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国民のみなさんへ 旭化成株式会社名誉フェロー 吉野彰氏

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 現在、科学技術は二つの重要な使命を帯びています。一つは地球環境問題です。もう一つが第4次産業革命です。この二つの使命を果たすために科学技術はどうあるべきなのでしょうか。また、この二つの使命は全く別物なのでしょうか。それとも連動したものなのでしょうか。私は連動したものだと考えています。
 まずこれまで人類が経験してきた産業革命の歴史について考えたいと思います。
 19世紀のジェームス・ワットの蒸気機関の発明から始まった産業革命(第1次)に続き、20世紀には第2次産業革命が起こりました。これにより大量生産・大量消費という社会が生まれました。この二つの産業革命により人類は豊かで利便性の高い社会を生み出しましたが、一方で環境問題という大きな負の遺産も生み出してしまいました。その後、人類は次の産業革命に向かいます。1995年から始まった情報技術(IT)革命又は情報通信(ICT)革命ともいわれる第3次産業革命です。これにより現在のMobile-IT社会(※1)が生まれました。私が携わっているリチウムイオン電池はこの第3次産業革命と共に生まれ、成長してきました。第1次、第2次産業革命の対象が「モノ」であったのに対し、第3次産業革命の対象は「情報」でした。この「モノ」技術と「情報」技術を融合させて新しい社会を生み出そうというのが第4次産業革命です。これを実現していく手段が人工知能(AI)、IoT、シェアリング、第5世代移動通信システム(5G)などの新技術、新概念です。ここに環境問題と産業革命の接点があります。すなわち、これまでの産業革命で生み出した負の遺産である環境問題を清算し持続可能な(Sustainable)社会を実現していくのが第4次産業革命だと思っています。その一端が既に見え始めています。自動車業界では“CASE(※2)”、“MaaS”というバズワード(※3)がささやかれています。これは正に第4次産業革命が生み出す持続可能な(Sustainable)社会を予知させるものです。
 それに向けていつ頃から世界は動き出すのでしょうか。私は2025年頃からスタートし始めて、真のSustainable社会が実現するのは2035年頃だと睨(にら)んでいます。このように世界はこれから大きく変革していきます。そのとき、日本が生み出した科学技術が大きな貢献をしていることを期待しています。
 「世界が大きく変革していくときは今の子供たち、若手研究者たちにとって絶好のチャンスですよ。あなたたちが活躍する場が待っていますよ。」ということを最後に申し上げたいと思います。
<参考URL>コロナ禍における吉野彰氏からのメッセージ
https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/mext_00030.html

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  • ※1 携帯電話、スマートフォンなどの携帯可能な情報通信端末が普及した社会。
  • ※2 Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)。
  • ※3 Buzzword。口コミ的に広まっていく新造語。

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科学技術・学術政策局企画評価課

(科学技術・学術政策局企画評価課)