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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第8章  スポーツの振興と青少年の健全育成に向けて
第6節  健康教育の充実
1  新たな心と体の健康問題への対応



(1) 心の健康問題への対応

{1}教科における指導

 学校では,心身の調和のとれた発達を図るため,心の発達や心身の相関関係,自己形成などの内容について,従来から体育・保健体育科で指導しています。

 しかしながら,近年,不登校やいじめ,暴力,性の逸脱行動,薬物乱用などの問題の深刻化,不安感やストレスの高じている状態が見られることなど児童生徒の今日的な課題に対応して,心の健康に関する指導を充実する必要性が指摘されていることを考慮し,現行の学習指導要領では,児童生徒の発達段階を踏まえ,不安や悩み・ストレスへの対処など,心の健康に関する指導内容を充実しました。

{2}健康相談活動の充実

 近年,学習面,友人関係,家庭などについて様々な悩みを抱えるとともに,これらを背景として,心因性の腹痛,不快感などといった種々の症状を訴える児童生徒が増加しています。また,災害や重大な事件・事故の後における児童生徒などの心のケアについて,適切な対応を行う必要があります。

 養護教諭は,児童生徒の身体的不調の背景に目を向けることを通じて,子どもの発する様々なサインに気付くことができる立場にあります。薬物乱用,性の逸脱行動,いじめ,不登校などの心の健康問題に関する現代的課題の深刻化を考えると,養護教諭が行う健康相談活動はますます重要となってきています。このため,文部科学省では,養護教諭などを対象に保健室相談活動研修会などを開催しています。また,学校における健康相談活動に対する都道府県教育委員会などの支援体制を整備する事業を行っています。

 さらに,近年,自然災害だけでなく,様々な人為災害が続発していることから,平成9年度に作成した教師用の指導資料「非常災害時における子どもの心のケアのために」を15年8月に改訂し,PTSD(外傷後ストレス障害)など,児童生徒の心の健康問題への対応を行っています。

{3}心の健康と生活習慣に関する調査研究

 児童生徒について,ストレスの増大や不安・悩みなどの心の健康問題が深刻化している状況に関して,生活習慣の乱れとの関連性が指摘されています。このため,文部科学省では,平成11年度から「心の健康と生活習慣に関する調査研究事業」を実施しており,児童生徒の心の健康と生活習慣との関連について,学識経験者の協力を得て調査研究を行い,14年3月に報告書を作成しました。


(2) 薬物乱用防止教育等の充実

 青少年の薬物乱用の問題については,中・高校生の覚せい剤事犯検挙者が200人を超えた平成8〜9年と比べて減少傾向にあるものの,依然として予断を許さない状況にあります。また,14年における中・高校生のシンナー等乱用事犯検挙者数も800人を超えています (図2-8-4) 。政府は,内閣総理大臣を本部長とする薬物乱用対策推進本部を設置し,10年5月「薬物乱用防止五か年戦略」に引き続き,15年7月「薬物乱用防止新五か年戦略」を策定し,政府全体として対策を講じることとしました。

図2-8-4 中・高校生覚せい剤事犯検挙者数及び未成年の比率

 文部科学省では,すべての高等学校と中学校において,年1回は薬物乱用防止教室を開催するとともに,地域社会が一体となってこの問題に取り組むよう,都道府県教育委員会などに指導を行っています。また,児童生徒用教材の作成・配布や競技場などの大型ディスプレイを活用した広報啓発活動の推進,ホームページの開設(http://www.hokenkai.or.jp/3/3-1/3-1.html)などを行い,薬物乱用防止教育の充実に努めています。

 また,文部科学省が実施した喫煙に関する調査によると,児童生徒の多くが喫煙の健康への有害な影響について知っている一方で,喫煙への関心は少なくないため,学校における喫煙防止教育の一層の充実を図る必要があります。

 このため,児童生徒の喫煙防止対策として,学校教育において,未成年の段階から喫煙をしないという態度を育てることなどを目的に,児童生徒の喫煙防止教育教材を作成し,その対策を推進しています。

競技場などの大型ディスプレイを活用した広報啓発映像


(3) 性教育の充実

 学校における性教育は,人間尊重の精神を基盤として,児童生徒の発達段階に応じて性に関する科学的知識を理解させるとともに,児童生徒が健全な異性観を持ち,これに基づいた望ましい行動がとれるようにすることを目標としています。性教育の推進に当たっては,{1}発達段階に即した内容であること,{2}教育的に価値のある内容であること,{3}家庭・地域の理解が得られる内容であることなどに留意する必要があります。

 現行の学習指導要領では,児童生徒の発育・発達の早期化などに対応するため,小学校の体育科で新たに第3・4学年から保健領域の指導をすることとし,中学校の保健体育科で新たにエイズ・性感染症を取り上げることを明記するなど,指導内容を充実しました。

 さらに,文部科学省では,{1}小・中・高校生用エイズ教育教材の作成,{2}教職員などを対象としたシンポジウムなどの開催,{3}地域におけるエイズ教育・性教育推進のための実践研究,{4}エイズ教育・性教育に関する情報ネットワークの整備などの施策を推進しています。


(4) 感染症対策の充実

 近年,学校における結核の集団感染,腸管出血性大腸菌O157による食中毒,インフルエンザ,風疹などの流行などが見られます。また,若い世代の性感染症が蔓延するとともに,SARS(重症急性呼吸器症候群)などの新しい感染症が出現しており,緊急に対応することが必要となっています。

 文部科学省では,学校における結核対策のためのパンフレットを新中学1年生と新高校1年生全員に配布するとともに,性感染症予防に関する教師用参考資料を高等学校教員に配布するなど,学校における感染症対策の充実を図っています。


(5) 学校環境衛生問題への対応

 近年,新築・改築後の住宅やビルなどにおいて,住宅の高気密化や化学物質を放散する建材・内装材の使用などにより,化学物質による室内空気汚染などが生じ,居住者などに種々の症状を引き起こすいわゆる「シックハウス症候群」が問題となっています。

 文部科学省においては,学校における室内空気中化学物質に関する実態調査の結果なども踏まえ,平成14年2月に学校環境を衛生的に維持するためのガイドライン(指針)である「学校環境衛生の基準」の改訂を行い,ホルムアルデヒドなどの4物質の室内濃度について検査事項に盛り込み,一定の濃度を超えた場合には換気など適切な事後措置を講ずるよう指導しています(参照: 第2部第11章第1節2 )。


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