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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第7章  科学技術システムの改革
第5節  科学技術活動の国際化の推進
1  主体的な国際協力活動の展開及び国際社会への貢献


 科学技術は,人類が共有し得る知的財産を生み出すとともに,地球環境問題,エネルギー・資源問題などの地球規模の諸問題の解決,産業経済の発展に資するものです。このような科学技術活動を国際的に積極的に展開することは,我が国の国際社会における役割を積極的に果たすものであるとともに,我が国における科学技術活動の一層の発展に資するものです。

 我が国は,世界38か国との間で科学技術協力協定などの国際協定に基づき,2国間における幅広い科学技術協力を実施するとともに,多国間の科学技術・学術協力を推進しています。


(1) 多国間協力の推進

{1}主要国首脳会議(サミット)に基づく国際協力

 2002年(平成14年)6月に開催されたカナナキス・サミットでは,「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバルパートナーシップ」が成立しました。

{2}国際連合における協力

 国際連合においては,全地球的視野で解決する必要のある天然資源,エネルギー,食料,気候,環境,自然災害などに関する諸問題に対して,積極的な活動が展開されています。

 2002年(平成14年)8月から9月にかけ,南アフリカ共和国において開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」では,科学的な知見の持続可能な開発への貢献に関し,我が国から水循環や災害防止のための共同観測・研究,さらに衛星を利用した地球観測技術の開発と利用拡大を提案し,これらが将来の行動の指針である実施計画に盛りこまれました。

 また,自然災害分野については,国際防災戦略(ISDR)への協力の一環として2002年(平成14年)3月に,つくば市において「第1回気候変動と水災害ワークショップ」が開催されました。

 そのほか,ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)においては,中期戦略及び事業計画・予算において,科学の分野では「水資源及びそれと関係する生態系」を最優先分野と位置付け,国連が実施している「世界水アセスメント計画(WWAP)」の事務局を務めています。我が国は,国際水文学計画(IHP)をはじめとする持続可能な開発のための科学振興事業及び生命科学の倫理的側面に関する考察などの活動に積極的に参加・協力しています。

{3}経済協力開発機構(OECD)における協力

 経済協力開発機構における科学技術に関する活動は,科学技術政策委員会(CSTP),原子力機関(NEA),国際エネルギー機関(IEA)等を通じて,加盟国間の意見・経験等の交換,情報及び人材の交流,統計資料等の作成,共同研究の実施等が行われています。

 CSTPでは,科学技術政策分野におけるメンバー国間の協力を推進するために,4つのサブ・グループを設置して,具体的な活動を実施しています。その1つであるグローバルサイエンスフォーラム(GSF)では,メガサイエンス(大規模科学技術)分野や地球規模の諸課題に関する科学的意義・取組み等の情報提供や提言を行っています。

{4}アジア太平洋経済協力(APEC)における協力

 アジア太平洋経済協力(APEC)では,開かれた地域協力を掲げ,貿易・投資の自由化・円滑化,経済・技術協力の推進を目的に,産業技術・人材養成・エネルギー等について協力方策の検討を行っています。特に産業技術分野では,科学技術の情報流通の促進,研究施設の相互利用の促進などの具体的協力プロジェクトが進められています。

{5}アジア欧州会合(ASEM)における協力

 アジア欧州会合(ASEM)は,アジアと欧州の関係を強化することを目的として,アジアと欧州の首脳が率直な対話を行う場として設けられたものです。

 1999年(平成11年)には,ASEMにおける21世紀の科学技術協力をテーマとする科学技術大臣会合が北京で開催され,科学技術分野における協力活動の重要性が確認されました。その後の2002年(平成14年)9月にコペンハーゲンで開催されたASEM第4回首脳会合の際,水分野などにおける具体的な協力活動の報告が提出されました。

{6}ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム

 1987年(昭和62年)6月のベネチアサミットにおいて我が国が提唱した国際的なプログラムで,生体の持つ優れた機能の解明のための基礎的な国際共同研究等を推進することを目的としており,国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム機構(HFSPO)が,国際共同研究チームへの研究費助成,若手研究者を対象としたフェローシップ(研究奨励金)及びワークショップ(研究者集会)の開催を実施しています。このプログラムのグラント受賞後,これまでに8人の研究者がノーベル賞を受賞しているなど,内外から高く評価されています。我が国は,このプログラムを積極的に支援しています。

 また,これまでは「脳機能の解明」と「生体機能の分子論的アプローチ」の二つの領域が研究助成対象領域とされていましたが,ライフサイエンス分野と化学・物理学・数学・コンピュータサイエンスなど他の分野との融合や学際性をより重視し,「生体の複雑な機能の解明」を新たな助成対象領域としています。

{7}国際科学技術センター(ISTC)における協力

 ISTCは,旧ソ連邦諸国の大量破壊兵器等に関係した科学者に平和的研究活動に従事する機会を与え,旧ソ連邦諸国内及び国際的な技術問題の解決に寄与することなどを目的として,1994年(平成6年)3月に,日本,米国,EC,ロシアの4極により設立されました。2002年(平成14年)9月現在,10か国及びEUが加盟しており,延べ約3万6,000人以上の研究者が本センターの活動を通じて研究を行っています。


(2) 2国間協力の推進

 諸外国との科学技術協力は,2国間の科学技術協力協定等に基づき,地球科学,バイオテクノロジー,ナノテクノロジー,原子力,宇宙開発,エネルギー開発,環境保全等世界共通の問題を解決するため,様々な協力が活発に展開されています。最近の主な動きは以下のとおりです。

{1}アメリカ

 日米科学技術協力協定に基づいて,閣僚レベルによる合同高級委員会,有識者による合同高級諮問協議会及び実務者による合同実務級委員会を開催しています。2002年(平成14年)7月に東京にて開催された第10回日米合同実務級委員会では,地球環境,ライフサイエンス,ナノテクノロジーなどの今後日米間で重点的に協力すべき分野について検討を行いました。

{2}イギリス

 日英科学技術協力協定に基づいて,2002年(平成14年)2月にロンドンにて第4回日英科学技術合同委員会が開催されました。両国政府の科学技術政策の動向や,気候変動,ナノテクノロジー,核融合など今後の協力分野等について意見交換が行われました。

{3}韓国

 日韓科学技術協力協定に基づいて2002年(平成14年)10月に東京にて第12回日韓科学技術協力委員会が開催されました。両国政府の科学技術政策の動向や今後の研究協力について意見交換が行われました。また,同協定に基づいて2002年(平成14年)11月に東京にて第4回日韓科学技術フォーラムが開催されました。ライフサイエンス及びナノテクノロジーの分野において,専門家同士の研究協力に関する意見交換が行われました。

{4}ドイツ

 日独科学技術協力協定に基づいて2002年(平成14年)10月にベルリンにて第18回日独科学技術協力合同委員会が開催されました。両国政府の科学技術政策の動向や,ライフサイエンス,ナノテクノロジーなど今後の協力分野等について意見交換が行われました。

{5}イタリア

 日伊科学技術協力協定に基づいて2002年(平成14年)10月に東京にて第7回日伊科学技術協力合同委員会が開催されました。イタリア側より提案された両国の科学技術協力を推進するためのプログラムに合意,署名した他,両国政府の科学技術政策の動向や今後の研究協力について意見交換が行われました。

{6}ロシア

 日露科学技術協力協定に基づいて,2001年(平成13年)10月に第7回日露科学技術協力委員会が開催されました。両国政府の科学技術に関する取組について意見交換を行い,今後の協力に関して話し合われました。

{7}その他

 フランス,オランダ,フィンランド,ハンガリー,チェコ,カナダ,スウェーデン,オーストラリア,中国,ポーランド,ユーゴスラビア,インド,イスラエル,ルーマニア,ブルガリア,ブラジル,インドネシア等との間で科学技術協力協定等に基づき,情報交換,専門家の交流,共同研究の実施等の協力を行っています。EUとは,2002年(平成14年)1月に日EU間の科学技術協力に関する協定の締結に向けて事務レベルで協議を進めることが合意されました。


(3) 国際協力プロジェクトへの取組及び国際社会への貢献

{1}ITER(国際熱核融合実験炉)計画

 ITER計画は,1985年(昭和60年)の米ソ首脳会談における共同声明を発端とし,核融合エネルギーの科学的・技術的な実現可能性を実証することを目的とした国際協力により核融合実験炉の開発を目指す計画です。

 2001年(平成13年)11月にITERの建設・運転に関する協定の作成等に関する政府間協議が開始され,今後,建設地の合意,建設・運転等に関する協定等の策定を経て,ITERの建設に着手することになります。

 また,ITERが我が国に設置されることを想定した場合におけるITERの安全規制の在り方に関して,専門家による具体的な検討を行うために,原子力安全規制等懇談会の下にITER安全規制検討会を開催し検討を進めています。

コラム{14}

-ITER計画とは-

●これまでの経緯

 日本,EU,ロシア及び米国の4極による設計活動が1988年(昭和63年)に開始され,1998年(平成10年)6月に設計報告書が取りまとめられました。

 しかし,各極の財政的な事情等により,建設段階への移行が困難であることが判明したことから,低コスト化を進める取組が進められました。米国は,議会における承認が得られないことから1999年(平成11年)をもってITER計画から撤退し,日本,EU及びロシアによって,2001年(平成13年)7月に工学設計活動が完了しました。

 このことを受けて,2001年11月から,ITERの建設・運転に関する協定の作成等に関する政府間協議が,日本,EU,ロシア及びカナダの4極によって開始されました。

●日本における対応

 エネルギー資源の安定確保が安全保障上からも重要であることから,日本はITER計画に当初から積極的に参加してきました。2002年(平成14年)5月29日に,総合科学技術会議は,「ITER計画が国家的に重要な研究開発であることにかんがみ,政府全体でこれを推進するとともに,国内誘致を視野に,政府において最適なサイト候補地を選定し,ITER政府間協議に臨むことが適当である。」と結論しました。

2002年(平成14年)5月31日には,その結論を基に,国内候補地を青森県六ヶ所村とすることについて閣議了解がなされました。

●今後の展開

 我が国は,上記の閣議了解を基に,2002年6月に開催された第4回政府間協議において,青森県六ヶ所村をITER建設の国内候補地として提案しました。このほかに,EUからバンデヨス(スペイン),カダラッシュ(フランス)が候補地として新たに提案されたほか,クラリントン(カナダ)が既に提案されており,同年7月から,これら4候補地を対象として技術的な調査が行われています。

 今後,政府間協議において,各極間でITERの建設地等を合意した上で,ITERの建設・運転等に関する協定等を策定し,ITERの建設に着手することになります。

図2-7-4 ITERの概要

{2}国際宇宙ステーション計画

 国際宇宙ステーション計画は,日本,米国,欧州,カナダ,ロシアの5極の国際協力により低軌道(高度約400km)の地球周回軌道上に有人の宇宙ステーションを建設し,本格的な宇宙環境利用,有人宇宙活動の展開のための基盤の整備を目指すものです。

 2000年(平成12年)10月には,若田光一宇宙飛行士が日本人として初めて国際宇宙ステーションの組立て作業に参加し,同年11月からは第1次搭乗員による長期滞在が開始されました。さらに,2001年(平成13年)2月には最初の実験棟となる米国実験棟が取り付けられました。

 2003年(平成15年)3月には,野口聡一宇宙飛行士が,日本人として二人目となる国際宇宙ステーションの組立て作業に参加する予定です。

 我が国は,独自の実験棟「きぼう」をもって本計画に参加することとしており,日本人宇宙飛行士も長期間にわたり,滞在することになっています。

 現在,本計画は,平成13年2月に明らかとなった米国における予算超過に端を発した諸問題に対応するため,参加各極間で計画見直しのための検討が行われています。我が国もこれらの検討に積極的に参加し,国際調整を図るとともに,国内においても,宇宙開発委員会等で本計画を効率的・効果的に推進するための検討を行っています。


{3}統合国際深海掘削計画(IODP)

 IODPは,日米主導の国際協力の下,深海底下7,000mを超える掘削能力を持つ我が国の地球深部探査船と米国掘削船との共同運用により地球深部を探査するものです。

 2001年(平成13年)に作成された初期10年間の科学計画に基づく地球深部に及ぶ地層の研究により,温暖化等の環境変動メカニズム及び地震等の地殻変動メカニズムの解明等に貢献するほか,未知の生物圏や新資源の探求が期待されています。

 1998年(平成10年)に航空・電子等技術審議会地球科学技術部会の「深海地球ドリリング計画評価委員会」における評価を受け,1999年(平成11年)から地球深部探査船の基本設計を開始し,翌々年から建造に着手しました。その後,2002年(平成14年)1月に,同掘削船を「ちきゅう」と命名して進水式が行われました。

 また,日米を中心としてIODP参加予定国,機関の政策担当者により,2003年(平成15年)10月のIODP開始に向けたIODP運営体制などの準備が進められています。

{4}大型ハドロン 衝突型加速器(LHC)計画

 LHC計画は,欧州原子核研究機関(CERN)における陽子・陽子衝突型加速器計画であり,1994(平成6年)12月に同機関の理事会においてその建設計画が正式に決定されました。

 LHCは,円周27kmにも及ぶ巨大な円形加速器であり,その円形トンネル内に超伝導磁石を並べ,陽子を逆方向に光に近い速度まで加速し,それらの陽子同士を衝突させるものです。その衝突の際に生じる膨大なエネルギー領域において,未知の粒子を発見し,物質の内部構造を探索解明することに資するものです。


* ハドロン

 粒子(物質を構成している最小の単位)の一種であるクォークによって構成される複合粒子(陽子や中性子など)の総称

{5}対人地雷の探知・除去技術に関する研究開発の推進

 アフガニスタンをはじめ世界の数多くの国において,埋設された地雷は復興・開発上の大きな障害の一つとなっています。我が国では,関係府省庁において,この問題に関する取組が行われています。研究開発の主体を担う文部科学省では,国際機関やNGO等と連携しつつ,人道的観点から,我が国の科学技術を駆使して,より安全・確実かつ効率的に対人地雷を探知・除去できるよう,科学技術振興事業団においてセンシング(地雷の検知)技術,アクセス(地雷原への移動接近)・制御技術の開発を行い,「日本らしさ」のある国際貢献を図っていきます。


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