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第1部   新しい時代の学校〜進む初等中等教育改革〜
第2章  確かな学力の向上を目指して
第4節  確かな学力の向上を目指した取組の充実
1  文部科学省における取組


 新しい学習指導要領の下,子どもたちに基礎・基本を確実に身に付けさせ,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する力などの「確かな学力」をはぐくむため,文部科学省においては,各学校における取組の参考となるよう,平成14年1月に「学びのすすめ」として5つの方策を示すとともに,各学校の取組を支援するための様々な施策に取り組んでいます。


(1) 個に応じた指導の充実等に向けて

 新しい学習指導要領のねらいの実現のためには,各学校において,子どもの実態に応じ,個別指導やグループ別指導,学習内容の習熟の程度に応じた指導,教師の協力的な指導(ティーム・ティーチング)など指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実に努める必要があります。

 このような観点から,先述の「学びのすすめ」においても「きめ細かな指導で,基礎・基本や自ら学び自ら考える力を身に付ける」ことを「確かな学力」の向上のための方策の一つとして掲げ,個に応じた指導の重要性を指摘しているところです。

 文部科学省としても各学校における取組を支援する観点から,次のような施策を実施しています。

{1}教職員定数改善計画や社会人の活用

 教職員定数については,累次の計画により改善を図ってきたところですが,平成5年度から平成12年度にかけて,個に応じた多様な教育を展開し,指導方法を工夫改善するための配置改善を実施しました。さらに,平成13年度からは,17年度までの5か年計画で新たな定数改善を講じることとしています。具体的には,公立義務教育諸学校において,基礎学力の向上ときめ細かな指導を充実するため,教科に応じ20人程度の少人数指導や習熟度別学習を行うための定数加配を措置するほか,教頭や養護教諭などの配置率の改善,特殊教育諸学校教職員定数の改善や,教員を企業等に派遣して行う長期社会体験研修の間,代替教員を配置するための定数を措置することを盛り込んだ,第7次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画により2万6,900人の定数の改善を図ることとしています。平成14年度は改善計画の第2年次分として13年度と同数の5,380人(改善総数の5分の1)を改善しました。なお,13年度には,小学校1万618校,中学校7,683校において,加配定数を活用し,少人数指導などの指導方法の工夫改善が実施されています。また,公立高等学校においても,公立義務教育諸学校に準じた配置改善を行うほか,中高一貫教育校や総合学科,単位制高校などの多様な高校教育の展開を可能とする観点に立って,第6次公立高等学校教職員定数改善計画により7,008人の定数の改善を図ることとし,14年度は改善計画の第2年次分として平成13年度と同数程度の1,401人(改善総数の5分の1)を改善しました。

 また,学習活動を充実させるためには,学校外の優秀な人材の協力を得ることも重要です。そのため,優れた知識や経験等を有する社会人や地域住民が,教員免許状を有しなくとも,都道府県教育委員会への届出により,小中高などのすべての教科について,その教科等の領域の一部を担当し,教壇に立つことのできる「特別非常勤講師制度」を設けており,平成13年度の活用件数は1万4,695件となっています。

 さらに,文部科学省では,この制度と併せて,多様な経歴を有する社会人を積極的に活用するため,平成13年度補正予算による「緊急地域雇用創出特別交付金」を活用することなどにより,今後3年間で約5万人を目標に,教員の教科指導等を支援する者として全国の学校で社会人の協力を求める「学校いきいきプラン」を展開しているところです。

{2}小学校における教科担任制指導の充実等

 小学校における指導の充実や各学校段階間の接続の円滑化等を図るため,文部科学省においては,平成14年に教育職員免許法を改正し,中学校又は高等学校の免許状を有する者が小学校の相当する教科等の授業を担任することができるようにする等の制度改正を行うなど,教員の得意分野を生かした教科担任制の導入を推進しているところです。この制度の活用により,児童の学習意欲の向上や専門性に基づくきめ細かい指導の確保が期待されています。

{3}学力向上フロンティア事業

 全国47都道府県において「学力向上フロンティアスクール」を拠点に,(ア)補充的な学習や発展的な学習など個に応じた指導のための教材開発,(イ)個に応じた指導のための指導方法・指導体制の工夫改善,(ウ)児童生徒の学力の評価を生かした指導の改善など,個に応じた指導の充実のための実践研究を行っています。今後,その成果を他の学校等へ普及することにより,全国すべての小・中学校において,「確かな学力」の育成に向けた取組が一層充実・強化されることが期待されます。

{4}個に応じた指導に関する指導資料

 学校における個に応じた指導の取組を支援するため,「発展的な学習」や「補充的な学習」を実施する際の指導上の工夫のポイントなどに関して事例を交えて解説した教師用の参考資料(小学校算数,小学校理科,中学校数学,中学校理科の計4種)を作成し,文部科学省のホームページ上で公表するとともに,全国の小・中学校等に配布しました。

{5}スーパーサイエンスハイスクール

 将来の我が国を担う科学技術系人材の育成に資することをねらいとして,科学技術・理科,数学教育を重点的に行う高等学校を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し,生徒の興味・関心等に応じて,理科や数学などについてより発展的に学習することができる機会を積極的に提供する取組を進めています。

 「スーパーサイエンスハイスクール」では,学校の特色を生かして,理科,数学に重点をおいたカリキュラム開発や,大学や研究機関等との効果的な連携方策等について研究開発が行われています。

{6}スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール

 英語教育の先進事例となるような学校づくりや指導方法の改善等を推進するため,平成14年度から新たに,英語教育に重点的に取り組む高等学校を「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(通称SELHi(セルハイ))」に指定しました。セルハイでは,英語教育を重視したカリキュラムの開発,一部の教科を英語によって行う教育,大学や海外姉妹校との効果的な連携方策等について,実践的な研究開発が進められています。

■確かな学力の向上のための2002アピール「学びのすすめ」(平成14年1月17日)

5つの方策
{1}きめ細かな指導で,基礎・基本や自ら学び自ら考える力を身に付ける  少人数授業・習熟度別指導など,個に応じたきめ細かな指導の実施を推進し,基礎・基本の確実な定着や自ら学び自ら考える力の育成を図る
{2}発展的な学習で,一人ひとりの個性等に応じて子どもの力をより伸ばす  学習指導要領は最低基準であり,理解の進んでいる子どもは,発展的な学習で力をより伸ばす
{3}学ぶことの楽しさを体験させ,学習意欲を高める  総合的な学習の時間などを通じ,子どもたちが学ぶ楽しさを実感できる学校づくりを進め,将来,子どもたちが新たな課題に創造的に取り組む力と意欲を身に付ける
{4}学びの機会を充実し,学ぶ習慣を身に付ける  放課後の時間などを活用した補充的な学習や朝の読書などを推奨・支援するとともに,適切な宿題や課題など家庭における学習の充実を図ることにより,子どもたちが学ぶ習慣を身に付ける
{5}確かな学力の向上のための特色ある学校づくりを推進する  学力向上フロンティア事業などにより,確かな学力の向上のための特色ある学校づくりを推進し,その成果を適切に評価する

(2) 学習意欲の向上に向けて

 学習指導要領においては,知識・技能のみならず思考力,判断力,表現力や学ぶ意欲まで含めて「確かな学力」ととらえています。

 しかしながら,先述のとおり,様々な調査の結果によると,我が国の子どもたちは,知識や技能の習得の程度においても,それらを実生活の場面で活用する力についても,国際的に見て上位に位置しているものの,勉強が必ずしも好きではないという傾向が見られます。

 また,平成13年度に国立教育政策研究所が行った「学習意欲に関する調査研究」の結果によると,授業が「よく分かるとき」,「おもしろいとき」や,「将来の職業に関心を持ったとき」などに学習意欲が高まることが明らかになっています。

 さらに,既に述べたように平成13年度教育課程実施状況調査の結果からも,学習意欲の向上が学力向上の中心的な課題の一つであると考えられます。

 このような状況を踏まえ,新しい学習指導要領の下,個に応じた指導の充実に努めて「分かる授業」を実現するとともに,選択学習の幅を拡大し,これまで以上に子どもの興味・関心等に応じて学ぶことができるようにしています。さらに,新設した「総合的な学習の時間」において,各教科等で学んだ知識や技能等を実感を持って理解し,それらを相互に関連付け,実生活に生かす中で,子どもに学び方やものの考え方を身に付けさせ,問題の解決や探究活動に主体的・創造的に取り組む態度を育成することとしています。

 各学校においても,このような「総合的な学習の時間」の趣旨などの実現を通して,子どもたちに学ぶ楽しさを実感させ,学習意欲を高めるような取組を推進することが求められています。

 文部科学省においても,各学校における取組を支援する観点から, (1) で述べた諸事業に加え,「総合的な学習の時間」に関する実践事例集を作成・配布するとともに,「『総合的な学習の時間』応援団のページ」をホームページ上で設けるなど,各学校における取組を支援しているところです(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/sougou/index.htm)。


(3) 「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」の策定

 経済・社会等のグローバル化が進展する中,子どもたちが21世紀を生き抜くためには,国際的共通語となっている「英語」のコミュニケーション能力を身に付けることが必要であり,このことは,子どもたちの将来のためにも,我が国の一層の発展のためにも非常に重要となっています。

 これまで文部科学省では,英語教育の重要性にかんがみ,従来より有識者より意見を聴取するなど,様々な検討を行ってきました。具体的には,平成13年1月に「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会」から英語教育の改善に向けた提言を受けるとともに,14年には「英語教育改革に関する懇談会」を開催し,有識者から意見を聴取しました。これらを踏まえて,英語教育を抜本的に改善するため,「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想-英語力・国語力増進プラン-」を平成14年7月12日に発表しました。

 この戦略構想においては,施策の達成目標として,中学校卒業段階で「挨拶や応対等の平易な会話(同程度の読む・書く・聞く)ができる(卒業者の平均が英検3級程度)」,高等学校卒業段階で「日常の話題に関する通常の会話(同程度の読む・書く・聞く)ができる(卒業者の平均が英検準2級〜2級程度)」ことを目指しています。

 この目標を達成するため,今後,以下の諸施策を進めることとしています。

{1}英語教員の資質向上及び指導体制の充実  英語教員が備えておくべき英語力の目標値の設定,英語教員に対する研修の充実,ネイティブスピーカー の活用促進等
{2}学習者のモティベーション(動機付け)の高揚  高校生の留学促進,平成18年の導入を目標に大学入試センター試験においてリスニングテストを実施
{3}教育内容等の改善  「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール」の拡充,外国語教育改善実施状況調査等
{4}小学校の英会話活動の充実  小学校の総合的な学習の時間などで英会話活動を行う場合に,外国語指導助手(ALT)による指導が行えるよう支援等
{5}日本人の国語力の向上  「これからの時代に求められる国語力」の検討,子どもの読書活動の推進,学校教育における国語教育の充実等

 以上の戦略構想に基づき,文部科学省では今後,直ちに実施可能なものは実施に移すとともに,本戦略構想を踏まえ,行動計画をとりまとめることとしています。


* ネイティブスピーカー

 その言語を母国語とする人


(4) ITで築く確かな学力

 学校教育におけるITの活用は,あふれる情報の中から子どもたちが必要な情報を主体的に選択・活用できる能力などの「情報活用能力」を育成し,自ら学び自ら考える力を育成することを目的としています。一方で,各教科においてITを効果的に活用し,「分かる授業」を実現することは,子どもたちの「確かな学力」の向上を図ることにつながります。

 こうした各教科の授業におけるITの活用を促進するためには,一人一人の教員が,学力向上を図るためにITが効果的な道具であると認識し,ITを活用できる指導力を向上させていく必要があります。

 このため,文部科学省では,「初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議」を設置し検討を進め,平成14年8月に,同会議から,IT活用を広め,定着させるための具体的方策について報告がなされました。

 この報告などを踏まえ,文部科学省においては,以下のような施策に取り組んでいます。

{1}IT環境の整備
  e-Japan重点計画─2002に基づき,2005年度までにおおむねすべての公立小中高等学校等が高速インターネットに常時接続できるようにするとともに,各学級の授業においてコンピュータを活用するため,コンピュータ整備やインターネット接続等のIT環境の整備を計画的に推進しています。
{2}教員研修の充実
  国が行う研修の内容を,各教科における授業でのITを活用した実践を念頭に置いたものに改善するとともに,ITを活用する指導力の客観的指標を策定し,公表します。
{3}各教科におけるITの効果的な活用法の周知
  各教科におけるITの効果的な活用法や実践事例に関するガイドブックを作成し,全国の教員に周知します。

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