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第1部   新しい時代の学校〜進む初等中等教育改革〜
第2章  確かな学力の向上を目指して
第2節  我が国の子どもたちの学力の現状について
2  教育課程実施状況調査の結果について



(1) 平成13年度教育課程実施状況調査の実施について

 国立教育政策研究所(以下「研究所」という)教育課程研究センターにおいては,平成13年度小中学校教育課程実施状況調査を以下のとおり実施しました。

 この調査の目的は,小学校及び中学校の学習指導要領(平成元年告示)に基づく教育課程の実施状況について,学習指導要領における各教科の目標や内容に照らした学習の実現状況の把握を通して調査研究し,指導上の問題点は何かなどを明らかにして,今後の学校における指導の改善に資することです。

 なお,教育課程実施状況調査は,文部省において既に昭和56年度〜58年度,平成5年度〜7年度の2度にわたり実施されています。

{1} 調査の内容
  学習指導要領に定める内容のうち,ペーパーテストで調査を行うことが適当な内容項目について調査を行う。  併せて,児童生徒の学習に対する意識や教師の指導の実際等について,明らかにするため,児童生徒及び教師を対象とする質問紙調査を実施する。
{2} 調査対象学年及び教科等
  小学校第5,6学年   国語,社会,算数,理科(約3,500校 約20万8,000人)  中学校第1,2,3学年 国語,社会,数学,理科,英語(約2,500校 約24万3,000人)

(2) 平成13年度小中学校教育課程実施状況調査の結果について

{1} ペーパーテストの結果について

(ア)教科,学年別等に見た概要

 学習指導要領の目標,内容に照らした学習の実現状況を,問題ごとの設定通過率 との比較から判断した結果,中学校理科第1,2学年,中学校英語第3学年を除き,設定通過率を上回ると考えられるもの又は同程度と考えられるものの問題数合計が,全体の半数以上を占めており,全体としてはおおむね良好な状況と言えます( 表1-2-9 , 表1-2-10 )。

表1-2-9 教科,学年別にみた問題ごとの設定の通過率との比較(小学校)

表1-2-10 教科,学年別にみた問題ごとの設定の通過率との比較(中学校)

 なお,前回(平成5〜7年度)実施の調査と同一の問題の通過率を比較した状況については, 表1-2-11 及び 表1-2-12 のとおりとなります。

表1-2-11 教科,学年別にみた同一問題の通過率比較(小学校)

表1-2-12 教科,学年別にみた同一問題の通過率比較(中学校)

 この結果,小学校理科第6学年,中学校国語第3学年,中学校英語第3学年において前回を有意に上回る問題が過半数を占めましたが,小学校社会,算数,中学校社会第1,2学年,中学校数学第1,2学年,中学校理科第2学年,中学校英語第1学年については,有意に下回る問題が全体の過半数を占めました。ただし,各教科・学年の変化の幅は,おおむね3,4%程度までにおさまっています。

(イ)得点別の人数分布,学級分布

 得点別に見た人数の分布については,中位層に分布が厚く,得点の上昇,下降に伴って,分布が薄くなっており,中位層が相対的に薄く,実現状況の高い児童生徒と低い児童生徒に分布が分かれるといういわゆる学力の2極化といった状況は見られませんでした。平均得点別に見た学級分布からは,全体に得点の低い学級が一部に存在することがうかがえます( 表1-2-13 , 表1-2-14 )。

表1-2-13 得点別に見た人数分布

表1-2-14 平均得点別に見た学級分布

{2} 質問紙調査の結果について

(ア)勉強に対する意識

 勉強の大切さについての質問では,肯定的な回答が過半を占めています。例えば,「勉強は大切だ」に対して,「そう思う」,「どちらかといえば,そう思う」(以下,双方を合わせて,肯定的回答と呼ぶ)と回答した児童生徒の割合の合計は約8割以上となっており,「勉強は受験に関係なくても大切だ」という考えについても,肯定的回答をした者が7〜8割となります。さらに,自分は勉強すれば良い成績をとれるという問いに肯定的回答をした児童生徒の割合は6割を超えます。なお,勉強が好きかどうかの質問に対しては,「どちらかといえば,そう思わない」,「そう思わない」と回答した者が肯定的回答よりも多く,また,その割合は小学校より中学校の方が高くなっていますが,個別の教科名を挙げて,その教科の勉強は好きかとたずねると,単に勉強が好きかどうかたずねた場合よりも肯定的な回答の割合が高くなります( 表1-2-15 )。

表1-2-15



(イ)授業の理解状況

 授業がどの程度分かるかという質問に対しては,「よくわかる」,「だいたいわかる」の合計が小学校で約6割,中学校で4〜5割であり,平成10年2月に文部省が実施した「学校教育に関する意識調査」の結果とほぼ同様な状況となっています。なお,理解状況については,教科によって差異があります( 表1-2-16 , 表1-2-17 )。

表1-2-16

表1-2-17

(ウ)平日における学校の授業以外の学習時間

 平日においては,学校の授業以外に,小学校第5,6学年で約7割の児童が30分以上,中学校では,第1,2学年の約5割の生徒が1時間以上勉強すると回答しており,中学校第3学年では,約5割が2時間以上,約4分の1の23.7%が3時間以上勉強すると回答しています(「2時間以上」には,「3時間以上」の生徒を含む。)。

 一方,「全く,または,ほとんどしない」生徒の割合が,中学校第1,2学年では,それぞれ14.3%,17.1%となっており,他の学年より若干高くなっています( 表1-2-18 )。

表1-2-18


* 設定通過率

 設定通過率とは,学習指導要領の内容について標準的に学習活動が行われたと想定した場合の通過率(正答又は準正答の率)です。設定通過率は問題ごとに設定しています。


(3) 調査結果を踏まえた指導の改善に向けて

{1} 調査結果の総括・評価

 既に述べたように,設定通過率との関係で見る限り,本調査の結果からは,児童生徒の学習の状況は小中学校ともに全体としてはおおむね良好であることがうかがえましたが,例えば中学校第1,第2学年の理科などについては,課題があるものと考えています。

 また,本調査と前回調査(平成5〜7年に実施)の両方に含まれた同一問題の正答等の率は,前回を統計的に有意に上回るものが過半数を占める場合を上昇,統計的に有意に下回るものが過半数を占める割合を低下,それ以外を変化なしとした場合,全23学年・教科中,3学年・教科で上昇,10学年・教科で変化なし,同じく10学年・教科で低下している状況と考えられます。例えば,社会及び算数・数学については中学3年生を除くすべての学年で低下していると考えられる状況にありますが,全体としては,上昇・低下共に変化の率はおおむね3,4%程度にとどまっており,変化は大きなものではないと見ることができます。

 他方,OECDの「生徒の学習到達度調査(PISA)」などの結果からは,我が国の児童生徒には学ぶ意欲や習慣が十分に身に付いていないとの課題が指摘されていますが,本調査からは,学習に関する意識については,児童生徒は,「勉強を大切」だと思ってはいるが必ずしも「勉強が好き」だとは同様に思っていないという結果が現れています。また,中学2年生以下では約半数の児童生徒の1日の勉強時間(平日,学校の授業時間以外)が1時間未満となっています。「勉強が好き」と答えた者ほど,また,授業時間以外の勉強時間が長い者ほど,ペーパーテストの点が高いと考えられる結果も出ており,学習意欲,学習習慣を児童生徒に身に付けさせることが学力向上の観点から重要な課題の一つだと認識しています。このことは,「授業でわからないことがあったとき」に「授業が終わってから先生にたずねに行く」,「自分で調べる」等の主体的な学習態度を持つ者がペーパーテストの得点も高いということからもうかがえるところです。

 なお,全般的に中学3年生の学習状況は中学1,2年生に比べて良好であり,受験が学習の動機付けに影響を与えている可能性も考えられますが,他方,「受験に関係なく勉強は大切」と思う児童生徒の割合も全体的に相当高く,特に中学3年生で中学1,2年生に比べて高くなっていることに注目する必要があります。また,勉強の動機として「受験に役立つこと」の有無よりも「自分の好きな仕事に就くこと」や「普段の生活や社会に出て役立つこと」の有無のほうが,ペーパーテストの得点差が大きいという結果が出ており,児童生徒には,将来の職業に対する意識をしっかりと身に付けさせるとともに,学習と将来の職業や社会生活との関係を理解させることが重要であると考えられます。

 最後に,授業の理解度についてですが,学校の授業が「よくわかる」又は「大体わかる」児童生徒の割合は小学校で約6割,中学校で約4〜5割となっており,これは,前述の平成10年の文部省調査とともに児童生徒のうち相当数が,学校の授業を理解できると感じられない状況を表すものと考えられ,児童生徒にとって「わかる授業」を実現することが重要な課題となっています。

{2} 指導の改善等

 本調査の結果の概要はこれまでに述べたとおりですが,さらに,結果を各教科の内容,領域別あるいは評価の観点別に見ると,基礎的・基本的な知識の習得や思考力や表現力について,課題となる部分が明らかになりました。

 これらの点については更に分析し,新しい学習指導要領の下での,今後の学習指導の改善等に生かされるようにしたいと考えています。

 また,同時に行った教師の指導方法等についてのアンケート調査の結果とペーパーテストの結果の相関関係を見ると,宿題を出す,発展的な課題を取り入れた授業を実施している,補充的な指導を行っている等の教師に指導を受けている生徒ほどペーパーテストの得点が高いという結果が見られました。これらの効果的な方策については,引き続き各学校で積極的に取り組むことが期待されます。

 さらに,指導形態に関する調査結果からは,少人数指導,ティーム・ティーチングによる指導は特に算数・数学,英語で多く実施されているものの,習熟度別指導はいまだ広く実施されているとは言えない状況がうかがえます。これらの指導形態の実施の有無によるペーパーテストの結果の差異は認められなかったところですが,特に習熟度別指導については,その取組が緒に就いたばかりであり,指導方法や教材の開発といった課題を踏まえつつ,一層の充実を図る必要があります。

 一方,この調査とは別に,既に習熟度別指導を実施している学校においては,児童生徒から「授業が楽しくなった」,「勉強がわかるようになった」等の反応があったことも明らかになっており,今後とも,「学力向上フロンティアスクール」等による指導方法の改善や教材開発の成果を生かしながら,各学校で習熟度別指導に積極的に取り組むことが必要と考えられます。

 本調査は,既に述べたように平成13年度までの旧学習指導要領の下での児童生徒の学習状況を調査したものであり,本年4月からの新しい学習指導要領の下での調査は,今回と同様の調査を平成15年度に実施することを予定しています。今後,総合的な学力の状況を継続的に調査し,実証的な資料を得て,今後の学校教育の充実に生かしていくこととしています。

 一方,平成14年度において,少なくとも25の都道府県で独自の学力調査が実施されています。例えば石川県においては,児童生徒の基礎学力を把握するため,小学校第6学年,中学校第3学年を対象として調査が実施され,各学校においては,その結果を活用することにより,教科の指導方法等の改善・充実を図っています。各教育委員会においては,このような方法により児童生徒の学習状況を把握し,各学校の指導方法の改善や教育委員会の支援策に役立てるための取組が期待されています。


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