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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第2章  初等中等教育の一層の充実のために
第9節  魅力ある優れた教員の確保
1  教員の資質能力の向上



(1) 教員の養成・採用・研修の一体的な取組による資質能力の向上

 学校教育の充実は,その直接の担い手である教員の資質能力に負うところが極めて大きいと言えます。特に,これからの教員には,変化の激しい時代にあって,子どもたちに自ら学び,自ら考える力や豊かな人間性などの[生きる力]を育成する教育を行うことが期待されており,そのためにも,魅力ある優れた教員を確保していくことがますます重要となっています。

 こうした教員の資質能力は,養成・採用・研修の各段階を通じて,生涯にわたり形成されていくものであり,その向上のためには,これらの各段階を通じた関連施策の一体的な推進が必要です。このような観点から,文部科学省では次のような取組を進めています。

{1}教員養成

 教員養成については,使命感や子どもへの愛情を持ちながら,現場の課題に適切に対応できる,力量ある教員の養成を図るため,平成10年の教育職員免許法などの一部改正により,教え方や子どもとのふれあいを重視し,教員の学校教育活動の遂行に直接資する「教職に関する科目」の充実など,大学における教員養成カリキュラムの見直しを行いました。この新しいカリキュラムは,12年度の大学入学者から全面的に適用されています。

 また,学校現場のニーズを踏まえた教員養成を行うため,教員を養成する大学と教育委員会との連携が進められています。

{2}教員採用

 教員採用については,採用の段階で,教員にふさわしい,個性豊かで多様な人材を幅広く確保していく観点から,各都道府県教育委員会などにおいて,学力試験の成績のみならず,面接試験や実技試験の実施,様々な社会経験の適切な評価などを通じて,人物評価を重視する方向で採用選考方法が改善されてきています( 表2-2-2 )。また,条件附採用期間制度を適正に運用し,新規採用者の教員としての適格性を見極めるよう,各教育委員会の取組を促進しています。

表2-2-2 平成15年度公立学校教員採用選考試験(平成14年度に実施)における改善状況

{3}教員研修

 教員には,日々の教育実践や教員自身の研鑽などにより,絶えず自らの力量の向上に努めることが求められています。また,任命権者である都道府県教育委員会などにおいては,適切な研修の機会を提供することが必要とされています。このため,教員がその経験,専門分野,職能などに応じて必要な研修を受けることができるよう,初任者研修などの各種研修を体系的に整備しています。

 また,平成13年4月に設立された教員研修センターは,国が実施すべき研修事業を一元的に実施するために,各都道府県などにおいて指導的役割を果たすべき教員を対象とした研修や,学校教育に関する喫緊の課題を中心とした内容の研修を実施しています( 図2-2-12 )。さらに,特に「主な教員の資質向上」を図る施策について,以下の取組を進めています。

図2-2-12 教員研修の実施体系

○10年経験者研修の実施

 平成14年から施行されている新学習指導要領の下で,児童生徒に基礎基本を確実に身に付けさせ,自ら学び,考える力などを育成し,[確かな学力]の向上を図るとともに,心の教育の充実を図るためには,実際に指導に当たる教員にこれまで以上の指導力が必要とされていることから,14年6月の教育公務員特例法の一部改正により,10年経験者研修が制度化されました。これは,小学校などの教員に対して,在職期間が10年程度に達した後の相当の期間内に,個々の能力・適性などの評価を踏まえた研修を実施することを各任命権者に義務付けるものであり,15年4月から開始されています。

○組織マネジメント研修

 これからの教員は,総合的な管理運営能力を身に付ける必要があります。また,学校運営の改善のため,学校に組織マネジメント(「管理」や「経営」)の発想を導入し,校長が独自性とリーダーシップを発揮することが期待されています。

 このような観点から,文部科学省では,学校経営者として必要な組織マネジメント研修のモデルとなるカリキュラムを開発し,各都道府県教育委員会などに提供しています。

○長期社会体験研修の充実

 教員も社会の一員であることに変わりはありません。特に,今日のように社会の変化が激しい時代にあって,教員には,様々な経験を通じて幅広い視野を持つことが求められています。

 長期社会体験研修は,このような観点から,教員を民間企業,社会福祉施設,社会教育施設などの学校以外の施設などへおおむね1か月から1年程度の長期にわたり派遣して行われる研修で,近年,全国で盛んに行われるようになってきています( 表2-2-3 )。

 文部科学省では,平成13年度から,各教育委員会の取組を支援することにより,教員の長期社会体験研修の充実を図っています。

表2-2-3 教員の長期社会体験研修

○大学院修学休業制度

 平成13年4月に,教員の自主的・主体的研修活動を支援するために創設された大学院修学休業制度の運用が始まりました。この制度を活用することで,公立学校の教員が,一定の期間休業し,教職経験を通じて培った自らの課題意識を基に,大学院で学習することが可能となりました。14年4月1日現在,348人がこの制度を利用しています。


(2) 教員の実績評価と処遇等への反映

 今後の学校現場では,やる気のある教員が,積極的に自らの学習指導や生徒指導の改善に努めるとともに,学校運営に参画することが求められており,教員のやる気と能力を引き出すことこそが,保護者などの信頼にこたえる学校運営を行うために特に重要な課題となっています。このような取組を促進するためには,努力を積み重ね,大きな成果を挙げている教員の労に報いていくことが必要です。

 しかしながら,多くの地域では,これまで実施されてきた教員評価の結果が,必ずしも適切かつ十分に処遇などに反映されてこなかったという現状があります。

 このため,文部科学省では,教員の評価システムの改善に向けた取組を進めるため,平成15年度から,すべての都道府県・指定都市教育委員会に委嘱して,実践的な調査研究を行っています。


(3) 指導上の問題がある教員への厳格な対応

{1}いわゆる「指導力不足教員」への対応

 学校教育において,教員として適格な人材を確保することは重要な課題です。特に,児童生徒との適切な関係を築くことができないなどの指導力が不足している教員の存在は,児童生徒に大きな影響を与えるのみならず,保護者などの公立学校への信頼を大きく損なうものです。

 このため,各都道府県・指定都市教育委員会においては,いわゆる指導力不足教員に対し,継続的な指導・研修を行う体制を整えるとともに,必要に応じて免職するなどの分限制度を的確に運用することが必要です。文部科学省では,平成13・14年度の2か年にわたり,すべての都道府県・指定都市教育委員会に委嘱して調査研究を行い,15年9月1日現在で33教育委員会で新しい人事管理システムが運用されています。

 また,平成13年6月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を一部改正し,都道府県教育委員会は,市町村立の小・中学校等の教員のうち,分限処分に至るほどではないが,児童生徒に対する指導が不適切であることなどの要件に該当する者を,教壇に立たせないように免職し,引き続き当該都道府県の教員以外の職(例えば,教育委員会の事務局の職員など)に異動できるようにしました(14年1月より施行)。

{2}非違行為を行う教員に対する厳正な対処

 教員による不祥事は,教員に対する信頼を失わせ,ひいては学校教育全体に対する信頼を著しく損なうものであり,決して許されるものではありません。

 このため,教員による不祥事が生じないよう,各教育委員会においては,教員の服務規律の徹底を図ることや,採用方法や研修の在り方について一層工夫を凝らす必要があります。特に,児童生徒に対するわいせつ行為などについては,教員として絶対に許されない行為であることから,原則として,このような行為を行った教員は懲戒免職にするなど,懲戒処分の厳正な適用を図ることが必要です( 表2-2-4 )。

 また,教育職員免許法の一部改正により,懲戒免職処分を受けた教員の教員免許状は失効するなど,教員免許状の失効・取上げに関する措置の強化が行われました(平成15年1月施行)。

図2-2-4 公立学校教育職員の懲戒処分等の状況(平成14年度)


(4) 学校教育における社会人の活用

 幅広い経験を持ち,優れた知識や技術などを有する社会人や地域住民が,様々な形で学校教育に参加することは,社会に開かれた学校づくりを推進し,学校教育の多様化・活性化を図るために極めて重要です。文部科学省では,次のような施策を進めています。

{1}社会人講師の活用等

 優れた知識や技術などを有する社会人や地域住民が,教員免許状を持っていなくとも,都道府県教育委員会への届出により,教科や「総合的な学習の時間」の一部などを担当し,教壇に立つことができる「特別非常勤講師制度」については,年々活用が広がっており,平成14年度の活用件数が,全国で1万7,650件となっています( 図2-2-13 )。

 また,心の教育の充実を図るため,この制度が,「心のせんせい」としても活用されています( 表2-2-5 )。

図2-2-13 特別非常勤講師制度の活用状況

表2-2-5 「心のせんせい」の事例(平成15年度)

 さらに,平成14年6月には,教育職員免許法を一部改正し,教員免許状を持たない優れた社会人などに都道府県教育委員会の行う教育職員検定により特別免許状を授与する「特別免許状制度」について,学校教育における社会人活用の一層の促進のために,授与要件を緩和するなどの改善を行っています。これにより,特別免許状の授与を前提とした社会人選考を行うなど,多様な社会経験や得意分野を持つ人材の教員への採用が一層進むことが期待されます。

 これらの施策と併せて,文部科学省では,平成13年度補正予算による「緊急地域雇用創出特別交付金」の活用などにより,16年度までに約5万人を目標に,教員の教科指導や進路指導などを支援する者として全国の学校で社会人の協力を求める「学校いきいきプラン」を推進しています。このプランの活用により,14年度では約2万7,000人の社会人が参画し,15年度では約3万人の社会人が,学校教育活動に参画する予定となっています。

{2}民間人校長等の登用

 校長・教頭に幅広く優れた人材を確保することを目的として,平成12年の省令改正により,教員免許状がなくても一定の要件を満たせば校長・教頭になることができるように,資格要件を緩和しました。これにより,15年4月現在までに公立学校において,教育に関する職に就いた経験がない校長が58名登用されており,民間企業などでの経験を生かして組織的・機動的な学校運営を実現し,学校情報を積極的に地域に提供することにより開かれた学校づくりを進めるなど,公立学校に新風を吹き込んでいます( 図2-2-14 )。

図2-2-14 教員出身でない者の校長任用実績


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