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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第2章  初等中等教育の一層の充実のために
第1節  「確かな学力]と「豊かな心」を育成し,[生きる力]をはぐくむ学校教育を目指して
1  完全学校週5日制と新学習指導要領の実施


 これからの子どもたちに求められるのは,{1}知識や技能はもちろんのこと,これに加えて,学ぶ意欲や,自分で課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力などの[確かな学力]や,{2}他人を思いやる心や感動する心などの「豊かな人間性」,{3}たくましく生きるための「健康や体力」などの[生きる力]を身に付けることです( 図2-2-1 )。


(1) 完全学校週5日制の実施

{1}完全学校週5日制の趣旨

 平成14年度からすべての学校段階で実施されている完全学校週5日制は,学校・家庭・地域社会が一体となってそれぞれの教育機能を発揮する中で,子どもたちが自然体験や社会体験などを行う場や機会を増やし,[生きる力]をはぐくもうとするものです。

{2}学校・家庭・地域社会における取組の充実

 以上のような趣旨にかんがみ,各学校においては,授業時数の運用,指導内容・指導方法などの工夫改善を一層進めるとともに,地域社会・家庭との連携や学校全体の業務の具体的な見直しなどを行う必要があります。

 また,家庭や地域社会においては,異年齢や同年齢の子ども同士の遊びや多様な地域活動,自然とのふれあい,青少年団体の活動への参加,ボランティア活動などの様々な活動・体験の場や機会の充実を図ることが必要です。

図2-2-1 [生きる力]の概念図

 このような取組を進める観点から,文部科学省では,平成14年度から「新子どもプラン」を策定し,地域で子どもを育てる環境を整備し,親と子どもたちの様々な活動を振興するための施策を推進する一方で,土曜日に保護者が家庭にいない子どもたちに対し,学校などにおいて,遊び・スポーツ・文化活動などを実施するための経費について地方交付税措置が講じられているところです(参照: 第2部第1章第3節 )。


(2) 新学習指導要領のねらいを実現するための諸施策

{1}我が国の子どもの現状

 各種の国際調査や国立教育政策研究所教育課程研究センターが実施した全国的な学力調査の結果などによると,我が国の子どもの学力は,国際的に見て上位にあるものの,一部の教科や領域によっては,学習指導要領の目標や内容に照らして必ずしも十分とは言えない部分も見られます。また,それぞれの分野における達成状況とは別に,判断力や表現力が十分身に付いていないこと,学習意欲が必ずしも高くないこと,学習習慣が十分身に付いていないこと,さらに,学力に関連して,自然体験,社会体験,生活体験など子どもたちの学びを支える体験が不足し,人やものとかかわる力が低下していることなどの課題が明らかになっています。

{2}新学習指導要領について

 平成14年4月から全国の小・中・高等学校において順次実施されている新学習指導要領は,(1){1}で述べた完全学校週5日制の下で各学校が編成する教育課程の基準として,基礎・基本を確実に身に付けさせ,自ら学び,考える力などの[生きる力]をはぐくむことを基本的なねらいとしています。この新学習指導要領や,同時に導入された学習指導要領に示す目標に準拠した評価の特色は以下のとおりです。

(ア)教育内容の厳選

 学ぶ側にも,教える側にも,時間的・精神的なゆとりをもたらし,これを活用して,個に応じたきめ細かな指導,体験的・問題解決的な学習を行うことができるようにする観点から,教育内容を厳選しました。

(イ)選択学習の幅の拡大

 特色ある教育課程を編成する中で,子ども一人一人の興味・関心,進路希望などに応じて,個性・能力を存分に伸ばす観点から,選択学習の幅を拡大しました。

(ウ)個に応じた指導の充実

 学習指導要領に示す内容の理解が不十分な子どもには,何度も繰り返し指導するなどして基礎・基本を確実に習得させるとともに,既に十分習得できている子どもは,習った内容についての理解をより深めたり,更に進んだ内容について学んだりすることを可能とする観点から,個に応じた指導が一層充実するようにしました。

(エ)「総合的な学習の時間」の創設

 (2){1}で述べた子どもの現状を踏まえ,学ぶ意義を子どもたちに実感させ,次の学びへの意欲を高めると同時に,各教科などで学んだ知識を実感し体得させる時間として,また,体験的・問題解決的な学習に取り組む中で,思考力・判断力・表現力などを養う時間として,「総合的な学習の時間」を創設しました。この時間は,各学校が独自に教育目標・内容を設定するところに特色があります。

(オ)目標に準拠した評価の重視

 (ウ)で述べた「個に応じた指導の充実」を図る施策の一環として,子ども一人一人の学習状況を適切に評価し,それを次の指導に生かす観点から,観点別学習状況評価・評定について学習指導要領に示す目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)で行うこととしました。

 なお,学習指導要領は,すべての児童生徒に最低限指導すべき内容などを示しているものであり,児童生徒の状況に応じて必要がある場合は,ここに示されていない内容などについても指導することができます。このような取扱いは従来から変わっていませんが,(ア)で述べたように,共通に指導する内容を厳選し,各学校の裁量幅を拡大したことから,特色ある学校教育の実施がより一層可能になっています。

{3}初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について(中央教育審議会答申)

 平成15年10月7日に,中央教育審議会は「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」文部科学大臣に答申を行いました。この答申では,子どもたちに基礎・基本を徹底し,{2}で述べた[生きる力]をはぐくむことを基本的なねらいとする新学習指導要領のねらいの更なる定着を進め,その一層の実現を引き続き図るためには,学習指導要領に示された基礎的・基本的な内容を確実に身に付けさせることや,各学校の創意工夫を生かした特色ある取組を充実させること,各教育委員会が地域にふさわしい取組を進めることが必要であるという基本的な考え方に立ち,学校・家庭・地域社会や教育委員会・国がそれぞれの立場で取り組むべき当面の充実・改善方策を提言しています。

 答申では,まず,様々なとらえ方がなされてきた学力について,今後の社会の変容や子どもたちの現状などを踏まえ,子どもたちに今求められる学力は,[生きる力]の知的な側面である[確かな学力]であるとしています。具体的には,[確かな学力]には,知識や技能に加えて,学ぶ意欲や,自分で課題を見付け,自ら学び,主体的に判断し,行動し,より良く問題を解決する資質や能力などまでが含まれます。そして,学校・教育委員会・国において,単なる知識の量にとどまらない学力の総合的な状況を把握すべきことを強調しています。

 また,新学習指導要領のねらいの一層の実現を図るための具体的な課題として,(ア)学習指導要領の「基準性」の一層の明確化,(イ)教育課程を適切に実施するために必要な指導時間の確保,(ウ)「総合的な学習の時間」の一層の充実,(エ)「個に応じた指導」の一層の充実,(オ)教育課程及び指導の充実・改善のための教育環境の整備などを列挙し,それぞれについて具体的な改善方策を提言しています。

 なお,この提言の中には,学習指導要領の一部改正も盛り込まれていますが,これはいずれも,現行の記述ぶりが十分に理解されていなかったり誤解を招いたりしていることなどを踏まえ,これを分かりやすい形に改めることにより,その本来の趣旨の理解を図ろうとするものです。

答申に示された当面の充実・改善方策のポイント

1学習指導要領の「基準性」の一層の明確化

 個性を生かし,創意工夫あふれる教育を一層充実する観点から,学習指導要領の「基準性」に関する記述及び,[はどめ規定]等に関する記述の一部見直しを行い,学習指導要領の「基準性」を一層明確に示す必要があること。

 ※「基準性」とは,学習指導要領に明示されている共通に指導すべき内容を確実に指導した上で,子どもたちの実態を踏まえ,明示されていない内容を加えて指導することも可能という性格。

2教育課程を適切に実施するために必要な指導時間の確保

 各教科等で実質的に必要な指導時間が確保されなかったりしている事例もあることを踏まえ,各学校において授業時数の実績管理や学習状況の把握などの自己評価,改善を実施し,説明責任を履行するとともに,学校の実態に応じ,工夫(短縮授業の見直しなど)を行った教育課程を編成すべきこと(週時程・時間割の見直し,長期休業日の増減や二学期制等の工夫については,各教育委員会が教育的効果等を勘案して判断すべきこと)。

3「総合的な学習の時間」の一層の充実

 

「総合的な学習の時間」の取組の一部には,授業の「目標」や「内容」が明確でないために児童生徒の成長の姿を捉える評価が不十分な実態や,教員の最低限必要な指導を欠き,教育的効果が十分上がっていない取組も見られることを踏まえ,学習指導要領の「総合的な学習の時間」に関する記述を見直し,その趣旨や各教科等の学習内容との相互の関係や学年間・学校段階間の連携等の必要性を明示する必要があること。

4「個に応じた指導」の一層の充実

 学校の実態や指導の場面に応じて効果的な指導方法を柔軟かつ多様に導入し,個に応じた指導を一層充実する観点から,学習指導要領の記述を見直し,小学校における「学習内容の習熟の程度に応じた指導」及び小・中学校の「補充的な学習」,「発展的な学習」を,個に応じた指導の例示として追加する必要があること。

5教育課程及び指導の充実・改善のための教育環境の整備等

 以上のような改善策を実現可能なものとするためには,{1}各教育委員会及び国による様々な支援,{2}保護者や地域住民等との連携・協力,{3}新学習指導要領の趣旨やねらいについての継続的かつ積極的な周知等が不可欠であること。

 この答申を踏まえ,文部科学省では,平成16年度からの教育課程及び指導の充実・改善に反映させるため,学習指導要領の一部改正などの必要な施策を講じており,各学校においては,改訂の趣旨を踏まえた取組の充実が求められています。

{4}[確かな学力]の向上を目指した取組の充実

 文部科学省では,各学校や教育委員会における取組を支援する観点から,平成15年度において,以下のような施策を総合的に実施しています( 図2-2-2 )。

図2-2-2 [確かな学力]を飛躍的に向上させるための総合的施策

(ア)学力向上アクションプラン

 [確かな学力]の向上に向けた取組を支援するため,(i)個に応じた指導の充実,(2)学習意欲や学力の質の向上,(3)個性・能力の伸長,(iv)英語力・国語力の増進といった4本の柱から成る総合的な施策を推進しています。

 「個に応じた指導の充実」に関する主な施策として,拠点校における習熟度別指導などの実践研究の成果を全国の学校に普及させる「学力向上フロンティア事業」や,意欲・情熱を持った教員志望の学生などを放課後の学習支援に活用する「放課後学習チューターの配置等に係る調査研究」などを行っています。

 また,「学力の質の向上」を図る観点からは,学校種間の連携やNPOなどとの連携などに取り組むモデル地域の指定などを柱とする「『総合的な学習の時間』推進事業」や,学ぶことの楽しさを伝えることに長けた外部人材の学校現場への派遣,「学習内容と日常生活との関連性の研究」などを柱とした「学習意欲向上のための総合的戦略」などを実施しています。

 さらに,「個性・能力の伸長」を図る観点からは,理科,数学,英語など特定の分野における卓越した人材の育成に資する研究開発を行う「スーパーサイエンスハイスクール」や「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール」を拡充するほか,「英語力・国語力の向上」を図る観点から,すべての知的活動の基盤となる国語力の向上のためモデル地域を指定するなどしています。

(イ)教育の質を確保するための条件整備

各学校において[確かな学力]を向上させるための取組を行うためには,各種の条件整備も重要です。そのため,平成13年度より5か年計画で教職員定数改善を講じているほか,学校外の優秀な人材の協力を得るための「特別非常勤講師制度」や「学校いきいきプラン」の実施,教員を対象とした研修事業の充実などを行っています。


*学力向上アクションプラン

[確かな学力]向上を企図した複数の事実をまとめて,総合的に実施している施策群の意。


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