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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第9章  文化を大切にする社会の構築に向けて
第6節  新しい時代に対応した著作権施策の展開
2  五つの分野における戦略的対応



(1) 「法律ルール」の整備

 我が国の著作権法による権利の付与は,インターネットへの対応等について世界最高と言ってよい水準にあります。まず,昭和61年には,世界に先駆けて「インターネット等での無断送信を差し止める権利」を「著作者」に付与し,平成9年には,このような権利を「実演家」と「レコード製作者」にも付与しました。さらに,近年,いわゆる「ブロードバンド時代」を迎え,インターネットを用いたテレビ番組の無断再送信が行われるようになってきたため,平成14年6月に著作権法を改正し,同様の権利を「放送局」と「有線放送局」にも付与しました。「著作物」,「実演」,「レコード」,「放送番組」,「有線放送番組」のすべてについてこの法整備を終えているのは,世界中で日本のみです。

 また,インターネットの普及などにより,侵害の発見・立証が困難な状況になっていることから,「鍵をかけること」に相当する「コピープロテクション」などの技術や,「隠しネーム」に相当する「電子透かし」などの技術を,権利者自らが積極的に活用することが必要になっています。これらの技術については,平成11年に著作権法を改正し,これを回避・改ざんするような行為の禁止などを法定しました。「著作物」,「実演」,「レコード」,「放送番組」,「有線放送番組」のすべてについてこの法整備を終えているのも,世界中で日本のみです。

 今後の課題としては,新しい条約が国際的に検討されている「実演家」や「放送局」の権利の拡大,著作権保護の「例外」の見直しなどがあり,文化審議会(著作権分科会)において検討を進めているところです。


(2) 「円滑な流通」の促進

 パソコンやインターネットの普及など,情報化の進展に伴い,すべての人々が著作物の「権利者」「利用者」となる時代を迎えていますが,日本では,文書による明確な契約を避ける傾向があるなど,コンテンツの円滑な流通に不可欠な「契約システム」の開発・普及が極めて遅れています。このため,コンテンツ製作時の契約の不備によって放送番組等の二次利用がしにくいなどの問題が生じています。このような状況を改善するため,文化庁では以下のような施策を推進しています。

{1}ビジネスモデル開発支援

 日本発の新しいビジネスとして国際的にも注目されている「着メロ(携帯電話の着信メロディ)」のような,「契約システム」,「セキュリティー技術」,「自動課金システム」などを組み合わせた新しい「ビジネスモデル」,「流通システム」の開発を積極的に支援しています。

{2}標準的契約

 すべてのビジネスモデルには「契約書」が不可欠ですが,我が国では標準的な契約書の開発が遅れています。そこで,文化庁ではだれでも簡単に契約ができる「契約システム」(法令や正規の契約書と一般人の感覚を結ぶ「契約インターフェイス」とも言うべきもの)の開発を積極的に支援しています。

{3}意思表示システム

 ネットワーク上で提供される著作物等について,自由に利用してよい範囲を権利者が明示できるように,「自由利用マーク」の策定や「意思表示システム」の標準化の研究を進めています。


(3) 「国際的課題」への対応

 デジタル化,ネットワーク化の進展に伴い,パソコン1台あれば著作物のコピー等が簡単にできるようになるとともに,インターネットを通じて国境を越えた著作物の流通が活発に行われるようになりました。

 文化庁では,このような現状に対応した適切な海賊版対策と国際ルールの構築を積極的に推進しています。

{1}アジア地域における海賊版対策の強化

 近年,音楽やゲームソフト等,我が国の著作物に対する関心が高まる一方,特にアジア地域において,我が国の著作物の海賊版(違法複製物)の製造・流通が大きな問題になっています。

 海外における海賊版の製造・流通を防ぐためには,我が国の権利者が自ら侵害発生地において迅速に対抗措置を講ずることができるよう,環境を整備することが不可欠です。

 また,二国間や多国間の枠組みを活用して,当該国における国際条約の締結を含めた「著作権法制の整備」や「権利管理団体の育成」を促すとともに,侵害の原因が当該国の法制度や法の執行面にある場合には,TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)等に基づき改善措置を求めることが肝要です。

 文化庁では,アジア諸国における民事・刑事上等の手続きをより効果的に活用するための手引書の作成やWIPO(世界知的所有権機関)との共同によるアジア地域を対象とした,著作権法の整備等を支援するための協力事業など,従来の取組に加え,著作権関係団体やコンテンツ産業等が侵害実態の監視や訴訟等への対応を目的として設立した民間組織である「コンテンツ海外流通促進機構」の活動支援や二国間・多国間協議における侵害国政府への取締り強化等の要請などに積極的に取り組んでいきます。

{2}国際的ルールづくりへの参画等

 著作物等は,貿易やインターネットを通じた送信などにより国境を越えて利用されるものであるため,多くの国において条約に基づく国際的な保護が行われています。我が国も「ベルヌ条約」や「ローマ条約」,「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」に加え,インターネット時代に対応した「著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)」や「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)」等を締結しています。

 また,我が国は,現在WIPOで検討が進められている「視聴覚的実演」や「放送機関」に関する新条約の議論を推進するために積極的な役割を果たすとともに,アジア諸国を中心に,WCTやWPPTをはじめとするWIPO諸条約を締結するよう働きかけています。


(4) 「著作権教育」の充実

 インターネットやパソコンなど,著作物の「創作手段」「利用手段」が急速に拡大・普及しているため,著作権に関する知識や意識は,広く多くの人々にとって不可欠なものとなっています。このため文化庁では,これまで行ってきた講習会の開催などの事業を大幅に拡大し,平成14年度から,著作権に関する総合的な普及啓発事業である「著作権学ぼうプロジェクト」を展開しています。

 学校教育に関しては,平成14年度から実施された「新学習指導要領」において,中学校・高等学校の教育内容として「著作権」が明記されたことを受け,各学校での教育を支援するため,「楽しみながら学べる学習ソフト」や「中学生向けマンガ」などの教材を開発・提供するとともに,教員の指導上の参考とするため,「教員向け指導書」の作成などを行っています。

 また,学校外での教育事業に関しては,従来からの「著作権講習会」(一般国民,都道府県事務担当者,図書館職員向けなど)の拡充に加えて,多様な現場からの様々な質問にネットワークを通じて答える「バーチャル著作権ヘルプデスク」の構築を進めています。


(5) 「司法救済制度」の充実

 著作権等の侵害については,基本的に,権利者自らが侵害の事実を発見・立証する必要がありますが,情報通信技術の進展に伴う著作物等の創作・利用形態の多様化が進むに従い,権利侵害行為や損害額の立証などが困難になってきています。

 このため,例えば,平成12年に法改正を行い,権利者が著作権侵害について訴訟を提起するときに,「損害額」の立証負担を軽減するような制度を設けるとともに,著作権侵害に対する罰則の強化を行いました。今後の課題としては,更なる損害賠償制度の強化などがあり,文化審議会(著作権分科会)において検討を進めているところです。


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