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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第10章  国際化・情報化への対応
第1節  国際交流・協力の充実に向けて
4  開発途上国への協力


 文部科学省では,平成13年10月に国際教育協力懇談会(座長:中根千枝・東京大学名誉教授)を設置し,我が国の知的資源を全面的に活用した効果的な国際開発協力の在り方について検討を重ねてきました。平成14年7月に提出された同懇談会の最終報告を踏まえ,今後,下記のように,国際開発協力を促進するための知的インフラ(基盤)づくりを進めていきます。



(1) 国際教育協力の推進

 教育は,特に,最大の課題である貧困に対して,人間の潜在的な能力の開発を促すため,開発途上国が自らの努力によって貧困から脱却し持続的に発展していくための基盤づくりに大きな役割を果たすことができます。さらに,教育は,人々に自ら考える力を与え,対話を通じて他者や他文化を理解する力,国際協調の精神を重んじる態度を育むことができます。

 我が国は,戦後,教育を国づくりの基本とし,「米百俵」の精神をもって復興してきました。国民生活や経済活動のあらゆる領域の基盤となる教育に人的・物質的資源を傾注するという経験は,開発途上国の国づくりにとっても大いに参考になり得ると考えられます。

 一方,我が国において,学校や草の根レベルで行われている様々な交流や,我が国の教員による国際教育協力活動への参画は,協力の裾野を広げ,また,我が国の「内なる国際化」を促進するという効果もあります。

 このように,国際教育協力は,あらゆる層で我が国の国民が,開発途上国の国民との共生をより深いレベルで実現していく可能性を有するものであり,我が国の教育経験を生かし,「日本人の心」の見える協力を進めることが重要です。

 こうした,開発途上国への教育支援の重視は世界的な潮流となっており,ユネスコを中心とした「万人のための教育(Education for All)」達成に向けた取組を促進するため,我が国も,平成14年6月に開催されたカナナスキス・サミットを機に,小泉総理より「成長のための基礎教育イニシアチブ(BEGIN)」を発表したところです。

{1}我が国の教育経験を生かした国際教育協力

(ア)初等中等教育分野の協力強化のための「拠点システム」

 初等中等教育分野は,高等教育などの分野での人づくり協力の基盤であり,このような基礎的な人材の土台があってこそ初めて,各種の協力の成果が現れてきます。

 この分野では,教育を国づくりの根幹としてきた我が国の教育経験を活用し,開発途上国におけるニーズ(需要)を踏まえながら,我が国が培ってきた具体的な成果を生かし,それぞれの国の教育発展に効果的に役立てることが必要です。

 文部科学省では,初等中等教育の分野における協力強化のために「拠点システム」を構築することとしています。これを通じて,我が国による協力の実績が多く,ニーズ(需要)も高い理数科教育,教員研修制度,学校運営など,我が国の主力となる協力分野などについて,中核となる大学(広島大学及び筑波大学)の下,他の大学やNGOなどが我が国の国際教育協力における経験の共有化を図り,協力モデルの開発や現職教員への伝達を行うとともに,協力経験の浅い分野におけるグループの形成を支援し,我が国の教育経験を整理し,ワークショップなどの対話プロセスを通じ,情報提供の拡大を図っていきます。

 さらに,「拠点システム」においては,青年海外協力隊やシニア海外ボランティアとして開発途上国へ派遣される現職教員の支援も行います。現職教員が現地で国際教育協力に従事することにより,「日本人の心」の見える協力を実現するだけではなく,開発途上国の現場における現職教員の体験は,国内における「内なる国際化」の実現を図る上でも重要です。なお,平成14年度においては,青年海外協力隊を活用した「現職教員特別参加制度」創設以来初めてとなる現職教員63名を開発途上国へ派遣しています。

 また,現在「現職教員特別参加制度」の応募対象となっていない40歳以上の現職教員についても,実際に,参加を希望する声が多く出されていることから,シニア海外ボランティアを活用した参加促進を図ることが望まれています。



(イ)国際機関との連携を通じた我が国の教育経験の活用

 国際機関が開発途上国において協力実績を有している分野に関し,我が国の教育経験を付加価値として活用し得る場合には,これらの機関との連携を図ることも有意義であると考えられます。

 このため我が国として協力経験の浅い健康教育分野に関し,開発途上国での実績を有している世界食糧計画(WFP)及びユネスコとの連携を図りながら,我が国の有する経験を生かした協力方策について検討が行われています。

 平成14年3月には,ユネスコとWFPによる日本の学校給食事情の調査が行われ,学校給食が戦後,海外からの支援を受け再開し,学校教育活動の一環に位置付けられ発展してきたこと,安全・衛生に配慮した給食指導を行っていること,食に関する指導など,学校給食を通じた健康教育を推進してきていること,などが高く評価されました。

 また,平成14年5月には,ユネスコ及びWFPの協力の下,タイ,ラオス,カンボジアにおいて,日本の学校給食及び学校保健に関する知識や経験をどのように活用できるのか,相手国のニーズ(需要)に合った効果的な連携・協力方策を探るため,相手国の学校現場などについて現地調査を行いました。

 さらに10月には,タイにおいて,タイ,ラオス,カンボジア,ベトナム各国政府の教育及び健康担当者の政策立案能力の向上のため開催されたワークショップにおいて,日本の学校給食を通じた健康教育の実例について紹介しました。

 今後も,引き続きユネスコやWFPと連携し,開発途上国への協力の具体化を図っていくこととしています。


{2}紛争終了後の国づくりにおける国際教育協力

 冷戦の終えん後,頻発する地域紛争は人間の生命や生活のみならず,それを支える経済・社会基盤などの開発成果を損なうとともに,その後の復興・開発を困難とする様々な問題を引き起こしています。紛争地域での紛争解決後の国づくりおいて,教育は,国民生活や経済活動など,復興に関するあらゆる分野の基盤となるばかりでなく,歴史や宗教,民族について相互理解を促進し,平和構築と長期的な発展のために大きな役割を持ちます。

 したがって,紛争解決後の復興期において,地域に次の世代を担う子供が現存することを考えても,教育は1日たりとも休むことができない営みであり,平和国家である我が国が,教育分野において積極的な支援を行うことは大きな意義と効果があります。

 平成13年11月以降,文部科学省では,関係機関と連携しながら,緊急の課題であるアフガニスタン復興のため国際教育協力を促進してきました。

 アフガニスタン教育支援に関しては,アフガニスタン教育関係者が強く要望しているように,NGOや国際機関に依存しない,強固な公教育システム(制度)の再建を優先すべきであり,その実現のためには,以下のような重要な課題があります。

(ア)教育行政システムの再建

 これまで,中長期的な視野に立った,アフガニスタン復興のための包括的プログラムの一部である,教育計画の立案と策定を行うため,アフガニスタン国教育省に対して,短期の教育専門家を派遣しており,今後も継続的に教育専門家を派遣することとしています。

(イ)学校の教育研究環境の改善

 日本から派遣された教育専門家のアドバイスによりアフガニスタン国教育省が策定する学校復旧計画に基づき,小・中学校施設の復旧を支援することとしています。

(ウ)教員養成システムの再建

 お茶の水女子大学,奈良女子大学,津田塾女子大学,日本女子大学,東京女子大学からなる「5女子大学コンソーシアム」が,アフガニスタンの女性教員の研修を行うこととしています。

(エ)高等教育の復興

 東京農工大学がカブール大学と大学間学術交流協定を締結し,留学生及び研究者を今年度中に受け入れることとしています。また,京都大学がカブール大学薬学部に協力する予定です。

(オ)アフガニスタン教育支援のためのNGO募金

 文部科学省では,我が国の「教育協力NGOネットワーク」のメンバーである3団体が行う募金活動を支援しています。

 これは,全国の小・中高等学校などに募金への協力依頼を行うとともに,日本の児童たちからの絵や写真などのメッセージの送付や,インターネットを活用した日本の学校現場への情報提供を行うもので,NGOを介してアフガニスタンの子どもたちと日本の子どもたちを結ぶ効果的なプロジェクトです(詳細はhttp://www.afghan-kids.jp)。

{3}国民参画型の国際教育協力の展開

 国際教育協力を展開するに当たっては,独自の交流を行っているNGOや地方自治体(教育委員会)などと,ODAを推進している政府とが連携することにより,一層効果の高い協力を実現していくことが期待されています。

 また,国内における「内なる国際化」とより深いレベルの開発途上国との共生を促進していくためにも,今後は,国際教育協力懇談会を通じて生み出されたNGOや地方自治体との交流や連携を,更に多くの国民各層に発展させていくことが望まれています。

 文部科学省では,平成14年10月から,国際教育協力懇談会のシンポジウムを開発途上国や国際機関などの関係者の参加を得ながら,全国各地で開催し,国内における国際教育協力活動の理解促進を図るとともに,より深い国民各層の参画の機会を模索しています。


(2) 大学における国際開発協力の促進

 我が国の大学が国際開発協力に参画していくことは,援助関係者の裾野を拡大するだけでなく,我が国の知的な資源を国際開発協力に活用していき,日本の「顔の見える援助」を実現していく面からも,大きな期待が寄せられています。また,国際援助機関にとっても,大学の参画により安定的な協力体制が確保できると考えられます。

 しかしながら,大学による従来の協力は,ほとんどが大学教員個人による協力であり,大学側にとって長期間あるいは頻繁な協力が困難な状況にあります。

 このような問題を解決するため,国際援助機関との契約に基づく大学の組織的な対応が求められています。国際援助機関との契約に基づく国際開発協力プロジェクトには,我が国の大学がその特色を生かした研究などを進めるのに適したプロジェクトが多く存在しており,研究資源としての魅力が豊富です。また,学生に対して開発途上国における実施経験を通じた教育を施すことも可能であるため,国際機関への実践的な人材輩出にも効果が高いと考えられます。

 このように,今後は,国立大学の法人化も視野に入れながら,能力と意欲を有する国立・公立・私立の各大学がその特色を生かし,国際開発協力プロジェクトに組織として主体的・戦略的に携わることが望ましいと考えられます。


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