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第1部   創造的活力に富んだ知識基盤社会を支える高等教育〜高等教育改革の新展開〜
第2章  高等教育改革の新展開
第2節  多様な社会の要請にこたえる
1  高度専門職業人の養成に向けて



(1) 専門職大学院制度

 専門職大学院は,社会が期待する高度な専門能力を有する人材育成機能を果たしていく観点から,従来の大学院とは異なり「高度専門職業人養成に特化した実践的な教育」を行う新たな大学院の仕組みとして平成15年度に設けられたものです。この制度を通じて,国際的,社会的にも通用する高度専門職業人の養成を質量共に充実させることを目指しています。

{1}背景

 社会経済の急速な変化や多様化,複雑化,高度化,グローバル化(地球規模化)などにより,大学院における高度専門職業人養成に対する社会のニーズ(需要)は高まっています。

 大学院教育における高度専門職業人養成については,昭和49年の大学院設置基準制定時に,修士課程の目的として明示され,また,平成元年の大学院設置基準の改正時には,博士課程についてもそれが明文化されるなど,その位置付けの明確化が図られてきました。しかしながら,これまでの大学院は,主に研究者養成を中心に展開されてきており,高度専門職業人養成の役割を果たす教育が不十分であるとの指摘もされてきました。

 このような状況の中,平成11年に,高度専門職業人養成に特化した教育を行う大学院修士課程として,専門職大学院制度の前身である「専門大学院制度」が創設されました。専門大学院は,経営管理,ファイナンス(金融),公衆衛生などの分野において設置され,国際的に活躍できる高度専門職業人養成のための教育が積極的に行われ,それぞれの分野で高い評価を受けてきました。

 しかしながら,この制度は,従来の大学院制度の枠内で制度設計がなされているため,課程の修了のためには研究指導を受け,研究成果の審査に合格することが必須であり,授業科目の体系的な履修を中心とした単位の修得(コースワーク)のみによる課程修了を認めることができないなど,制度設計上,高度専門職業人養成に徹しきれないとの指摘がされていました。

 このため,大学院における高度専門職業人養成のニーズが一層高まることが予想される中,様々な職業分野の特性に応じた柔軟で実践的な教育を可能にする新たな大学院の仕組みとして,平成14年8月の中央教育審議会答申において,「高度で専門的な職業能力を有する人材の養成」に特化した実践的な教育を行う「専門職大学院(プロフェッショナルスクール)」の創設が提言されました。この提言を受け,学校教育法の一部が改正され(15年4月1日施行),また,専門職大学院設置基準を制定(同日施行)することにより,高度専門職業人養成に特化した新たな大学院として,「専門職大学院制度」が整備されました(専門大学院は15年度に専門職大学院へ移行)( 図1-2-8 )。

図1-2-8 専門職大学院制度と専門職学位の創設

{2}特色

(ア)標準修業年限は2年を基本とすること(ただし,専門分野の特性に応じ特に必要と認められる場合は,1年以上2年未満)
(イ)修了要件として,一定期間以上の在学と各専攻分野ごとに必要となる単位の修得(コースワーク)のみを必須とし,論文や特定課題の研究成果を要しないこととすること
(ウ)事例研究,討論,現地調査など多様な実践的な教育を提供すること
(エ)各職業分野で豊富な経験を有する実務家を教員として相当数配置すること
などが制度の基本とされています。
テレビ会議システムを利用した授業風景(青山学院大学大学院国際マネジメント研究科)

 また,専門職大学院の一形態である法科大学院((2)において詳述)については,法学教育,司法試験,司法修習が密接に連携した「プロセス」としての法曹養成制度を構築する観点から,3年以上在学とするなど,いくつかの特例規定が設けられています。

{3}専門職学位の創設

 これまで,大学院(修士課程・博士課程)の修了者には,「修士」,「博士」の学位が授与されていましたが,専門職大学院(専門職学位課程)は,高度専門職業人養成に特化した新たな課程であるため,その修了者に対しては,これまでの学位とは別に,社会的な通用性や国際的通用性を考慮し,高度専門職業能力を修得したことを証明する学位として,修士,博士とは異なる「専門職学位」を授与することになります。

{4}専門職大学院の設置状況

 現在設置されている専門職大学院の分野としては,経営管理,公衆衛生などがあります。また,平成16年4月からは法科大学院がスタートします。さらに,将来的には,国家資格などの職業資格と関連した専攻分野や,社会的に特定の高度な職業能力を有する人材の養成が必要とされている専攻分野,国際的に共通の水準の人材養成が必要とされるような分野において開設されることが期待されます (表1-2-1)

表1-2-1 専門職大学院の設置状況


1 法科大学院

 現代の我が国社会においては,経済・金融の国際化の進展や,人権,環境問題などの地球的課題や知的財産権,医療過誤などの専門的知識を要する法的紛争が増加することが見込まれ,国民生活の様々な場面において法曹の需要が量的に拡大するとともに,質的にもますます高度化,多様化することが予想されています。これらに対応するために,法曹の「質」を担保しつつ法曹人口を大幅に増加させることが喫緊の課題となっています。

{1}背景

 平成11年7月に,「21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし,国民がより利用しやすい司法制度の実現,国民の司法制度への関与,法曹の在り方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する」ことを目的として,内閣の下に司法制度改革審議会(以下「審議会」と言う)が設置されました。審議会は,2年間で60回を超える会議での議論を経て,13年6月に司法制度改革審議会意見(以下「審議会意見」と言う)を内閣に提出しました。

 審議会意見では,「国民の期待に応える司法制度の構築」,「司法制度を支える法曹の在り方」,「国民的基盤の確立」という三つの柱が掲げられました。その上で,法曹養成について,司法試験における競争の激化により,学生が受験予備校に大幅に依存する傾向が著しくなり,「ダブルスクール化」,「大学離れ」と言われる状況を招いており,法曹となるべき者の資質の確保に重大な影響を及ぼしていることを指摘し,司法試験という「点」のみによる選抜ではなく,法学教育,司法試験,司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度の中核的教育機関として法科大学院を位置付けました。政府においても,同月,審議会意見を最大限尊重して司法制度改革に取り組むことが閣議で決定されています( 図1-2-9 )。

表1-2-9 法科大学院構想

{2}具体的な制度設計

 このような中で,平成13年8月に中央教育審議会大学分科会に法科大学院部会(部会長:佐藤幸治近畿大学法学部教授)が設置され,同年12月に新たに内閣に設けられた司法制度改革推進本部とも連携しつつ,法科大学院の大学院としての制度設計に直接かかわる部分である,教員組織,教育内容・方法,入学者選抜などを中心に議論を行い,14年8月に「法科大学院の設置基準等について(答申)」(以下「答申」と言う)をまとめ,法科大学院の具体的な在り方が提言されました。これを受けて,15年3月31日には,法科大学院に係る設置基準を公布しました。

 また,前述の学校教育法の改正と同時に,「司法試験法」及び「裁判所法」の一部が改正されるとともに,「法科大学院における教育と司法試験等との連携等に関する法律」が制定されました。これにより,法曹養成の基本理念,法科大学院における教育の充実,法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の確保,新司法試験の方法,試験科目などが定められ,「プロセス」としての法曹養成制度が具体的に整備されました。

 さらに,法科大学院において,多様かつ広範な国民の要請にこたえることのできる優れた資質を有する多数の法曹を養成するためには,法曹としての実務に関する教育の実効性の確保を図る必要があります。このため,平成15年4月に成立した「法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律」によって,裁判官や検察官などを法科大学院の教員として派遣する制度が整備されたところです。

法科大学院の特色

{3}今後の予定

 平成16年度開設予定の法科大学院の設置認可(計画)については,15年7月に文部科学大臣から大学設置・学校法人審議会に諮問をし,教育課程,教員組織などの審査を行い,答申がなされました。それに基づいて68大学の設置が認可されました。

 各法科大学院においては,設置認可後に,面接,小論文などの個別試験を実施し,平成16年4月には学生を受け入れることになります。


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