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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第7章  科学技術システムの改革
第2節  産学官連携による研究開発成果の社会への還元の推進
1  大学等の研究成果の社会への還元



(1) 産学官連携強化のための情報発信・交流の促進

{1}情報発信の充実

 産学官連携の強化を促進するためには,産業界と公的研究機関の共通認識の醸成を図ることが重要です。

 文部科学省では,新産業創出に寄与することを目的として,科学技術振興事業団において様々な研究開発支援情報及び研究成果情報をデータベース化し,インターネットを通して広く情報提供を行っています。

{2}研究交流の促進

 国立大学や大学共同利用機関については,学外の組織・機関との研究協力により提供される資金を有効に活用するため,以下のような制度の整備や改善等を図っています。

(ア)企業等との共同研究

 国立大学等の研究者と企業等の研究者が共通の課題について共同して研究を行う制度です。国立大学等の持っている研究能力と企業等が持っている技術力などを結集することにより,優れた研究成果が期待されることから,幅広い分野で実施されています。共同研究件数も年々増加しており,平成13年度には5,000件を超えました。

 また,企業等が国公私立大学と共同して行う試験研究等のために支出した研究費の一定割合が,法人税や所得税から控除される税制上の特例措置もあります。

 なお,文部科学省では平成14年度から科学技術振興調整費のプログラムの一つとして,企業等と大学等公的研究機関との共同研究を通じた企業の問題意識やニーズに基づく研究を促進するとともに,企業等からの資金確保を促進するためのマッチングファンド 方式による共同研究制度を実施しています。

(イ)受託研究

 企業や国の機関,特殊法人等が,国立大学等に対して研究を委託する制度です。受託した国立大学等が,企業等が負担する経費で研究を行うものであり,その成果を委託者等に対して報告することによって,企業等の研究開発などに協力しています。

(ウ)共同研究センター

 文部科学省では,これまでに46都道府県にある62の国立大学に共同研究センターを設置しており,産業界との連携・協力の国立大学の窓口として機能するとともに,企業と行う共同研究などの実施の場となっています。また,企業等の技術者に対する高度技術研修や研究開発に関する技術相談等も行い,地域産業との連携・協力やその活性化に貢献しています。

 また,公的研究機関の研究成果の社会還元の強化を図るため,平成14年度から,産学官連携を推進する際に不可欠な各種専門知識を有する人材を大学の共同研究センター等のニーズに応じて派遣する産学官連携支援事業を行っています(平成14年9月現在71名派遣)。

(エ)官民共同研究施設

 共同研究を促進するため,研究交流促進法の一部改正(平成10年8月)により,企業等が国立大学や国立試験研究機関の敷地内に共同研究施設を建てる場合の土地の使用料を軽減することが可能となりました。これに基づき,北海道大学及び信州大学の構内に共同研究施設が整備されたほか,東京農工大学の構内に共同研究施設を建設する計画が進行中です。

(オ)新しい形態の産学官連携手法の構築

 大学と産業界の連携・協力を一層推進するため,文部科学省では平成11年度より,我が国の文化風土に対応した,21世紀にふさわしい新しい形態の産学官連携手法の構築を目指したモデル研究を大学と共同して行っています。


* マッチングファンド

 企業等からの資金提供を前提とする共同研究に対して公的研究機関の分担に応じた経費を助成する仕組み

{3}人的交流の促進

(ア)国立大学教員等の民間企業役員兼業

 国立大学教員や国立試験研究機関及び特定独立行政法人の研究公務員等の研究成果などの知見を企業において活かせるように,人事院規則の整備により,次の場合に国立大学教員や研究公務員等が企業の役員を兼業することができるようになりました。

○技術移転機関(TLO)の役員 ○教員や研究公務員等の研究成果を活用する事業を実施する企業の役員 ○株式会社や有限会社の監査役

 上記のTLO若しくは研究成果活用企業の役員を兼業する場合は,代表権を有することもできます。さらに,研究成果活用企業については,本務を休職して役員の職務に専念することもできます。

 平成14年9月現在,TLO役員兼業は39名,研究成果活用企業の役員兼業は89名,監査役兼業は15名が人事院の承認を受けています。

 さらに,人事院規則の一部改正等により,平成14年10月から,TLO及び研究成果活用企業の役員兼業の承認権限を人事院から所轄庁の長等に委任し,その権限をさらに国立大学等の長等に再委任することも可能となりました。

(イ)技術コンサルティング兼業等

 国立大学教員や研究公務員等が勤務時間外に許可を得て,企業の研究開発や研究開発に関する技術指導(技術コンサルティング)に従事することができるようになりました(国立試験研究機関等の研究公務員については平成8年度,国立大学教員については9年度に措置)。また,兼業件数や兼業時間数の制限を撤廃しました(平成9年4月)。

 さらに,平成12年度からは,国立大学教員や研究公務員等が,TLOが業務として行う技術コンサルティングに従事することができるようになり,14年度からは,営利企業の経営及び法務に関する助言を行うことができるようになりました。


(2) 大学等の研究成果の社会還元の推進

{1}技術移転機関(TLO)

 平成10年8月に「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」が施行されました。この法律は,大学等の研究成果の特許化や産業界への移転の促進を通じて,新たな事業分野の開拓や産業の技術の向上,大学等の研究活動の活性化を図ることを目的としています。同法に基づき,14年9月現在,27のTLOを承認しており,各地域において精力的な活動を行っています。

 また,平成11年10月に施行された産業活力再生特別措置法により,TLOの特許料等を2分の1に軽減しました。さらに,12年4月に施行された産業技術力強化法に基づき,TLOが国立大学等の施設を無償で使用することができるようになりました。

{2}科学技術振興事業団

 科学技術振興事業団では,大学等の公的研究機関の優れた研究成果の発掘・特許化の支援から,企業化が著しく困難なものについて企業化開発に至るまでの一貫した取組を推進しています。

(ア)研究成果の権利化から育成段階での取組

 平成14年度から従来の事業を整理し,研究成果の掘り起こしから実用化までを技術移転プランナーが一貫して支援を行う研究成果最適移転事業を新たに立ち上げました。当事業では研究成果の育成程度に応じて,共同で試作品開発を行ったり,ベンチャー 起業に向けた実用化研究などを行っています。

(イ)企業化段階での取組

 優れた研究成果のうち,企業化が著しく困難なものについては,企業に委託することにより新技術の開発を行う委託開発事業を推進しています。


* ベンチャー

 大学等の独創的研究成果をもとに設立された新規企業

{3}大学発ベンチャー創出支援制度

 大学発ベンチャー創出を促進するため,文部科学省では平成14年度から,ベンチャーを起こす際の技術になる成果をもたらすと期待される大学の研究者等が行う技術開発や起業に向けた事業化計画の策定等に必要な資金を助成しています。

{4}大学発ベンチャーによる国立大学等の施設の有償使用

 国立大学等の研究成果を活用した事業(創業準備を含む)を行う中小企業又は個人(「大学発ベンチャー」)に対し,平成14年6月からその事業の用に供するため国立大学等の施設を使用させることが可能となりました。

{5}新興分野人材養成(知的財産)

 我が国では知的財産の確保・活用に通暁する人材の不足が従来より指摘されていました。そのため,平成14年度から科学技術振興調整費の新興分野人材養成プログラムの一つとして知的財産の確保・活用に関する専門知識を有し,将来,研究機関等現場において専門的業務を担うことができる人材の養成を実施しています。

{6}公私立大学の設置者や国公私立大学教員の特許料等の軽減

 大学等の研究成果が企業で活用されるためには,研究成果を特許という形で自主的かつ積極的に取得していくことが必要です。そのため,産業技術力強化法に基づき,公私立大学の設置者や国公私立大学教員に係る特許料等を2分の1に軽減しました。


(3) 産学官連携に係る最近の動き

{1}大学発イノベーション推進会議

 大学を核とする産学官連携を着実に推進するとともに,今後の体系的な政策形成に資するため,国公私立大学・高等専門学校,TLO等の関係者による連絡会議を平成14年3月に東京,大阪で開催しました。また,この会議に産業界からの参加も得て,産学官連携施策について意見交換を行いました。

{2}科学技術・学術審議会

 科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会の下に,組織的管理・活用を視野に入れた大学等における知的財産の取扱いについて調査検討する「知的財産ワーキング・グループ」と,産学官連携に関する「利益相反」(責任ある地位に就いている人間の個人的な利益と公的な責任との間に生じる衝突)問題について調査検討する「利益相反ワーキング・グループ」をそれぞれ平成14年5月に設置し,各ワーキング・グループで個別の課題について有識者のヒアリングを踏まえた上で審議しているところです。

{3}研究開発成果の取扱いに関する検討会

 従来我が国では研究開発成果の帰属と利用の在り方が必ずしも明確ではなく,研究開発成果の有効な活用という要請に必ずしもこたえてきませんでした。また,平成13年度にはアメリカで研究機関と日本人研究者との間で研究開発成果の帰属と利用をめぐり,刑事事件にまで発展しました。

 こうした状況を受けて,平成14年1月「研究開発成果の取扱いに関する検討会」が発足し,5月に報告書が取りまとめられました。報告書では,国立大学や公的研究機関の研究者によって得られた研究成果は,利用促進の観点から「研究機関に帰属させることが適当」としています。文部科学省では,この報告書の考え方に基づき,研究開発成果としての有体物の取扱いに関する指針を同年7月に作成し,国立大学等に通知しました。

{4}その他

 産学官連携については文部科学省のみならず,政府全体として取組が進められており,平成13年度は九つの地域において内閣府等の主催による地域産学官連携サミットが開催されたほか,14年6月には全国から企業・大学・行政の代表者や第一線で活躍する研究者や実務家が3,000人以上参加した「第1回産学官連携推進会議」が京都で開催されました。また,知的財産に関する意識の高まりから知的財産戦略会議が総理をはじめとする関係閣僚等の間で開催され,同年7月には「知的財産戦略大綱」が策定され,同年11月には知的財産基本法が成立しました。


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