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第5章 イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築

 国内外の知的資源を活用し、新しい価値の創出とその社会実装を迅速に進めるため、企業、大学や公的研究機関の本格的連携とベンチャー企業の創出強化等を通じて、人材、知、資金が、組織やセクター、さらには国境を越えて循環し、各々が持つ力を十分に引き出し、イノベーションが生み出されるシステムの構築を進め、我が国全体の国際競争力を強化し、経済成長を加速させることとしている。

第1節 オープンイノベーションを推進する仕組みの強化

 イノベーションを結実させるのは主として企業であるが、一層スピード感ある社会実装を実現していくためには、大学や公的研究機関との協働や従来以上に柔軟な産産連携が重要となっている。グローバルな次元でオープンイノベーションを推進するため、各主体がそれぞれの強みを生かして相互補完的に連携、共創できる仕組みの構築や、人材、知、資金の流動性を高めてイノベーションが興りやすい環境を整備していくことが重要である。

1 企業、大学、公的研究機関における推進体制の強化

(1) 国内外の産学連携活動の現状
ア 大学等における産学官連携活動の実施状況
 平成16年4月の国立大学法人化以降、総じて大学等における産学官連携活動は着実に実績を上げている。平成30年度は、大学等と民間企業との「共同研究実施件数」は2万7,389件(前年度比7.6%増)、「研究費受入額」は約684億円(前年度12.5%増)と、前年度と比べて増加しており、このうち1,000万円以上の「共同研究実施件数」は1,237件、「研究費受入額」は約331億円、また「特許権実施等件数」は1万7,002件になっており、これらも前年度と比べて着実に増加している(第2-5-1図)。

■第2-5-1図/大学等における共同研究等の実績

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イ 技術移転機関(TLO(※1))における活動状況
 令和2年1月現在、34のTLOが「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(平成10年法律第52号)に基づき文部科学省及び経済産業省の承認を受けており、平成30年度における特許実施許諾件数は1万2,032件となっている。
 この点、昨今の第4次産業革命への対応ともあいまって、大学における研究成果の社会還元を一層進めることが産業技術の向上や新たな事業分野の開拓に資することとなる。こうしたことから、令和元年度より、文部科学省では、「イノベーションマネジメントハブ形成支援事業」を開始し、大学、産業界、TLOのネットワーク強化を図ることを通じて、大学における知的財産の効果的活用や共同研究の構築に資する環境整備を推進している。

(2) 大学等の産学官連携体制の整備
 政府は、我が国の大学・国立研究開発法人と外国企業との共同研究等の産学官連携体制に関し、安全保障貿易管理等に配慮した外国企業との連携に係るガイドラインの検討を開始した。
 文部科学省は、産学官連携の体制を強化し、企業から大学・国立研究開発法人等への投資を今後10年間で3倍に増やすことを目指す政府目標を踏まえ、経済産業省と共同して開催した「イノベーション促進産学官対話会議」において、産業界から見た、大学・国立研究開発法人が産学官連携機能を強化する上での課題とそれに対する処方箋を取りまとめた「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を平成28年11月に策定し、その普及に努めるとともに、令和元年度より当該ガイドラインの実効性を向上させるための検討を始めている。また、平成30年度から「オープンイノベーション機構の整備」を開始し、企業の事業戦略に深く関わる大型共同研究(競争領域に重点)を集中的にマネジメントする体制の整備を通じて、大型共同研究の推進により民間投資の促進を図っている。
 また、令和元年7月、一般社団法人日本経済団体連合会及び経済産業省と共同で「大学ファクトブック2019」を公表し、産学官連携活動に関する大学の取組の「見える化」を進めた。
 農林水産省は、産学連携支援事業により、全国に農林水産・食品産業分野を専門とする産学連携コーディネーターを配置し、ニーズの収集・把握、シーズの収集・提供を行うとともに、産学官のマッチング支援や研究開発資金の紹介・取得支援、商品化・事業化支援等を実施している。

(3) 産学官の共同研究開発の強化
 科学技術振興機構は、大学等の研究成果の実用化促進のため、大学や公的研究機関等における有望なシーズ発掘から事業化に至るまで、切れ目ない支援を実施する「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP(※2))」、優れた研究成果を基に設定したテーマの下で研究開発を行い、新産業創出の礎となる技術の確立を支援する「戦略的イノベーション創出推進プログラム(S-イノベ)」、産業界が抱える技術課題の解決に資する大学等の基礎研究を支援する「産学共創基礎基盤研究プログラム」を推進している。また、国から出資された資金等により、大学等の研究成果を用いて企業が行う開発リスクを伴う大規模な事業化開発を支援する「産学共同実用化開発事業(NexTEP(※3))」を実施している。
 総務省は、情報通信研究機構(NICT(※4))が構築・運営しているNICT総合テストベッドにより、産学官連携によるIoTや新世代ネットワーク等の技術実証・社会実証を推進している。

(4) 民間の研究開発投資促進に向けた税制措置
 政府は、民間における研究開発を促進するため、第2-5-2図のとおり、研究開発税制を設けている。
 研究開発税制とは、世界の潮流の中にあって、我が国を「世界で最もイノベーションに適した国」に変革するために、研究開発を行っている企業の法人税額から、試験研究費の額に税額控除割合を乗じた金額を控除できる制度である。民間企業の研究開発投資を維持、拡大することにより、イノベーション創出につながる中長期・革新的な研究開発等を促し、我が国の成長力・国際競争力を強化することを目的としている。

■第2-5-2図/研究開発税制

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(5) 表彰制度・認定制度の活用
ア 第2回 日本オープンイノベーション大賞(令和元年度)
 我が国におけるイノベーション創出の加速を目指し、オープンイノベーションのロールモデルとなる先導的又は独創的な取組・プロジェクト14件に対し、内閣総理大臣賞をはじめとする各省大臣賞等を授与した(第2-5-3表)。令和元年度より、スポーツ分野における科学技術・学術の振興のため、新たに「スポーツ庁長官賞」を設置した。

■第2-5-3表/第2回 日本オープンイノベーション大賞

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イ 研究支援サービス・パートナーシップ認定制度
 文部科学省は、令和元年10月に、民間事業者が行う研究支援サービスのうち、一定の要件を満たすサービスを「研究支援サービス・パートナーシップ」として認定する「研究支援サービス・パートナーシップ認定制度」を創設した。認定することを通じ、研究者の研究環境を向上させ、我が国における科学技術の推進及びイノベーションの創出を加速するとともに、研究支援サービスに関する多様な取組の発展を支援することを目的としている。第1回となる令和元年度においては、8件を令和2年3月に認定サービスとして決定した(第2-5-4表)。

■第2-5-4表/令和元年度 研究支援サービス・パートナーシップ認定制度 認定サービス

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2 イノベーション創出に向けた人材の好循環の誘導

 イノベーションを生み出すためには、世界トップクラスの研究者等が、大学、公的研究機関、企業等の組織の壁を超えて、流動化することを促進する必要がある。
 文部科学省、経済産業省及び関係府省庁は、研究者等が複数の機関の間での出向に関する協定等に基づき、各機関に雇用されつつ、一定のエフォート管理の下で、各機関における役割に応じて研究・開発及び教育に従事することを可能にする、クロスアポイントメント制度を推進している(第4章第1節2(3)参照)。
 また、文部科学省では、研究代表者への人件費支出が可能となるよう、直接経費支出の柔軟化に向けた検討を行っている(第4章第3節3参照)。

3 人材、知、資金が結集する「場」の形成

(1) 産学官協働の「場」の構築
 科学技術によるイノベーションを効率的にかつ迅速に進めていくためには、産学官が協働し、取り組むための「場」を構築することが必要である。科学技術振興機構においては、下記の(ア)から(エ)の事業について、令和元年度より「共創の場形成支援」として大括*り化し、一体的に推進している。

ア 世界に誇る地域発研究開発・実証拠点の形成
 科学技術振興機構は、「世界に誇る地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)推進プログラム」により、地域に結集する産学官金のプレイヤーが国内外の異分野融合による最先端の研究開発や成果の事業化、人材育成を一体的かつ統合的に展開するための複合型イノベーション推進基盤(リサーチコンプレックス)を成長・発展させ、世界に誇るイノベーション創出及び地方創生を実現するために、令和元年度においては3拠点の支援を実施している(第2-5-5図)。

■第2-5-5図/世界に誇る地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)推進プログラム 各拠点の取組

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イ 革新的イノベーション創出拠点の形成
 科学技術振興機構では平成25年度から「センター・オブ・イノベーション(COI(※5))プログラム」を実施しており、全18拠点で革新的イノベーションを産学連携で実現するための研究開発を推進している(第2-5-6図)(第1部第3章2参照)。

■第2-5-6図/COI拠点一覧

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ウ オープンイノベーションを加速する産学共創プラットフォームの形成
 科学技術振興機構は、平成28年度より「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA(※6))」を実施しており、民間企業とのマッチングファンドにより、複数企業から成るコンソーシアム型の連携による非競争領域における大型共同研究と博士課程学生等の人材育成、大学の産学連携システム改革等とを一体的に推進することにより、「組織」対「組織」による本格的産学連携を実現し、我が国のオープンイノベーションの本格的駆動を図っている。

エ 産業技術総合研究所による技術シーズの発掘及び研究開発プロジェクトの推進
 産業技術総合研究所は、産業技術に関する産業界や社会からの多様なニーズを捉えながら、技術シーズの発掘や研究開発プロジェクトの推進を行っている。具体的な取組としては、オープンイノベーションハブとしての「TIA(※7)」の活動を推進するとともに、共創の場の形成の一環として17の技術研究組合に参画している(令和2年2月10日現在)。

(2) オープンイノベーション拠点の形成
ア 筑波研究学園都市
 筑波研究学園都市は、我が国における高水準の試験研究・教育の拠点形成と東京の過密緩和への寄与を目的として建設されており、29の国等の試験研究・教育機関をはじめ、およそ150の民間の研究機関・企業等が立地しており、研究交流の促進や国際的研究交流機能の整備等の諸施策を推進している。
 TIAは、同都市にある公的4機関、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構と東京大学を中心に運営されているオープンイノベーション拠点である。設立10年目の令和元年度には、TIA連携プログラム探索推進事業「かけはし」の採択課題の中から、藻類の機能性食材への応用展開を図るベンチャー企業が創出されたほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構、科学技術振興機構、日本医療研究開発機構などの大型研究プロジェクト発足につながった。また、TIAの人材育成事業として、TIA連携大学院「サマー・オープン・フェスティバル」や、若手研究人材の育成を目的とする「Nanotech CUPAL(※8)」を実施した。

イ 関西文化学術研究都市
 関西文化学術研究都市は、我が国及び世界の文化・学術・研究の発展並びに国民経済の発展に資するため、その拠点となる都市の建設を推進している。令和元年度現在、およそ150の施設が立地しており、多様な研究活動等が展開されている。

(3) 多様な分野との産学連携を行う「オープンイノベーションの場」の推進
 農林水産省は、様々な分野の革新的な技術を農林水産・食品分野に導入することで、技術革新を進め、市場ニーズを踏まえた商品化・事業化をこれまでにないスピード感を持って実現するため、「知」の集積と活用の場®の取組を推進している。
 平成28年4月には「『知』の集積と活用の場 産学官連携協議会」を立ち上げ、令和元年12月末時点で3,269の多様な業種の企業等が会員となるとともに、特定の研究課題に取り組む156の研究開発プラットフォームが設立されている。さらに、研究開発プラットフォームから革新的な研究開発を行う研究コンソーシアムが形成されており、マッチングファンド方式の提案公募型事業により62課題を支援している。

(4) 技術シーズとニーズのマッチングを促進する環境の醸成
 文部科学省及び経済産業省は、科学技術振興機構や新エネルギー・産業技術総合開発機構と協力し、令和元年8月29日、30日に大学、公的研究機関、民間企業等の関係者が一堂に会する国内最大規模の産業界と大学等のマッチングイベント「イノベーション・ジャパン2019~大学見本市&ビジネスマッチング~」を東京ビッグサイトにおいて開催した。
 農林水産省は、農林水産・食品産業分野の研究を行う民間企業、大学、公設試、独立行政法人等の技術シーズを展示し、技術に対するニーズを有する機関との連携を促進するため、各省・各機関と連携し「アグリビジネス創出フェア」を毎年度開催している。令和元年度も、新技術の産業利用を進めている民間企業主体の展示会と同じ会場において11月に同時開催し、全国から134機関が出展し、約3万6,000人が来場した。

■第2-5-7表/オープンイノベーションを推進するための仕組みの強化のための主な施策(令和元年度)

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第2節 新規事業に挑戦する中小・ベンチャー企業の創出強化

 技術シーズを短期間で新規事業につなげるようなイノベーションの創出は、迅速かつ小回りの利く中小・ベンチャー企業との親和性が高い。中小・ベンチャー企業の企業活動を下支えし、スピード感を損なうことなく市場創出につなげられるよう、産学官が一体となって継続的及び効果的に支援する体制を構築することが重要である。

1 起業家マインドを持つ人材の育成

 文部科学省において、学部学生や大学院生、若手研究者等に対するアントレプレナー育成プログラムの実施により、我が国のベンチャー創出力を強化する「次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)」を平成29年度から実施している。

2 大学等発ベンチャーの創出促進

 大学等発ベンチャーの新規創設数は、一時期減少傾向にあったが、近年は回復基調にあり、平成30年度の実績は185件となった。今後は、真に市場ニーズを捉え、強くグローバルに成長することのできる質の高い大学等発ベンチャーの創出に向けて、創業後の販路開拓などのビジネス面を含め、持続的な経営に資する環境を整備していく必要がある。
 科学技術振興機構は、「大学発新産業創出プログラム(START(※9))」を実施しており、起業前の段階から公的資金と民間の事業化ノウハウ等を組み合わせることにより、成長性のある大学等発ベンチャーの創出を目指した支援を行っている。また、平成29年度よりSTARTの中において、成果の社会実装に意欲を持つ人材に対しアントレプレナー教育の提供とビジネスモデル探索活動を支援する「社会還元加速プログラム(SCORE(※10))」を実施している。「出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS(※11))」では、科学技術振興機構の研究開発成果を活用するベンチャー企業の設立・増資に際して出資又は人的・技術的援助を実施することにより、当該企業の事業活動を通じて研究開発成果の実用化を促進している。

3 新規事業のための環境創出

(1) 世界とするスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成
 内閣府、文部科学省、経済産業省では、スタートアップ・エコシステムの形成とイノベーションによる社会課題解決の実現を目指して、令和元年6月に「Beyond Limits. Unlock Our Potential~世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略~」を策定し、都市や大学を巻き込み、世界を志向する起業家教育やアクセラレータ機能の抜本的強化等による世界にするスタートアップ・エコシステム拠点の形成を推進している。特に、我が国の強みである優れた人材、研究開発力、企業活動、資金等を生かした日本型のスタートアップ・エコシステムの形成と発展のため、一定の集積、潜在力を有する都市であって、地方自治体、大学、民間組織等が連携しスタートアップ・エコシステムの形成に取り組む都市を認定して、集中支援を行うこととしている。

(2) 研究開発型ベンチャー等に対する支援
 経済産業省は、新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じて、我が国における技術シーズの発掘から事業化までを一体的に支援する「研究開発型スタートアップ支援事業」を実施している。これに加えて、平成29年5月に事業会社・ベンチャー双方の社外連携担当者向けに、各視点からの連携の実態や課題、先行事例等をアンケートやヒアリングを通じて調査・整理し、「連携のための手引き(初版)」として公表した。また、平成30年6月には事業会社の社外連携担当者向けに、企業ヒアリング、国内外の事例調査等の結果を基に、事業会社側の運用における課題(壁)を整理し、対応策として先行事例をまとめた「連携のための手引き(第二版)」を公表した。さらに、平成31年4月には連携を進める手法の一つとして近年注目が集まっているコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)に焦点を当て、国内外の事例調査等を実施するとともに事業会社の社外連携責任者、ベンチャー企業の役員、大学関係者、法務・知財の専門家と共に検討を行い、事業会社のCVC担当者向けに「事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(第三版)」をまとめ、公表した。

(3) 中小企業技術革新制度(SBIR制度)による支援
 SBIR制度においては、中小企業者及び事業を営んでいない個人(※12)が行う新技術に関する研究開発のための補助金・委託費等(特定補助金等)の支出の機会の増大を図るとともに、株式会社日本政策金融公庫による特別貸付等の事業化支援措置を講じている。令和元年度は、関係7省(総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)で合計98の特定補助金等を指定し、中小企業者・小規模事業者等への支出目標額を約460億円に定めた。また、イノベーション創出を図る観点から「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に同制度を位置付け、内閣府を中心とした省庁連携の取組を強化するための改正法案を第201回通常国会に提出している。(第1部第3章第1節1参照)

4 新製品・サービスに対する初期需要の確保と信頼性付与

(1) 公共調達の活用等による中小・ベンチャー企業の育成・強化
 内閣府は、公共調達を活用したスタートアップ・中小企業支援策として、国の省庁及び地方自治体が有する具体的な課題を基に設定されたテーマに対し、スタートアップ・中小企業等が挑戦し、新たな技術や着想の発掘・事業化に資する取組「内閣府オープンイノベーションチャレンジ2019」を実施し、認定した11件の提案に対し、内閣府が準備するアドバイザーによる助言、国の省庁及び地方自治体との面談の機会を提供した。

第3節 国際的な知的財産・標準化の戦略的活用

 知的財産マネジメントの質を一層高めるためには、自らが保有する知的財産等の活用のみならず、その価値を最大化する知的財産戦略が重要である。このため、知的財産・標準化戦略について、事業戦略に組み込むよう浸透させていくとともに、各主体の意識を高め、特許を活用することで新たなオープンイノベーションが創出されるよう促すこととしている。

1 イノベーション創出における知的財産の活用促進

 世界的なイノベーションの環境変化に対応し、国際標準化戦略を策定・実行するとともに、知的財産制度の見直し、知的財産活動に関わる体制整備を進めるため、以下のような取組を進めている。

(1) 国の研究開発プロジェクトにおける知的財産(知的財産権・研究開発データ)マネジメント
ア 特許権等の知的財産権に関する取組
 経済産業省は、国の研究開発の成果を最大限事業化に結び付けるため、「委託研究開発における知的財産マネジメントに関する運用ガイドライン」(平成27年5月)に基づき、国の委託による研究開発プロジェクトごとに適切な知的財産マネジメントを実施している。
 農林水産省は、農林水産分野に係る国の研究開発において、「農林水産研究における知的財産に関する方針」(平成28年2月)に基づき、研究の開始段階から研究成果の社会実装を想定した知的財産マネジメントに取り組んでいる。

イ 研究開発データに関する取組
 経済産業省は、第4次産業革命の進展を踏まえ研究開発データの利活用促進を通じた新たなビジネスの創出や競争力の強化を図るため「委託研究開発におけるデータマネジメントに関する運用ガイドライン」(平成29年12月)に基づき、平成30年3月より、利活用可能な研究開発データを登録するナショプロデータカタログ(※13)の掲載を開始した。

(2) 特許情報等の整備・提供
 特許庁は、高度化、多様化するユーザーニーズに応えるべく、工業所有権情報・研修館が運営する「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat(※14))」を通じて、日本及び中国や韓国等諸外国の特許情報を提供している。
 また、「外国特許情報サービス(FOPISER(※15))」を通じて、一部の東南アジア諸国連合(ASEAN(※16))諸国等の特許情報を提供している。
 そのほか、工業所有権情報・研修館ではオープンイノベーションを促進する一助として、企業・大学、公的試験研究機関等が実施許諾又は権利譲渡の意思がある「開放特許」「リサーチツール特許」の情報を収録したデータベースサービスを提供している。
 科学技術振興機構は、優れた研究成果の発掘、特許化の支援から、企業化開発に至るまでの一貫した取組を進めている。具体的には、「知財活用支援事業」において、大学等における研究成果の戦略的な海外特許取得の支援、大学等に散在している特許権等の集約・パッケージ化による活用促進、大学等の特許情報のインターネットでの無料提供(J-STORE(※17))を実施するなど、大学等の知的財産の総合的活用を支援している。

(3)    早期審査の実施
 特許庁は、特許の権利化のタイミングに対する出願人の多様なニーズに応えるため、一定の要件の下に、早期に審査を行う「早期審査」を実施しており、平成23年8月からは、地震により被災した企業等が知的財産を活用して復興していくことを支援するため、被災者や被災地の事業所等からの特許出願を早期に審査する「震災復興支援早期審査」を実施している。

(4) 特許審査体制の整備・強化
 特許庁は、令和元年度においても、任期満了を迎えた任期付審査官の一部を再採用するなど、審査処理能力の維持・向上のため、引き続き審査体制の整備・強化を図った。

(5) 事業戦略対応まとめ審査の実施
 近年、企業活動のグローバル化や事業形態の多様化に伴い、企業の知的財産戦略も事業を起点としたものに移りつつある。特許庁は、知的財産戦略に基づいた出願に対応するための審査体制について検討を進め、事業で活用される知的財産の包括的な取得を支援するため、国内外の事業に結び付く複数の知的財産(特許・意匠・商標)を対象として、分野横断的に事業展開の時期に合わせて審査・権利化を行う「事業戦略対応まとめ審査」を実施している。

(6) 技術動向調査の実施・公表
 研究開発において、特許情報を活用する等、研究開発戦略と知的財産戦略との連携が求められている。このため、特許庁は、市場を獲得する可能性のある技術分野、国の研究開発プロジェクトに関連する分野を中心に、「市場動向」や「特許出願動向」等を踏まえた我が国の研究開発戦略に資する調査を行い、その結果を公表している。

(7) 専門家による知財活用の支援
 特許庁は、大学において、知的財産権の保護が図られていない研究成果の発掘や知財戦略の策定を支援する「知財戦略デザイナー派遣事業」を令和元年度から開始し、知財戦略デザイナー22名を28大学に派遣した。また、工業所有権情報・研修館を通じて、公的資金が投入された革新的な成果が期待される研究開発プロジェクトを推進する大学や研究開発コンソーシアム等において、研究成果の社会実装を加速する活動を支援する「知的財産プロデューサー派遣事業」や、事業化を目指す産学連携活動を展開する大学において、知的財産マネジメントを支援する「産学連携知的財産アドバイザー派遣事業」も継続しており、令和元年度は、知的財産プロデューサー22名を39プロジェクトに、産学連携知的財産アドバイザー9名を22大学に派遣した。
 農林水産省は、国の研究事業等において、大学、国立研究開発法人、公設試験場等が連携して実施する研究計画の作成支援を行うため、知的財産の戦略的活用など技術経営(MOT(※18))的視点の導入も含め、全国に約150人の農林水産・食品産業分野を専門とするコーディネーターを配置している。

(8) 全保障貿易管理への取組
 経済産業省は、令和元年度において、文部科学省等関係省庁と連携し、大学等向け安全保障貿易管理説明会を開催したほか、輸出管理の専門家の大学等への派遣、大学や国立研究開発法人の輸出管理担当者間のネットワーク構築の支援、研究者等向けの教育教材の提供などにより、技術情報流出の防止強化のため、大学等における管理体制強化の取組を促進した。

(9) 技術等情報の管理に関する取組
 平成30年5月に成立した改正産業競争力強化法において、企業が保有する重要情報の適切な管理に対し国が認定した機関から認証を受けることができる制度を創設(令和2年3月末現在、5件の機関を認定)した。令和元年度は、本制度の普及に向けて、商工会議所及び経済産業局等におけるパンフレットの配布、国内各地で32回のセミナーを開催した。

2 戦略的国際標準化の加速及び支援体制の強化

(1) 知的財産戦略及び国際標準化戦略の推進
 経済のグローバル化が進展するとともに、経済成長の源泉である様々な知的な活動の重要性が高まる中、我が国の産業競争力強化と国民生活の向上のためには、我が国が高度な技術や豊かな文化を創造し、それをビジネスの創出や拡大に結び付けていくことが重要となっている。その基盤となるのが知的財産戦略である。
 令和元年6月、知的財産戦略本部は、「知的財産推進計画2019」を決定した。同計画は、知的財産戦略に関する中長期のビジョンである「知的財産戦略ビジョン」(平成30年6月知的財産戦略本部決定)で掲げた「価値デザイン社会」の実現に向け、我が国の総合的かつ一貫した知的財産戦略を実行していくための初めての計画である。同計画には、「創造性の涵養かんよう・尖った人材の活躍」、「地方・中小の知財戦略強化支援」、「オープンイノベーションの促進」、「データ・AI等の適切な利活用促進に向けた制度・ルール作り」、「クリエイション・エコシステムの構築」、「クールジャパン戦略の持続的強化」などの取組が盛り込まれ、同計画に沿って、知的財産戦略本部の主導の下、関係府省と共に知的財産戦略を推進している。

(2) 国際標準化への積極的対応
 グローバル市場における我が国産業の競争力強化のため、日本工業規格(JIS)の対象をサービス等に拡大することやJISの迅速な制定を可能とする制度の導入などを含む改正工業標準化法(JIS法)が令和元年7月1日に全面施行された。
 また、「成長戦略フォローアップ」(令和元年6月21日閣議決定)及び「統合イノベーション戦略2019」(令和元年6月21日閣議決定)に記載された、「研究開発における標準化活動の底上げに向け、産総研の標準化にかかる機能強化及びNEDO等の標準化マネジメント手法の国研間での共有」の実現のため、産総研における標準化推進センター(仮称)設置のための検討を進め、また、標準化に関するマネジメント手法の共有に向けた実態把握を行った。
 具体的には、「令和元年度政府戦略分野における国際標準開発活動」の一つとして、人工知能のライフサイクル及び人工知能の品質保証に関する国際標準化を実施している。産業技術総合研究所を中心として、民間企業数社が参画する体制において推進している。そのほか、戦略的に重要な研究開発テーマや産業横断的なテーマについて、国立研究開発法人や民間企業と連携して国際標準化活動を推進するための体制整備を行っている。また、人材育成施策としては、「標準化人材を育成する3つのアクションプラン」(平成28年度公表)に基づき、国際標準化をリードする若手人材を育成するための研修を実施するとともに、標準化教育に関する大学教員向けの教材(ファカルティ・ディベロップメント教材)等の展開や大学における標準化講義への経済産業省職員派遣など、大学における標準化人材育成を支援するほか、一般財団法人日本規格協会による標準化資格制度を設けている。
 海外との協力においては、国際標準化活動における欧州及びアジア諸国との連携や、アジア諸国の積極的な参加を促進することを目的とした技術協力を行っている。令和元年度は、太平洋地域の24か国・地域の標準化機関が集まる会議や、日中韓3か国の標準化機関や関係企業が集まる会議に参加し、標準化協力分野について議論を行った。また、国際標準化機構・国際電気標準会議と連携したアジア地域向けの人材育成セミナーを実施したほか、アジア太平洋経済協力(APEC(※19))基準・適合性小委員会では、国際整合化や規格開発・普及のためのプロジェクトを進めるなど、国際標準化活動におけるアジア地域との連携強化に取り組んでいる。
 総務省は、情報通信審議会等の提言を踏まえ、ワイヤレス工場、スマートホーム等の重点分野における情報通信技術(ICT)の国際標準の獲得を目指して、研究開発や実証実験を推進するとともに、国際電気通信連合(ITU(※20))等のデジュール標準化機関や、フォーラム標準化機関における標準化活動を推進している。
 国土交通省及び厚生労働省は、知的財産推進計画において、国際標準化特定戦略分野の一つに水分野が位置付けられたことを踏まえ、上下水道分野で国際展開を目指す我が国の企業が、高い競争性を発揮できる国際市場を形成することを目的として、戦略的な国際標準化を推進している。現在、「水の再利用」(ISO/TC282)、「汚泥の回収、再生利用、処理及び廃棄」(ISO/TC275)、「アセットマネジメント」(ISO/TC224/WG6及びISO/TC251)、「雨水管理」(ISO/TC224/WG11)、「危機管理」(ISO/TC224/WG7)に関するワーキンググループ等へ積極的・主導的に参画している。

(3) 特許審査の国際的な取組
 経済のグローバル化やイノベーションのオープン化が進展する中にあって、日本企業が世界中でビジネスを円滑に行うことができるよう、国際的な知財インフラを順次整備していく重要性が高まっている。このため、特許庁は、ある国で最初に特許可能と判断された出願に基づいて、他国において早期に審査が受けられる制度である「特許審査ハイウェイ(PPH(※21))」を44か国・地域との間で実施している(令和2年1月時点)。また、国際的な審査協力の新たな取組として、我が国の特許庁と米国特許商標庁は、日米両国に特許出願した発明について、日米の特許審査官がそれぞれ先行技術文献調査を実施し、その調査結果及び見解を共有した後にそれぞれの特許審査官が最初の審査結果を送付する日米協働調査試行プログラムを平成27年8月1日から実施している。さらに、PCT(※22)国際出願について、日米欧中韓の5庁が協働して国際調査報告を作成するPCT協働調査試行プログラム(PCT CS&E(※23))を平成30年7月1日から実施している。

第4節 イノベーション創出に向けた制度の見直しと整備

 イノベーションの源である知識や技術を迅速にビジネスとして社会に実装させるため、また、ICTの飛躍的発展に適応するよう、イノベーションが持つ社会変革のポテンシャルを最大限に引き出すため、政府は新たな製品・サービスに対応した制度の見直しを進めていくこととしている。

1 新たな製品・サービスやビジネスモデルに対応した制度の見直し

(1) イノベーションの促進に向けた規制・制度の活用
 研究開発活動を取り巻く規制・制度が、本来、研究開発活動の円滑な推進や安全性向上等を目的として設けられているものであるものの、過度に厳格なために、イノベーションを阻害していることも少なくない。政府は大胆な規制・制度改革の突破口として「国家戦略特区制度」を推進しており、あわせて、「総合特区制度」等の従来の特区制度についても継続して着実に進めていくこととしている。これらの制度を活用することによって、イノベーションの促進が期待される。

ア 国家戦略特区に関する取組
 政府は、AIやビッグデータなどの先端技術を活用し、世界に先駆けて未来社会を先行実現する「まるごと未来都市」を目指す「スーパーシティ」構想の実現に向けた制度の整備を盛り込んだ国家戦略特別区域法の改正法案を第201回国会に提出するとともに、データ連携基盤の相互運用性の確保に向けた検討や必要な予算措置を講じている。また、自動車の自動運転、無人航空機(ドローン)、これらに関連する電波利用など、高度で革新的な近未来技術に関する実証実験を迅速・円滑に実施する地域限定型のサンドボックス制度の創設についても法案に盛り込んでいる。なお、国家戦略特区においては、引き続き、残された岩盤規制改革に取り組んでいくとともに、経済効果が高く特段の弊害のない特区の成果については、必要なものから全国展開を加速的に進めていく。

イ 総合特区制度に関する取組
 政府は、我が国の経済成長のエンジンとなる産業・機能の集積拠点の形成を目的とする「国際戦略総合特区」と、地域資源を最大限活用した地域活性化の取組による地域力向上を目的とする「地域活性化総合特区」において、規制の特例措置、税制・財政・金融上の支援措置などにより総合的に支援を行っている。

2 情報通信技術の飛躍的発展に対応した知的財産の制度整備

 第4次産業革命時代においては、AI創作物や3Dデータ、創作性を認めにくいデータベース等の新しい情報財について、その利活用が、小説、音楽や絵画などのコンテンツ産業に限らず、その他産業(製造業、農業、広告宣伝業、小売業、金融保険業、運輸業、健康産業など)にも波及することが想定され、その基盤となる知財システムの構築を進めることが産業競争力強化の観点でますます重要になってきている。
 これを踏まえ、知的財産戦略本部は「知的財産推進計画2019」において、データ・AI等の利活用の状況を見ながら、要すればAI創作物の著作物性に関するルール整備等について検討していくこととしており、また特許制度についてはAIのみが関与した部分と人が関与した部分を明確化するための仕組みが必要となるかは今後の論点となり得るとしている。
 経済産業省は、第4次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方に関する検討会において、第4次産業革命に対応した企業の戦略とそれを支える知財制度・運用の在り方について検討を行い、平成29年4月に報告書を取りまとめた。報告書で示された今後実施することが適当な取組に関して、第4次産業革命に対応した知財システムの環境整備をするべく、平成30年通常国会において、不正競争防止法、工業標準化法や特許法等を含めた「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」を提出した。同法律案は、同年5月23日に成立し、同月30日に公布され、技術的制限手段、限定提供データ、JISの対象分野の拡大、JIS制定の迅速化を可能にする制度の導入及びインカメラ制度等に関する規定が施行されたところである。
 特許庁は、AI関連発明について適切に保護が図られるよう、平成31年1月に公表したAI関連技術に関する特許審査事例について、各種説明会や国際会議、国際シンポジウム等を通じて、ユーザーに広く周知した。

■第2-5-8表/Society 5.0実現に向けた主な施策(令和元年度)

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第5節 「地方創生」に資するイノベーションシステムの構築

 イノベーションを創出するための強みや芽は様々な地域に存在している。こうした地域の特徴を生かし、新しい製品やサービスの創出や既存産業の高付加価値化が図られていくためには、地域に自律的・持続的なイノベーションシステムが構築されることが重要である。

1 地域企業の活性化

 地域イノベーション・エコシステムの形成と地方創生の実現に向けて、イノベーション実現のきっかけ・仕組み作りの量的拡大を図る段階から、具体的に地域の技術シーズ等を生かし、地域からグローバル展開を前提とした社会的なインパクトの大きい事業化の成功モデルを創出する段階へと転換が求められている。このため、文部科学省は、平成28年度より開始した「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」により、地域の成長に貢献しようとする地域大学に事業プロデュースチームを創設し、地域の競争力の源泉(コア技術等)を核に地域内外の人材や技術を取り込み、グローバル展開が可能な事業化計画を策定し、リスクは高いが社会的インパクトが大きい事業化プロジェクトを支援している。令和元年度までに全21地域が採択されている(第2-5-9図)。
 経済産業省は、地域経済の担い手となる企業群による新分野・新事業等への挑戦を支援するため、地域のイノベーションを支える支援機関(大学、公設試、金融機関等)から成る支援ネットワークの構築と、これらの支援ネットワークによる事業の成長段階に応じた総合的な支援を後押ししている。そのほか、国際市場に精通した専門家等で構成される「グローバル・ネットワーク協議会」を通じ、グローバル市場も視野に入れた事業化戦略の立案や販路開拓等を支援している。

■第2-5-9図/地域イノベーション・エコシステム形成プログラム

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 加えて、「新市場創造型標準化制度」の活用においては、企業等から提案のあった案件について、平成26年から令和2年3月末までに規格を32件制定した。また、自治体・産業振興機関、地域金融機関、大学・公的研究機関(パートナー機関)と一般財団法人日本規格協会が連携し、地域において標準化の戦略的活用に関する情報提供・助言等を行う「標準化活用支援パートナーシップ制度」のパートナー機関数を平成27年から令和2年3月末までに164機関に拡大し、全国47都道府県に設置している。

2 地域の特性を生かしたイノベーション・エコシステムの駆動

(1) 地域イノベーションシステムの構築
 文部科学省は、地域の「未来ビジョン」実現に向け、その障壁となる様々な社会課題を科学技術イノベーションによって解決する取組を支援することを通じて、ニーズプル型の地域イノベーション・エコシステムの形成及び地域社会の変革を目指す「科学技術イノベーションによる地域社会課題解決(DESIGN-i)」を令和元年度より開始し、4地域を採択した。
 総務省は、「戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE(※24))」において、「新たな情報通信技術戦略の在り方 中間答申・第2次中間答申」を踏まえた、IoT/BD(※25)/AI時代に対応して、実用化・社会実装を意識した、新たな価値の創造、社会システムの変革並びに地域の活性化及び課題の解決に寄与するICTの研究開発を推進している。
 経済産業省は、技術革新が急速に進む中でも地域企業によるイノベーションの創出・生産性向上が進むよう、「地域イノベーション基盤整備事業」を通じて、公設試・大学等による企業支援体制の構築に資する先端設備の初期導入・人材育成を支援している。
 農林水産省は、農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センターが実施する「イノベーション創出強化研究推進事業」において、農林水産・食品分野におけるイノベーションを創出するため、様々な分野の多様な知識・技術等を結集した研究開発を重点的に推進する提案公募型研究開発を推進しており、地域イノベーション戦略の推進に向けた研究を支援している。また、農林水産業・食品産業分野を専門とする産学連携コーディネーターを全国に配置し、ニーズの収集・把握、シーズの収集・提供を行うとともに、産学官のマッチング支援や研究開発資金の紹介・取得支援、商品化・事業化支援等を通じ、地域における農林水産・食品分野の研究開発の振興を図っている。そのほか、地域の研究開発と技術の普及促進を支援する地域マッチングフォーラムの開催等の取組を進めている。
 産業技術総合研究所は、公設試等と人的交流などを通して密接に連携して地域企業のニーズの発掘に努めるとともに、産業技術総合研究所の技術シーズを活用した地域企業への技術支援を行っている。具体的には、公設試等職員やその幹部経験者等134名を地域企業への「橋渡し」の調整役として「産総研イノベーションコーディネータ」に委嘱・雇用したり、産業技術連携推進会議を通じて公設試相互及び公設試と産業技術総合研究所との協力体制を強化するとともに、公設試職員の技術力向上や人材育成を支援している。また、包括協定を締結するなど、地方自治体との連携を積極的に進め、地方自治体の予算による補助事業の活用等により、地域産業特性に応じた技術分野での連携を推進している。このような産業技術総合研究所の技術シーズを事業化につなぐ「橋渡し」を地域及び全国レベルで行い、地域企業の技術競争力強化に資することで地方創生に取り組んでいる。

(2) 地域における知的財産の権利化支援
 特許庁は、全国各地の面接会場に審査官・審判官が出張する出張面接、インターネット回線を利用し出願人自身のPCから参加できるテレビ面接及び各地で口頭審理を行う巡回審判を実施した。また、INPIT(※26)近畿統括本部(INPIT-KANSAI)を活用し、近畿地域を中心とした地方の知財支援を展開した。

3 地域が主体となる施策の推進

(1) 地域の自律的・持続的な成長に向けた支援
 地域が自身の強みを生かしたイノベーションシステムを主体的に構築し、自律的・持続的に成長していくために中長期的な視点に立った支援が重要である。
 内閣府は、省庁や地方自治体が地域におけるイノベーション・エコシステムの状況について把握するための点検指標の設定に関する検討を行っている。
 特許庁は、平成28年9月に策定した「地域知財活性化行動計画」に基づき設定した「都道府県ごとの特色を踏まえた平成31年度までの目標」の達成に向けて、地域・中小企業に対する支援施策を実施するとともに、現状の課題や今後の改善点について検証を行った。次年度以降も継続して地域・中小企業支援を実施するため、第2次地域知財活性化行動計画の策定に向けた検討を行っている。

■第2-5-10表/「地方創生」に資するイノベーションシステムの構築のための主な施策(令和元年度)

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第6節 グローバルなニーズを先取りしたイノベーション創出機会の開拓

 世界的な共通課題であるエネルギー、資源、食料の確保、自然災害の対応等について、我が国はグローバルなニーズを先取りしつつ、我が国の技術力や現場への実装の経験を生かし、戦略性を持ってリーダーシップを取ることにより、イノベーションの創出等の機会を開拓することとしている。

1 グローバルなニーズを先取りする研究開発の推進

 科学技術に関する政策決定に活用するため、海外の情報を継続的・組織的・体系的に収集・蓄積・分析し、横断的に利用する体制を構築する必要があり、文部科学省及び関係機関において情報収集等を行っている。
 グローバルなニーズを先取りする研究開発の推進に向けた長期的な変化の探索・分析の一環として、科学技術・学術政策研究所は、昭和46年度から約5年ごとに科学技術予測調査を行っており、令和元年12月に第11回調査の報告書を公表した。今回調査は、「望ましい社会の未来像」と「科学技術発展の中長期展望」を検討し、それらを統合して、「科学技術発展による社会の未来像」として、基本シナリオ「人間性の再興・再考による柔軟な社会」を提示するとともに、AI関連技術と専門家の検討に基づき8個の「クローズアップ科学技術領域」(分野横断・融合のポテンシャルの高い領域)を抽出している。
 科学技術振興機構研究開発戦略センターは、科学技術イノベーション政策の立案に資する海外動向について調査・分析等を行っている。
 農林水産省は、技術革新、グローバル化の進展等急激に変化する研究開発動向を踏まえ、戦略的な技術開発につなげるため、異分野・海外の研究開発動向を把握し、我が国に適用可能な技術の抽出や我が国の強み・弱みの分析等を行っている。
 日本学術振興会は、海外研究連絡センターにおいて、海外の学術動向等の情報収集及び我が国の大学等の国際化支援のほか、海外の学術振興機関等との連携やシンポジウムの開催等の活動を行っている。また、直面する経済・社会的課題も視野に入れ、科学技術先進国との国際共同研究及び研究交流を戦略的に推進している(第4章第2節1(3)、第7章第3節参照)。

■第2-5-11表/グローバルなニーズを先取りするための主な施策(令和元年度)

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2 インクルーシブ・イノベーションを推進する仕組みの構築

(1) 地球規模問題に関する開発途上国との協力の推進
 アジア、アフリカや中南米等の開発途上国との科学技術協力については、これらの国々のニーズを踏まえ、地球規模課題の解決と社会実装に向けた国際共同研究を推進するため、文部科学省、科学技術振興機構及び日本医療研究開発機構並びに外務省及び国際協力機構が連携し、我が国の先進的な科学技術と政府開発援助(ODA(※27))を組み合わせた「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS(※28))」を実施している。平成20年度から令和元年度(2008年度から2019年度)に、環境・エネルギー、生物資源、防災や感染症分野において、51か国で145件(地域別ではアジア77件、アフリカ39件、中南米21件等)を採択している。
 文部科学省は、我が国のSATREPSに参加する大学に留学を希望する者を国費外国人留学生として採用する、国際共同研究と留学生制度を組み合わせた取組を実施している。これにより、国際共同研究に参画する相手国の若手研究者等が、我が国で学位を取得することが可能になるなど、人材育成にも寄与する協力を進めている。


  • ※1 Technology Licensing Organization
  • ※2 Adaptable and Seamless Technology transfer Program
  • ※3 Newly extended TEchnology transfer Program
  • ※4 National Institute of Information and Communications Technology
  • ※5 Center of Innovation
  • ※6 Program on Open Innovation Platform with Enterprises, Research Institute and Academia
  • ※7 つくばイノベーションアリーナ
  • ※8 Nanotech Career-up Alliance
  • ※9 Program for Creating STart-ups from Advanced Research and Technology
  • ※10 Program of Start-up incubation from COre REsearch
  • ※11 SUpport Program of Capital Contribution to Early-Stage CompanieS
  • ※12 例えば、大学の研究者、新規に開業や会社設立をしようとしている個人などが考えられる。
  • ※13 https://www.meti.go.jp/policy/innovation_policy/datamanagement.html
  • ※14 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
  • ※15 Foreign Patent Information Service https://www.foreignsearch2.jpo.go.jp/
  • ※16 Association of South-East Asian Nations
  • ※17 https://jstore.jst.go.jp/
  • ※18 Management of Technology
  • ※19 Asia Pacific Economic Cooperation
  • ※20 International Telecommunication Union
  • ※21 Patent Prosecution Highway
  • ※22 Patent Cooperation Treaty
  • ※23 Patent Cooperation Treaty Collaborative Search and Examination
  • ※24 Stracegic Information and Communications R&D Promotion Programme
  • ※25 Big Data
  • ※26 National Center for Industrial Property Information and Training
  • ※27 Official Development Assistance
  • ※28 Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development

お問合せ先

科学技術・学術政策局企画評価課

(科学技術・学術政策局企画評価課)