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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第10章  国際化・情報化への対応
第1節  国際交流・協力の充実に向けて
3  相互理解を進める国際交流



(1) 留学生交流の推進

{1} 留学生受入れの現状と課題

 国際化が急速に進展する中,我が国は,その存立と繁栄とを諸外国との円滑な関係の維持・発展に依存しており,各分野における国際交流を通じて諸外国との間に相互理解を増進し,友好関係を築いていくことが極めて重要です。また,国家・社会の発展にとって,人的能力の開発はその基盤となるものです。このため,開発途上国における人材養成への協力は,一層重要性を増してきています。

 留学生を通じた国際交流は,我が国と諸外国相互の教育・研究の国際化・活性化を促すとともに,国際理解の推進と国際協調の精神の醸成に寄与します。さらに開発途上国の場合には,その国の人材養成に大きく貢献します。また,帰国留学生が我が国とそれぞれの母国との友好信頼関係の発展・強化のための重要な架け橋となることも期待されています。

 これらを踏まえ,我が国としては,留学生交流の推進を「知的国際貢献」の観点から最も重要な国策の一つに位置付け,様々な施策を総合的に推進しているところです。

■表2-10-2■主要国における受入れの状況

(ア) 留学生受入れ10万人計画

 文部科学省では,昭和58年8月の「21世紀への留学生政策に関する提言」などを踏まえた,21世紀における10万人の留学生受入れを目指す「留学生受入れ10万人計画」に基づき,渡日前から帰国後まで体系的な留学生受入れのための施策を総合的に推進しています。

(イ) 留学生受入れの現状

 我が国の大学などで学ぶ外国人留学生の数は,平成13年5月1日現在で7万8,812人に上り,前年比23.1%の増加となりました。その内訳は,我が国が全経費を負担する国費留学生が9,173人,外国政府がそれぞれの国の人材養成を図るため自国の費用で派遣している留学生が1,369人,それ以外の私費留学生が6万8,270人となっています( 図2-10-3 )。

■図2-10-3■留学生数の推移

 これらの留学生はその約9割がアジア地域の出身であり,中でも中国・韓国・台湾の3か国(地域)で全体の約80%を占めています( 図2-10-4 , 表2-10-3 )。

■図2-10-4■外国人留学生数(出身地域別)

■表2-10-3■出身国(地域)別留学生数

(ウ) 留学生受入れの課題

 このように,現在我が国で学ぶ留学生数は約7万9千人であり,10万人の留学生を受け入れるという目標には達していません。

 しかしながら,我が国の高等教育機関の在籍者数に占める留学生の割合が他の欧米主要国に比べて著しく低いことからも分かるように,「10万人」という受入数の目標は,我が国の国際社会における立場や高等教育の規模から見ると決して過大なものとは言えません( 図2-10-3 )。

 このため,文部大臣(当時)の有識者会議である留学生政策懇談会(座長 江崎玲於奈前筑波大学長)が平成11年3月にまとめた報告「知的国際貢献の発展と新たな留学生政策の展開を目指して」においても,「留学生受入れ10万人計画」を今後とも維持しつつ,量的な面もさることながら,一人一人を大事にする質的充実に一層留意し,留学環境の整備を図ることなどが求められています。

 平成12年4月のG8教育大臣会合で取りまとめられた「議長サマリー」においても,今後10年間で学生などの国際的な流動性を倍増することがうたわれています。このような観点からも,我が国としては留学生受入れ「10万人」の早期達成に向けて取組を強化していく必要があります。

{2} 留学生受入れ体制の整備充実

(ア) 留学生のための教育プログラムの充実

 近年我が国への留学形態が多様化する中,留学生のニーズに応じた魅力ある教育プログラムを提供する大学が増えています。具体的には,現在,大学院研究科では,55の国私立大学において留学生のために,英語により学位取得が可能な68のコースを開設しています。また,学部レベルでは,21の国立大学及び20の私立大学において短期留学生のために英語によるプログラムや特別コースを開設し,英語による授業を行っています。

 諸外国から我が国への留学を一層促進するためには,渡日前に入学許可を可能にするなど,大学などへの入学選考システムの改善も重要な課題です。

■表2-10-4■在学段階別留学生数

 このため,文部科学省では(財)日本国際教育協会と協力して,「私費外国人留学生統一試験」及び「日本語能力試験」に代え,日本語や数学,理科などの基礎的学力を評価する「日本留学試験」を開発中です。この試験は,留学希望者の便宜を図るため,国内だけでなく,海外の約10都市で年2回受験できるようにしているもので,平成13年11月に試行試験を行い,14年度から本格実施することにしています。

(イ) 留学情報提供体制などの整備

 文部科学省では,従来より(財)日本国際教育協会の留学情報センターを通じて,内外からの問合せに対応しております。また,外務省では在外公館を通じ,海外の日本留学希望者に対し,各種の情報提供を行っています。さらに,日本の多数の大学などの参加を得て,海外において「日本留学説明会」を実施しており,平成13年度は,インドネシア,マレイシア,韓国,タイなどにおいて開催することとしています。

 また,日本留学希望者や留学関係者に包括的な情報を迅速かつ効率的に提供するために,(財)日本国際教育協会において,インターネット上に留学情報を提供するホームページを開設しています。今後,更に大学その他の関係機関が保有するホームページとの接続を増やすなど,内容を充実させることとしています(アドレスhttp://www.aiej.or.jp/)。

(ウ) 留学生に対する支援措置

a 国費留学生受入れの計画的整備

 国費留学生事業は,諸外国の次代を担う優秀な若者を我が国の高等教育機関に招へいし,その教育・研究を行わせる事業として,昭和29年に開始されました。現在,研究留学生(大学院レベル),学部留学生など7種類のプログラムにより実施されており,平成13年度予算においては,新規受入れで前年度比90人増の4,985人分の予算を計上しています。

 その内,アジア諸国などの指導者として活躍が期待される行政官,経済人などの若手指導者を我が国の大学院に招へいする新たな留学プログラム(ヤング・リーダーズ・プログラム:YLP)については,平成13年10月より留学生の受入れを開始しました。

外国人学生のための進学説明会(東京)

b 私費留学生などへの援助

 私費留学生に対しては,従来から,学習奨励費(奨学金)の給付,優秀な私費留学生の国費留学生への採用などの施策を実施することにより,私費留学生が安定した生活の中で勉学に励める環境の整備に努めています。

 また,(財)日本国際教育協会では,個々の支援企業名や個人名を冠した「顔の見える」奨学金支給事業,授業料減免措置を講じた学校法人への助成,医療費の80%補助(全留学生対象)を実施しているほか,平成12年度から新たに,日本語教育機関で学ぶ就学生のうち,大学進学を目指す者に対し学習奨励費を給付しています。

 また,UMAP(「 用語解説 」参照)国際事務局では,日本政府からの拠出金で創設した基金により,アジア諸国などから新規に渡日した留学生へ一時金を支給する「UMAP留学生支援奨学一時金支給事業」(平成13年度終了予定)を実施しています( 図2-10-5 )。

■図2-10-5■文部科学省による留学生支援状況

c 宿舎の安定的確保

 文部科学省では,国立大学の留学生宿舎の建設(平成12年度末までに6,844戸を整備)を進めているほか,一般学生寮への入居を促進しています。また,(財)日本国際教育協会では,留学生宿舎建設事業を行う地方公共団体などに対する奨励金の交付,(財)留学生支援企業協力推進協会では,保有する社員寮に留学生を受け入れる企業に対する助成,(財)内外学生センターでは,指定宿舎制度(「 用語解説 」参照)及び留学生住宅総合補償制度(「 用語解説 」参照)などの施策をそれぞれ実施しています。


〔用語解説〕<UMAP(University Mobility in Asia and the Pacific:アジア太平洋大学交流機構)>

 1991(平成3年)年,オーストラリア大学長会議の提唱により,アジア・太平洋地域における高等教育機関間の協力を推進するとともに,学生と教職員の交流を促進し,高等教育の質を高めることによって,域内諸国・諸地域の文化・経済・社会制度の理解を深めることを目的として発足した高等教育分野における政府又は非政府の代表からなる任意団体。現在,加盟各国との連携・協力の下,UMAP単位互換方式(UCTS:UMAP Credit Transfer Scheme)による単位互換を試行しており,加盟各国の積極的な参加とUCTSの普及を推進している。


〔用語解説〕<(財)内外学生センターによる指定宿舎制度>

 外国人留学生の宿舎の安定的確保を目的に,(財)内外学生センターが適切な民間宿舎を開拓し家主との間に外国人留学生専用の指定宿舎契約を締結するとともに,家主に対して協力金(指定契約金)を交付する制度。


〔用語解説〕<(財)内外学生センターによる留学生住宅総合補償制度>

 外国人留学生の民間宿舎などへの円滑な入居を促進することを目的に,留学生が保証人を探す困難さと保証人の精神的・経済的負担を軽減するための住宅総合保険と保証人補償基金を組み合わせた制度。

 具体的には,留学生がこの制度に加入することで,失火などにより家主への損害賠償をしなければならない場合や,家賃の未払いなどにより保証人が家主から債務の履行を請求された場合に補償を行うもの。

(エ) 大学などにおける受入れ体制の整備

 文部科学省では,大学などにおける指導援助体制の整備のため,国立大学に対して,留学センター及び留学生課の設置をはじめとする人員・経費面での措置を行うとともに,私立大学などに対しては,各大学などの受入留学生数などを考慮した私立大学等経常費補助金の特別補助を行っています。

(オ) 地域における留学生支援

 地域における留学生支援に当たっては,留学生及びその同伴家族を地域の住民すなわち社会の構成員として迎え入れ,併せて異文化を積極的に受け入れる意識が重要です。具体的には,ホームステイなど留学生と地域住民との交流,留学生に対する奨学金や宿舎の提供などを積極的に推進することが必要です。

 このためには,各地域における官民一体となった推進体制づくりが重要であり,その組織として,現在までに全都道府県に,地域の大学,地方公共団体,経済団体,民間団体などによって構成される留学生交流推進会議が設置されています。

(カ) 短期留学の推進

 短期留学とは,主として大学間交流協定などに基づき母国の大学に在籍したまま,他国の大学で1年間程度,教育を受けて,単位を修得したり,又は研究指導を受けるものです。

 文部科学省では,短期留学を推進するために,大学間交流協定などに基づき,諸外国の大学へ派遣される日本人学生,及び諸外国の大学から我が国の大学に受け入れる外国人留学生を支援する奨学金制度として「短期留学推進制度」を設けています。

 この制度によって,平成12年度においては,1,818人の留学生を受け入れ,579人の日本人学生を派遣しました。

京都大学 日本語・日本文化研修留学生などによる着物着付教室

(キ) フォローアップの充実

 帰国留学生が留学の成果を更に高め,母国において活躍できるように,専門誌・学会誌の送付,短期研究のための帰国留学生招へい事業,研究支援のための指導教官の派遣など,帰国留学生の希望に応じて援助しています。

 また,外務省においても,社会各層で活躍している元留学生を我が国に招へいする「元日本留学者の集い」など各種支援事業を行っています。

{3} 海外留学支援体制の整備

(ア) 海外留学の現状

 近年,我が国の学生などで,海外の大学などに留学する者が増加してきています。各国などにおける統計によれば,海外に留学した日本人は,主要69か国において約7万6,000人(推定)です。留学先別に見ると,その約8割が欧米諸国となっています( 表2-10-5 )。

■表2-10-5■日本人の主な留学先・留学生数

(イ) 海外留学に関する施策

 文部科学省では,大学間交流の促進,国際的視野を有する教員の育成,地域研究者の養成などの観点から,国費による日本人学生の海外派遣制度を設けています。

 また,外国政府などの奨学金により,平成12年度は約40か国へ約460人の日本人学生などが留学しており,文部科学省では,その募集・選考に協力しています。

 海外留学の大半を占めるのは私費留学であり,文部科学省では,(財)日本国際教育協会の留学情報センターを通じて,留学情報の収集・整理を行い,平成11年度からは「海外留学説明会」を開催するなど,留学希望者に対する情報提供を行うとともに,留学に関する相談に応じています。

{4} 高校生の留学交流

 高校生の留学については,平成10年度に外国の高等学校へ3か月以上留学した者は4,186人,海外学習旅行者(語学などの研修や国際交流などを目的として,外国の高等学校などに3か月未満の旅行に出た者)は3万7,426人となっています。文部科学省では,高校生留学の教育上の意義を考慮し,関係機関に対し,安全で有意義な留学ができるよう指導・助言に努めており,高校生プログラムを行う団体により設立された「全国高校生留学・交流団体連絡協議会」が行う諸事業を支援しています。

 また,高校生留学関係団体の責任者が一堂に会する「高校生留学等関係団体関係者研究協議会」の開催及び「高校生留学交流研究指定制度」に対して補助しています。

 さらに,文部科学省では,留学交流の推進を図るため,以下のような事業に補助を行っています。

(ア) (財)エイ・エフ・エス日本協会が行うASEAN諸国及び我が国の都市と姉妹提携関係にあるアジア・太平洋諸国からの日本語専攻高校生の受入れなどの事業
(イ) (財)ワイ・エフ・ユー日本国際交流財団が行うアメリカからの日本語専攻高校生の受入れ事業
(ウ) (財)エイ・エフ・エス日本協会及び(財)ワイ・エフ・ユー日本国際交流財団が行うアジア地域への日本人高校生の派遣事業

 このほか,文部科学省では,アメリカ,ドイツ,シンガポール及びオーストラリアが行う高校生招致事業の募集・選考などに協力しています。

{5} 国際研究交流大学村の建設

 21世紀を迎え,我が国が潤いや活力に満ちた社会を実現し,国際社会において自らの存立基盤を確保し,その責務を積極的に果たしていくためには,知的基盤への先行投資が不可欠です。このためには,国際交流,情報発信,産学官連携の機能を有機的に連携させ,国公私立大学の留学生や外国人研究者との交流も含め,国内外の産学官の融合を図り,世界に向けた知的ネットワークの形成・情報発信を行う拠点を形成する必要があります。

 国際研究交流大学村(略称:国際大学村)は,そのための拠点施設として東京都江東区の臨海副都心青海地区に,文部科学省及び経済産業省が連携協力して整備を行ったものであり,平成13年7月に開村しました( 表2-10-6 )。

■表2-10-6■国際研究交流大学村の主要施設の概要

国際研究交流大学村


(2) 教育の国際交流

{1} 教員などの国際交流

 文部科学省では,小・中・高等学校教員などの現職研修の一環として,国際的視野に立った識見などを高めさせるため,毎年,教員を海外に派遣しています。

 また,諸外国との間の相互理解の増進と相手国理解教育の推進のため,中等教育段階の教員をオーストラリア,ニュージーランドなどに派遣しています。

 大学教員・研究者については,文部科学省の在外研究員制度(平成12年度723人派遣)や外国人教師制度(平成12年度398人受入れ),日本学術振興会の事業(平成11年度5,581人派遣,1万1,214人受入れ)などを通じて,派遣,受入れを行っています。

 特に日米間では,昭和26年に発足した「日米教育交流計画」(いわゆるフルブライト計画)により,平成12年度までに両国合わせて約8,900人の研究者・大学院生・ジャーナリストなどの交流が行われています(平成12年度合計112人)。また,「日米国民交流」の包括的取組の一環として,日米教育委員会を実施主体とした「フルブライト・メモリアル基金事業」が平成9年度から開始されました。この事業は,両国の教育制度などに関する相互理解を深め,日米間の教育・学術分野での円滑で効果的な交流を促進することを目的としているもので,12年度においては,アメリカの小・中・高等学校教員など594人を我が国に招致するなどの事業を行いました。

 また,社会教育に関しては,我が国の社会教育指導者を海外に派遣して,各国の社会教育関係者との意見交換を行う事業などを実施するとともに,各地域において女性の国際交流が活発になっていることを踏まえ,女性団体の国際交流事業に対する助成を行っています。国立女性教育会館(国立婦人教育会館)では,平成12年度において,「女性学・ジェンダー研究国際フォーラム」を実施し,11か国約1,700名の参加を得ました。さらに,アジア太平洋地域の女性行政担当官などを対象とする「海外婦人教育情報専門家情報処理研修事業」,途上国における女性教育の推進を支援することを目的とした「女性の教育問題担当官セミナー」などの各種研修を行いました。

{2} 青少年の国際交流

(ア) 文部科学省では,(財)世界青少年交流協会,(財)ボーイスカウト日本連盟,(社)日本青年奉仕協会,(社)中央青少年団体連絡協議会などが実施する青少年の国際交流事業に対して助成などを行っています。

 さらに,国立オリンピック記念青少年総合センターなどの国立青少年教育施設においても,「アジア地域青少年教育施設指導者セミナー」など,種々の国際交流事業を実施しています。

 このほか,全国各地では,各都道府県・市町村や社会教育関係団体,民間団体が積極的に青少年の国際交流を実施しています。

(イ) 海外への修学旅行

 平成10年度に海外修学旅行を行った高等学校は,延べ956校(公立367校,私立589校)で,参加生徒数は16万1,438人であり,主な行き先は,韓国247校,中国153校,アメリカ118校,オーストラリア102校などとなっています。

 海外への修学旅行は,外国人との交流の機会や外国の文物に接する機会を得,国際理解を深めるなどの意義がありますが,実施に当たっては,安全確保などに万全を期する必要があります。このため,各学校においては,外務省を通して必要な情報を入手するなど,事前の調査を十分に行う必要があります。


(3) 日本語教育の振興

{1} 日本語学習熱の高まり

 近年,我が国における外国人の増加や諸外国との国際交流の進展により,日本語学習者は増加しており,海外で約210万人(平成10年国際交流基金調べ),国内で約9万5,000人(12年11月文化庁調べ)に上っています。

{2} 日本語を学ぶ世界の人々に

(ア) 日本語教員の養成と資質の向上

a 日本語教員の養成機関

 文化庁の日本語教育実態調査によれば,平成12年11月現在,日本語教員養成課程・コースなどは,国・公・私立の大学の学部で106,大学院で26,短期大学で8となっており,これらの機関における受講者数は,1万4,777人となっています。

 また,大学以外の一般の日本語教員養成機関の数は167,受講者数は9,093人となっています。

b 日本語教育能力検定試験の実施

 日本語教育能力検定試験は,(財)日本国際教育協会により,日本語教育の知識・能力が,日本語教育の専門家として最低限必要な水準に達しているかどうかを審査し,証明することを目的として実施されています。平成12年度は,国内外で約5,900人が受験しました。

 また,文化庁の「日本語教育のための試験の改善に関する調査研究協力者会議」報告(平成13年3月)は,日本語教育能力検定試験について出題範囲などの改善を図るための提言を行いました。

c 日本語教員の研修

 国立国語研究所において,現職日本語教員を対象に長期専門研修(10か月),日本語教育相互研修ネットワーク事業(12か月)などを実施し,平成12年度は約450人がこれらの研修に参加しました。

 平成13年度からは独立行政法人国立国語研究所として,長期,短期などの研修を行います。

(イ) 日本語教授法・教材の研究開発など

 文部科学省,文化庁,国立大学の留学生センターなど,国立国語研究所日本語教育部門において,日本語教授法・教材の研究開発,日本語教育研究協議会,日本語・日本語教育国際シンポジウムなどを積極的に進めています。

第7回国立国語研究所国際シンポジウムの模様

(ウ) 日本語教育機関の質的向上

 日本語教育機関(いわゆる日本語学校)については,(財)日本語教育振興協会が審査・認定事業を行っています。

 同協会が認定した機関は,平成13年3月末現在289施設となっており,在籍者は12年7月1日現在3万631人(対前年度比8,844人増/40.6%増)となっています。

 また,同協会では,認定した日本語教育機関を紹介する「日本語教育施設要覧」の作成,日本語教材の研究・開発,教員などに対する研修会の開催など日本語教育機関の質的向上を図るための諸事業を行っており,文部科学省は,これらの諸事業に対し助成しています。

(エ) 日本語能力試験の実施

 この試験は,日本語を学習する外国人を対象として,日本語能力を測定し,認定することを目的として,国内では(財)日本国際教育協会が,海外では現地関係機関の協力を得て国際交流基金が実施しています。

 この試験は,1級(日本語学習時間900時間程度)から4級(同150時間程度)までの試験レベルに分かれており,各大学における私費外国人留学生の入学者選抜の際の資料としても活用されています。また,この試験の受験者数は毎年増加しており,平成12年度には国内外で約20万1,000人が受験しました。

 また,文化庁の「日本語教育のための試験の改善に関する調査研究協力者会議」((ア)bに既述)報告は,日本語能力試験について目的・役割の明確化などの提言を行いました。

日本語教育機関における授業風景

(オ) インドシナ難民・中国からの帰国者に対する日本語教育

 我が国に定住などを希望するインドシナ難民を対象として,(財)アジア福祉教育財団に委託して,4か月間の集中的な日本語教育を行うなど,社会生活に必要な日本語能力の維持向上を図っています。

 また,中国からの帰国者に対しては,日本語教材及び指導参考書を作成し,無償配布しています。

(カ) 地域における日本語教育の推進

 文化庁では,地域社会での外国人の増加に対応し,地域の実情に応じた日本語教育の推進を図るため,モデル地域を指定して地域における日本語教室の開催や日本語指導者養成のための講習会開催などの事業を,群馬県太田市,神奈川県川崎市,静岡県浜松市,山形県山形市,大阪府大阪市,東京都武蔵野市,福岡県福岡市,沖縄県西原町において実施しました。

 また,地域の日本語教育の中核的な指導者に対する研修事業,相談事業,シンポジウムを実施し,地域における日本語教育推進体制の充実を図っています。

(キ) 海外における日本語教育への協力

 文部科学省及び総務省の協力の下,地方公共団体は「外国教育施設日本語指導教員派遣事業」(REXプログラム)を実施しています。

 このプログラムは,海外における日本語教育の需要の高まりにこたえるとともに,教育・文化交流活動を通じて,教員の国際性が養われ,また,地域での国際交流が促進されるよう,我が国の公立中・高等学校の若手教員を海外の中等教育施設に2年間派遣し,日本語教育や日本文化の紹介などを行うものです。

「文化庁日本語教育大会」の模様

外国教育施設日本語指導教員派遣事業(REXプログラム)による派遣教員の授業風景

(ク) 日本語教育支援ネットワークの構築

 文化庁では国内外の日本語教育の多様な需要や要望にこたえるため,「日本語教育支援総合ネットワーク・システム」を開発しました。本システムは,電子化された多様な日本語教育教材用素材や日本語教育関係情報を,インターネットを通じて簡単な手続きで提供するもので,独立行政法人国立国語研究所において管理運営しています。また,衛星通信を活用した日本語教育研究協議会を実施しています。


(4) 外国人児童生徒に対する日本語指導など

 平成12年9月時点で日本語指導が必要な外国人児童生徒は公立小・中・高等学校に1万8,432人在籍し,在籍校数は5,235校に上っています。これら外国人児童生徒のほとんどは,来日前に日本語教育を受けないまま言語も生活習慣も異なる環境に入ってくることから,適切な日本語指導や学校生活への適応指導を行うことができる体制を整備していくことが重要です。

 このため,文部科学省では,{1}学校教育におけるJSL(第二言語としての日本語)カリキュラムの開発,{2}帰国・外国人児童生徒と共に進める教育の国際化推進地域の指定,{3}外国人児童生徒教育受入推進地域の指定,{4}日本語指導を行う教員の加配,{5}外国人児童生徒等教育相談員派遣事業の実施,{6}担当教員や指導主事を対象とした研究協議会などの実施,{7}母語による就学ハンドブックの作成などの施策を実施しています。

 また,マルチメディアを利用するなどの各種日本語指導教材や指導資料の作成なども行っています。


(5) 文化の国際交流・協力

{1} 芸術文化交流

 芸術文化の国際交流の推進は,我が国の芸術文化の発展のみならず,我が国が世界の芸術文化の発展に貢献していく上でも重要です。

 このため文化庁では,芸術家在外研修や海外芸術家招へい研修などの「芸術フェローシップ」を実施しており,平成13年度は中国と韓国の芸術家の招へい枠をそれぞれ拡充しています。

 また,「芸術創造推進事業(アーツプラン21)」の「国際芸術交流推進」では,舞台芸術団体の海外公演や,国際フェスティバルの開催への支援,海外の芸術家や芸術団体との国際共同制作公演に対して支援を行っています。

 さらに,芸術祭の国際公演として,アジア近隣諸国の芸術家・芸術団体と共演を行う「アジア・アート・フェスティバル」において,平成12年度は「花降る日へ―劇作家 郭宝崑(クオハオクン)の世界―」を実施したほか,13年度は芸術祭オープニング公演に中国と韓国の室内オーケストラを招へいし,日本の室内オーケストラなどとの合同公演を実施しました。また,映画に関しては,国際映画祭への出品に対する支援を行っています。

 このほか,海外の青少年及びアマチュア文化団体の招へい,派遣及び研修事業などを実施する「国民文化国際交流事業」において,高校生の文化交流の推進を図るため,「日中高校生文化交流事業」「日韓高校生文化交流事業」を実施しています( 第8章第1節 , 第8章第2節 参照)。

{2} 文化財保護に関する国際交流・協力

 文化財の保護に関する国際協力は世界の文化の発展に寄与する重要な国際貢献であり,互いの国の歴史や伝統を理解する上で不可欠なものであります。

(ア) 在外日本古美術品の修復

 独立行政法人文化財研究所などでは,欧米諸国を中心とする諸外国の博物館,美術館が所蔵する日本古美術品の修復協力を進めてきており,平成12年度は,絵画7件,工芸品も6件を修復しました。13年度は,絵画7件,工芸品4件の修復を行います。

(イ) 海外の文化遺産の保護への協力

 文化庁では,アジア・太平洋地域の文化財建造物の保存・修復に対する技術協力を実施しており,平成13年度は,ベトナムの町並み保存や民家修理事業,ブータンの歴史的建造物の保存修理事業などへの技術協力を行うとともに,インドネシアの歴史的建造物の共同調査などを実施しています。また,相手国の文化財専門家・技術者を招へいしての研修を行っています。

 独立行政法人文化財研究所では,東京文化財研究所において,第25回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会「日本の楽器―新しい楽器学へ向けて―」を開催します。

 また,奈良文化財研究所では,平成13年度はアンコール遺跡近隣の文化遺産の保護協力」など6件の協力事業を行います。

 さらに,我が国は,政府間国際機関である文化財保存修復研究国際センター(ICCROM)に加盟し,国際的な研究事業などに協力を行っており,平成12年度からは同センターに文化庁の職員を派遣しています。

 また,アジア太平洋地域の世界遺産などの文化財保護に関する国際協力の充実強化を図るため,平成11年8月に(財)ユネスコ・アジア文化センター文化遺産保護協力事務所を開設しました。

 同事務所では,平成12年度には,アジア太平洋地域諸国の文化遺産保護担当者を招へいし,遺産の保護,調査,修復などをテーマとした集団研修や個人研修などを実施したほか,アジア太平洋地域の文化財保護関連の資料収集及びデータベースの構築を行いました。13年度には,このデータベース構築を引き続き行うとともに,文化遺産の保護に関する国際会議を開催することとしています。

ブータンの寺院での調査実習風景

(ウ) 海外展

 文化庁は,従来から諸外国において,国宝・重要文化財を含む大規模な展覧会を開催しており,平成12年度は,ライデン国立民俗学博物館(オランダ)において,「日本とオランダの出会い―日蘭交流400周年記念―」展,フィラデルフィア美術館(アメリカ)において「本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)」展,上海博物館(中国)において「日本文物精華展」をそれぞれ開催しました。13年度は,大英博物館(イギリス)において「古代日本の聖なる美術」展を開催します。

 また,我が国の独立行政法人国立博物館と諸外国の博物館・美術館が開催する「博物館等海外交流古美術展」を実施しており,平成13年度は,プラハ国立美術館(チェッコ)の所蔵品の展覧会を京都国立博物館で,14年度は,京都国立博物館の所属品の展覧会キンスキー宮殿(チェッコ)で開催する予定です。

フィラデルフィア美術館における「本阿弥光悦」展

(エ) 国際民俗芸能フェスティバル

 文化庁では,国内の民俗芸能と外国(主にアジア)の民俗芸能が一堂に集まって公演する「国際民俗芸能フェスティバル」を行っており,平成13年度は山口県と滋賀県の2会場で開催しました。14年度も2〜3会場で開催する予定です。

(オ) 地方公共団体における国際協力の支援

 文化庁では,総務省及び(財)自治体国際化協会が行う「自治体職員協力交流事業」に協力し,地方公共団体が受け入れる諸外国の文化財保護行政担当者,遺跡発掘技術者,博物館・美術館の専門職員などに対する研修を行っており,平成12年度は,インドネシア,中国からの研修生を受け入れました。

{3} 世界遺産の推薦・登録

 「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)は,顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として,損傷,破壊などの脅威から保護し,保存することを目的として,昭和47年の第17回ユネスコ総会において採択されました。我が国は平成4年に同条約を締結し,13年6月現在締約国は164か国にのぼります。ユネスコに設置される世界遺産委員会(締約国から選出された21か国で構成)は,自己の定めた基準に照らして世界遺産を決定するとともに,世界遺産の保全状況の審査や世界遺産基金による国際的援助の審査などを行います。12年12月現在,世界遺産の登録件数は690件(文化遺産529件,自然遺産138件,両方に該当するもの23件)となっています。

 平成12年12月にオーストラリア(ケアンズ)で開催された第24回世界遺産委員会においては,我が国から推薦していた「琉球王国のグスク及び関連遺産群」が世界遺産に登録されました。これは,琉球が琉球王国への統一に動き始める14世紀後半から王国確立後の18世紀末にかけて生み出された文化遺産群であり,今帰仁城跡(なきじんじょうあと)などのグスクや識名園(しきなえん),斎場御嶽(せいふぁうあき)など琉球地方独自の特徴を表す九つの資産で構成されています。これにより,現在我が国の世界遺産は11件(文化遺産9件,自然遺産2件)となっています。

 また,今後の世界遺産への推薦候補として新たに「平泉の文化遺産」「紀伊山地の霊場と参詣道」「石見銀山遺跡」を選定し,平成13年4月にユネスコ世界遺産暫定リストに追加記載しました。

世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」(座喜味城跡)

{4} 人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言

 「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」とは,平成13年度からユネスコが始めた事業で口承及び無形遺産の継承と発展を図ることを奨励するため,ユネスコが定める基準を満たすものを隔年で「口承及び無形遺産の傑作」として宣言し,そのリストを定期的に加盟国などに配布するものです。

 加盟国は2年ごとに1件の候補を推薦(併せて,今後10年間にわたって推薦を計画している候補の暫定リストを提出)し,ユネスコの選考委員会が「たぐいない価値を有する無形の文化遺産が集約されていること」,「歴史,芸術,民族学,社会学,人類学,言語学又は文学の観点から,たぐいない価値を有する民衆の伝統的な文化の表現形式」の観点から選考します。

 我が国では,平成12年12月,候補として「能楽」を,暫定リストとして「人形浄瑠璃文楽」及び「歌舞伎」をユネスコに提出しました。

 平成13年5月18日,ユネスコ本部にて第1回の宣言式典が行われ,日本の「能楽」を含む19件が「傑作」として宣言されました。

能(喜多竜)"半蔀"

{5} 著作権に関する国際協力

 我が国は,世界知的所有権機関(WIPO)などにおける新たな条約の策定などの議論へ積極的に参画するとともに,途上国における著作権制度の整備などを目的とした国際協力として「アジア地域著作権制度普及促進事業(APACEプログラム)」,「アジア地域著作権専門家招致事業」,「アジア・太平洋 著作権・著作隣接権セミナー」,「権利の執行に関する協力事業」,「JICA研修コース(著作権制度整備)」などの事業を展開しています。


(6) スポーツの国際交流

 スポーツは人類共通の文化であり,スポーツを通じた国際交流は諸外国との相互理解と友好親善の促進に大きな役割を果たすものです。

{1} 地域レベルのスポーツ交流

 スポーツにおける国際交流については,近年は,従来の国際競技大会への選手派遣を中心としたものに加えて,幅広い年齢層で市民レベルでも盛んとなっています。
 文部科学省では,諸外国とのスポーツによる相互理解と友好を深めるために市町村が実施する事業に助成しています。

{2} スポーツ団体における国際交流事業

 (財)日本体育協会では,青少年スポーツ指導員の受入れ・研修及びアジア地区のスポーツ交流などの国際交流事業を実施しています。また,(財)日本オリンピック委員会においては各種国際競技大会への選手派遣及び競技力向上スポーツ交流事業などを実施しています。文部科学省では,これらスポーツ団体が行う国際交流事業の一部に対して補助を行っています。

{3} 国際競技大会への支援

 我が国では,2002年ワールドカップサッカー大会をはじめとして,数々の国際競技大会の開催が予定されています。これらの国際競技大会の開催が我が国のスポーツの普及や振興のみならず,スポーツを通じた国際交流として,国際親善の推進に大きく寄与するものであります。特に,2002年ワールドカップサッカー大会については,(財)2002年ワールドカップサッカー大会日本組織委員会が行う大会開催準備に対して,政府として必要な支援・協力などを行っています( 第2部第8章第4節 参照)。


(7) 二国間交流

 ワールドカップ・サッカー大会が日韓共同で開催される2002年(平成14年)を日韓国民交流年とすることが両国の総理の間で合意されて以来,本交流年事業について両国政府の間で協議が進められています。本交流年に向け,2001年(平成13年)において,山口県,滋賀県で開催される国際民俗芸能フェスティバルに,それぞれ大韓民国慶尚南道伝統民俗保存会及び珍島民俗芸能保存会を招へいし,また国立劇場においては「日本の声明と韓国の梵唄」公演を行うなど,交流年に向けた様々なイベントが活発に行われています。また,1998年(平成10年)10月の日韓共同宣言及び2000年(平成12年)3月の中曽根文部大臣(当時)の訪韓時における文(ムン)教育部長官等との会談に基づき,留学生交流を通じた相互理解の増進に寄与することを目的とした日韓共同理工系学部留学生事業,高等学校以下の教員の短期受入れなどが実施されました。

 2002年は日中国交正常化30周年にも当たっており,2000年(平成12年)の日中首脳会談でこの年を2002年「日本年」・「中国年」とすることが合意されました。平成13年11月にはこれを実施するための組織として経済界や文化・芸能界の代表者からなる実行委員会が組織されています(文化庁長官及び国際統括官が委員として参加)。

 2001年は「英国における日本年(「Japan2001」)」及び「日本におけるイタリア2001年」であり,英国では「古代日本の聖なる美術」展(大英博物館)をはじめとする多くのイベントが行われ,我が国では「イタリア・ルネサンス―宮廷と都市の文化展」(国立西洋美術館)をはじめとする多くのイベントが行われています。

 その他の国々についても,文化協定の締結やそれに基づく文化協議の実施などにより,両国間の教育・文化・スポーツ交流の推進を図り,相互理解の増進と友好関係の発展を図っています。


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