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第1部   創造的活力に富んだ知識基盤社会を支える高等教育〜高等教育改革の新展開〜
第1章  高等教育改革はどこまで進んだか
第2節  教育の機能を高める
1  学部教育の改善・充実



(1) 大学を取り巻く社会状況の変化

 大学,特に学部段階においては,大学進学率の上昇や高等学校教育の多様化,社会人や留学生の増加などにより,学生が多様化しています。また,知識基盤社会への移行を背景に大学に対する社会的要請も大きく変化し,かつ多様化しています。大学は,このような不断の変化を常に的確に受け止め,カリキュラムや教育方法を弾力的かつ機動的に改善し続けていく必要があります。文部科学省においても,様々な手段を通じて,大学における教育内容・方法などの改善を促しています。


(2) 教育内容の在り方

 大学の教育課程に関する法令上の規定としては,

○大学は,その教育上の目的を達成するために必要な授業科目を開設し,体系的に教育課程を編成すること
○大学は,教育課程を編成するに当たっては,学部などの専攻についての専門の学芸を教授するとともに,幅広く深い教養と総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵養するよう適切な配慮をすること
の二つが大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)に定められているのみです。平成3年までは大学設置基準において,大学の開設する授業科目を「一般教育科目」,「専門教育科目」,「外国語科目」,「保健体育科目」に区分すべきことや,それぞれの科目について卒業までに修得すべき単位数などを定めていました。しかし,個々の大学が社会の要請に適切に対応しつつ,より一層特色ある教育研究を展開することができるようにするため,これらの規定を廃止しました。その代わりに,上記の二つを規定し,また,卒業までに修得すべき単位数について,各科目ごとではなく,全体として124単位以上で大学の定める単位数を修得することとしました。これ以降,各大学におけるカリキュラム改革が順次進められ,3年の改正時から現在までの間に,ほぼすべての大学においてカリキュラム改革が実施されるに至っています( 図1-1-3 図1-1-4 )。
図1-1-3 カリキュラム改革の実施

図1-1-4 カリキュラム改革の内容(平成13年度)

 これらの改革の多くは,理念としては,教養教育を重視し,学部の4年間を通じた体系的な履修を実現することを目指したものでした。しかし,実際には,教養教育の実施に責任を持つ部局が廃止されたことなどにより,逆に教養教育が軽視される結果を生じているのではないかとの指摘もあります。近年,社会の高度化・複雑化などが進むにつれ,社会における様々な要素の関連が強くなって相互の波及効果が大きくなる傾向にあり,多角的な視点から物事を総合的に判断する能力が求められるようになっています。このため,カリキュラムの改革に当たっては,学部段階では課題探求能力(主体的に変化に対応し,自ら将来の課題を探求し,その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことができる力)を育成することを基本としつつ,教養教育の重視,教養教育と専門教育の有機的連携の確保,専門教育における基礎・基本の重視等,学部教育と高等学校教育との接続の円滑化,国際社会で活躍できる能力の育成などの観点に立って,カリキュラムの在り方を検討していくことが重要となります( 図1-1-5 )。

図1-1-5 教養教育に関する開設科目(平成13年度)


(3) 教育方法の改善

 学部教育において,ますます多様化する学生を対象に教育を行い,各大学の教育理念・目標を達成するためには,カリキュラム改革という教育内容面での改善のみならず,授業方法の工夫や大学の組織的な教育に対する取組などの工夫も重要です。各大学においては,学生の卒業時における質の確保を図るとの観点に立って,責任ある授業運営を展開するための様々な取組が行われています。

{1}責任ある授業運営

 我が国の大学教育は,1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容をもって構成することを標準とする単位制度を基本としています。1単位という学習量は,教室内における授業の時間のみならず,授業の事前・事後に教室外で学生が行う準備学習・復習も合わせて構成されることが前提となっています。この意味において,学生には自主的な学習が要求されています。同時に,大学の教員に対しても,例えば,授業の前提として読んでおくべき文献を示すなど,学生が行う準備学習・復習について指示を与えることが求められていると言うことができます。したがって,各大学においては,各授業科目の教育目標や目標達成のための授業方法,年間の授業計画をシラバス などを通じてあらかじめ学生に明示するなど計画的な授業設計を行った上で,その授業科目の趣旨を学生に周知・理解させ,教室外における学習も含めた学習上の指導を適切に行うことが求められます。また,これにより,学生の側における主体的な学習への取組を喚起することも期待されます。なお,詳細な授業計画を示したシラバスを作成する大学は年々増加しており,現在では,ほとんどの大学でシラバスが作成されています( 図1-1-6 )。

図1-1-6 シラバスを作成する大学・学部の数

 また,大学における1単位の授業科目が45時間の学修を必要とする内容をもって構成されることを踏まえると,一定期間内に履修できる授業科目にはおのずから限界があることとなります。したがって,単位制度の実質化を図るため,1年間又は1学期では履修することができない分量の授業科目の登録を防ぐとともに,個々の授業科目において単位制度の趣旨に沿った学習量を実質的に確保することが重要です。これらの取組を促すため,平成11年に大学設置基準を改正し,大学は学生が1年間又は1学期に履修科目として登録することのできる単位数の上限を設定するよう努めることを規定しています( 図1-1-7 )。

図1-1-7 単位上限設定大学(大学数)

{2}成績評価基準の明示と厳格な成績評価の実施

 これまでの大学に対する評価の中には,大学では適切な卒業認定が行われておらず,学部卒業者として期待される教育内容がきちんと身に付いていない場合があるとの指摘があります。大学は人材養成の役割を担うものであるということからすれば,学生に対して適切な修了認定を行い,卒業時における質の確保を図ることは,大学の社会的責務であると言うことができます。

 こうした観点から,各大学においては,例えば,以下のような取組が行われています。

○各授業科目ごとの成績評価基準を,シラバスなどを活用してあらかじめ学生に明示した上で,厳格な成績評価を行う。
○期末試験の成績だけでなく,授業への出席状況やレポートなどの課題の提出状況,あるいは,授業における発言などの日常的な授業態度など,多元的な基準を組み合わせて,総合的な観点からの成績評価を行う。
○GPA制度 *1 を導入し,一定水準を上回る学生に対しては表彰を行い,一定水準を下回る場合には,その学生に対して特別な履修指導を行い,場合によっては退学勧告も行う( 図1-1-8 )。
○成績評価の客観性を高める観点から,同一の授業科目を担当する複数の教員が合同で成績評価を行う。
○セメスター制度 *2 を導入することにより,学期区分ごとに授業科目を完結させて成績評価を行い,その成績を次学期の学習と有機的に関連付けて活用する( 図1-1-9 )。
図1-1-8 GPAの導入状況(大学数)

図1-1-9 セメスター制度の採用

{3}ファカルティ・ディベロップメント

 大学教育の充実を図るためには,学生に対して直接教育活動を行う教員が,自らの教授能力を向上するよう不断の努力を重ね,学生の学習意欲を喚起するような授業を展開していくことが重要です。また,個々の教員はもとより,教育組織として,大学全体あるいは学部,学科としての教育理念・目標を明らかにし,それを実現するという観点からカリキュラム編成や個々の授業科目の開設を行い,その上で個々の教員がその趣旨に沿った授業を行うという一連の取組も重要となります。

 このような組織的な教育体制を構築する一環として,全学あるいは学部・学科全体で,その教育理念・目標や教育内容・方法について組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント)を実施する大学が増えつつあります。文部科学省においても,平成11年に大学設置基準を改正して,大学においてファカルティ・ディベロップメントを実施することを努力義務とするなど,大学の積極的な取組を促す方策を講じています。

 各大学においては,例えば,教員相互による授業参観を行った上での授業内容・方法についての討論,授業の運営方法についての新任教員に対する研修会の開催,授業内容・方法についての全学的な検討組織の設置などの種々の取組が進められています。また,その実施大学数は年々増加しており,ファカルティ・ディベロップメントに対する意識が高まってきています( 図1-1-10 )。

図1-1-10 ファカルティ・ディベロップメントを実施する大学


* シラバス

 授業科目名,担当教員名,講義目的,講義概要,毎回の授業内容,成績評価方法,教科書や参考文献,その他履修する上で必要となる要件について記した授業計画のこと。


*1 GPA(グレード・ポイント・アベレージ)制度

 授業科目ごとの成績評価を5段階(A,B,C,D,E)で評価し,それぞれに対して,4,3,2,1,0のようにグレード・ポイントを付与し,この単位当たりの平均を出して,その一定水準を卒業の要件などとする制度のこと。


*2 セメスター制度

 1学年複数学期制の授業形態。日本で一般的であった通年制(一つの授業科目を1年間を通して実施)における前期・後期の区分とは異なり,各学期(セメスター)ごとに一つの授業科目を完結させる制度。


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