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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第6章  研究開発の戦略的重点化
(2)  重点4分野の研究開発の推進
(3)  情報通信分野の研究開発の重点的推進


 情報通信分野における研究開発の進展は,情報通信産業やハイテク産業など知識集約的な産業の創出・拡大や,ものづくり技術の新たな展開など既存産業の革新のために重要なものです。また,電子商取引,電子政府,在宅勤務,遠隔医療,遠隔教育の実現・普及など,産業のみならず日常生活までの幅広い社会経済活動に大きな変革をもたらすもので,国民が安心して安全な生活を送るための重要な基盤となりつつあります。

 第2期科学技術基本計画において,情報通信分野は,急速に進展し,高度情報通信社会の構築と情報通信産業やハイテク産業の拡大に直結する分野として,優先的に研究開発資源を配分すべき分野の一つとされています。また,平成13年9月に総合科学技術会議が策定した「分野別推進戦略」では,次のような事項が重点領域として示されました。

〈重点領域〉
{1}ネットワークがすみずみまで行き渡った社会に向けた研究開発領域
{2}次世代のブレークスルー *2 をもたらし将来の新しい産業の種となる領域
{3}広範な研究開発分野の基盤技術(研究開発の情報化) 等

 さらに,総合科学技術会議では,その後の情報通信分野におけるITの基盤整備からITの利活用へといった環境の変化を踏まえ,ITシステム利用促進のための戦略的研究開発の推進などを内容とする「情報通信研究開発の推進について」(平成15年5月総合科学技術会議)を策定しています。

 そのほか,IT戦略本部では,我が国が世界最先端のIT国家となることを目指し,「ITの基盤整備」に重点を置き,IT分野の推進戦略を示した「e-Japan戦略」(平成13年1月IT戦略本部),「社会全体が元気で,安心して生活でき,新たな感動を享受できる,これまで以上に便利な社会」を目指して,ITの利活用に重点を置いた「e-Japan戦略II」(15年7月IT戦略本部)などが策定されており,「次世代の知を生み出す研究開発の推進」などが重要であるとされています(参照: 第2部第10章第2節1 )。


*2 ブレークスルー

 科学技術などの進歩を阻んでいた壁を突き破ること。


(1) 研究開発の推進方策について

 情報通信分野の「分野別推進戦略」を受け,平成14年6月に,科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会において,「情報科学技術に関する研究開発の推進方策について」が取りまとめられました。この中で,研究開発を進める上では,

{1}新しい時代に即した研究領域の創出,研究スタイルの構築
{2}社会の要請に的確に応えることのできる高度で多様性のある研究者・技術者の養成
などに配慮すべきであり,文部科学省としては,
○基礎基盤的領域の研究ポテンシャル(潜在能力)を活用した社会への積極的貢献
○高度な研究を支える情報科学技術を活用した基盤の高度化・高機能化
○高度で多様性のある研究人材の養成・確保
などの役割を果たすべきとされています。
(2) 情報通信分野における取組について

 文部科学省では,前述の情報通信分野の分野別推進戦略,研究開発の推進方策などに基づき,以下の施策を実施しています。

{1}ネットワークがすみずみまで行き渡った社会に向けた研究開発領域

 我が国が優位にある技術(モバイル,光,デバイス技術など)を核に,産学官の強力な連携の下で世界に先行して,ハード技術とコンテンツ *1 を含むソフト技術を一体とした「高速・高信頼情報通信システム」を構築することにより,研究成果の社会・経済への迅速な還元を目指すことが必要とされています。このため,

(ア)世界最高水準の高度情報通信システム形成のための鍵となるソフトウェア開発を実現させ,いつでも,どこでも,だれでも安心して参加できるIT社会を構築するため,社会の基盤となるソフトウェアの研究開発と研究者養成を一体的に推進する「e-Society基盤ソフトウェアの総合開発」
(イ)大学などにおける情報通信技術研究のうち,次世代モバイルインターネット端末の開発などの実用化が期待できる技術などについて研究を行う「世界最先端IT国家実現重点研究開発プロジェクト」
を推進しています。

*1 コンテンツ

 情報の内容,中身。「Webコンテンツ」と言った場合には,インターネット上のWebサーバーに掲載されているテキストやグラフィックの内容を指す。

{2}次世代のブレークスルーをもたらし,将来の新しい産業の種となる領域

 次世代ヒューマンインターフェース *2 技術などを用いた次世代情報通信技術及び宇宙開発(通信),ナノ技術,バイオインフォマティクスなどの融合領域において,他分野との連携の下で行う高度な情報通信技術の研究開発を推進することが必要とされています。このため,山間地,ビル陰,周辺海域も含め全国をほぼ100%カバーする,移動体向けブロードバンド通信・精密3次元測位サービスの提供のために必要な技術開発を行う「準天頂衛星システムによるブロードバンド通信・放送・測位環境創出」などを推進しています。

 このほか,科学研究費補助金特定領域研究に「ITの深化の基盤を拓く情報学研究」という研究領域を設け,情報分野において戦略的に重要な研究を重点的に推進しています。

{3}広範な研究開発分野の基盤技術(研究開発の情報化)

 欧米に比べて遅れている科学技術データベースの整備,研究所・大学を高速ネットワークで結び,遠隔地で共同研究が行えるスーパーコンピュータネットワークなどの技術開発・整備,計算科学技術に関する研究開発などを行うことが必要とされています。このため,

(ア)分散した高性能コンピュータを高速ネットワークで結び,100テラフロップス級(1秒間に100兆回)の計算処理能力を持つ世界水準の高速グリッド・コンピューティング環境を構築し,また,これを活用して,ナノ分野などの他分野と情報通信分野との融合領域研究の加速,産学官連携の推進などを図る「超高速コンピュータ網形成プロジェクト(ナショナル・リサーチグリッド・イニシアティブ)」
(イ)研究開発現場で高速研究情報ネットワークなどの高機能ITを活用することにより,スーパーコンピュータネットワーク上でのリアル実験環境の実現など,研究開発スタイルを変革し,新たな研究分野(融合研究領域など)の創出を目指す「『eサイエンス』実現プロジェクト」
(ウ)先端的研究機関を最速10Gbpsの回線で接続する世界最速の研究ネットワークであるスーパーSINETの整備
(エ)国立大学における電子ジャーナルの体系的な導入,大学などから発信される多様な研究情報から必要な情報を効果的に検索することを可能とする「学術コンテンツポータルシステム」の開発
などを推進しています(参照: 第2部第10章第2節5 )。

 このほか,国立情報学研究所(平成16年4月より大学共同利用機関法人情報・システム研究機構。以下同じ)などにおいて,基礎から応用にわたる総合的・先端的な研究を行っています。


*2 ヒューマンインターフェース

 コンピュータと人間が接して情報をやりとりするための機器等のこと。


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