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第1部   新しい時代の学校〜進む初等中等教育改革〜
第5章  諸外国の初等中等教育改革
第2節  アメリカ合衆国
1  「落ちこぼれをつくらない」


 アメリカでは,1980年代半ばから学力の向上(底上げ)を最大の目標として教育改革に取り組んでいます。1960〜70年代,学習者個人の教育的ニーズや興味・関心を重視するあまり指導内容や期待される学力水準が多様化し,その結果,基礎学力の低下に対する強い懸念が示されるようになりました。国内外の各種テストでの成績低迷やハイスクールの高い中退率(卒業までに30%が中退)は1980年代以降大きな問題となっており,労働力の質的向上を求める経済・産業界からの要請と併せて,学力向上はアメリカ社会の大きな課題となっています。

 州が教育の責任を負うのがアメリカの教育制度の基本ですが,経済のグローバル化と競争の激化が進み,人材への不安が高じると国全体のリーダーシップが求められるようになり,連邦の役割が強まりました。州知事を集めた教育サミットを経て,1994年にクリントン前大統領は「数学・理科で世界の最高水準になる」などの全国共通教育目標を立てました。学力向上を目指す教育改革は2000年の大統領選挙でも大きな争点の一つとなり,当選したブッシュ現大統領は就任後直ちに教育政策の方針を発表,2002年1月にはこの方針に基づく「落ちこぼれをつくらないための初等中等教育法(No Child Left Behind Act)」を成立させました。

 こうした連邦主導で進められた学力向上策は,主として,{1}教育スタンダードの制定と{2}共通テストの実施から成っています。それまで教育課程の基準は州の下の地方教育委員会が定めており,州はごく大まかな大綱的指針を作成しているだけでした。改革により,各州はより具体的な基準として1990年代に教育スタンダードを作成し,連邦政府も各教科の全国的な専門団体に補助金を交付してそのモデルとなるスタンダード開発を援助しました。各州の教育スタンダードは英語,数学,理科,社会などの主要教科について教育内容や到達水準を規定しています。その性格は拘束力を持つ場合とモデルとなる場合など,州によって異なります。

 さらに,こうして作成された教育スタンダードの定着度合を測るため,スタンダードに基づく州内共通テストが実施されるようになりました。共通テストの教科や実施学年などは州によって様々ですが,「落ちこぼれをつくらないための初等中等教育法」では英語と数学について共通テストを行うよう州に求めています。州によってはこの共通テストで一定の成績をあげることを進級や卒業の要件としているところもあります。

 また,このような学力向上策の中で近年は特に「読み書き」の力に重点が置かれるようになっています。ブッシュ大統領は2002年に読み書き能力強化プログラム「まず読み書きを」を各州に提唱し,指導法の研究開発や教員研修などのために900万ドル(約10億8,000万円)の連邦予算を支出すると表明しました。



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