第7章 科学技術イノベーションの推進機能の強化

 第5期科学技術基本計画(以下「第5期基本計画」という。)に掲げられた政策や施策を効果的かつ柔軟に実行するため、科学技術イノベーション活動の主要な実行主体である大学及び国立研究開発法人の機能強化や総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能の強化を図るとともに、実行のための研究開発投資の確保に努めている。

第1節 大学改革と機能強化

 科学技術イノベーションの創出に極めて重要な役割を担う大学は、様々な課題に適切に対応し、大学内の人材、知、資金をより効果的・効率的に機能させていく必要がある。このため、大学は、教育や研究を通じて社会に貢献するとの認識の下、抜本的な大学改革を推進することとしている。

1 大学改革について

 大変革時代に対応するためには、いかなる状況変化や新しい課題に直面しても柔軟かつ的確に対応できるよう、多様で優れた人材を養成するとともに、多様で卓越した知を創造する基盤を豊かにしていくことが不可欠であり、大学はその中心的役割を担う存在である。また、大学の役割は、新たな知を、産学官連携活動などを通じて社会実装し、広く社会に対して経済的及び社会的・公共的価値を提供するところにまで広がっている。
 このように、科学技術イノベーションの創出に極めて重要な役割を担う大学をめぐっては、経営・人事システムの改革、安定性ある若手ポストの確保、国際頭脳循環への参画、産学官連携の本格化、財源の多様化の推進など、様々な課題が存在している。こうした課題に適切に対応し、大学内の人材、知、資金をより効果的・効率的に機能させていく必要がある。
 このため文部科学省では、文部科学大臣が指定する国立大学法人について、世界最高水準の教育研究活動が展開されるよう、高い次元の目標に基づき大学運営を行うこととする「指定国立大学法人制度」を創設した。この制度により、平成30年度時点で六つの国立大学法人を「指定国立大学法人」として指定している。
 また、大学院においては、イノベーションを推進する「知のプロフェッショナル」育成のため、「博士課程教育リーディングプログラム」や「卓越大学院プログラム」を通じて、高度な専門性及び俯瞰(ふかん)力と独創力を身に付けさせる博士課程教育プログラムを実施する大学の取組を推進することにより、大学院教育の抜本的改革に取り組んでいる(第4章第1節1(3)参照)。
 平成28年11月には、「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を策定し、企業と大学・国立研究開発法人の「組織」対「組織」の本格的産学官連携を促すとともに、人材の流動性を高めるため、研究者等が複数の機関の間での出向に関する協定等に基づき、各機関に雇用されつつ、一定のエフォート管理の下、各機関における役割に応じて研究・開発及び教育に従事することを可能にするクロスアポイントメント制度の導入を促進している(第4章第1節2(3)参照)。
 そのほか、新たな研究領域に挑戦するような優秀な若手研究者に対し、安定かつ自立して研究を推進できるような環境を実現するとともに、全国の産学官の研究機関をフィールドとした新たなキャリアパスを提示する「卓越研究員事業」を実施している(第4章第1節1(1)参照)。

第2節 国立研究開発法人改革と機能強化

 国立研究開発法人は、国家的又は国際的な要請に基づき、長期的なビジョンの下、法人の長のマネジメント力を最大限に発揮し、民間では困難な基礎・基盤的研究のほか、実証試験、技術基準の策定に資する要素技術の開発、他機関への研究開発費の資金配分等に取り組み、イノベーションシステムの駆動力として組織改革とその機能を担っている。

1 研究開発法人の改革

 平成26年に「独立行政法人通則法」(平成11年法律第103号。以下「独法通則法」という。)が改正され、独立行政法人のうち我が国における科学技術の水準の向上を通じた国民経済の健全な発展その他の公益に資するため研究開発の最大限の成果を確保することを目的とした法人を国立研究開発法人と位置付けた(平成31年3月31日現在で27法人)。さらに、平成28年5月には「特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する特別措置法」(平成28年法律第43号。以下「特定法人法」という。)が成立(平成28年10月施行)し、国立研究開発法人のうち、世界最高水準の研究開発成果の創出・普及及び活用を促進し、イノベーションを牽(けん)引(いん)する中核機関として、物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所が特定国立研究開発法人に指定された。その後、平成28年6月には「特定国立研究開発法人による研究開発等を促進するための基本的な方針」(平成28年6月28日閣議決定。平成29年3月10日改訂)を示した。総合科学技術・イノベーション会議 評価専門調査会は、平成29年7月4日に「特定国立研究開発法人の見込評価等及び次期中長期目標の内容に対する意見・指摘事項の考え方」を取りまとめた。
 また、研究開発力強化法が議員立法により、平成30年12月に改正され、名称を「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」とするほか、出資等業務を行うことができる研究開発法人の拡大等、研究開発法人等による法人発ベンチャー支援に際しての株式等の取得・保有の可能化、資金配分機関への迅速な基金設置の可能化等が規定された。本改正により、研究開発法人等を中心とした知識・人材・資金の好循環が実現され、科学技術・イノベーション創出の活性化のより一層の促進が期待されている。

第3節 科学技術イノベーション政策の戦略的国際展開

 グローバル化が進展する中で、我が国の科学技術イノベーションを推進するとともに、その成果を活用し、国際社会における我が国の存在感や信頼性を向上するため、科学技術イノベーションの国際活動と外務省参与(外務大臣科学技術顧問)を通じた取組を含む科学技術外交を一体的に推進していくことが必要である。

1 国際的な枠組みの活用

(1)主要国首脳会議(サミット)関連活動

 2008年(平成20年)、当時の議長国であった我が国の発案により、G8科学技術大臣会合が当時の岸田文雄・内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の主催で開催された。以後、2013年(平成25年)英国開催、さらには2015年(平成27年)ドイツ開催、2016年(平成28年)日本(茨城県つくば市)開催と定期的に開催されている。同会合は、内閣府特命担当大臣(科学技術政策)と諸外国の閣僚との政策協議等を通じて、科学技術を活用した地球規模の諸問題等への対処、諸外国と連携した科学技術政策をめぐる国際的な議論への主体的な貢献等を開催目的としている。2017年(平成29年)9月には、イタリアで開催され、我が国から原山優子・総合科学技術・イノベーション会議議員(当時)が出席した。2008年(平成20年)の会合での議論を踏まえ設立された国際的研究施設に関する高級実務者会合(GSO(※1))については、国際的な研究施設に関する情報共有や国際協力に係る枠組み等について検討が行われている。各国の低炭素社会に関わる研究機関により構成される低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS‐RNet(※2))については、2018年(平成30年)7月に、東京において第10回年次会合が開催された。2018年(平成30年)現在、我が国を含む10か国の研究機関が参加している。


  • ※1 The meeting of the Group of Senior Officials
  • ※2 International Research Network for Low-Carbon Societies

(2)アジア・太平洋経済協力(APEC)

 APEC科学技術イノベーション政策パートナーシップ(PPSTI(※3))は、共同プロジェクトやワークショップ等を通じたAPEC地域の科学技術イノベーション推進を目的に開催されており、2018年(平成30年)2月に第11回会合、8月に第12回会合がパプアニューギニアで開催され、PPSTIの活動計画等について議論が行われた。


  • ※3 Policy Partnership on Science, Technology and Innovation

(3)東南アジア諸国連合(ASEAN)

 ASEAN科学技術委員会(COST(※4))においては、日本・中国・韓国の3か国を加えたASEAN COST+3による協力が行われており、我が国では文部科学省を中心として対応している。2015年(平成27年)1月には、第8回ASEAN COST+3会合が東京で開催され、ASEANと日中韓の協力を目的とした意見交換が行われた。また、我が国とCOST間の協力の枠組みとして、2018年(平成30年)10月に第9回日・ASEAN科学技術協力委員会(AJCCST‐9(※5))がセブ(フィリピン)で開催され、今後の我が国とASEAN全体との科学技術協力について意見交換が行われた。AJCCST‐9では、SDGs達成に向けて日ASEAN共同研究の成果の社会実装を強化する協力の枠組みである「日ASEAN STI for SDGsブリッジングイニシアティブ」の開始が合意された。その後、2018年(平成30年)11月にシンガポールで開催された第21回日ASEAN首脳会議では、我が国が推進するSociety 5.0によるASEANスマートシティ・ネットワークへの協力や、上記イニシアティブの下で第1回マルチステークホルダーフォーラムが2019年にタイで開催される旨が議長声明で言及された。


  • ※4 Cooperation on Science and Technology
  • ※5 ASEAN-Japan Cooperation Comittee on Science and Technology

(4)その他

ア アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF(※6))

 我が国は、アジア・太平洋地域での宇宙活動、利用に関する情報交換並びに多国間協力推進の場として、1993年(平成5年)から毎年1回程度、同地域で最大規模の宇宙協力の枠組みであるAPRSAFを主催している。2018年(平成30年)11月にシンガポールにおいて開催された第25回APRSAFには、29か国・地域、民間企業、9国際機関より約385人が参加した。今会合では、アジア・太平洋地域の宇宙機関から機関長4名及び副機関長相当5名が出席し、「進化するニーズに応える革新的な宇宙技術」というテーマの下、宇宙活動における新たなニーズや課題について意見交換を行った。また、宇宙新興国の宇宙政策に関する意見交換へのニーズの高まりを受け、宇宙政策に焦点を当てたセッションを前回に引き続き実施した。共同声明では、アジア・太平洋地域の宇宙技術力の向上や宇宙政策コミュニティの形成、社会実装に向けたユーザー機関等との連携についても取り上げられた。


  • ※6 Asia-Pacific Regional Space Agency Forum
イ 国際宇宙探査フォーラム(ISEF(※7))

 宇宙探査における国際協力を促進するために2009年(平成21年)から欧州中心で開催されていた閣僚級会合の流れを受け、2014年(平成26年)にワシントンDCでISEFが開催された。2018年(平成30年)3月には、東京で第2回会合(ISEF2)を開催し、文部科学大臣が議長を務めた。ISEF2では、国際協力による宇宙探査を円滑に進めるための基盤となる「国際宇宙探査に関する東京原則」などの成果文書が取りまとめられたほか、産業界や若手向けのサイドイベントも開催された。次回会合は、2021年までに欧州で開催される予定である。


  • ※7 International Space Exploration Forum
ウ 地球規模生物多様性情報機構(GBIF(※8))

 生物多様性に関するデータを収集し全世界的に利用することを目的とし、情報基盤の整備、集積・解析ツールの開発などの活動を行っている。加盟国等の参加による第25回理事会が2018年(平成30年)10月、アイルランドのキルケニーにおいて開催され、2019年(令和元年)の予算案、作業計画等が採択された。


  • ※8 Global Biodiversity Infomation Facility
エ 地球観測に関する政府間会合(GEO(※9))

 2015年(平成27年)11月に開催された閣僚級会合で承認された「GEO戦略計画2016‐2025」に基づき、「全球地球観測システム(GEOSS(※10))」の構築を推進する国際的な枠組みであり、2019年(平成31年)2月時点で232の国及び機関が参加している。
 GEOSSは八つの社会利益分野(生物多様性・生態系の持続性、災害強靱(きょうじん)性、エネルギー・鉱物資源管理、食料安全保障・持続可能な農業、インフラ・交通管理、公衆衛生監視、持続可能な都市開発、水資源管理)とこれら8分野に横断的な分野である気候変動といった地球規摸課題に関する政策決定等に貢献する情報の創出を目指し、人工衛星や地上観測など多様な観測システムが連携した包括的なシステムである。
 2018年には、京都において、GEO本会合を我が国で初めて開催し、SDGs、パリ協定、仙台防災枠組に対する地球観測の貢献等について活発な議論を行った。


  • ※9 Group of Earth Observations
  • ※10 Global Earth Observation System of Systems
オ 気候変動に関する政府間パネル(IPCC(※11))

 気候変動とその影響や脆弱(ぜいじゃく)性、適応及び緩和に関し、科学的・技術的・社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年(昭和63年)に世界気象機関(WMO(※12))と国連環境計画(UNEP(※13))により設立された。2014年(平成26年)に第5次評価報告書を取りまとめ、現在は第6次評価サイクルを開始しており、第6次評価報告書(2021年(令和3年)から2022年(令和4年)にかけて公表予定)に加え、1.5度特別報告書(2018年(平成30年)10月公表)、温室効果ガスインベントリに関する方法論の改良報告書、土地関係特別報告書、海洋・雪氷圏特別報告書(2019年(令和元年)公表予定)を取りまとめる予定である。

  • ※11 Intergovermental Panel on climate change
  • ※12 World Meteorological Organization
  • ※13 United Nations Environment Programme
カ Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)

 我が国は、気候変動問題の解決と経済成長を両立するための鍵であるエネルギー・環境分野のイノベーションとその普及を促進するため、安倍晋三・内閣総理大臣の提唱により、世界の産官学のリーダーが議論を行い、国際的な協力を推進する知のプラットフォームとしてICEFを平成26年(2014年)に創設し、毎年10月に東京で開催している。
2017年(平成29年)第4回ICEF年次総会には、約80か国・地域から1,000人以上の参加があった。

キ アルゴ計画

 文部科学省及び気象庁は、世界の海洋内部の詳細な変化を把握し、気候変動予測の精度向上につなげる高度海洋監視システム(アルゴ計画)に参画している(第3章第3節1参照)。

ク 北極科学大臣会合(ASM(※14))

 北極における研究観測や主要な社会的課題への対応の推進等を目的とした閣僚級会合であり、2016年(平成28年)にワシントンDCにおいて第1回会合が開催された。2018年(平成30年)10月にベルリンにおいて開催された第2回会合には、柴山昌彦・文部科学大臣が出席し、「北極域研究推進プロジェクト(ArCS(※15))」の成果等を紹介した。また、第3回会合をアイスランドと共催し、2020年(令和2年)にアジアで初となる我が国で開催することを提案し、了承された。


  • ※14 White House Arctic Science Ministerial
  • ※15 Arctic challenge for Sustaitability

 第2回北極科学大臣会合 前列右から5人目が柴山文部科学大臣
 第2回北極科学大臣会合 前列右から5人目が柴山文部科学大臣
 提供:文部科学省

ケ グローバルリサーチカウンシル(GRC)

 2018年(平成30年)5月、モスクワにおいてロシア基礎科学財団(RFBR(※16))と韓国研究財団(NRF(※17))の共同主催により、世界各国の主要な学術振興機関の長による国際会議であるGRCの第7回年次会合が開催され、50か国、2国際機関から合計60機関の長等が出席し、研究支援を取り巻く課題と学術振興機関が果たすべき役割が議論され、成果文書として「ピア/メリット・レビューの原則についての宣言(2018年版)」が採択された。


  • ※16 Russian Foundation for Basic Research
  • ※17 National Research Foundation of Korea

2 国際機関の活用

(1)国際連合システム(UNシステム)

ア 国連持続可能な開発目標のための科学技術イノベーション(「STI(※18) for SDGs」)

 科学技術イノベーションを通じた国連持続可能な開発目標の達成(「STI for SDGs」)に関し、科学技術外交推進会議(座長は岸輝雄・外務大臣科学技術顧問。)において、「SDGs達成のための科学技術イノベーションとその手段としてのSTIロードマップ~世界と共に考え、歩み、創るために~」を取りまとめ、2018年(平成30年)5月28日に中根一幸・外務副大臣(当時)に提出した。同月にニューヨークで開催され、星野俊也・国連日本政府代表部大使(次席代表)が共同議長を務めた国連第3回STIフォーラムにおいて、岸外務大臣科学技術顧問からの提言を踏まえ、STIはSDGs達成に貢献するものであり、STIで課題を解決してより良い未来社会を形成していくことは先進国、新興国、途上国にとって良いアプローチである旨発言した。さらに、同顧問からは、全ての人がSTIの恩恵を享受できるためには、SDGsの目標間の相関関係や各政策の分析といった「知の構造化」に基づく、STIロードマップが有効である旨指摘するとともにSTIロードマップは多様なステークホルダーが、点や線ではなく面で協働することを可能にし、新たなビジネス機会をもたらし、新たな科学フロンティアの開拓につながり得る旨発言し各国から高い関心が示された。
 平成30年6月に閣議決定された統合イノベーション戦略では、重きを置くべき取組の一つとして「STI for SDGs」の推進を掲げた。内閣府では、統合イノベーション戦略推進会議の下に設置された「STI for SDGsタスクフォース」において、関係省庁と連携し、我が国におけるSDGsの達成への道筋を明確化した「STI for SDGsロードマップ」の策定を進めている。また、国内外のSDGs達成に向け、ニーズと我が国の科学技術シーズとのマッチングを図る「STI for SDGsプラットフォーム」の構築を見据え、産官学や国際機関などを集めた「プラットフォーム準備会合」を開催し、検討を進めている。

  • ※18 Scicence, Technology and Innovation
イ 国連教育科学文化機関(UNESCO(※19))

 我が国は、国連の専門機関であるUNESCOの多岐にわたる科学技術分野の事業活動に積極的に参加協力をしている。ユネスコでは、政府間海洋学委員会(IOC(※20))、国際水文学計画(IHP(※21))、人間と生物圏(MAB(※22))計画、ユネスコ世界ジオパーク、国際生命倫理委員会(IBC(※23))、政府間生命倫理委員会(IGBC(※24))等において、地球規模課題解決のための事業や国際的なルール作り等が行われている。我が国は、ユネスコへの信託基金の拠出等を通じ、アジア・太平洋地域等における科学技術分野の人材育成事業を実施しており、また、各委員会へ専門委員を派遣し議論に参画するなど、ユネスコの活動を推進している。


  • ※19 United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization
  • ※20 Intergovermental Oceanographic Commission
  • ※21 International Hydrological Programme
  • ※22 UNESCO's Man and Biosphere
  • ※23 International Bioethics Committee
  • ※24 Inter-govermental Bioethics Committee

(2)経済協力開発機構(OECD(※25))

 OECDでは、閣僚理事会、科学技術政策委員会(CSTP(※26))、情報・コンピュータ・通信政策委員会(ICCP(※27))、産業・イノベーション・起業委員会(CIIE(※28))、原子力機関(NEA(※29))、国際エネルギー機関(IEA(※30))等を通じ、加盟国間の意見・経験等及び情報の交換、人材の交流、統計資料等の作成をはじめとした科学技術に関する活動が行われている。
 CSTPでは、科学技術政策に関する情報交換・意見交換が行われるとともに、科学技術イノベーションが経済成長に果たす役割、研究体制の整備強化、研究開発における政府と民間の役割、国際的な研究開発協力の在り方等について検討が行われている。また、CSTPには、グローバル・サイエンス・フォーラム(GSF)、イノベーション・技術政策作業部会(TIP(※31))、バイオ・ナノ・コンバージング・テクノロジー作業部会(BNCT)及び科学技術指標専門家作業部会(NESTI(※32))の四つのサブグループが設置されている。


  • ※25 Organization for Economic Co-operation and Development
  • ※26 Commitee for Science and Technological Policy
  • ※27 Commitee for Information, Computer and Communication Policy
  • ※28 Commitee on Industry, Innovation and Entrepreneurship
  • ※29 Nuclear Energy Agency
  • ※30 International Energy Agency
  • ※31 Working Party on Innovation and Technology Policy
  • ※32 National Experts on Science and Technology Indicators
ア グローバル・サイエンス・フォーラム(GSF)

 GSFでは、地球規模課題の解決に向けた国際連携の在り方等が議論されている。2018年(平成30年)は、危機的状況における科学的助言や競争的資金の効果的な運用について検討するプロジェクトの最終報告書が取りまとめられた。

イ イノベーション・技術政策作業部会(TIP)

 TIPでは、科学技術イノベーションを政策的に経済成長に結び付けるための検討を行っており、2018年(平成30年)は、デジタル化やオープンイノベーションの影響、産学官の知識移転等について議論を行った。

ウ バイオ・ナノ・コンバージング・テクノロジー作業部会(BNCT)

 BNCTは、バイオテクノロジーを有効に活用し、持続可能な経済成長や人類の繁栄に役立てるための政策提言や、ナノテクノロジーの波及効果、研究と研究インフラの国際化などのプロジェクトを進めている。

エ 科学技術指標専門家作業部会(NESTI)

 NESTIは、統計作業に関して監督・助言・調整を行うとともに、科学技術イノベーション政策の推進に資する指標や定量的分析の展開に寄与している。具体的には、研究開発費や科学技術人材等の科学技術関連指標について、国際比較のための枠組み、調査方法や指標の開発に関する議論等が行われている。2018年(平成30年)には、イノベーションに関するデータの収集、報告及び利用のための指針であるオスロ・マニュアル2018(第4版)が公表され、イノベーションに関する定義及び区分が従来から変更された。

(3)国際科学技術センター(ISTC(※33))

 ISTCは、旧ソ連邦諸国における大量破壊兵器開発に従事していた研究者が参画する平和目的の研究開発プロジェクトを支援することを目的として、1994年(平成6年)3月に日本・米国・EU・ロシアの4極により設立された国際機関である。2015年(平成27年)7月にロシアが脱退したことに伴い、ISTCの本部はモスクワからカザフスタンのアスタナに移転した。同年12月には、「ISTCを継続する協定」に我が国のほか、EU及び欧州原子力共同体、ジョージア、ノルウェー、キルギス、アルメニア、カザフスタン、韓国、タジキスタン、米国が署名し、2017年(平成29年)に発効した。


  • ※33 International Science and Technology Center

3 研究機関の活用

(1)東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA(※34))

 ERIAは、東アジア経済統合の推進に向け政策研究・提言を行う機関であり、「経済統合の深化」、「開発格差の縮小」及び「持続可能な経済成長」を三つの柱として、イノベーション政策等を含む幅広い分野にわたり、研究事業、シンポジウム事業及び人材育成事業を実施している。


  • ※34 Economic Research Institute for ASEAN and East Asia

4 科学技術イノベーションに関する戦略的国際活動の推進

 我が国が地球規模の問題解決において先導的役割を担い、世界の中で確たる地位を維持するためには、科学技術イノベーション政策を国際協調及び協力の観点から戦略的に進めていく必要がある。
 文部科学省は、2008年度(平成20年度)より地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS(※35))を実施し、我が国の優れた科学技術とODAとの連携により、アジア等の開発途上国と、環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症分野において地球規模の課題解決につながる国際共同研究を推進している(第5章第6節2参照)。また、2009年度(平成21年度)より、「戦略的国際共同研究プログラム(以下「SICORP(※36)」という。)」を実施し、戦略的な国際協力によるイノベーション創出を目指し、省庁間合意に基づくイコールパートナーシップ(対等な協力関係)の下、相手国・地域のポテンシャル・分野と協力フェーズに応じた多様な国際共同研究を推進している。さらに、2014年度(平成26年度)より「日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)」を実施し、アジアを中心とする国・地域の青少年の日本の最先端の科学技術への関心を高めるとともに、日本の大学・研究機関や企業が必要とする海外からの優秀な人材の育成を進め、アジアを中心とする国・地域と日本の科学技術の発展に貢献することを目的としている(第4章第1節2(2)ア(イ)参照)。
 環境省は、アジア太平洋地域での研究者の能力向上、共通の問題解決を目的とする「アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN(※37))」を支援しており、2018年(平成30年)7月には第23回年次政府間会合がタイで開催された。また、アジア地域の低炭素成長に向け、最新の研究成果や知見の共有を目的とする「低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet(※38))」の第6回年次会合を2017年(平成29年)11月にインドネシアにおいて開催した。


  • ※35 Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development
  • ※36 Strategic International Collaborative Research Program
  • ※37 Asia-Pacific Network for Global Change Research
  • ※38 Low Carbon Asia Research Network

5 諸外国との協力

(1)欧米諸国との協力

 我が国と欧米諸国等との協力活動については、ライフサイエンス、ナノテクノロジー・材料、環境、原子力、宇宙開発等の先端研究分野での科学技術協力を推進している。具体的には、2国間科学技術協力協定に基づく科学技術協力合同委員会の開催や、情報交換、研究者の交流、共同研究の実施等の協力を進めている。
 米国との間では、日米科学技術協力協定に基づき設置された日米科学技術協力合同高級委員会(大臣級)や日米科学技術協力合同実務級委員会(実務レベル)があり、それぞれ2015年(平成27年)、2016年(平成28年)に開催された。2018年(平成29年)には、林芳正・文部科学大臣の訪米、柴山昌彦・文部科学大臣のSTSフォーラム出席時にフランス・コルドバ全米科学財団(NSF)長官との意見交換が行われた。
 EUとの間では、2018年(平成30年)1月に行われた林芳正・文部科学大臣とカルロス・モエダス・欧州委員(研究・科学・イノベーション担当)の会談において、若手研究者の交流拡大、量子技術及び北極科学分野について日EU間の協力強化を進めていくことで一致した。これを踏まえ、9月に量子技術に関する日EUワークショップを開催、10月には科学技術振興機構と欧州研究会議(ERC(※39))との研究交流に関する実施取極(IA(※40))への署名が行われたほか、北極科学分野についても共同研究支援の取組が行われている。また、総務省と欧州委員会の間では、2018年(平成30年)7月から第4次公募案件としてスマートシティ及び5G関連技術の研究を開始しており、次回以降の公募案件についても継続的に検討を進めるとともに、2018年(平成30年)12月に総務省、情報通信研究機構及び欧州委員会が第7回日欧国際共同研究シンポジウムを開催し、ICT分野において日欧連携を更に強化していくことが確認された。そのほか、欧米諸国とは、2018年(平成30年)6月にノルウェー、8月にスウェーデン、2019年(平成31年)1月にカナダ、2月にドイツとの間で科学技術協力合同委員会を開催した。また、2019年(平成31年)2月には、フランスにおいて外務大臣科学技術顧問の海外出張の機会に内閣府と外務省(在外公館)の連携による我が国の科学技術イノベーションの対外発信事業(以下「SIPキャラバン」という。)を実施した。
 その他、2017年(平成29年)10月には、希少金属等の主要消費国による「第7回日米欧三極クリティカルマテリアル会合」が米国で開催された。本会合には、日米欧3極の政策担当者及び専門家が参加し、レアアース等の希少金属を取り巻く世界的な問題について共通理解を深めるとともに代替材料開発やリサイクルに係る技術開発の方向性等について議論を行った。


  • ※39 European Research Council
  • ※40 Implementing Arrangement

(2)中国・韓国との協力

 2018年(平成30年)が日中平和友好条約締結40周年であることを踏まえ、5月に林芳正・文部科学大臣が訪中するとともに、第16回日中科学技術協力委員会(次官級)に出席するため、8月に王志剛・中国科学技術部長が訪日した。当該委員会では初めて特別に両国大臣が出席し挨拶を行うとともに、日本‐中国国際共同研究イノベーション拠点(中国名:共同科学研究プラットフォーム)構築に関する覚書の署名式が行われた。本覚書に基づき、2019年(平成31年)3月に、中国におけるSICORP「国際共同拠点」(環境/エネルギー分野)が採択された。また9月には、文部科学省と中国科学院が第11回日中科学技術政策セミナーを成都において主催するとともに、5月には、科学技術振興機構と中国国家外国専家局が「日中大学フェア&フォーラム in CHINA 2018」を広州で主催した。さらに、10月の安倍晋三・内閣総理大臣訪中時には、日中イノベーション協力対話の立ち上げに関する覚書が日中両国の大臣間で署名された。
 日中韓の3か国の枠組みでは、2007年(平成19年)以降、日中韓科学技術協力担当大臣会合が過去3回行われている。また、日本学術振興会が、日中韓3か国の研究支援機関間において日中韓学術機関長会議及び「日中韓フォーサイト事業」を毎年行うとともに、日中韓3か国の政府系科学技術政策研究機関間において日中韓科学技術政策セミナーが毎年開催されており、日本からは文部科学省科学技術・学術政策研究所が参加している。

(3)ASEAN諸国、インドとの協力

 アジアには、環境・エネルギー、食料、水、防災、感染症など、問題解決に当たって我が国の科学技術を生かせる領域が多く、このようなアジア共通の問題の解決に積極的な役割を果たし、この地域における相互信頼、相互利益の関係を構築していく必要がある。
 文部科学省は、科学技術振興機構と協力して、2012年(平成24年)6月に、アジア地域において科学技術分野における研究交流を加速することにより、研究開発力を強化するとともに、アジア諸国が共通して抱える課題の解決を目指し多国間の共同研究を行う「e‐ASIA共同研究プログラム」を発足させた。同プログラムは、東アジアサミット参加国の機関が参加し協力が進められており、「材料(ナノテクノロジー)」、「農業(食料)」、「代替エネルギー」、「ヘルスリサーチ(感染症、がん)」、「防災」、「環境(気候変動、海洋科学)」、「イノベーションに向けた先端融合」の7分野を対象にしている。なお、ヘルスリサーチ分野については、2015年(平成27年)4月から日本医療研究開発機構において支援している。
 このほか、SICORP「国際共同研究拠点」として、2015年(平成27年)9月よりASEAN地域(環境・エネルギー、生物資源、生物多様性、防災分野)、2016年(平成28年)10月よりインド(ICT分野)において支援を開始した。イノベーションの創出、日本の科学技術力の向上、相手国・地域との研究協力基盤の強化を目的として、日本の「顔の見える」持続的な共同研究・協力を推進するとともにネットワークの形成や若手研究者の育成を図っている。また、2018年(平成30年)4月にシンガポールとの間で初めてとなる経済連携協定に基づく科学技術協力合同委員会を開催した。

(4)ロシアとの先端科学技術協力

 我が国とロシアとの間では、2000年(平成12年)9月に署名された日露科学技術協力協定に基づき、科学技術協力合同委員会が開催されている。2018年4月に東京で行われた第13回会合では、日露の科学技術政策について紹介した上で、両国の大学間交流の現状と展望、北極、農業、IT・デジタル等、個別分野における両国の取組についても報告がなされた。
 2016年(平成28年)5月にロシアのソチで行われた日露首脳会談においては、安倍晋三・内閣総理大臣からウラジーミル・プーチン大統領に8項目の「協力プラン」を提示した。現在、両国によって同プランの具体化が進められている8項目の一つである「日露の知恵を結集した先端技術協力」においては、ICT・郵便、農業等の幅広い分野で協力が進められている。2017年(平成29年)9月にロシアのウラジオストクにおいて、文部科学省とロシア教育科学省との間で「日露科学技術共同プロジェクトに関する協力覚書」が署名され、これに基づき、2019年(平成31年)1月、「北極研究を含む合理的な自然利用」及び「エネルギー効率」に関する研究公募を開始した。

(5)その他の国との協力

 その他の国との間でも、情報交換、研究者の交流、共同研究の実施等の科学技術協力が進められている。2017年(平成29年)から2018年(平成30年)にかけて、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、カタール等においても、外務大臣科学技術顧問の海外出張の機会に、内閣府と外務省(在外公館)の連携による我が国のSIPキャラバンを実施した。
 そのほか、開発途上国との間でも、科学技術を活用した地球規模課題への対処のため、将来に向けた人材育成や人的交流、研究協力が進められている。

第4節 実効性ある科学技術イノベーション政策の推進と司令塔機能の強化

 中長期的な視点に立って策定されている第5期基本計画に実行性を持たせるため、総合科学技術・イノベーション会議は、毎年の状況変化を踏まえて科学技術イノベーション総合戦略において重きを置くべき取組を示すなどの取組を行っているほか、総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能の強化を図っている。

1 基本計画のフォローアップ等の実施

 第5期基本計画においては、客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策を推進するため、目標値、主要指標を設定し、定量的な情報と定性的な情報を併せて、第5期基本計画の進捗及び成果の状況を把握することとしている。
 総合科学技術・イノベーション会議は、第5期基本計画策定後、目標値や主要指標等に関するデータを収集してきている。
 文部科学省では、科学技術イノベーションの中核的役割を担う省として、第5期基本計画が着実に進捗されていることを確認するため、第5期基本計画に記載された各政策領域を忠実に見える化した「俯瞰(ふかん)マップ」を作成し、政策・施策・個別取組等を企画・立案・評価する上で参考となる指標の設定を行っている。計画期間中、この「俯瞰(ふかん)マップ」における指標の値の変化を参考にしつつ、常に周辺環境の変化を的確に捉えることによって、状況に応じた有効な施策立案や改善につなげることとしている。

2 国の研究開発評価に関する大綱的指針

 科学技術イノベーション政策を効果的、効率的に推進するためには、PDCAサイクルを確立し、政策や施策等の達成目標、実施体制などを明確に設定した上でその推進を図るとともに、進捗状況について、適時、適切にフォローアップを行い、実績を踏まえた政策等の見直しや資源配分、さらには新たな政策等の企画立案を行う必要がある。このため、国として、PDCAサイクルの実効性のある取組を進めることとしている。具体的には、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成28年12月21日内閣総理大臣決定。以下「大綱的指針」という。)を定めるなどの取組を行っている。
 文部科学省は、大綱的指針の改定を受けて、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(平成14年6月20日文部科学大臣決定)を平成29年4月に改定した。改定に当たっては、特筆課題として位置付けている、1.科学技術イノベーションの創出、課題解決のためのシステムの推進、2.挑戦的(チャレンジング)な研究、学際・融合領域・領域間連携研究等の推進、3.次代を担う若手研究者の育成・支援の推進、4.評価の形式化・形骸化、評価負担増大に対する改善の記載の充実を図るとともに、研究開発プログラム評価の本格的な実施に向けた取組等の観点から、より一層実効性の高い研究開発評価を実施し、優れた研究開発が効果的・効率的に行われることを目指している。
 経済産業省は、研究開発事業について、事前評価、中間評価、終了時評価等を実施している。大綱的指針の改定を受けて改訂した「経済産業省技術評価指針」及び「経済産業省技術評価指針に基づく標準的評価項目・評価基準」に基づき、具体的に効率的・効果的な運用を図るための環境整備を行い、3事業の事前評価、10事業の中間評価、4事業の終了時評価を実施した。
 独立行政法人や国立大学法人については、独法通則法や「国立大学法人法」(平成15年法律第112号)に基づき、業務の実績に関する評価が実施されている。主務大臣による国立研究開発法人の評価については、「独立行政法人の評価に関する指針」(平成26年9月2日総務大臣決定)に基づき、研究開発に関する審議会による提言を踏まえ、研究開発成果の最大化を第一目的として評価を実施することとしている。

3 客観的根拠に基づく政策の推進

 限られた資源を有効に活用し、国民により信頼される行政を展開するため、政府は「統計改革推進会議最終取りまとめ」(平成29年5月統計改革推進会議決定)等に基づき、証拠に基づく政策立案(EBPM(※41))の推進に取り組んでいる。平成29年8月には政府横断的なEBPM推進機能として、EBPM推進委員会を開催したほか、平成30年度は各府省にEBPMの推進を担う審議官を新設するなど、EBPM推進体制の整備を進めている。また、政策、施策や事務事業の各段階におけるEBPMの実践を進めている。
 総合科学技術・イノベーション会議は、科学技術基本計画や統合イノベーション戦略等のPDCA構築に必要な情報について、関係府省・機関と連携し、既存の取組を活用しつつ、収集・共有・分析するとともに、俯瞰(ふかん)的な形で整備するための検討を進めている。
 文部科学省は、客観的根拠(エビデンス)に基づいた合理的なプロセスによる科学技術イノベーション政策の形成の実現を目指し、「科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業」を実施している(第6章第1節3参照)。
 また、公募型資金の競争的資金等については、「府省共通研究開発管理システム(e‐Rad(※42))」を活用して、公募・申請等の業務を行っており、e‐Rad上にある研究成果等のデータは、客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の推進に資するよう、総合科学技術・イノベーション会議に提供している。
 科学技術・学術政策研究所は、行政ニーズを踏まえた調査分析を実施するとともに、科学技術イノベーションに関する政策形成及び調査・分析・研究に活用するデータ等を体系的かつ継続的に整備・蓄積していくためのデータ・情報基盤の構築を行っている(第6章第1節3参照)。


  • ※41 Evidence - based Policymaking
  • ※42 Electronic - Research and Development

4 総合科学技術・イノベーション会議における司令塔機能の強化

 総合科学技術・イノベーション会議では、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」及び「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」を強力に推進するとともに、平成29年度補正予算においてSIP第2期のための予算を確保、前倒しで開始した。また、平成28年12月に経済財政諮問会議との合同の専門調査会(経済社会・科学技術イノベーション活性化委員会)で取りまとめた「科学技術イノベーション官民投資拡大イニシアティブ〈最終報告〉」に基づき、三つのアクション(予算編成プロセス改革、研究開発投資拡大に向けた制度改革、エビデンスに基づく効果的な官民研究開発投資拡大)の実現に向けて取り組んでいる。このうち、予算編成プロセス改革アクションについては、各府省施策を誘導する民間研究開発投資誘発効果の高い領域の決定等、「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」の平成30年度創設に向けた検討を行った。また、研究開発投資拡大に向けた制度改革アクションについては、大学や国立研究開発法人における多様な資金の獲得や人材、知、資金の好循環の創出に向けた具体的な方策等について検討を行った。エビデンスに基づく効果的な官民研究開発投資拡大アクションについては、科学技術イノベーション政策に関するインプット、アウトプット、アウトカムに至る情報を体系的に収集・分析できる「エビデンス・システム」の構築を開始した。

第5節 未来に向けた研究開発投資の確保

 第5期基本計画においては、「これまでの科学技術振興の努力を継続していく観点から、恒常的な政策の質の向上を図りつつ、諸外国が政府研究開発投資を拡充している状況、我が国の政府負担研究費割合の水準、政府の研究開発投資が呼び水となり、民間投資が促進される相乗効果等を総合的に勘案し、政府研究開発投資に関する具体的な目標を引き続き設定し、政府研究開発投資を拡充していくことが求められる」とされており、特に政府研究開発投資については「官民合わせた研究開発投資を対GDP比の4%以上とすることを目標とするとともに、政府研究開発投資について、平成27年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」との整合性を確保しつつ、対GDP比の1%にすることを目指すこととする。期間中のGDPの名目成長率を平均3.3%という前提で試算した場合、第5期基本計画期間中に必要となる政府研究開発投資の総額の規模は約26兆円となる」とされている。

 第2‐7‐1図/主要国等の政府負担研究費対国内総生産(GDP)比の推移

 第2‐7‐2図/主要国等の政府負担研究費割合の推移

(政府研究開発投資)
 平成30年度の政府研究開発投資は、4兆7,921億円で、その内訳は、国が4兆2,800億円(補正予算含む。)、地方公共団体が5,101億円であった(平成31年3月時点。国の研究開発投資の詳細については、第1章第4節2を参照)。

お問合せ先

科学技術・学術政策局企画評価課

(科学技術・学術政策局企画評価課)

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