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第1部   新しい時代の学校〜進む初等中等教育改革〜
第3章  豊かな心の育成に向けて
第3節  豊かな心の育成を目指した取組
2  施策の概要


 このような考え方の下に,学校教育については,新学習指導要領や完全学校週5日制の趣旨を踏まえ,子どもたちの豊かな人間性をはぐくむために,心に響く道徳教育の推進,学校内外での多様な体験活動の促進,読書活動の充実,児童生徒の問題行動等に対応した教育相談体制の充実等,様々な取組の充実を積極的に推進しています。


(1) 道徳教育の充実

{1}学校教育における道徳教育の意義と位置付け

(ア)道徳教育の意義

 道徳教育は,子どもたち一人一人が,自分自身や未来をしっかり見つめ,人間としてよりよく生きるために必要な道徳性を主体的に身に付けていくためのものです。

 学校では,子どもたちの人間としての調和のとれた育成を目指して教育活動が行われています。そのような学校の教育活動の中で子どもたちの内面に根ざした道徳性の育成を目標とする道徳教育は,極めて重要な役割を担っています。

(イ)道徳教育の位置付け

 学校における道徳教育は,学校の教育活動全体を通じて行うこととしています。

 そして,小学校・中学校においては,全教育活動における道徳教育と密接な関連を図りながら,計画的・発展的な指導によって,これを補充,深化,統合するため,「道徳の時間」(週当たり1単位時間,年間35単位時間)を設け,原則として学級担任が指導を行います。「道徳の時間」は,子ども一人一人が自らの人間としての生き方について,自己と向き合いながら考えを深めていく時間であり,道徳教育のかなめとなる時間です。

 また,高等学校においては,道徳の時間は設けられていませんが,公民科や特別活動のホームルーム活動を中心に学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行い,子どもたちが人間としての在り方,生き方を主体的に探究し,豊かな自己形成ができるよう指導することとしています。

(ウ)道徳教育の内容

 こうした道徳教育を通して子どもが身に付ける道徳の内容については,小・中学校の学習指導要領において,次のように,子どもの道徳性を四つの視点からとらえ,分類整理して示しています。

(1)「主として自分自身に関すること」  望ましい生活習慣を身に付ける,着実にやり抜く強い意志をもつ,よいことと悪いことの区別をする,真理を愛する,自己の向上を図る  など (2)「主として他の人とのかかわりに関すること」  礼儀正しくする,思いやりの心をもつ,互いに励まし合う,それぞれの個性や立場を尊重する  など (3)「主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること」  自然を愛護し,美しいものに感動する,人間の力を超えたものに対する畏敬の念をもつ,かけがえのない自他の生命を尊重する  など (4)「主として集団や社会とのかかわりに関すること」  役割と責任を自覚し集団生活の向上に努める,法やきまりを遵守する,公正,公平にする,勤労の尊さを理解する,郷土や国を愛しその発展に努める,世界の平和と人類の幸福に貢献する  など

(エ)新しい学習指導要領における道徳教育の改善の要点

 教育課程審議会答申(平成10年7月)において,道徳教育については,改善の基本方針として,次の3点が示されました。

○体験活動等を生かした心に響く道徳教育の実施 ○家庭や地域の人々の協力による道徳教育の充実 ○未来へ向けて自らが課題に取り組み,共に考える道徳教育の推進

 これを踏まえ,新しい学習指導要領では,善悪の判断や郷土を愛することなどの内容を充実するとともに,体験活動等を生かした多様な取組の工夫や魅力的な教材の開発や活用などを行うこと,子どもや学校の実態等に応じた重点的な指導を工夫すること,校長が指導力を発揮して学校全体で取り組むようにすること,学校の道徳教育に地域の人々の参加・協力を積極的に求めたりすることなどの改善を図っています。

道徳教育推進状況調査

 文部省(当時)では,平成10年に全国の国公私立の小・中学校及び都道府県,市町村教育委員会を対象として,道徳教育推進状況調査を実施しました。その結果,各地で優れた取組が多く見られる一方で,次のような改善を要する点が明らかになりました。

○道徳の時間の年間実施時数は,小学校で平均33.9時間,中学校で平均31.0時間と小・中学校とも前回調査(平成5年実施)に比べて増加しているが,依然として学習指導要領に定める標準授業時数(35単位時間)を下回っている学校が多数ある。 ○道徳の指導の内容項目のうち,児童生徒の達成状況について,50%以上の学校がおおよそ満足できると答えた項目は,小学校では「自然や動植物愛護」「明るさや誠実さ」,中学校では「節度ある生活」の項目しかなく,大半の項目は40%未満にとどまっている。

{2}道徳教育の充実のための取組

 文部科学省においては,道徳教育の一層の充実を図るため様々な施策を進めており,その主なものは次のとおりです。

(ア)「心のノート」の作成・配布

 子どもたちが身に付ける道徳の内容を分かりやすく表し,道徳的価値について,自ら考えるきっかけとし,理解を深めていくことができる教材として「心のノート」(小学校1・2年用,3・4年用,5・6年用,中学校用の4種類)を作成し,平成14年度からすべての小・中学生に配布しました。

 「心のノート」は,道徳の時間だけではなく,各教科の学習など学校の教育活動の様々な場面において活用するとともに,子どもが自らページを開いて書き込んだり,家庭において話題にしたりするなど,子どもの生活の様々な場面において活用することができるものです。

 学校の教育活動や家庭における「心のノート」の趣旨を生かした創意ある活用を通して,子どもたちが,身に付ける道徳の内容を知り,授業や生活に意欲的に取り組むとともに,自己の道徳的成長を実感することが期待されます。さらに,体験活動やそれを生かした道徳教育を一層充実させること,教職員全体の共通理解による指導体制づくりや,いわば学校と家庭の架け橋としてその連携を促進することなどが期待されます。

 また,文部科学省では,各学校において「心のノート」が一層積極的に活用されるよう,教師用指導の手引を小・中学校等の全教員を対象に配布するなどしています。さらに,今後,様々な場面における「心のノート」の活用の実践例等を各学校に提供していくこととしています。


(イ)児童生徒の心に響く道徳教育推進事業

 地域や学校の実態に応じて,地域人材の活用,体験活動等を生かした道徳教育,伝統文化教育,道徳教材の開発,高等学校における道徳教育など,子どもたちの心に響く創意工夫を生かした道徳教育を推進するための実践研究を,都道府県教育委員会との連携・協力の下に実施しています。

(ウ)「心のせんせい」の配置

 平成13年度より「学校と社会の相互交流事業」において,学校外から優れた人材を特別非常勤講師として配置していますが,平成14年度からは,地域の人生経験豊かな人材や多様な専門分野の社会人など,地域の人材を「心のせんせい」として学校に派遣し,子どもたちの心に響く道徳の授業を推進しています(平成14年度は,1,121人を派遣)。この事業を先例とし,保護者や地域の人々の参加や協力を得ながら道徳教育の充実が進められつつあり,成果が期待されています。また,これらの授業は地域の人々と共に取り組まれることから,開かれた学校づくりの促進にも役立っています。

{3}幼児期からの心の教育

 幼児期における教育は,人間形成の基礎を培う重要な役割を果たすことから,幼稚園は,道徳性の芽生えを培うことを目標の一つとして掲げ,その充実を図っていくための実践的研究を進めています。また,平成13年度には,教師が指導を進める際に参考となる「幼稚園における道徳性の芽生えを培うための事例集」をすべての幼稚園に配布しました。さらに,平成14年度からは,社会全体で子どもの豊かな心をはぐくむことを目指して「幼児とともに心をはぐくむキャンペーン」(文部科学省ホームページ:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youji/index.htm)を実施しています。


(2) 豊かな体験活動の展開

{1}体験活動の意義と効果

 子どもたちが自然体験や社会体験などを行う場や機会を増やし,豊かな人間性や社会性を育てるために,学校,家庭,地域が一体となってそれぞれの教育機能を発揮していくことが重要です。平成13年7月,学校教育法及び社会教育法を改正し,学校内外を通じて多様な体験活動を促進していくため,{1}学校において,社会教育関係団体等と連携を図りながら,ボランティア活動など社会奉仕体験活動や自然体験活動等の体験活動の充実に努めること,{2}教育委員会におけるこうした多様な体験活動の機会の提供に関する事業の実施等がそれぞれ法律上明記されたところです。

 また,平成14年7月の中央教育審議会答申「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」では,個人が社会に参画し,相互に支え合うような社会を目指すという観点に立つとともに,青少年の時期には,学校内外における奉仕活動・体験活動を推進する等,多様な体験活動の機会を充実し,豊かな人間性や社会性などを培っていくことが必要であるとして,学校,家庭,地域が連携・協力して,社会的な仕組みづくり等を行うことが提言されています。

 学校教育において体験活動を行うことは,このように豊かな人間性や社会性をはぐくむ以外にも様々な効果が期待できます。

 例えば,国立教育政策研究所の調査によれば,自然にふれる体験をしたときに,勉強を「とてもやる気になる」「やる気になる」子どもたちは,小学生では91.4%,中学生では73.2%,高校生では62.9%となっているほか,地域の人々とふれあう体験をしたときについても,小学生で86.8%,中学生で60.9%,高校生で51.3%となっており,体験活動を実施することにより,子どもたちの学習意欲が高まることが明らかになっています( 表1-3-7 )。

表1-3-7 学校意欲に関する調査研究

{2}学校教育における体験活動の充実

 文部科学省は,平成14年10月,小・中・高等学校における先進的な体験活動の実践事例を収集して「体験活動事例集」を作成し,教育委員会等に配布しました。

 また,平成14年度から「豊かな体験活動推進事業」を新たに実施し,各都道府県に「体験活動推進地域」及び「推進校」を指定して,他校のモデルとなる体験活動の推進を図っています(平成14年度は100地域,800校において実施)。本事業では,「推進地域」及び「推進校」において得られる先駆的な取組について協議会の開催や事例集の作成を通じて広く全国に普及させることにより,すべての小・中・高等学校等において豊かな体験活動の展開を目指しています。

 このほか,地方公共団体においても,例えば兵庫県の「トライやる・ウィーク」事業,石川県の「地域と共に『わく・ワーク(work)』体験」事業など,学校における体験活動を支援するための地域ぐるみの取組が行われており,今後ともこうした主体的な取組の一層の充実が期待されます。

コラム{2}

-セカンドスクール-

 東京都武蔵野市では,市内の公立小学校5年生・中学校1年生のすべての児童生徒が参加して,学期中に授業の一部を自然に恵まれた場所で長期に滞在して行うセカンドスクールを実施しています。セカンドスクールは,民宿や青年の家等において,小学校では6〜9泊,中学校では4泊の長期宿泊体験をしつつ,ふだんの学校生活ではなかなか体験しにくい活動を通して,課題解決的な学習などをより効果的に達成することを目指しています。また,田植え・稲刈り等の農業体験活動や炭焼き等の森林における体験活動,そばづくり等の郷土料理づくり,わら細工,和紙すき等郷土の文化に関する多様な体験活動を行うことにより,自立に必要な知識や技能を身につけるとともに,協調性や連帯意識を醸成し,豊かな人間関係をはぐくむことにもつながっています。


{3}その他体験活動の充実のための取組

(ア)教員の体験活動研修

 学校において体験活動を推進するために,教員の体験活動に関する知識や経験を高めることが重要であるほか,教員が民間企業や公的施設等において多様な社会体験を積むことも,体験活動の充実に資するものと考えられます。都道府県教育委員会等では,教員をおおむね1か月から1年程度の期間にわたって派遣する長期社会体験研修を実施しており,平成12年度は民間企業,社会福祉施設,社会教育施設等学校以外の施設等に対して,1,042人が派遣されています。

(イ)高等学校における生徒のボランティア活動等の単位認定

 平成10年の省令改正により,ボランティア活動,インターンシップ(就業体験)その他これらに類する活動に係る学修の成果を,各学校の判断により,高等学校の科目の履修とみなし,単位を与えることができるようになりました。平成13年度は,33都道府県において131校の高等学校がボランティア活動等に係る学修の単位認定を実施しています。

コラム{3}

-地域と共に「わく・ワーク(work)」体験(石川県)-

 石川県では,県内公立中学校の2年生全員及び県立盲・聾・養護学校中学部2年生全員が,3日間にわたって職場体験等の体験活動を実施しています。各学校では,教職員,保護者,地域の企業・施設等の関係者による推進委員会を組織し,学校・家庭・地域社会が一体となって準備,運営等に当たっています。

 生徒にとっては,職業やこれからの自分の進路について考えることを通して,望ましい職業観,勤労観を身に付ける良い機会となるとともに,実際の社会において学校では学べない他人への思いやりや挨拶などの礼儀,責任感等,多くのことを学んでいます。


(ウ)職場体験・インターンシップ等の推進

 職場体験や高校生のインターンシップは,生徒が学習内容や将来の進路等に関連した体験活動を行うことにより,望ましい職業観・勤労観の育成や,学校での学習と職業との関係についての理解が深まること,保護者や教師以外の大人と接することによるコミュニケーション能力等の向上など,極めて高い教育効果が期待されています。特に高等学校におけるインターンシップの実施率は年々上昇してきており,平成13年度においては,公立(全日制)の高等学校全体の38.9%(普通科では21.7%,職業学科では67.8%,総合学科では69.1%)で実施されています。

 文部科学省も,これらの取組を推進するため,新高等学校学習指導要領で,各高等学校において就業体験の機会の確保について配慮することを規定しているほか,各都道府県教育委員会等に対し,インターンシップの推進に努めるよう通知するとともに,関係経済団体等に対し,その積極的な受入れを要請しているところです。

 また,インターンシップ推進のための全国フォーラムの開催や,インターンシップ事例集の作成等にも取り組んでいます。

 さらに,平成14年11月からは,児童生徒の発達段階に応じた系統的なキャリア教育(望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに,自己の個性を理解し,主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育)の在り方及びその推進方策等について検討するため,教育,経済,労働,行政など様々な分野の専門家から構成される「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」を発足させたところです。

(エ)学校施設の開放等

 学校内外において体験活動を実施する観点等から,学校が所有する施設を放課後や週末などに,地域の住民などに対して開放することも重要です。文部科学省では各自治体の学校開放や,廃校となった校舎等の社会教育施設等としての活用を支援しています。

コラム{4}

-体験交流施設「くすの木」(千葉県和田町)-

 千葉県和田町では,平成7年に閉校した上三原小学校の校舎を活用して,「自然の宿・くすの木」を平成9年12月に開設し,地域住民のふれあいの場や,都市部との体験交流の場として活用しています。「くすの木」では,学校の教室を改造した宿泊施設や厨房,納豆づくりや味噌づくりのための加工実習室などが設けられており,夏休みを中心に,県内をはじめとして関東近県から子ども会や親子連れなどが訪れています。



(3) 読書活動の充実

 読書は,子どもたちに豊かな感性や情操,そして思いやりの心をはぐくむ大切な営みであり,学習指導要領においては,楽しんで読書しようとする態度や幅広く読書しようとする態度,読書を通して考えを広げたり深めたりしようとする態度などを育てることが国語科の目標とされています。

 平成14年5月に行われた民間の調査では,児童生徒の1か月間の平均読書量は,小学校で7.5冊,中学校で2.5冊,高等学校で1.5冊となっており,1か月間に1冊も本を読まなかった者の割合は,小学校で8.9%,中学校で32.8%,高等学校で56.0%となっています( 図1-3-9 )。

図1-3-9 第48回読書調査(平成14年6月調査,毎日新聞社,社団法人全国学校図書館協議会)

 このような中,すべての子どもが機会や場所を問わず,自主的に読書活動ができるよう積極的にそのための環境の整備を推進するため,平成13年12月に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が公布・施行され,平成14年8月には,同法に基づき,「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が策定されました。計画では,学校教育において,「朝の読書」や読み聞かせなどの取組を一層普及させることや学校図書館の蔵書の充実など,児童生徒の読書習慣を確立する取組や読書活動を推進するための環境の整備を図ることとしています。

コラム{5}

-朝の読書活動-

 埼玉県白岡町立南中学校では,平成10年度より「朝の一斉読書」に取り組んでいます。朝会の実施される火曜日を除いた毎朝10分間,全校生徒が教室で読書することにより,子どもたちの本に対する興味を高めるとともに,読書を通して命の大切さや思いやりの心,善悪の判断や感動する心など,豊かな人間性や情操をはぐくむことを目指しています。子どもたちからは,「学校に来る楽しみが一つ増えた」,「朝から静かな時を過ごせて気持ちがいい」,「いろいろなものに興味を持つようになった」などの声が寄せられています。



(4) 学校教育におけるその他の様々な取組

{1}人権を尊重する心の育成

 憲法及び教育基本法の精神にのっとり,基本的人権尊重の教育を推進していくことは極めて重要です。具体的には,社会科,公民科,道徳等において,基本的人権の尊重,思いやりの心を持ち差別や偏見のない社会の実現に努めることを指導するなど,児童生徒の発達段階に応じ,学校教育活動全体を通じて児童生徒の人権尊重の意識を高め,一人一人を大切にした教育の充実を図っています。国においては,平成14年3月に「人権教育・啓発に関する基本計画」を閣議決定したところであり,文部科学省では,学校や地域においてモデル的な実践研究を行うなど,人権教育の充実に向けた取組が総合的に推進されるよう努めています。

{2}自然や文化などを愛し大切にする心の育成

 児童生徒が自然や文化などについて理解を深めるとともに,それらを愛し大切にする心を育てることは,豊かな人間性をはぐくむ上で重要です。

 学校教育では,特別活動や総合的な学習の時間において学校の実態に応じ自然とふれあうなどの体験活動が行われているほか,理科や生活科において自分と身近な動物や植物などの自然とのかかわりに関心を持ち,観察したり,育てたりしながら,自然の事物・現象についての理解を深めるとともに自然を愛する心情を育てることとしています。これらに加え,社会科や家庭科などの教科等の中でも環境に関する学習が行われており,環境を大切にし,より良い環境づくりやその保全に配慮した望ましい行動がとれるようにするための教育が行われています。

 また,社会科において地域に残る文化財や年中行事,先人の業績などについて調べたり,音楽科や美術科において伝統的な音楽や作品などについての学習が行われるとともに,総合的な学習の時間等において学校の実態に応じて地域の文化や伝統にふれたり継承するなどの活動が行われています。このような学習活動を通じ,地域や日本の文化や伝統・歴史などを愛し,大切にする心をはぐくむ教育が行われています。

{3}特別活動を通じた人間関係の確立

 特別活動は,学級活動,児童(生徒)会活動,学校行事等から構成されており,例えば中学校では「望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り,集団や社会の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的,実践的な態度を育てるとともに,人間としての生き方についての自覚を深め,自己を生かす能力を養うこと」を目標として実施されています。

 このような目標に沿って,特別活動においては,集団活動を通した教育活動としての特質を生かし,集団の一員としての自覚を深め,豊かな人間性や社会性を育てる教育が展開されています。

 新学習指導要領では,特別活動について,好ましい人間関係の醸成,基本的なモラルや社会生活上のルールの習得,協力してより良い生活を築こうとする自主的・実践的な態度の育成,ガイダンスの機能の充実などを重視する観点から改善が図られました。各学校においては,創意工夫を生かしつつ,それぞれの実態や児童生徒の発達段階などを考慮し,教師の適切な指導の下に,児童生徒による自主的・実践的な活動が助長されるようにするほか,家庭や地域の人々との連携,社会教育施設等の活用,幼児,高齢者,障害のある人々などとのふれあい,自然体験や社会体験などの充実などについて工夫することが望まれます。


(5) 児童生徒の問題行動等への取組

 深刻な暴力行為,いじめ,不登校などの生徒指導上の諸問題の解決のためには,家庭,学校,地域社会がそれぞれの役割を果たし,一体となった取組を行うことが重要です。学校は,校長のリーダーシップの下,深い児童生徒の理解に立ち,一人一人の児童生徒が生き生きとした学校生活を送ることができるよう全校が一体となった生徒指導体制の確立に努める必要があります。

 こうした考え方に立って,文部科学省では,次のように各種の施策を総合的に推進しています。また,国立教育政策研究所生徒指導研究センターでは,生徒指導や進路指導に関する行政の企画立案に資する調査研究に取り組んでいます。

{1}分かる授業,楽しい学校の実現と心の教育の充実

 学校は子どもたちにとって楽しく学び生き生きと活動できる場でなくてはならず,子どもたち一人一人が大切にされ,自分の存在感や自己実現の喜びを実感できるようなところでなければなりません。このため,まず,一人一人を大切にし,個性を生かす教育を充実するという基本的な考え方の下,新学習指導要領の趣旨を実現する教育を着実に推進していく必要があります。

 文部科学省においては,本節で紹介した心の教育にかかわる様々な取組のほか,確かな学力の向上を目指して各般にわたる施策を推進しています( 第2章 参照)。

{2}教員の資質能力の向上

 問題行動等の未然防止や早期の発見・解決を図るためには,すべての教員がこれらについて正しい理解と正確な認識を持ち,児童生徒に対する指導力を備えることが必要です。このため,生徒指導担当教員に対して,生徒指導,教育相談の理論及び実際について総合的かつ実践的な研修を行うため,「生徒指導総合研修講座」を実施しているほか,都道府県教育委員会等が実施する初任者研修や教職経験者研修等において,生徒指導等に関する研修を実施しています。

{3}教育相談体制の充実

 児童生徒,保護者,教員の抱える学校教育に関する不安や悩みを受け止めるためには,学校,市町村,都道府県等の様々な段階で,これらに対する教育相談体制の整備を図る必要があります。

 文部科学省では,平成7年度から学校における教育相談体制等の機能の充実を図るため,「心の専門家」である臨床心理士などをスクールカウンセラーとして配置し,逐次その拡充を図ってきました。平成13年度からは,「スクールカウンセラー活用事業補助」を開始し,各都道府県・政令指定都市において,スクールカウンセラーを活用する際の諸課題についての調査研究事業を行うために必要な経費の補助を行っているところです(平成14年度5,500校)。これまでの取組を通じて,スクールカウンセラーの配置は,児童生徒の問題行動等の予防・発見・解消,保護者や教員の子どもへの接し方についての助言の両面で効果がある等の成果が数多く報告されています。

 また,平成10年度から,公立中学校に教職経験者や青少年団体指導者など地域からの人材を「心の教室相談員」として配置し,生徒の悩みなどの相談にのったり,気軽な話し相手となったりすることにより,生徒が悩み等を抱え込まず,心にゆとりを持てるような環境づくりのための調査研究を行っています(平成14年度4,000校)。

{4}学校・家庭・地域・関係機関の連携

 児童生徒の問題行動等の解決のためには,学校・家庭・地域・関係機関が一体となって取り組むことが必要です。平成13年4月には,文部科学省の「少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議」の報告の中で,学校と関係機関が問題行動等に関する情報の交換(「情報連携」)のみにとどまらず,自らの役割を果たしつつ一体となって対応を行うこと(「行動連携」)の必要性等が提言されました。これを受け,文部科学省では,平成14年度から,モデル地域におけるサポートチーム(問題行動等を起こす個々の児童生徒の状況に応じ,学校,教育委員会,関係機関等が連携して対応するチーム)の組織化などを行う「サポートチーム等地域支援システムづくり推進事業」を実施しています(平成14年度100地域)。

{5}安心して通える学校づくりと出席停止制度の改善

 いじめの問題に関しては,これまでに中学校生徒の自殺事件が発生するなどの深刻な状況を踏まえ,有識者の会議から数次の提言がなされ,文部科学省では各教育委員会や関係団体と緊密に連携を図りながら,速やかな対策を講じてきています。特に,「弱い者をいじめることは人間として絶対に許されない」との認識に立ち,いじめられている子どもの立場に立った親身の指導を行うこと等を強調しています。

 多くの子どもたちが安心して学校生活を送れるよう,公立小・中学校の出席停止制度については,平成12年12月の教育改革国民会議報告において「問題を起こす子どもへの教育をあいまいにしない」との提言が出されました。この提言を踏まえ,平成13年7月に学校教育法を改正し,出席停止制度について,{1}要件を明確化し,{2}手続規定を整備し,{3}出席停止期間中の児童生徒に対する学習支援等の措置を講ずることを内容とする改善を図ったところです(平成14年1月施行)。文部科学省では,各市町村教育委員会において,法改正を踏まえて出席停止制度の適切な運用が図られるよう指導・支援しています。

{6}不登校の子どもへの柔軟な対応

 不登校については,不登校がどの子どもにも起こり得るという視点に立って,学校内外での取組を進めていくことが必要です。文部科学省では,学校が「心の居場所」としての役割を果たすよう,その取組の充実について指導を行うとともに,適応指導教室等において指導を受けた場合の出席扱いの措置,中学校卒業程度認定試験の受験資格の弾力化といった様々な柔軟な対応をとってきています。また,不登校児童生徒への適切な適応指導の在り方については,平成11年度から適応指導教室や民間施設における取組についての調査研究「不登校児童生徒の適応指導総合調査研究委託(SSP)」を実施しています(平成14年度の対象施設635)。

 また,平成14年9月からは,「不登校問題に関する調査研究協力者会議」を発足させ,今後の不登校対策の在り方について幅広い観点から検討を行っています。

表1-3-8 文部科学省における生徒指導関係の最近の主な取組


(6) 有害情報から子どもを守る取組等

 メディア上の性,暴力等の有害情報については,心身の発達途上にあって,判断力,責任感が未熟な青少年に対する悪影響が懸念されるところであり,従来からこの問題については,内閣府をはじめ政府全体で様々な取組を行っています。また,最近では,インターネット等の利用に起因した犯罪等に子どもたちが巻き込まれるといった問題も深刻になってきています。

 文部科学省では,児童生徒の情報を活用する実践的な力や情報の科学的な理解をはぐくむとともに,社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解させるなど,情報社会に主体的に対応できる「情報活用能力」の育成を図っています。具体的には,新学習指導要領において,各教科等の指導に当たって,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充実するとともに,中学校技術・家庭科の中で,情報化が社会や生活に及ぼす影響を知り,情報モラルの必要性について考えさせることとしたほか,高等学校の情報科の中で,情報の収集・発信に伴って発生する問題と個人の責任について理解させることとしています。さらに,各学校における取組を支援するため,児童生徒の情報モラルの育成等についての指導内容・方法について解説した指導資料を作成・提供しています。


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