ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第10章  国際化・情報化への対応
第1節  国際交流・協力の充実に向けて
3  相互理解を進める国際交流



(1) 留学生交流の推進

{1}留学生受入れの現状と課題

 留学生を通じた国際交流は,我が国と諸外国相互の教育・研究の国際化・活性化を促すとともに,国際理解の推進と国際協調の精神の醸成に寄与します。さらに開発途上国の場合には,その国の人材養成に大きく貢献します。また,帰国留学生が我が国とそれぞれの母国との友好信頼関係の発展・強化のための重要な架け橋となることも期待されています。

 これらを踏まえ,我が国としては,留学生交流の推進を「知的国際貢献」の観点から最も重要な国策の一つに位置付け,様々な施策を総合的に推進しているところです。

表2-10-1 主要国における受入れの状況

(ア)留学生受入れ10万人計画

 文部科学省では,昭和58年8月の「21世紀への留学生政策に関する提言」などを踏まえた,21世紀初頭における10万人の留学生受入れを目指す「留学生受入れ10万人計画」に基づき,渡日前から帰国後まで体系的な留学生受入れのための施策を総合的に推進しています。

(イ)留学生受入れの現状

 我が国の大学等で学ぶ外国人留学生の数は,平成14年5月1日現在で9万5,550人に上り,前年比21.2%の増加となりました( 図2-10-3 )。

図2-10-3 留学生数の推移

 これらの留学生はその約9割がアジア地域の出身であり,中でも中国・韓国・台湾の3か国(地域)で全体の約82%を占めています( 図2-10-4 , 表2-10-2 )。

図2-10-4 外国人留学生数(出身地域別)

表2-10-2 出身国(地域)別留学生数

(ウ)留学生受入れの課題

 このように,近年の留学生数の大幅な増加により,昭和58年に策定した「留学生受入れ10万人計画」の達成が間近に迫ってきたことから,ポスト10万人計画を含めた新たな留学生政策について平成14年11月に検討を開始しました。ただ,単に数が多ければ良いということではなく,「日本に留学して良かった」と留学生から喜ばれるよう,一人一人を大事にする質的充実に一層留意し,留学環境の整備を図ることが肝要です。

(エ)留学生受入れ制度100年記念事業

 明治34年(1901年)に,日本政府が外国人留学生の入学を制度的に許可することとなった最初の規程である「文部省直轄学校外国人特別入学規程」が制定されてから100年を迎えたことを受けて,平成13年11月2日,国際研究交流大学村東京国際交流館「プラザ平成」において,天皇・皇后両陛下のご臨席を賜り,「留学生受入れ制度100年記念式典」及び「留学生受入れ制度100年記念留学生交流功労者表彰」を行いました。

表2-10-3 在学段階別留学生数

{2}留学生受入れ体制の整備充実

(ア)留学情報提供体制の整備

 (財)日本国際教育協会の留学情報センターでは,留学に関する内外からの照会に対応するとともに,海外の日本留学希望者に対して直接,日本及び日本の大学に関する各種の情報提供を行うため,毎年,日本の多数の大学などの参加を得て,「日本留学説明会(日本留学フェア)」を実施しており,平成14年度は,インドネシア,マレイシア,韓国,タイ,中国などにおいて開催しました。

 また,同センターではインターネット上に留学情報を提供するホームページ(http://www.aiej.or.jp/)を開設しており,今後,さらに日本の高等教育制度や日本留学のための奨学金情報のほか,日本留学試験に関する情報等を充実させるとともに,大学など関係機関が保有するホームページへのリンクを増やすことにしています。



(イ)日本留学試験の実施

 従来,我が国への留学希望者は一般的に,渡日し,「私費外国人留学生統一試験(平成13年度の実施をもって終了)」及び「日本語能力試験」を受験した上で,さらに大学などが独自に実施する試験を受ける必要がありました。

 このように,我が国の大学への留学には複数の試験の受験とそれに伴う渡日を要する ことが,欧米の大学の留学に比べて手続きが煩雑で負担が大きいと指摘されていたことから,文部科学省では(財)日本国際教育協会と協力して,海外で広く実施され,渡日前に入学許可を得ることを可能にし,留学生にとって利用しやすい試験として「日本留学試験 」を開発し,平成14年度から両試験に代えて実施しています。世界各国から多くの優れた留学生を我が国に引き付けるために,本試験が多くの大学で利用されることが望まれます。


*日本留学試験

実施時期 平成14年から年2回(6月及び11月の第3日曜日) 実施地  国内:北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,九州,沖縄      海外:アジア地域を中心に当面10都市程度 試験科目 文系:日本語,数学,総合科目      理系:日本語,数学,理科(物理,化学,生物から2科目を選択) その他  科目選択制及び成績の複数年(2年間)利用を導入      本試験の成績優秀者を私費外国人留学生学習奨励費の給付予約者とする。

(ウ)留学生に対する支援措置

(1)国費留学生受入れの計画的整備

 国費留学生事業は,諸外国の次代を担う優秀な若者を我が国の高等教育機関に招へいし,その教育・研究を行わせる事業として,昭和29年に開始されました。現在,研究留学生(大学院レベル),学部留学生など7種類のプログラムにより実施されており,平成14年度予算においては,新規受入れで前年度比250人増の5,235人分の予算を計上しています。

 そのうち,アジア諸国等の指導者として活躍が期待される行政官,経済人等の若手指導者を我が国の大学院に招へいする新たな留学プログラム(ヤング・リーダーズ・プログラム:YLP)については,平成13年10月より留学生の受入れを開始しました。

(2)私費留学生などへの援助

 私費留学生に対しては,従来から,学習奨励費(奨学金)の給付,優秀な私費留学生の国費留学生への採用,授業料減免措置を講じた学校法人への助成等の施策を実施することにより,私費留学生が安定した生活の中で勉学に励める環境の整備に努めています。さらに日本語教育機関で学ぶ就学生のうち,大学進学を目指す者に対しても学習奨励費の給付を実施しています。

 また,(財)日本国際教育協会では,個々の支援企業名や個人名を冠した「顔の見える」奨学金支給事業,医療費の80%補助(全留学生対象)を実施しています。

(3)宿舎の安定的確保

 文部科学省では,国立大学の留学生宿舎の建設(平成13年度末までに6,916戸を整備)を進めているほか,一般学生寮への入居を促進しています。また,(財)日本国際教育協会では,留学生宿舎建設事業を行う地方自治体等に対する奨励金の交付,(財)留学生支援企業協力推進協会では,保有する社員寮に留学生を受入れる企業に対する助成,(財)内外学生センターでは,指定宿舎制度 *1 及び留学生住宅総合補償制度 *2 等の施策をそれぞれ実施しています。

図2-10-5 文部科学省による留学生支援状況


*1 (財)内外学生センターによる指定宿舎制度

 外国人留学生の宿舎の安定的確保を目的に,(財)内外学生センターが適切な民間宿舎を開拓し家主との間に外国人留学生専用の指定宿舎契約を締結するとともに,家主に対して協力金(指定契約金)を交付する制度


*2 (財)内外学生センターによる留学生住宅総合補償制度

 外国人留学生の民間宿舎等への円滑な入居を促進することを目的に,留学生が保証人を探す困難さと保証人の精神的・経済的負担を軽減するための住宅総合保険と保証人補償基金を組み合わせた制度

 具体的には,留学生がこの制度に加入することで,失火などにより家主への損害賠償をしなければならない場合や,家賃の未払いなどにより保証人が家主から債務の履行を請求された場合に補償を行うもの

(エ)大学等における受入体制の整備

 文部科学省では,大学等における指導援助体制の整備のため,国立大学に対して,留学生センター及び留学生課の設置をはじめとする人員・経費面での措置を行うとともに,私立大学などに対しては,各大学などの受入留学生数等を考慮した私立大学等経常費補助金の特別補助を行っています。

(オ)留学生のための教育プログラムの充実

 近年我が国への留学形態が多様化する中,留学生のニーズに応じた魅力ある教育プロ グラムを提供する大学が増えています。具体的には,現在,大学院研究科では,39の国私立大学において留学生のために英語により学位取得が可能な66のコースを開設しています。また,学部レベルでは,22の国立大学及び22の私立大学において短期留学生のために英語によるプログラムや特別コースを開設し,英語による授業を行っています。

(カ)地域における留学生支援

 地域における留学生支援に当たっては,留学生及びその同伴家族を地域の住民すなわち社会の構成員として迎え入れ,併せて異文化を積極的に受け入れる意識が重要です。具体的には,ホームステイなど留学生と地域住民との交流,留学生に対する奨学金や宿舎の提供等を積極的に推進することが必要です。

 このためには,各地域における官民一体となった推進体制づくりが重要であり,その組織として,全都道府県に,地域の大学,地方公共団体,経済団体,民間団体などによって構成される留学生交流推進会議が設置されています。

(キ)帰国後のフォローアップの充実

 帰国留学生が留学の成果を更に高め,母国において活躍できるように,専門誌・学会誌の送付,短期研究のための帰国留学生招へい事業,研究支援のための指導教官の派遣など,帰国留学生の希望に応じて援助しています。

 また,外務省においても,社会各層で活躍している元留学生を我が国に招へいする「元日本留学者の集い」など各種支援事業を行っています。


{3}留学生相互交流(受入れ・派遣)の推進

(ア)短期留学の推進

 短期留学とは,主として大学間交流協定などに基づき,母国の大学に在籍したまま,他国の大学で1年間程度,教育を受けて単位を修得したり,研究指導を受けるものです。文部科学省では,短期留学を推進するために,大学間交流協定などに基づき,諸外国の大学へ派遣される日本人学生,及び諸外国の大学から我が国の大学に受け入れる外国人留学生を支援する奨学金制度として「短期留学推進制度」を設けています。この制度によって,平成13年度においては,1,829人の留学生を受け入れ,554人の日本人学生を派遣しました。

(イ)最先端分野の学生交流

 社会的要請があり,その推進を図る必要のある最先端分野の先導的人材の養成に寄与することを目的として,「最先端分野学生交流推進制度」を平成14年度に創設しました。

 この制度により,ライフサイエンス,情報通信,ナノテクノロジー・材料,環境などの最先端分野において,我が国の大学と外国の大学又は研究機関との共同教育研究に参加する,我が国の学生と外国人留学生との大学院レベルの学生交流を支援しています。

{4}海外留学支援体制の整備

(ア)海外留学の現状

 近年,我が国の学生などで海外の大学等に留学する者が増加してきています。各国等の統計によれば,海外に留学した日本人は,主要69か国において約7万6,000人(推定)です。留学先別に見ると,その約8割が欧米諸国となっています( 表2-10-4 )。

表2-10-4 日本人の主な留学先・留学生数

(イ)海外留学に関する施策

 文部科学省では,大学間交流の促進,国際的視野を有する教員の育成,地域研究者の養成などの観点から,国費による日本人学生の海外派遣制度を設けています。

 また,外国政府などの奨学金により,平成13年度は約40か国へ約420人の日本人学生等が留学しており,文部科学省ではその募集・選考に協力しています。

 海外留学の大半を占めるのは私費留学であり,文部科学省では,(財)日本国際教育協会の留学情報センターを通じて,留学情報の収集・整理を行い,平成11年度からは「海外留学説明会」を開催するなど,留学希望者に対する情報提供を行うとともに,留学に関する相談に応じています。

{5}国際研究交流大学村の整備

 国際研究交流大学村は,国際交流,情報発信,産学官連携の機能を有機的に連携させ,国公私立大学の留学生や外国人研究者との交流も含め,国内外の産学官の融合を図り,世界に向けた知的ネットワークの形成・情報発信を行う拠点施設として東京都江東区の臨海副都心青海地区に,文部科学省及び経済産業省が連携協力して整備したものです(平成13年7月開村。 表2-10-5 )。

表2-10-5 国際研究交流大学村の主要施設の概要


(2) 教育の国際交流

{1}教員等の国際交流

 文部科学省では,小・中・高等学校教員の現職研修の一環として,国際的視野に立った識見などを高めさせるため,毎年,教員を海外に派遣しています。

 また,諸外国との間の相互理解の増進と相手国理解教育の推進のため,中等教育段階の教員をオーストラリア,ニュージーランドなどに派遣しています。

 大学教員・研究者については,文部科学省の在外研究員制度(平成12年度723人派遣)や外国人教師制度(平成12年度398人受入れ),日本学術振興会の事業(平成11年度5,581人派遣,1万1,214人受入れ)などを通じて,派遣,受入れを行っています。

 特に日米間では,昭和26年に発足した「日米教育交流計画」(いわゆるフルブライト計画)により,平成13年度までに両国合わせて約9,000人の研究者・大学院生・ジャーナリストなどの交流が行われています(平成13年度合計108人)。また,「日米国民交流」の包括的取組の一環として,日米教育委員会を実施主体とした「フルブライト・メモリアルプログラム」が平成9年度から開始されました。この事業は,両国の教育制度などに関する相互理解を深め,日米間の教育・学術分野での円滑で効果的な交流を促進することを目的としているもので,平成13年度においては,アメリカの小・中・高等学校教員など約600人を我が国に招致するなどの事業を行いました。

 また,社会教育に関しては,我が国の社会教育指導者を海外に派遣して,各国の社会教育関係者との意見交換を行う事業などを実施するとともに,各地域において女性の国際交流が活発になっていることを踏まえ,女性団体の国際交流事業に対する助成を行っています。独立行政法人国立女性教育会館では,平成13年度において,「女性情報国際フォーラム」を実施し,日本を含め23か国約162名の参加を得るとともに,アジア太平洋地域の女性行政担当官などを対象とする「国際女性情報処理研修事業」,開発途上国における女性教育の推進を支援することを目的とした「女性の教育推進セミナー」などの各種研修を行いました。

{2}青少年の国際交流

 文部科学省では,(財)世界青少年交流協会,(財)ボーイスカウト日本連盟,(社)日本青年奉仕協会,(社)中央青少年団体連絡協議会などが実施する青少年の国際交流事業に対して助成等を行っています。

 さらに,国立オリンピック記念青少年総合センターなどの国立青少年教育施設においても,「アジア地域青少年教育施設指導者セミナー」や「アジア青少年のつどい」など,種々の国際交流事業を実施しています。

 このほか,全国各地では,各都道府県・市町村や社会教育関係団体,民間団体が積極的に青少年の国際交流を実施しています。


(3) 日本語教育の振興

{1}日本語学習者の現状

 近年,我が国における外国人の増加や諸外国との国際交流の進展により,日本語学習者は増加しており,海外で約210万人(平成10年国際交流基金調べ),国内で約13万2,600人(平成13年11月文化庁調べ)に上っています。

{2}地域における日本語教育の支援

 最近,日本で働いたり,日本人と結婚して来日する人も増加していますが,このような人に対する日本語教育については,多くの場合,それぞれの地域で実情に応じ,取り組まれています。

 文化庁では,地域の特性に応じた外国人に対する日本語教育を支援するため,日本語ボランティア等の中核となる地域日本語教育指導員(コーディネータ)の研修や,日本語学習支援に関する相談事業・シンポジウム(公開討論,協議会)を実施しています。

 また,平成14年度からは,地域に居住する外国人の親と子が共に日常生活に必要な日本語を学ぶための「親子参加型日本語教室」事業を実施し,地域における日本語教育の充実を図っています。

{3}日本語教育機関(いわゆる日本語学校)の質的向上

 また,我が国で日本語を学習する者のうち,大学等高等教育機関への進学を目指すなどある程度体系的に学習しようとするものの多くは,留学生・就学生として日本語教育機関(いわゆる日本語学校)で学習しています。

 このうち,(財)日本語教育振興協会が一定以上の水準にあると認定した機関は,平成14年3月末現在327機関となっており,在籍者は平成13年7月1日現在3万3,757人(対前年度比3,126人増/10.2%増)となっています。

 (財)日本語教育振興協会では,認定した日本語教育機関を紹介する「日本語教育施設要覧」の作成,日本語教材の研究・開発,教員等に対する研修会の開催などの諸事業を行っており,文部科学省は,これらの諸事業に対し助成しています。

{4}日本語教育に携わる者の養成・研修等

(ア)日本語教員の養成

 文化庁の日本語教育実態調査によれば,平成13年11月現在,日本語教員養成課程・コースなどは,国・公・私立の大学の学部で134,大学院で10,短期大学で18となっており,これらの機関における受講者数は,2万924人となっています。

 また,大学以外の一般の日本語教員養成機関の数は211,受講者数は1万5,935人となっています。

(イ)日本語教員の研修等

 独立行政法人国立国語研究所においては,現職日本語教員等を対象にした日本語教育上級研修(10か月),教師・教師志願者・学生・一般を対象にした日本語教育短期研修(1〜2日,年間6回)などを実施し,平成13年度は約520人が参加しました。また,諸外国の日本語教育の中核的な指導者を育成することを目指す大学院課程を,同研究所,政策研究大学院大学,国際交流基金日本語国際センターが連携して発足させました。平成13年10月から8名の前期(修士)課程院生を受け入れて指導を開始しました。

(ウ)日本語教育能力検定試験の実施

 日本語教育能力検定試験は,(財)日本国際教育協会により,日本語教育の知識・能力が,日本語教育の専門家として最低限必要な水準に達しているかどうかを審査し,証明することを目的として実施されています。平成13年度は,国内外で約5,500人が受験しました。

{5}その他の日本語学習環境の整備

(ア)日本語教授法・教材の研究開発等

 文化庁や国立国語研究所では,日本語教授法・教材の研究開発を進めているほか,日本語教育に関する研究協議会や国際的な公開討論,協議会などを積極的に進め,関係者間の情報交換や普及啓発活動を推進しています。

(イ)情報通信技術を活用した日本語教育への支援

 文化庁では国内外の日本語教育の多様な需要や要望にこたえるため,「日本語教育支援総合ネットワーク・システム」を開発しました。これは,電子化された多様な日本語教育教材用素材や日本語教育関係情報を,インターネットを通じて簡単な手続きで提供するもので,現在,国立国語研究所において管理運営しています。

 また,今後の情報通信技術を活用した日本語教育の在り方や振興方策等について調査研究を行っています。

(ウ)日本語能力試験の実施

 日本語を学習する外国人を対象として,日本語能力を測定し,認定することを目的として,国内では(財)日本国際教育協会が,海外では現地関係機関の協力を得て国際交流基金が日本語能力試験を実施しています。

 この試験は,1級(日本語学習時間900時間程度)から4級(同150時間程度)までの試験レベルに分かれており,平成13年度には国内外で約22万8,000人が受験しました。





{6}インドシナ難民・中国からの帰国者等に対する日本語教育の推進

 昭和54年の閣議了解に基づき,我が国に定住などを希望するインドシナ難民を対象として,(財)アジア福祉教育財団に委託して,約4か月間の集中的な日本語教育を行うなど,社会生活に必要な日本語能力の維持向上を図っています。また,中国からの帰国者に対しては,日本語教材及び指導参考書を作成し,無償配布しています。

 さらに,平成14年8月7日の閣議了解により,インドシナ難民と同様の日本語教育を,いわゆる条約難民に対しても行うこととされました。

{7}海外における日本語教育への協力

 文部科学省及び総務省の協力の下,地方公共団体は「外国教育施設日本語指導教員派遣事業」(REXプログラム)を実施しています。

 このプログラムは,海外における日本語学習の需要の高まりにこたえるとともに,教育・文化交流活動を通じて,我が国の学校教育の国際化と,地域での国際交流が促進されるよう,我が国の公立中・高等学校の若手教員を海外の中等教育施設に2年間派遣し,日本語教育や日本文化の紹介などを行うものです。


(4) 外国人児童生徒に対する日本語指導など

 平成13年9月時点で日本語指導が必要な外国人児童生徒は公立小・中・高等学校に1万9,250人在籍し,在籍校数は5,296校に上っています。これら外国人児童生徒のほとんどは来日前に日本語教育を受けないまま言語も生活習慣も異なる環境に入ってくることから,適切な日本語指導や学校生活への適応指導を行うことができる体制を整備していくことが重要です。

 このため,文部科学省では,{1}学校教育におけるJSL(第2言語としての日本語)カリキュラムの開発,{2}帰国・外国人児童生徒と共に進める教育の国際化推進地域の指定,{3}日本語指導を行う教員の加配,{4}外国人児童生徒等教育相談員派遣事業の実施,{5}担当教員や指導主事を対象とした研修及び研究協議会の実施などの施策を行っています。


(5) 文化の国際交流・協力

{1}総合的・計画的な国際文化交流の推進

 今日,国際化の進展に伴い,我が国の文化活動は国際的な広がりを持つようになっており,優れた伝統を生かしつつ個性ある文化を育て,世界に発信していくことが文化立国の実現に向けて重要な課題となっています。

 また,国際社会の一員として,文化による国際貢献が強く求められており,人類の貴重な財産である文化遺産の保存・修復への協力を行うとともに,優れた文化芸術を海外に発信することにより,世界の文化の発展にも寄与していくことが求められています。

 このため,文化庁としては,関係府省等との連携協力の下,{1}芸術家や芸術団体の派遣・受入れ,{2}内外での国際的な芸術フェスティバルなどの開催,{3}海外の文化遺産の保存修復への協力などの施策を実施しています。

 なお,現在,文化庁長官の懇談会である「国際文化交流懇談会」において,官民を通じた国際文化交流を総合的かつ計画的に推進していく上での理念や具体的な方策等について14年度内の取りまとめを目指し,検討しています。

{2}芸術文化交流

 芸術文化の国際交流の推進は,我が国の芸術文化の発展のみならず,我が国が世界の芸術文化の発展に貢献していく上でも重要です。

 このため文化庁では,「文化芸術創造プラン(新世紀アーツプラン)」において新進芸術家海外留学制度や海外芸術家招へい事業,優秀指導者特別指導助成,舞台芸術の国際フェスティバルの開催,優れた芸術の国際交流への支援等の各施策を推進しています。

 また,芸術祭の国際公演として,平成13年度は芸術祭オープニング公演「国際音楽の日記念コンサート」において中国,韓国,日本の室内オーケストラによる「日中韓室内オーケストラの共演」に加え,芸術祭国際共同公演としてオペラ「トゥーランドット」を実施しました。

 このほか,海外の青少年及びアマチュア文化団体の招へい,派遣及び研修事業などを実施する「国民文化国際交流事業」において,高校生の文化交流の推進を図るため,「日中高校生文化交流事業」,「日韓高校生文化交流事業」を実施しています。

{3}文化財保護に関する国際交流・協力

(ア)在外日本古美術品の修復

 独立行政法人文化財研究所などでは,欧米諸国を中心とする諸外国の博物館・美術館が所蔵する日本古美術品の修復協力を進めてきており,平成13年度は,絵画7件,工芸品も4件を修復しました。14年度は,絵画7件,工芸品5件の修復を行います。

(イ)海外の文化遺産の保護への協力

 文化庁では,アジア・太平洋地域の文化財建造物の保存・修復に対する技術協力を実施しており,平成14年度は,ベトナムの町並み保存や民家修理事業,ブータンの歴史的建造物の保存修理事業などへの技術協力を行うとともに,インドネシアの歴史的建造物の共同調査などを実施しています。また,相手国の文化財専門家・技術者を招へいしての研修を行っています。


 独立行政法人文化財研究所では,東京文化財研究所において,平成14年度に第26回文化財の保存及び修復に関する国際シンポジウム「うごくモノ-時間・空間・コンテクスト」を開催します。

 奈良文化財研究所では,平成14年度は「アンコール遺跡近隣の文化遺産の保護協力」など9件の協力事業を行っています。

 また,我が国は,政府間国際機関である文化財保存修復研究国際センター(ICCROM)に加盟し,国際的な研究事業などに協力を行っており,平成12年度からは同センターに文化庁の職員を派遣しています。

 さらに,アジア太平洋地域の世界遺産などの文化財保護に関する国際協力の充実強化を図るため,平成11年8月に(財)ユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所を開設しました。

 同事務所では,平成13年度には,アジア太平洋地域諸国の文化遺産保護担当者を招へいし,遺産の保護,調査,修復をテーマとした集団研修や個人研修を実施したほか,アジア太平洋地域の文化財保護関連の資料収集及びデータベースの構築を行いました。14年度には,このデータベース構築を引き続き行うとともに,文化遺産の保護に関する国際会議を開催することとしています。

(ウ)海外展

 文化庁は,従来から諸外国において,国宝・重要文化財を含む大規模な展覧会を開催しており,平成13年度は,大英博物館(イギリス)において「古代日本の聖なる美術」展を開催しました。また,14年度は,韓国国立中央博物館において「日本美術名品展」,ロサンジェルス・カウンティ美術館(アメリカ)において「能装束」展を開催します。

 また,独立行政法人国立博物館は,諸外国の博物館・美術館において「海外交流展」を実施しており,平成14年度は,京都国立博物館の収蔵品による特別展覧会「京都からの美のたより」をキンスキー宮殿(チェコ)において開催しました。また,15年度は,東京国立博物館の収蔵品による「武家と町人-16〜18世紀」(仮称)を国立芸術展覧会ホール(ドイツ)で,奈良国立博物館の収蔵品による展覧会を慶州国立博物館(韓国)で開催する予定です。


(エ)国際民俗芸能フェスティバル

 文化庁では,国内の民俗芸能と外国(主にアジア)の民俗芸能が一堂に集まって公演する「国際民俗芸能フェスティバル」を行っており,平成14年度は静岡県と岐阜県の2会場で開催しました。

(オ)地方公共団体における国際協力の支援

 文化庁では,総務省及び(財)自治体国際化協会が行う「自治体職員協力国流事業」に協力し,地方公共団体が受け入れる諸外国の文化財保護行政担当者,遺跡発掘技術者,博物館・美術館の専門職員などに対する研修を行っています。

{4}世界遺産の登録推薦

 「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)は,顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として,損傷,破壊などの脅威から保護し,保存することを目的として,昭和47年の第17回ユネスコ総会において採択されました。我が国は平成4年に同条約を締結し,平成14年9月現在締約国は175か国に上ります。

 平成14年9月現在,世界遺産の登録件数は730件(文化遺産563件,自然遺産144件,両方に該当するもの23件)となっています。

 また,今後の世界遺産への推薦候補として,「平泉の文化遺産」「紀伊山地の霊場と参詣道」「石見銀山遺跡」などを選定し,ユネスコ世界遺産暫定リストに掲載されています。


{5}人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言

 「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」とは,平成13年度からユネスコが始めた事業で口承及び無形遺産の継承と発展を図ることを奨励するため,ユネスコが定める基準を満たすものを隔年で「口承及び無形遺産の傑作」として宣言するものです。

 加盟国は2年ごとに1件の候補を推薦(併せて,今後10年間にわたって推薦を計画している候補の暫定リスト(一覧表)を提出)し,ユネスコの選考委員会が「たぐいない価値を有する無形の文化遺産が集約されていること」,「歴史,芸術,民族学,社会学,人類学,言語学又は文学の観点から,たぐいない価値を有する民衆の伝統的な文化の表現形式」の観点から選考します。

 平成13年5月18日,ユネスコ本部にて第1回の宣言式典が行われ,日本の「能楽」を含む19件が「傑作」として宣言されました。

 また,平成15年6月に行われる第2回宣言に向け,現在,我が国から候補として「人形浄瑠璃文楽」を,暫定リストとして「歌舞伎」を提出しています。


{6}ユネスコ文化大臣円卓会議

 トルコ・イスタンブールにて開催された第3回ユネスコ文化大臣円卓会議(平成14年9月16〜17日)において,文部科学大臣が冒頭のキーノートスピーチ(基調講演)を行い,我が国のこれまでの経験を踏まえ,文化間の相互理解を深める上での無形文化遺産の役割の重要性,国際社会全体としてのその保護の必要性について訴えました。

 また,我が国において,平成15年に世界伝統芸能フェスティバルと無形文化遺産に関する国際シンポジウムを開催することを提案して,各国の賛同を得ました。


(6) スポーツの国際交流

 スポーツは人類共通の文化であり,スポーツを通じた国際交流は諸外国との相互理解と友好親善の促進に大きな役割を果たすものです。

{1}スポーツ団体における国際交流事業

 (財)日本体育協会では,青少年スポーツ指導員の受入れ・研修及びアジア地区のスポーツ交流などの国際交流事業を実施しています。また,(財)日本オリンピック委員会においては各種国際競技大会への選手派遣及び競技力向上スポーツ交流事業などを実施しています。文部科学省では,(財)日本体育協会や(財)日本オリンピック委員会をはじめとするスポーツ団体が行う国際交流事業について支援を行っています。

{2}国際競技大会への支援

 我が国では,第5回アジア冬季競技大会をはじめとして,数々の国際競技大会の開催が予定されています。これらの国際競技大会の開催が我が国のスポーツの普及や振興のみならず,スポーツを通じた国際交流として,国際親善の推進に大きく寄与するものです。文部科学省では,これらの国際競技大会について支援を行っています。


(7) 二国間交流等

 ワールドカップ・サッカー大会が日韓共同で開催される2002年(平成14年)を日韓国民交流年とすることが両国首脳の間で合意され,様々な分野での交流が実施されています。特に,文化分野においては,日韓宮中音楽演奏会の両国での開催,相互の古美術品の交流展である「日本美術名品展」及び「日韓文化交流特別展『韓国の名宝』」の開催,日韓合同企画作品である演劇「その河をこえて,五月」の公演など,交流年事業の中核を担うような日韓共同公演や国立博物館・美術館間の交流展などの催しが活発に行われています。

 また,2002年は日中国交正常化30周年に当たり,2000年(平成12年)の日中首脳会談でこの年を,2002年「日本年」「中国年」とすることが合意されました。中国では,我が国の優れたメディア芸術を紹介する「日本メディア芸術作品展2002」をはじめとする多くの催しが行われ,我が国では,中国国家交響楽団特別演奏会をはじめとする様々な催しが行われました。

 さらに,2002年(平成14年)1月の小泉総理の東南アジア5カ国訪問時における首脳会談等において,日本とASEAN諸国の「未来のための協力」の一つとして「2003年日・ASEAN交流年」が提案されました。現在,政治,経済,社会,教育,科学技術,文化,芸術等幅広い分野の交流の推進を目的に,本交流年に向けて,各国政府との協議を進めています。

 その他の国々についても,文化協定の締結やそれに基づく文化協議の実施などにより,両国間の教育・文化・スポーツ交流の推進と,相互理解の増進及び友好関係の発展を図っています。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ