ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   新しい時代の学校〜進む初等中等教育改革〜
第5章  諸外国の初等中等教育改革
第1節  諸外国が目指す「新しい時代の学校」


 経済活動の国際競争が激しさを増し,情報革命が急速に進展する21世紀社会のめまぐるしい変化の中で,国の将来を見据えながら,その将来を切り拓く人材を育てる教育改革に真剣に取り組んでいるのは我が国だけではありません。欧米やアジアの諸国も,それぞれの歴史文化や社会の上に「新しい時代の学校」を築こうと改革を模索しています。

 諸外国の新しい学校づくりに共通しているのは,学力を第1の重要な問題ととらえていることです。しかし,その学力問題に取り組む手法や目標は国によって違いがあり,例えば,アメリカ合衆国(以下,アメリカ)やイギリスではそれまでなかった州や国の教育課程基準を設け,共通化を進めています。ドイツでもこの1年急速に学力問題が浮上し,全国共通の到達目標を設ける議論が強まっています。これに対して,フランスや中国,韓国では我が国と同じく,むしろこれまでの画一性を反省し,多様化・弾力化へと向かっています。

 そしてアメリカ,イギリス,ドイツ,フランスなどの欧米では「基礎学力」,中国や韓国,我が国といった東アジアでは「創造性」が目指す学力の目標として強調されています。この章では取り上げませんでしたが,シンガポールも創造性を高く目標に掲げています。

 しかし,このような異なる手法や目標は,学力低下に悩んでいる欧米諸国,一方で基礎学力は一定水準を達成したものの時代を拓く独創性や創造性をはぐくむことに不安を持つ東アジア,というそれぞれの現状を踏まえたものであり,改革の行く先に「基礎基本の確実な習得」と,その上に立った「個性や創造性の伸長」をともに追い求めていることにはいずれの国々も変わりがありません。

 多様化・弾力化を進め,創造性をはぐくもうとしている我が国の教育も,授業時間に関する規定や教科書の検定のないアメリカやイギリスと比べれば,依然として共通性はより大きいといえますが,この両国が学力向上策として共通化を進めていることを見ても,一定の共通性は基礎基本を確かにし,全体的な基礎学力の水準を保つ上では必要なことと思われます。

 子どもの人格形成や道徳・社会性を育てる教育についても,伝統的に学校教育の役割としてはさほど重視してこなかった欧米諸国と,これを重要な役割に位置付けてきた東アジア諸国との違いがあります。しかし,近年の青少年非行・犯罪の増加,暴力行為・いじめの深刻化,道徳性の低下といった子どもの心を巡る問題への関心はますます大きくなり,いずれの国でも心の教育の面で学校にかかる期待は高まっています。諸外国においては公民教育やボランティア活動の導入,強化などを通じて社会性や道徳性を育てていこうとしています。

 学校運営については,一定の共通基準の下に学校の自主的な取組を認め,その結果を問いかけるアカウンタビリティ(教育の結果に対する責任)重視の方向が,我が国を含め多くの国に共通している試みです。ただし,アメリカやイギリスがその結果を基礎学力の向上で見,韓国や我が国が学校の多様性や特色を強調している点は,それぞれがまず何を目標にしているかの違いによるものと思われます。アカウンタビリティ政策は,共通の学力テストで客観的な数字となって表れ,著しく悪い成績が出れば閉校や行政機関の改善指導,生徒の転校などの措置が採られたり,生徒や親が学校を選択しなくなるなどの事態が待つアメリカやイギリスでは,より厳しい政策となっています。

  第2節 から個別の国について,こうした新しい学校づくりの改革を詳しく見ていきます。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ