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第1部   21世紀の教育改革
第3章  「才能の伸長や創造性の育成」を目指して
第3節  個性や才能を伸ばす教育
2  施策の概要と課題



(1) 中高一貫教育の推進

{1} 趣旨

 今日,ほとんどの生徒が高等学校に進学する状況の下で,生徒の能力・適性,興味・関心などの多様化に対応して,中等教育の多様化・個性化が求められています。

 このような中で,中高一貫教育の導入は,これまでの中学校・高等学校に加え,生徒や保護者が6年間の一貫した教育課程や学習環境のもとで学ぶ機会をも選択できるようにすることにより,中等教育の一層の多様化を推進し,生徒一人一人の個性をより重視した教育の実現を目指すため,平成11年4月から制度化しています。

{2} 取組状況

 文部科学省においては,こうした中高一貫教育の趣旨を踏まえ,生徒の多様な個性や能力を存分に伸ばすことができる教育システムを整備する観点から,当面高等学校の通学範囲に1校を目標に中高一貫教育の推進をしています。

 中高一貫教育校は,平成11年度には4校でしたが,13年度には51校が設置されています。14年度以降36校の設置予定が既に公表されており,そのほかの都道府県においても導入に向けた検討が進められています。


(2) 高等学校教育と大学教育の接続の改善

 教育改革の進展等によって高等学校と大学はますます多様化・個性化しています。また,進学率の上昇等によって大学に入学してくる学生の能力や履修歴等もますます多様化しています。

 こうした状況の中で,一人一人の能力・適性に応じた教育をより一層進め,その能力の伸長を図るため,平成13年7月に学校教育法を改正し,これまで数学・物理学の分野に限られていた飛び入学(17歳以上で大学入学を認める制度)について,これらの分野に限らず,大学の定める分野において特に優れた資質を有する者にも認められることとしました。この改正は,14年4月の入学者から適用されます。なお,飛び入学を実施できる大学は,飛び入学を実施する分野に関する教育研究が行われている大学院が置かれており,その分野における特に優れた資質を有する者の育成を図るのにふさわしい教育研究上の実績及び指導体制を有するものに限られています。

 また,高等学校と大学の役割が多様化する中で,学生の大学教育への円滑な移行の実現を目指す上で,入学者選抜の在り方としては,大学と学生とのより良い相互選択を図ることが基本理念となります。

 こうした基本理念を実現するため,各大学の入学者選抜においては,それぞれの大学・学部の目的,特色や専門分野等の特性等に応じたそれぞれの大学・学部などのアドミッション・ポリシー(入学者受入方針)によって,学力検査だけでなく,面接,小論文,リスニングテストを実施したり,推薦入学,帰国子女や社会人,専門高校・総合学科卒業生を対象とした特別選抜を採用するなど,選抜方法の多様化,評価尺度の多元化が進められ,受験生の能力・適性等を多面的に判定する方向で工夫・改善が行われています。

 平成13年度の入学者選抜においては,近年,各大学で導入が進んでいるアドミッション・オフィス入試(AO入試)が,国公私立合わせて207大学で実施されています。また,14年度の国公立大学の入試においては,AO入試が13年度の8大学から16大学に倍増しています。このAO入試は,学力検査に偏らず,{1}推薦者を必要とせず,一定の条件を満たす限りだれでも自らの意志で応募できる公募型入試であり,{2}大学側が求める学生像を出願資格として明確に示した上で,{3}志望理由書やエッセイなど多様な出願書類を提出させ,詳細な書類審査や丁寧な面接等を組み合わせること及び大学での学習の意欲と能力,目的意識などを総合的に判定することによって,進学希望者と大学とのよりよいマッチングを目指すといった特色を有するものとなっています。

 他方,生徒の能力・適性,興味・関心,進路等が極めて多様化している高等学校においては,これまで,特定の分野に関心を示す生徒に対し,科目等履修生や聴講生等として大学レベルの教育を履修する機会を与えることや,大学の教員が高等学校において学校紹介や講義を実施するなどの取組が進められてきています。こうした取組は,将来を見通した進路指導や学習指導の充実を図る観点からも極めて有効です。また,高等学校においては,平成10年度から大学等における科目等履修生,研究生又は聴講生としての学修や大学において開設する公開講座における学修などを,各学校の判断により,単位として認定することが可能になっています。

 今後,このような制度を活用しつつ,更に高等学校と大学の連携を図り,生徒に積極的に大学教育を履修する機会を与えていくことが期待されています。

■埼玉大学と県立高校の連携

 埼玉県では,埼玉大学の講義を県立高校生が聴講し,その成果を高校の単位として認定しています。この提携は,県立浦和高校との間で平成12年度に開始され,その後,県立浦和北高校,県立大宮高校,県立川口北高校が加わり,13年度は,43の講義に延べ181名の生徒が聴講しています。さらに14年度には県立浦和西高校が参加することになっています。

 埼玉大学の高等学校生向け公開講座は,高校生が大学生と一緒に受講することが特徴で,実施内容等については,各県立高校が埼玉大学と個々に協定書を締結しています。また,単位認定については,高校に提出させるリポートや出席状況等を考慮して高校の単位として認定しています。

 埼玉大学では,開講講義のシラバスを高校生向けに作成して予め提示したり,附属図書館等の施設を利用できるようにしたりするなど,受講する高校生に対して便宜を図っています。また,高校側でも,受講している生徒に対して毎週受講報告をさせる等の指導を行っており,大学と高校の間で,きめの細かな連携が行われています。

 受講した高校生からは,「大学へ進学する目的意識が高まった。」「大学の講義のおかげで高校の授業も深い理解ができた。」と好評です。


(3) リーダー養成のための大学の教育・研究機能の強化

 我が国の経済の構造変化と世界的規模での競争の中で,職業人として指導的な役割を果たす次世代のリーダーを養成するためには,学生に幅広い教養と高度な専門的能力を身に付けさせることが重要です。このような観点から,文部科学省は,これまで大学院の規模の拡大を図ってきました。現在,リーダー養成のための大学・大学院の教育・研究基盤の整備を進めています。また,平成13年7月に学校教育法を改正し,大学3年修了から大学院に進学することを促進するとともに,大学院入学者選抜において他大学の出身者や社会人が積極的に受け入れられるよう,各大学における取組を促進しています。

 さらに,平成11年9月には,高度の専門性を要する職業等に従事するのに必要な高度の専門的知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程(=専門大学院(プロフェッショナル・スクール))の制度化を行いました。

 専門大学院には,その目的に即した質の高い教育研究を行うために,

{1} 授業に,ケーススタディやフィールドワークを取り入れるなど,実践的なカリキュラムを編成すること
{2} 教員の基準を従来の大学院の2倍とし,そのうち相当数は実務経験を有する者とするよう配慮すること
{3} 修了要件として,修士論文に代えて特定課題研究を原則とすること

などが求められており,通常の修士課程とは区別して扱われることになっています。

 専門大学院としては,経営管理,法律実務,ファイナンス,国際開発・協力,公共政策,公衆衛生などの分野において,その設置が期待されるところであり,これまでに,国立で3大学院,私立で1大学院にそれぞれ設置されているところです。


(4) 大学での学習を促すシステム

 近年,高等学校等における学習内容が多様化しています。大学教育へ円滑な移行を図り,学生の多彩な能力を開花させ一層伸ばす観点から,各大学においては,教育内容・方法について様々な工夫改善に努めています。例えば,学生の進路に対応したコース制の導入や教養教育の重視などのカリキュラムの工夫,各授業科目の詳細な授業計画であるシラバスの作成,単位制度にのっとった十分な学習時間を確保するための履修登録単位数の上限設定などを行っています。

 こうした取組をより効果的にするため,各大学においては,教員相互の授業参観や授業方法についての研究会の開催など,教育内容・授業方法の改善のための組織的な取組(ファカルティー・ディベロップメント)を行っている(平成12年度341大学)ほか,成績評価基準を明示した上で厳格な成績評価を行う大学も増えており,例えば,一定水準の成績評価を上回る学生しか卒業させないシステム(GPA制度)を導入している例も見られます(平成12年度66大学)。

 このように,各大学が学生の多様な履修歴に応じきめ細かな配慮を行うことによって学生に付加価値を身に付けさせた上で社会に送り出すことは,その社会的責任を果たす上で極めて重要であることから,文部科学省としても各大学の積極的な取組を促進しています。

 また,これからの変化の激しい社会の中では,実践的な知識や技術,創造的・主体的に考え,行動する能力を身につけることが求められています。

 このため,学生が在学中に自らの専攻,将来のキャリアに関連した就業体験を行うインターンシップの重要性が一層高まっています。平成12年度には,全国の大学の約3割が授業科目として位置付け,実施しています。各大学においてもインターンシップの導入を機に全般的な教育内容・方法の改善が進められており,また,企業等にとってもインターンシップの実施を通じて企業ニーズ等を大学や学生に伝えることができるなど,産学の連携を深めていく上で重要な役割を果たしています。

 さらに,大学等の教育において衛星通信やインターネット等の情報通信技術を活用することは,教育内容を豊かにし,教育機会の提供を変え,大学教育への一層のアクセス拡大に資するものであり,新しい社会的価値観の健全な創出に重要な役割を果たすものとして期待されています。

 このため,文部科学省においては,大学の授業等において情報通信技術を活用した授業について単位修得を可能とするなどの制度改正やインターネット等を活用した遠隔教育に対する支援などを行っています。また,これを受けて,各大学等においては,インターネットをはじめとする情報通信技術の活用による授業内容の豊富化・高度化や,授業時間外の学習支援などを進めています。

■学生の学習意欲を喚起する教育の実施例

 金沢工業大学では,学生の学習意欲を喚起するため,以下のようなカリキュラム改革を実施しています。

(1) 「能力の総合化」を目指す科目「工学設計」

 学生の学習意欲を触発しながら自ら考えて行動する力を育成するため,あるテーマについて4〜5人でチームを組んで問題点を発見し,それを解決するために学ぶプロジェクト学習「工学設計」を1年次から4年次にかけて段階的に実施。

(2) 夢考房,マルチメディア考房

 学生が自分が興味を持った実験や創作活動を行うことができるよう,様々な工具や工作機械,パソコン,ビデオ編集機などの施設・設備を用意したスペースを提供。

(3) 3学期制の実施

 1学期を11週とし,第1学期を4月から6月,第2学期を9月から11月,第3学期を12月から3月とし,1学期,70分×10週の講義科目を1単位とし,1学期間に週2回から3回の集中的な授業を実施。

 特に1年生の第1学期を修学基礎教育の期間として位置付け,「フレッシュマンセミナー」「自己啓発セミナー」「修学基礎能力演習」「コンピュータ基礎演習」などを実施。

(4) シラバスの充実

 授業の主題,目標,授業形式,テキスト,参考書,履修するに当たって前提として学んでおくべきこと,評価方法などのほか,研究室の番号,メールアドレスなどの情報を網羅したシラバスを作成。


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