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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第9章  心豊かで元気のある社会を実現するための「文化力」の向上
第5節  新しい時代に対応した著作権施策の展開
2  五つの分野における戦略的対応



(1) 「法律ルール」の整備

 我が国の著作権法による権利の付与については,インターネットへの対応などについて世界最高水準にあります。「著作物」,「実演」,「レコード」,「放送番組」,「有線放送番組」のすべてについて,「インターネットによる送信などを無断で行ってはならない」などの法整備を終えているのは,世界で日本のみです。また,無断コピーなどを防止するための「技術的保護手段(コピープロテクションなど)の回避や,いわゆる「電子透かし」などによって著作物に付与される情報(著作者名など)の改変などを防止するための法整備についても,「著作物」,「実演」,「レコード」,「放送番組」,「有線放送番組」のすべてについて終えているのも,世界で日本のみとなっています。

 さらに,平成15年通常国会における著作権法改正により,我が国が強い競争力を持つアニメ,ビデオ,映画,ゲームソフトなどの「映画の著作物」について,保護期間を「公表後50年」から「公表後70年」に延長するとともに,「例外的な無許諾利用」ができる範囲の拡大によって,「コンピュータ教室等での児童生徒等による複製」,「遠隔授業における教材等の送信」,「インターネット試験等での試験問題の送信」,「ボランティア等による拡大教科書の作成」が著作権者に無断で行えることになりました。

 今後の課題としては,「実演家」や「放送局」の権利の拡大(新しい条約の策定について国際的に検討されています),著作権法の単純化などがあり,文化審議会(著作権分科会)において検討を進めているところです。


(2) 「円滑な流通」の促進

 インターネットの普及は,著作物のデジタル化とあいまって,著作物の流通環境を劇的に変化させています。インターネット時代の著作物の流通は,その明るい可能性と同時に多くの解決すべき課題を抱えている状況です。このような状況にあって,文化庁では,以下のような著作物の流通促進施策を推進しています。

{1}「自由利用マーク」の策定

 インターネット上などで提供される著作物について,その円滑な利用を図るため,自由利用が可能な範囲をあらかじめ権利者が明示する「自由利用マーク」を平成15年2月に策定し,その普及に努めています。

自由利用マーク

{2}インターネット時代の著作物などに係るビジネス創出支援

 我が国発の新ビジネスとして世界的にも注目されている「着メロ」ビジネスの市場規模は,今や1,000億円を超えると推定されています。「着メロ」は,携帯電話を利用した著作物の流通に,適切に「保護技術」,「課金システム」,「契約システム」を組み合わせることで新市場創出に成功した代表例ですが,文化庁では,これに続くビジネスモデルが生まれるよう,調査研究を行うなどの支援を行っています。

{3}「バーチャル 著作物マーケット」の実証実験

 社会に点在する情報や人を結び付けることができるのがインターネットの最大の特徴ですが,この特徴を生かし,著作権者と利用者の出会いの場を作り,さらにインターネット上で利用の契約を行い,著作物の受渡しができるシステムの実証実験を行っています。

バーチャル著作物マーケット


* バーチャル

「仮想の」という意味。


(3) 「国際的課題」への対応

 デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い,パソコン1台あれば著作物のコピーなどが簡単にできるようになるとともに,インターネットを通じて,国境を越えた著作物の流通が活発に行われるようになりました。

 文化庁では,このような現状に対応した適切な海賊版対策と国際ルールの構築を積極的に推進しています。

{1}アジア地域における海賊版対策の強化

 近年,音楽やゲームソフトなどの我が国の著作物に対する関心が高まる一方で,特にアジア地域において,我が国の著作物の海賊版(違法複製物)の製造・流通が大きな問題になっています。

 海外における海賊版の製造・流通を防ぐためには,我が国の権利者が,自ら侵害発生地において迅速に対抗措置を講ずることができるよう,環境を整備することが不可欠です。このため,文化庁としては,海賊版対策について,

○WIPO(世界知的所有権機関)などの国際機関との協力を通じた侵害国の法整備への働き掛け
○侵害国との二国間協議や,民間団体によって設立された「コンテンツ海外流通促進機構 *1 」との連携・協力などを通じた侵害国での取締りの要請
○権利行使のための手引書の作成など,侵害国における我が国権利者の権利行使の支援といった関係施策を積極的に講じています。

{2}国際的な著作権等制度の整備への参画等

 著作物などは,貿易やインターネットを通じた送信などにより国境を越えて利用されるものであるため,多くの国において,条約に基づく国際的な保護が行われています。我が国も,「ベルヌ条約」,「ローマ条約」,「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」に加え,インターネット時代に対応した「著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)」,「実演家及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)」などを締結しています。

 また,我が国は,現在WIPOで検討が進められている「視聴覚的実演 *2 」や「放送機関 *3 」に関する新条約の議論を推進するために積極的な役割を果たすとともに,アジア諸国を中心に,WCTやWPPTをはじめとするWIPO新条約への加入を働き掛けています。


*1 コンテンツ海外流通促進機構

 著作権関係団体やコンテンツ産業などが積極的に海外に事業展開を図るとともに,海外における海賊版対策を講じていくための民間組織。文化庁と経済産業省を事務局として平成14年8月2日に発足(参加団体:関係17団体,企業等20社(15年6月現在))。


*2 視聴覚的実演に関する検討

 人格権のように,俳優など映像と関係する実演家の権利の保護について,平成10以降検討している。


*3 放送機関に関する検討

 平成10年以降,放送機関の権利を,インターネット時代に対応して保護すべく検討している。


(4) 「著作権教育」の充実

 インターネットやパソコンなどの,著作物の「創作手段」,「利用手段」が急速に拡大・普及しているため,著作権に関する知識や意識は,多くの人々にとって不可欠なものとなっています。このため,文化庁では,これまで行ってきた講習会の開催などの事業を大幅に拡大し,平成14年度から,著作権に関する総合的な普及啓発事業である「著作権学ぼうプロジェクト」を展開しています。

 学校教育に関しては,平成14年度から実施された「新学習指導要領」において,中学校・高等学校の教育内容として「著作権」が明記されたことを受け,各学校での教育を支援するため,教職員向けの「著作権講習会」を実施するとともに,「楽しみながら学べる学習教材」や「中学生向けマンガ」などの教材などを開発し,提供しています。また,小・中・高等学校を対象として,著作権教育の具体的な手法を総合的に研究開発し,全国の学校に提供していくため,「著作権教育研究協力校」において,著作権教育の研究を行っています。

 学校外での教育事業に関しては,従来からの「著作権講習会」(一般国民・都道府県事務担当者・図書館向けなど)の拡充に加えて,多様な現場からの様々な質問にネットワークを通じて答える「著作権なんでも質問教室(仮称)」の構築を進めています。


(5) 「司法救済制度」の充実

 著作権などの侵害については,基本的に,権利者自らが,侵害の事実を発見・立証する必要がありますが,情報通信技術の進展に伴う著作物などの創作・利用形態の多様化が進むに従い,権利侵害行為や損害額の立証などが困難になってきています。

 平成15年通常国会では,権利者による「侵害行為の立証負担」を軽減するため,被告が侵害行為を否認する場合には,単純に否認するだけでなく,被告自身が自己の行為の具体的態様を説明しなければならないこととする制度や,権利者による「損害額の立証負担」を軽減するため,「海賊版の販売数」×「正規品の単位当たり利益」を損害額として算定できるような,新たな「損害額算定制度」を導入する法改正が行われました。今後の課題としては,罰則の強化や更なる損害賠償制度の強化などがあり,文化審議会(著作権分科会)において検討を進めているところです。


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