 大量の情報を集め,いつでも検索できるようにすること。


(3) 海外子女教育の充実

{1}海外子女教育の現状

 我が国の国際化の進展に伴い,多くの日本人が子どもを海外へ同伴しており,平成15年4月現在,海外に在留している義務教育段階の子どもの数は52,462人となっています。

 文部科学省では,海外子女教育の重要性を考慮し,日本人学校や補習授業校の教育の充実・向上を図るため,日本国内の国公私立の義務教育諸学校の教員を派遣しています(平成15年度は1,339人)。また,教育内容の充実のために,海外子女教育研究協力校を指定し,日本国内とは異なる環境の下での教育の在り方などについて調査研究を行っているほか,校長研究協議会を定期的に開催しています。さらに,教育環境の整備として,義務教育教科書の無償給与,教材の整備,通信教育などを行っています( 図2-10-1 ,図2-10-2 )。

図2-10-1 海外の子ども(学齢段階)の就学形態別表

図2-10-2 海外の子ども(学齢段階)の地域別就学状況

「日本人学校」「補習授業校」

 海外に在留する日本人の子どものために,国内の学校教育に準じた教育を実施することを主な目的として海外に設置された在外教育施設には,「日本人学校」,「補習授業校」,「私立在外教育施設」の三つがあります。日本人学校,私立在外教育施設は,文部科学大臣より認定・指定を受けており,その卒業生には,国内の上級学校への入学資格が認められます。

<日本人学校>

 日本人学校とは,国内の小・中学校における教育と同等の教育を行うことを目的とする全日制の教育施設です。一般に,現地の日本人会などが設置主体となって設立され,日本人会や保護者の代表などからなる学校運営委員会によって運営されています(平成15年4月15日現在82校)。

<補習授業校>

 補習授業校とは,現地校,国際学校などに通学している日本人の子どもに対し,土曜日や放課後などを利用して日本国内の小・中学校の一部の教科について授業を行う教育施設で,高等部や幼稚部を併設するものもあります(平成15年4月15日現在188校)。

<私立在外教育施設>

 私立在外教育施設とは,国内の学校法人などが,国内の学校教育と同等の教育を行うことを目的とし設置する,全日制の教育施設です。小学校段階から高等学校段階までの課程を有するものから,高等学校段階の課程のみを設置するものなど,その形態は様々ですが,一般に国内の学校と連携を図りつつ,教育を行っています(平成15年4月15日現在13校)。

 このほか,急速に普及するインターネットは,日本人学校などにとって特に利用価値の高いものであることから,文部科学省では,(ア)インターネット利用のためのコンピュータなどの導入に対する補助,(イ)海外子女教育・帰国児童生徒教育に関する総合ホームページの開設(通称「クラリネット」,https://www.mext.go.jp/a-menu/shotou/clarinet/index.htm)などの施策を行っています。

{2}豊かな国際性を培う教育活動の推進

 日本人学校などにおいては,海外における教育という特性を十分に生かし,現地社会との交流を進め,異文化への理解を深めて,国際性豊かな日本人の育成を図っていくことが期待されています。このため,日本人学校では,所在国の言語や歴史・地理など現地事情にかかわる指導を取り入れたり,現地校との交流活動を教育課程の中に日常的に位置付け,相互理解の推進を図るなど,現地との交流の促進に努めています。また,国際学級や日本語講座を設けるなどして,外国人の子どもを受け入れているところもあります。

 文部科学省は,日本人学校などにおける現地理解教育,交流活動などを一層推進するため,在外教育施設国際交流ディレクター を派遣し(平成15年度は10人),その所属する学校を国際教育・文化交流推進校に指定しています。

チューリッヒのお祭りで和太鼓を演奏する様子(チューリッヒ日本人学校)

現地校交流の様子(ジョホール日本人学校)


* 在外教育施設国際交流ディレクター

 在外教育施設を拠点とした国際交流活動を積極的に推進することを使命とする。所属する在外教育施設の実情に応じて,現地関係諸機関などとの連携を図りながら,教育,文化,スポーツを通じた国際交流に関する事業企画・実施について総合調整を行う。


(4) 海外から帰国した児童生徒に対する教育の充実など

{1}海外から帰国した児童生徒に対する教育の現状と施策

 平成13年度間に,海外での長期間の滞在の後に帰国した子どもの数は,小・中・高等学校などの各段階を合わせて年間1万827人となっています。これらの児童生徒については,国内の学校生活への円滑な適応を図るとともに,海外での経験を通じてはぐくまれた特性を更に伸ばし,その特性を生かして,その他の児童生徒との相互啓発を通じた国際理解教育を進めることが重要です。

 このため,文部科学省では,(ア)国立大学附属学校における帰国子女教育学級などの設置,(イ)帰国・外国人児童生徒と共に進める教育の国際化推進地域の指定,(ウ)担当教員や指導主事を対象とした研究協議会などの実施のほか,平成12・13年度には,出国・帰国時における受入校で,児童生徒の情報が円滑に伝達されるための「海外子女教育手帳」の作成など,施策の充実を図っています。また,高等学校や大学の入学者選抜の際の特別選抜枠の設定や選抜方法の工夫などが,更に多くの学校で行われるよう求めるなど,施策の充実に取り組んでいます。

{2}中国等帰国児童生徒教育の現状と施策

 中国等帰国孤児に同伴されて帰国する子どもは,日本語能力が不十分であったり,日本の文化や生活習慣に通じていなかったりするため,日本語指導や学校への適応指導について特別な配慮を行う必要があります。

 このため,文部科学省では,円滑に日本の学校や生活に適応できるように,(ア)中国語ができる教育相談員の派遣,(イ)日本語指導などに対応した教員の加配,(ウ)担当教員や指導主事を対象とした研究協議会などの実施,(エ)帰国・外国人児童生徒と共に進める教育の国際化推進地域の指定などの施策を行っています。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ