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第1部   創造的活力に富んだ知識基盤社会を支える高等教育〜高等教育改革の新展開〜
第4章  諸外国の高等教育改革
第1節  拡大と競争の時代


 21世紀は,知識や情報,技術力を基に,世界規模の経済競争に各国がしのぎを削る「知識基盤社会」になると言われています。本章で取り上げた欧米諸国や中国・韓国といった国々では,いずれもこうした観点から,大学に対し,この知の時代を切り拓く人材の養成と高度な研究活動をこれまで以上に期待し,積極的な改革を推し進めています。

 これら各国の高等教育改革には,共通した時代背景とともに,目指す高等教育の姿にもある程度の共通する方向が見られます。一つの見方として,それは「拡大」と「競争」という言葉で表すことができます。

 我が国やアメリカ合衆国(以下,アメリカと言う)は,比較的早く高等教育の普及拡大を遂げ,特にアメリカは,1980年代初めに高等教育進学率を60%台に乗せました。遅れていたイギリスやフランス,韓国も1980年代後半から拡大を始め,これらの国の中には今では我が国やアメリカを凌ぐ進学率を有する国もあります。高等教育のいわゆる大衆化や普遍化は,多くの国で実現されています( 図1-4-1 )。

 このように大きな規模を持つようになった各国の高等教育は,質の問題に直面しています。学生や教員だけでなく高等教育機関そのものも質の多様化が進む中で,教育研究の質を維持し,向上させるために,各国は様々な改革に取り組んでいます。各国特有の事情はあるものの,これらの改革に共通する手法が,競争的環境の形成です。アメリカでは,州立大学も法人として独立的に運営を行い,それぞれが競い合って学生や研究資金を獲得するシステムを既に歴史的に形成していると言えます。これに対し,国の管理や保護が強かったイギリス,フランス,ドイツの欧州諸国や中国,韓国などでは,この体制を転換し,規制緩和と大学の裁量権拡大の下で,大学が学生や社会の需要に対応する多様で個性的な教育研究を展開できるように誘導する改革が進んでいます。また,大学評価は,この規制緩和に必ず組み合わされており,評価を通じて改善を指導するとともに,評価結果を予算配分に反映させることで大学の活力を引き出す効果を期待しています。

 一方で,この流れとは別に,欧州の高等教育については,欧州連合(EU)による経済統合が進み,広範な労働市場ができつつある状況に対し,フランスやドイツをはじめ,共通の学位制度の導入など独自に発展してきた各国高等教育制度を変えようとする動きも見られます。こうした共通の枠組みの形成も,競争を促進する土壌作りになっています。

 また,拡大と競争は,高等教育財政にも新たな動きを促しています。これまで国や州が主として支えてきた欧米諸国や中国では,拡大に伴って増える財政負担をもはや公財政だけでは担えなくなり,無償制から有償制へ全面転換したイギリスや中国,一部有償化したドイツをはじめ,何らかの形で学生に負担を求めるようになっています。ただし,フランスのように増加する負担を公財政が担おうと努力している国もあります。

 しかし,限りある公的資金を効果的に使用しようとする政策は,どの国にも共通しています。上で述べた大学評価を予算配分に反映させる政策のほか,競争的資金の活用も重要な意味合いを持つものです。特に,中国や韓国の世界水準の大学作りを目指した特定大学への集中投資は,我が国のCOE政策とも通じるところがあります(参照: 第1部第2章第4節 )。

 こうした各国の高等教育の動きについて,以下の節からは,{1}規模と機会の拡大,{2}質の維持向上と活性化,{3}財政政策の変化の三つの観点から,国別に見ていきます。

図1-4-1 高等教育進学率の推移


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