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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第2章  初等中等教育の一層の充実のために
第6節  障害のある児童生徒の可能性を最大限に発揮するための教育
1  特別支援教育の推進


 障害があることにより,通常の学級における指導だけではその能力を十分に伸ばすことが困難な子どもについては,その能力や可能性を最大限に伸ばし,自立し,社会参加するために必要な力を培うため,一人一人の障害の種類・程度などに応じ,特別な配慮の下に,適切な教育を行う必要があります。このため,障害の状態に応じ,盲学校・聾学校・養護学校や小・中学校の特殊学級,あるいは通級による指導 *1 において特別の教育課程,少人数の学級編成,特別な配慮の下に作成された教科書,専門的な知識・経験のある教職員,障害に配慮した施設・設備などにより指導が行われています。

 平成14年5月1日現在,盲・聾・養護学校の在学者と小・中学校の特殊学級の在籍者や通級による指導を受けている幼児・児童生徒の総数は約20万8,000人で,このうち義務教育段階の児童生徒は約16万5,000人であり,これは同じ年齢段階にある児童生徒全体の約1.5%に当たります。

 また,近年,児童生徒の障害の重度・重複化や多様化,学習障害(LD) *2 ,注意欠陥/多動性障害(ADHD) *3 などの児童生徒への対応や早期からの教育的対応に関する要望の高まり,高等部への進学率の上昇,卒業後の進路の多様化,社会のノーマライゼーション *4 の進展などの状況が見られます。

 平成14年12月には,15年度から24年度までの10年間に講ずべき障害者に関する施策の基本的方向について定める障害者基本計画が閣議決定され,15年度から19年度までの5年間に重点的に実施すべき具体的施策を定めた重点施策実施5か年計画が決定されました。障害者基本計画では,{1}一貫した相談支援体制の整備,{2}盲・聾・養護学校などの専門機関の機能の充実と多様化,{3}教員などの指導力の向上と先導的な指導方法の開発や体制などに関する研究の推進,{4}社会的・職業的自立の促進,{5}学校施設のバリアフリー化 *5 の促進などが含まれています。また,重点施策実施5か年計画では,障害のある子どもに対して,一貫して効果的な相談支援を行う体制や,小・中学校におけるLD,ADHDなどの児童生徒への教育的支援を行う体制を整備するための取組などが,具体的な目標やその達成年度とともに盛り込まれています。

 さらに,平成13年10月に設置された「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」は,15年3月に「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」を取りまとめました。この中では,障害の程度などに応じ特別の場で指導を行う「特殊教育」から,障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図ることを基本的な方向として,以下のような提言をしています。


*1通級による指導

 小・中学校の通常の学級に在籍し,比較的軽度の言語障害,情緒障害,弱視,難聴などのある児童生徒を対象として,主として各教科などの指導を通常の学級で行いながら,障害に基づく種々の困難の改善・克服に必要な特別の指導を特別の場で行う教育形態であり,平成5年度から行われている。


*2学習障害(LD:Learning Disabilities)

 基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する,推論する能力のうち,特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な障害を指すものである。その原因としては,中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが,視覚障害,聴覚障害,知的障害,情緒障害などの障害や,環境的な要因が直接の原因となるものではない。


*3注意欠陥/多動性障害(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)

年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力,衝動性,多動性を特徴とする行動の障害で,社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。一般に7歳以前に現れ,その状態が継続するもので,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。


*4ノーマライゼーション

 障害のある者も障害のない者も同じように社会の一員として社会活動に参加し,自立して生活することのできる社会を目指すという理念。


*5バリアフリー化

 障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去していくこと(障害者基本計画(平成14年12月24日閣議決定)より)。

今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)

(1)特別支援教育の基本的な仕組み

{1}「個別の教育支援計画」(多様なニーズに適切に対応する仕組み)

 障害のある子どもを生涯にわたって支援する観点から,一人一人のニーズを把握して,関係者・機関の連携による適切な教育的支援を効果的に行うために,教育上の指導や支援を内容とする「個別の教育支援計画」の策定,実施,評価(「Plan-Do-See」のプロセス)が重要。

{2}特別支援教育コーディネーター(教育的支援を行う人・機関を連絡調整するキーパーソン)

 学内,または,福祉・医療などの関係機関との間の連絡調整役として,あるいは,保護者に対する学校の窓口の役割を担う者として学校に置くことにより,教育的支援を行う人・機関との連携協力の強化が重要。

{3}広域特別支援連携協議会等(質の高い教育支援を支えるネットワーク)

 地域における総合的な教育的支援のために有効な教育,福祉,医療などの関係機関の連携協力を確保するための仕組みで,都道府県行政レベルで部局横断型の組織を設け,各地域の連携協力体制を支援することが考えられる。

(2)盲・聾・養護学校から特別支援学校の制度へ

 障害の重複化,多様化などを踏まえ,障害種にとらわれない学校設置を制度上可能とし,また,支援地域において,小・中学校に対する教育上の支援を行い,地域の特別支援教育のセンター的役割を果たす「特別支援学校(仮称)」の制度に改めることについて,具体的な検討が必要である。

(3)小・中学校の在り方−特殊学級から総合的な体制へ

 LD,ADHDなどの子どもを含め,「個別の教育支援計画」の策定の必要性とともに,特殊学級や通級による指導の制度を,通常の学級に在籍した上で必要な時間のみ「特別支援教室(仮称)」の場で特別の指導を受けることを可能とする制度にするための検討が必要である。

 このほか,最終報告では,特別支援教育体制を支える教員・組織などの専門性の強化などについても提言しています。

 文部科学省では,今後,特別支援教育に関する法制度やシステムの在り方について,具体的に検討することとしています。


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