第7章 科学技術イノベーションの推進機能の強化

 第5期基本計画に掲げられた政策や施策を効果的かつ柔軟に実行するため、科学技術イノベーション活動の主要な実行主体である大学及び国立研究開発法人の機能強化や総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能の強化を図るとともに、実行のための研究開発投資の確保に努めている。

第1節 大学改革と機能強化

 科学技術イノベーションの創出に極めて重要な役割を担う大学は、様々な課題に適切に対応し、大学内の人材、知、資金をより効果的・効率的に機能させていく必要がある。
 このため、大学は、教育や研究を通じて社会に貢献するとの認識の下、抜本的な大学改革を推進することとしている。

1 大学改革について

 大変革時代に対応するためには,いかなる状況変化や新しい課題に直面しても柔軟かつ的確に対応できるよう、多様で優れた人材を養成するとともに、多様で卓越した知を創造する基盤を豊かにしていくことが不可欠であり、大学はその中心的役割を担う存在である。さらに、大学の役割は、新たな知を、産学官連携活動などを通じて社会実装し、広く社会に対して経済的及び社会的・公共的価値を提供するところにまで広がっている。
 このように、科学技術イノベーションの創出に極めて重要な役割を担う大学をめぐっては、経営・人事システムの改革、安定性ある若手ポストの確保、国際頭脳循環への参画、産学官連携の本格化、財源の多様化の推進など、様々な課題が存在している。こうした課題に適切に対応し、大学内の人材、知、資金をより効果的・効率的に機能させていく必要がある。
 このため文部科学省では、文部科学大臣が指定する国立大学法人については、世界最高水準の教育研究活動が展開されるよう、高い次元の目標に基づき大学運営を行うこととする「指定国立大学法人制度」を創設し、平成29年6月に東北大学、東京大学、京都大学の3法人を、平成30年3月に東京工業大学、名古屋大学の2法人を指定した。
 さらに、平成28年4月に、卓越大学院(仮称)検討のための有識者会議において「卓越大学院(仮称)構想に関する基本的な考え方」が取りまとめられたほか、文部科学省としても、平成29年度に公募・審査等の方向性を検討するための調査研究を行う「卓越大学院プログラム(仮称)構想推進委託事業」により、その検討を加速させている(第4章第1節1(3)参照)。
 また、平成28年11月に「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を策定し、企業と大学・国立研究開発法人の「組織」対「組織」の本格的産学官連携を促すとともに、人材の流動性を高めるため、教員が複数機関で常勤としての身分を有しながら、必要な従事比率で業務を行う、クロスアポイントメント制度の導入を促進している(第4章第1節2(3)参照)。
 そのほか、新たな研究領域に挑戦するような優秀な若手研究者に対し、安定かつ自立して研究を推進できるような環境を実現するとともに、全国の産学官の研究機関をフィールドとした新たなキャリアパスを提示する「卓越研究員事業」を実施している(第4章第1節1(1)参照)。

第2節 国立研究開発法人改革と機能強化

 国立研究開発法人は、国家的又は国際的な要請に基づき、長期的なビジョンの下、法人の長のマネジメント力を最大限に発揮し、民間では困難な基礎・基盤的研究のほか、実証試験、技術基準の策定に資する要素技術の開発、他機関への研究開発費の資金配分等に取り組み、イノベーションシステムの駆動力として、組織改革とその機能強化を図ることとしている。

1 国立研究開発法人の改革

 「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(平成20年法律第63号)の改正(平成25年12月施行)や「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)等に基づき、平成26年に「独立行政法人通則法」(平成26年法律第66号)が改正され、独立行政法人のうち、我が国における科学技術の水準の向上を通じた国民経済の健全な発展その他の公益に資するため研究開発の最大限の成果を確保することを目的とした法人を国立研究開発法人と位置付けた(平成30年3月31日現在で27法人)。さらに、平成28年5月には「特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する特別措置法」(平成28年法律第43号。以下「特定法人法」という)が成立(平成28年10月施行)し、国立研究開発法人のうち、世界最高水準の研究開発成果の創出・普及及び活用を促進し、イノベーションを牽引(けんいん)する中核機関として、物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所が特定国立研究開発法人に選定された。その後、平成28年6月には「特定国立研究開発法人による研究開発等を促進するための基本的な方針」(平成28年6月28日閣議決定。平成29年3月10日改訂)を示した。総合科学技術・イノベーション会議 評価専門調査会は、平成29年7月4日に「特定国立研究開発法人の見込評価等及び次期中長期目標の内容に対する意見・指摘事項の考え方」を取りまとめた。文部科学省は、特定法人法に基づき、平成29年度に中長期目標期間が終了する理化学研究所について、第5期基本計画や同基本方針との整合性の観点から総合科学技術・イノベーション会議より出された意見(平成29年12月及び平成30年2月)を踏まえ、平成30年度からの新中長期目標を平成30年3月1日に策定した。

第3節 科学技術イノベーション政策の戦略的国際展開

 グローバル化が進展する中で、我が国の科学技術イノベーションを推進するとともに、その成果を活用し、国際社会における我が国の存在感や信頼性を向上するため、科学技術イノベーションの国際活動と外務省参与(外務大臣科学技術顧問)を通じた取組を含む科学技術外交を一体的に推進していくことが必要である。

1 国際的な枠組みの活用

(1)主要国首脳会議(サミット)関連活動

 2008年(平成20年)、当時の議長国であった我が国の発案により、G8科学技術大臣会合が当時の岸田文雄・内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の主催で開催された。以後、2013年(平成25年)英国開催、さらには2015年(平成27年)ドイツ開催、2016年(平成28年)日本(茨城県つくば市)開催と定期的に開催されている。同会合は、内閣府特命担当大臣(科学技術政策)と諸外国の閣僚との政策協議等を通じて、科学技術を活用した地球規模の諸問題等への対処、諸外国と連携した科学技術政策をめぐる国際的な議論への主体的な貢献等を開催目的としている。2017年(平成29年)9月には、イタリアで開催され、我が国から原山優子・総合科学技術・イノベーション会議議員が出席した。
 2008年(平成20年)の会合での議論を踏まえ設立された国際的研究施設に関する高級実務者会合(GSO)については、2017年(平成29年)5月に、イタリアにおいて第9回会合が開催され、国際的な研究施設に関する情報共有、国際協力に係る枠組み等について検討が行われ、9月のG7イタリア・トリノ科学技術大臣会合に進捗報告書が提出された。同年10月にはロシアにおいて第10回会合が開催された。
 各国の低炭素社会に関わる研究機関により構成される低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS‐RNet)については、2017年(平成29年)9月に、イギリスにおいて第9回年次会合が開催された。2017年(平成29年)現在、我が国を含む10か国の研究機関が参加している。 

(2)アジア・太平洋経済協力(APEC)

 APEC科学技術イノベーション政策パートナーシップ(PPSTI)は、共同プロジェクトやワークショップ等を通じたAPEC地域の科学技術イノベーション推進を目的に開催されており、2017年(平成29年)2月に第9回会合、5月に第10回会合がベトナムで、2018年(平成30年)2月に第11回会合がパプアニューギニアで開催され、PPSTIの活動計画等について議論が行われた。

(3)東南アジア諸国連合(ASEAN)

 ASEAN科学技術委員会(COST)において、日本・中国・韓国の3か国を加えたASEAN COST+3による協力が行われており、我が国では文部科学省を中心として対応している。2015年(平成27年)1月には、第8回ASEAN COST+3会合が東京で開催され、ASEANと日中韓の協力を目的とした意見交換が行われた。また、我が国とCOSTとの間の協力枠組みとして、2017年(平成29年)5月に第8回日・ASEAN科学技術協力委員会がバンダルスリブガワン(ブルネイ)で開催され、今後の我が国とASEAN全体との科学技術協力について意見交換を行った。

(4)その他

ア アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)

 我が国は、アジア・太平洋地域での宇宙活動、利用に関する情報交換並びに多国間協力推進の場として、1993年(平成5年)から毎年1回程度、同地域で最大規模の宇宙協力の枠組みであるアジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)を主催している。2017年(平成29年)11月にインドにおいて開催された第24回APRSAFには、31か国・地域、10国際機関より約540人が参加した。今会合では、アジア・太平洋地域の宇宙機関から機関長6名及び副機関長相当3名が出席し、宇宙科学技術がSDGs達成において果たす役割について意見交換を行った。また、宇宙新興国の宇宙政策に関する意見交換へのニーズの高まりを受け、今回初めて宇宙政策に焦点を当てたセッションを行い、各国の政策担当が多数出席する会議となった。

イ 国際宇宙探査フォーラム(ISEF)

 宇宙探査における国際協力を促進するために2009年(平成21年)から欧州中心で開催されていた閣僚級会合の流れを受け、2014年(平成26年)にワシントンDCで国際宇宙探査フォーラム(ISEF)が開催された。この際、次回会合を日本が主催する旨表明し、2018年(平成30年)3月に第2回会合(ISEF2)を開催した。
 各国が宇宙探査の計画を打ち出し、民間活動が活発になるなど、国際的に月、火星に向けた宇宙探査への関心が高まる中、ISEF2では宇宙探査やその国際協力の重要性、推進に当たっての基本的考え方等について議論を行った。また、閣僚級会合の機会に合わせ、若手・産業界を対象としたサイドイベントを開催した。

ウ 地球規模生物多様性情報機構(GBIF)

 生物多様性に関するデータを収集し全世界的に利用することを目的とし、情報基盤の整備、集積・解析ツールの開発などの活動を行っている。加盟国等の参加による第24回理事会が2017年(平成29年)9月、フィンランドのヘルシンキにおいて開催され、2018年(平成30年)の予算案、作業計画等が採択された。

エ 地球観測に関する政府間会合(GEO)

 2015年(平成27年)11月に開催された閣僚級会合で承認された「GEO戦略計画2016‐2025」に基づき、「全球地球観測システム(GEOSS)」の構築を推進する国際的な枠組みであり、223の国及び機関が参加している(2018年(平成30年)2月時点)。
 GEOSSは八つの社会利益分野(生物多様性・生態系の持続性、災害強靱(きょうじん)性、エネルギー・鉱物資源管理、食料安全保障・持続可能な農業、インフラ・交通管理、公衆衛生監視、持続可能な都市開発、水資源管理)とこれら8分野に横断的な分野である気候変動といった地球規摸課題に関する政策決定等に貢献する情報の創出を目指し、人工衛星や地上観測など多様な観測システムが連携した包括的なシステムである。

オ 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)

 人為起源による気候変動とその影響や脆弱性、適応及び緩和に関し、科学的・技術的・社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年(昭和63年)に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された。2014年(平成26年)に第5次評価報告書を取りまとめ、現在は第6次評価サイクルを開始しており、第6次評価報告書(2021年(平成33年)から2022年(平成34年)にかけて公表予定)に加え、1.5度特別報告書、海洋・雪氷圏特別報告書、土地関係特別報告書、温室効果ガスインベントリガイドライン方法論報告書を今後取りまとめる予定である。 

カ Innovation for Cool Earth Forum (ICEF)

 我が国は、気候変動問題の解決と経済成長を両立するための鍵であるエネルギー・環境分野のイノベーションとその普及を促進するため、安倍晋三・内閣総理大臣の提唱により、世界の産官学のリーダーが議論を行い、国際的な協力を推進する知のプラットフォームとして「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」を平成26年(2014年)に創設し、毎年10月に東京で開催している。
 2017年(平成29年)第4回ICEF年次総会には、約80か国・地域から1,000名以上の参加があった。

キ アルゴ計画

 文部科学省と気象庁は、世界の海洋内部の詳細な変化を把握し、気候変動予測の精度向上につなげる高度海洋監視システム(アルゴ計画)に参画している(第3章第3節1参照)。

ク グローバルリサーチカウンシル(GRC)

 2017年(平成29年)5月、オタワにおいてカナダ自然科学工学研究会議(NSERC)とペルー国立科学技術委員会(CONCYTEC)の共同主催により、世界各国の主要な学術振興機関の長による国際会議であるGRCの第6回年次会合が開催され、47か国、2国際機関から合計54機関の長等が出席し、研究支援を取り巻く課題と学術振興機関が果たすべき役割が議論され、成果文書として「基礎研究とイノベーションの活発な相互作用の原則に関する宣言」及び「世界の研究助成機関間の能力開発と連携の原則に関する宣言」が採択された。

コラム2‐12 第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)の開催について

 2018年(平成30年)3月3日に、東京で「第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)」が開催された。宇宙探査に関心を持つ世界各国の閣僚や宇宙機関長等45の国・国際機関から約300名が集まり、人類の活動領域の拡大、人類共通の知見・経験・利益の獲得への挑戦である宇宙探査の重要性や、国際協力の意義、今後の協力の在り方等について、林芳正・文部科学大臣が議長を務め、終日にわたって活発な議論が展開された。この議論において、各国の宇宙探査への関心拡大の歓迎、民間との連携などの革新的なパートナーシップへの期待、地球低軌道から月、火星、その先の太陽系の探査活動が広く共有された目標であること、有人・無人の探査の持続的な実施の重要性が確認され、それらの結論は「共同声明」として取りまとめられた。また、国際宇宙探査フォーラムを継続的な会合とする「運営規約」に合意するとともに、国際宇宙探査を円滑に進める基盤となる「国際宇宙探査に関する東京原則」が取りまとめられ、この中で、平和目的、人類への利益、科学の側面、実行可能性や経済性の確保、国際協力、民間との関係、探査の継続性等、宇宙探査を進める各国が留意すべき重要事項が盛り込まれた。
 また、ISEF2開催の機会を捉えて、産業界や若者を対象としたサイドイベントも行われた。非宇宙系を含む国内外の企業や投資機関を対象としたI‐ISEF2(ISEF for Industry)では、宇宙探査の認知度の向上や、民間企業による宇宙産業参入の門戸拡大のための議論が行われるとともに、参加者間のネットワーク形成の機会となった。また、大学、宇宙機関、民間企業(非宇宙分野も含む)等のヤング・プロフェッショナルを対象としたY‐ISEF(ISEF for Young Professionals)や、日本の高校生を対象としたS‐ISEF(ISEF for Students)では、宇宙探査に関して闊(かっ)達(たつ)な意見交換が行われ、今後の宇宙探査を担う若手の人材育成や宇宙への興味を喚起する機会となった。
 次回会合(ISEF3)は、2021年(平成33年)までに欧州で開催される予定である。

 セッション3でパネリストを務める林芳正・文部科学大臣
 セッション3でパネリストを務める林芳正・文部科学大臣

 資料:文部科学省

2 国際機関の活用

(1)国際連合システム(UNシステム)

ア 国連持続可能な開発目標のための科学技術イノベーション(「STI for SDGs」)

 科学技術イノベーションを通じた国連持続可能な開発目標の達成(「STI for SDGs」)に関し、科学技術外交推進会議(座長は外務大臣科学技術顧問。)において、「未来への提言(科学技術イノベーションの「橋を架ける力」でグローバル 課題の解決を:SDGs実施に向けた科学技術外交の四つのアクション)」を取りまとめ、2017年(平成29年)5月12日に外務大臣に提出した。提言の要素(Society 5.0、データ活用による課題解決、セクター間連携、人材育成)は、同月に開催された国連第2回STIフォーラムで我が国有識者から発信するとともに、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(以下「SATREPS」という。)に関するサイドイベントを世界銀行と共催し、ビジネスセクターとの連携やデータの活用による地球規模課題の解決にむけた事例等を発表し、各国から高い関心が示された。また、12月には、第3回STIフォーラムの共同議長に星野俊也・国際連合日本政府代表部大使(次席代表)が就任することとなった。

イ 国連教育科学文化機関(UNESCO)

 我が国は、国連の専門機関である国連教育科学文化機関(UNESCO)の多岐にわたる科学技術分野の事業活動に積極的に参加協力している。
 ユネスコでは、政府間海洋学委員会(IOC)、国際水文学計画(IHP)、人間と生物圏(MAB)計画、ユネスコ世界ジオパーク、国際生命倫理委員会(IBC)、政府間生命倫理委員会(IGBC)等において、地球規模課題解決のための事業や国際的なルール作り等が行われている。我が国は、ユネスコへの信託基金の拠出等を通じて、アジア・太平洋地域等における科学技術分野の人材育成事業を実施しており、また、各委員会へ専門委員を派遣し議論に参画するなど、ユネスコの活動を推進している。

(2)経済協力開発機構(OECD)

 OECDでは、閣僚理事会、科学技術政策委員会(CSTP)、情報・コンピュータ・通信政策委員会(ICCP)、産業・イノベーション・起業委員会(CIIE)、原子力機関(NEA)、国際エネルギー機関(IEA)等を通じて、加盟国間の意見・経験等及び情報の交換、人材の交流、統計資料等の作成をはじめとした科学技術に関する活動が行われている。
 CSTPでは、科学技術政策に関する情報交換・意見交換が行われるとともに、科学技術イノベーションが経済成長に果たす役割、研究体制の整備強化、研究開発における政府と民間の役割、国際的な研究開発協力の在り方等について検討が行われている。また、CSTPには、グローバル・サイエンス・フォーラム(GSF)、イノベーション・技術政策作業部会(TIP)、バイオ・ナノ・コンバージング・テクノロジー作業部会(BNCT)及び科学技術指標専門家作業部会(NESTI)の四つのサブグループが設置されている。

ア グローバル・サイエンス・フォーラム(GSF)

 GSFでは、地球規模課題の解決に向けた国際連携の在り方等が議論されている。2017年(平成29年)は、データリポジトリの持続可能なビジネスモデルや研究データネットワークの国際協力について検討するプロジェクトの最終報告書が取りまとめられた。

イ イノベーション・技術政策作業部会(TIP)

 TIPは、生産性を拡大し、知識の創造・活用を促進し、持続的な成長を助長し、高度な技術者の雇用創出を促進するためのイノベーションと技術に関する政策について検討する場である。
 2017年(平成29年)は、デジタル化の進展によって既存の産業構造の枠組みが大きく変わる中、どのようなイノベーションのエコシステムが望ましいのか、また、デジタルイノベーションが地域や国家レベルで及ぼす影響がそれぞれどのようなものか等を分析するプロジェクトの他、公的な研究がイノベーションに及ぼすインパクトの評価に関するプロジェクト等が実施された。また、次年度以降のテーマである、デジタル化及びイノベーションポリシーミックスに関する実施方針について議論を行った。

ウ バイオ・ナノ・コンバージング・テクノロジー作業部会(BNCT)

 BNCTは、バイオテクノロジーを有効に活用し、持続可能な経済成長や人類の繁栄に役立てるための政策提言や、ナノテクノロジーの波及効果、研究と研究インフラの国際化などのプロジェクトを進めている。

エ 科学技術指標専門家作業部会(NESTI)

 NESTIは、統計作業に関して監督・助言・調整を行うとともに、科学技術イノベーション政策の推進に資する指標や定量的分析の展開に寄与している。具体的には、研究開発費や科学技術人材等の科学技術関連指標について、国際比較のための枠組み、調査方法や指標の開発に関する議論等が行われている。

(3)国際科学技術センター(ISTC)

 ISTCは、旧ソ連邦諸国における大量破壊兵器開発に従事していた研究者が参画する平和目的の研究開発プロジェクトを支援することを目的として、1994年(平成6年)3月に日本・米国・欧州連合(EU)・ロシアの4極により設立された国際機関である。2015年(平成27年)7月にロシアが脱退したことに伴い、ISTCの本部はモスクワからカザフスタンのアスタナに移転した。同年12月には、「ISTCを継続する協定」に我が国のほか、EU及び欧州原子力共同体、ジョージア、ノルウェー、キルギス、アルメニア、カザフスタン、韓国、タジキスタン、米国が署名し、2017年(平成29年)に発効した。

3 研究機関の活用

(1)東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)

 ERIAは、東アジア経済統合の推進に向け政策研究・提言を行う機関であり、「経済統合の深化」、「開発格差の縮小」及び「持続可能な経済成長」を三つの柱として、イノベーション政策等を含む幅広い分野にわたり、研究事業、シンポジウム事業及び人材育成事業を実施している。

4 科学技術イノベーションに関する戦略的国際活動の推進

 我が国が地球規模の問題解決において先導的役割を担い、世界の中で確たる地位を維持するためには、科学技術イノベーション政策を国際協調及び協力の観点から、戦略的に進めていく必要がある。

 文部科学省は、平成20年度(2008年度)より、SATREPSを実施し、我が国の優れた科学技術とODAとの連携により、アジア等の開発途上国と、環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症分野において地球規模の課題解決につながる国際共同研究を推進している(第5章第6節2参照)。
 また、平成21年度(2009年度)より、「戦略的国際共同研究プログラム(以下「SICORP」という。)」を実施し、戦略的な国際協力によるイノベーション創出を目指し、省庁間合意に基づくイコールパートナーシップ(対等な協力関係)の下、相手国・地域のポテンシャル・分野と協力フェーズに応じた多様な国際共同研究を推進している。
 さらに、平成26年度(2014年度)より、「日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)」を実施し、アジア地域の青少年の日本の最先端の科学技術への関心を高め、日本の大学・研究機関や企業が必要とする海外からの優秀な人材の育成を進め、アジア地域と日本の科学技術の発展に貢献することを目的としている(第4章第1節2(2)ア(イ)参照)。
 環境省は、アジア太平洋地域での研究者の能力向上、共通の問題解決を目的とする「アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)」を支援しており、2017年(平成29年)4月には第22回年次政府間会合がインドで開催された。また、アジア地域の低炭素成長に向け、最新の研究成果や知見の共有を目的とする「低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)」の第6回年次会合を2017年(平成29年)11月にタイにおいて開催した。
 また、2015年(平成27年)9月に国連総会において、地球的・人類的課題を包摂して掲げた目標であるSDGsが全会一致で採択された。科学技術イノベーションは、それ自体が一つの目標であるとともに、他の様々な課題の達成において不可欠な横断的要素でもあるため、関係省庁において科学技術イノベーションのSDGsへの貢献の可能性に関して、議論が開始されている。

5 諸外国との協力

(1)欧米諸国との協力

 我が国と欧米諸国等との協力活動については、ライフサイエンス、ナノテクノロジー・材料、環境、原子力、宇宙開発等の先端研究分野での科学技術協力を活発に推進している。具体的には、2国間科学技術協力協定に基づく科学技術協力合同委員会の開催や、情報交換、研究者の交流、共同研究の実施等の協力を進めている。
 米国との間では、日米科学技術協力協定に基づき設置された日米科学技術協力合同高級委員会(大臣級)や日米科学技術協力合同実務級委員会(実務レベル)があり、それぞれ2015年(平成27年)、2016年(平成28年)に開催され、各分野における研究協力等、多数のテーマについて意見交換が行われている。
 EUとの間では、欧州委員会との協議等を経て2012年(平成24年)10月から欧州委員会と総務省との間で情報通信技術(ICT)分野の国際共同研究の第1回の共同公募を実施し、2013年(平成25年)から共同研究を実施している。2017年(平成29年)10月には第4回の共同公募を開始した。その他、欧米諸国とは、2017年(平成29年)6月にイタリア、10月にスロベニア、11月にEU、12月にブルガリア、2018年(平成30年)1月にチェコ、2月にスイス、3月にルーマニアとの間で科学技術協力合同委員会を開催した。また、2017年(平成29年)には、オランダにおいて外務大臣科学技術顧問の海外出張の機会に、内閣府と外務省(在外公館)の連携による我が国の科学技術イノベーションの対外発信事業(以下「SIPキャラバン」という。)を実施した。
 その他、2017年(平成29年)10月には、希少金属等の主要消費国による「第7回日米欧三極クリティカルマテリアル会合」が米国で開催された。本会合には、日米欧3極の政策担当者及び専門家が参加し、レアアース等の希少金属を取り巻く世界的な問題について共通理解を深めるとともに、代替材料開発やリサイクルに係る技術開発の方向性等について議論を行った。

(2)中国・韓国との協力

 2017年(平成29年)7月、科学技術振興機構が主催する日中科学技術交流シンポジウム参加のため、万鋼・中国科学技術部長が訪日し、松野博一・文部科学大臣と5年ぶりに会談を行った。
 また、日中韓の3か国の枠組みでは、科学技術協力担当大臣会合が行われ、文部科学大臣が出席している。これまで、同大臣会合と局長級会合が交互に開催され、日中韓3か国の共同研究プログラム(JRCP)による研究支援や若手研究者ワークショップなどが実施されてきた。 日本学術振興会は、日中韓の学術交流を中核としてアジアにおけるハイレベルな研究活動をけん引していくため、日中韓学術機関長会議を開催するとともに、「日中韓フォーサイト事業」などを実施し、アジア諸国における研究機関間の交流を支援し、学術研究ネットワークの形成や若手研究者の育成を図っている。

(3)ASEAN、インドとの協力

 アジアには、環境・エネルギー、食料、水、防災、感染症など、問題解決に当たって我が国の科学技術を活(い)かせる領域が多く、このようなアジア共通の問題の解決に積極的な役割を果たし、この地域における相互信頼、相互利益の関係を構築していく必要がある。
 文部科学省は、科学技術振興機構と協力して、2012年(平成24年)6月に、アジア地域において科学技術分野における研究交流を加速することにより、研究開発力を強化するとともに、アジア諸国が共通して抱える課題の解決を目指し多国間の共同研究を行う「e‐ASIA共同研究プログラム」を発足させた。同プログラムは、東アジアサミット参加国の機関が参加し協力が進められており、「材料(ナノテクノロジー)」、「農業(食料)」、「代替エネルギー」、「ヘルスリサーチ(感染症、がん)」、「防災」、「環境(気候変動、海洋科学)」、「イノベーションに向けた先端融合」の7分野を対象にしている。なお、ヘルスリサーチ分野については、2015年(平成27年)4月から日本医療研究開発機構において支援している。
 このほか、SICORP「国際共同研究拠点」として、2015年(平成27年)9月よりASEAN地域(環境・エネルギー、生物資源、生物多様性、防災分野)、また2016年(平成28年)10月より、インド(ICT分野)において支援を開始した。イノベーションの創出、日本の科学技術力の向上、相手国・地域との研究協力基盤の強化を目的として、日本の「顔の見える」持続的な共同研究・協力を推進している。

(4)ロシアとの先端科学技術協力

 我が国とロシアとの間においては、科学技術協力合同委員会が開催されており、科学技術協力の進捗の確認、協力拡大について議論されている。
 また、2016年(平成28年)5月にロシアのソチで行われた日露首脳会談において、内閣総理大臣から8項目の協力プランを提示し、プーチン大統領から高い評価と賛意が表明され、両首脳は今後の具体化で一致した。8項目のうち、「日露の知恵を結集した先端技術協力」においては、原子力・医療・農業産業等の幅広い分野で協力を進めることが含まれ、これらの協力に関する複数の文書の署名が2016年(平成28年)12月のプーチン大統領訪日に合わせて行われた。2017年(平成29年)9月にロシアのウラジオストクにおいて、文部科学省とロシア教育科学省との間で「日露科学技術共同プロジェクトに関する協力覚書」が署名された。

(5)その他の国との協力

 南アフリカ、イスラエル、ニュージーランド等との間でも科学技術協力協定等に基づく合同委員会の開催とともに、情報交換、研究者の交流、共同研究の実施等の協力が進められている。
 また、2017年(平成29年)から2018年(平成30年)にかけて、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア等においても、外務大臣科学技術顧問の海外出張の機会に、内閣府と外務省(在外公館)の連携による我が国のSIPキャラバンを実施した。
 そのほか、開発途上国との間でも、科学技術を活用した地球規模課題への対処のため、将来に向けた人材育成や人的交流、研究協力が進められている。

第4節 実効性ある科学技術イノベーション政策の推進と司令塔機能の強化

 中長期的な視点に立って策定されている第5期基本計画に実行性を持たせるため、総合科学技術・イノベーション会議は、毎年の状況変化を踏まえて科学技術イノベーション総合戦略において重きを置くべき取組を示すなどの取組を行っているほか、総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能の強化を図っている。

1 基本計画のフォローアップ等の実施

 第5期基本計画においては、客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策を推進するため、目標値、主要指標を設定し、定量的な情報と定性的な情報を併せて、基本計画の進捗及び成果の状況を把握することとしている。
 総合科学技術・イノベーション会議は、基本計画策定後、目標値、主要指標等に関するデータを収集してきている。
 文部科学省では、科学技術イノベーションの中核的役割を担う省として、第5期基本計画が着実に進捗されていることを確認するため、基本計画に記載された各政策領域を忠実に見える化した「俯瞰(ふかん)マップ」を作成し、「俯瞰(ふかん)マップ」ごとに政策・施策・個別取組等を企画・立案・評価する上で参考となる指標の設定を行っている。計画期間中、この「俯瞰(ふかん)マップ」における指標の値の変化を参考にしつつ、常に周辺環境の変化を的確に捉えることによって、状況に応じた有効な施策立案や改善につなげることとしている。

2 国の研究開発評価に関する大綱的指針

 科学技術イノベーション政策を効果的、効率的に推進するためには、PDCAサイクルを確立し、政策、施策等の達成目標、実施体制などを明確に設定した上で、その推進を図るとともに、進捗状況について、適時、適切にフォローアップを行い、実績を踏まえた政策等の見直しや資源配分、更には新たな政策等の企画立案を行う必要がある。このため、国として、PDCAサイクルの実効性のある取組を進めることとしている。具体的には、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成28年12月21日内閣総理大臣決定。以下「大綱的指針」という)を定めるなどの取組を行っている。
 文部科学省では、大綱的指針の改定を受けて、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(文部科学大臣決定)を平成29年4月に改定した。改定に当たっては、特筆課題として位置付けている、1.科学技術イノベーションの創出、課題解決のためのシステムの推進、2.挑戦的(チャレンジング)な研究、学際・融合領域・領域間連携研究等の推進、3.次代を担う若手研究者の育成・支援の推進、4.評価の形式化・形骸化、評価負担増大に対する改善の記載の充実を図るとともに、研究開発プログラム評価の本格的な実施に向けた取組等の観点から、より一層実効性の高い研究開発評価を実施し、優れた研究開発が効果的・効率的に行われることを目指している。
 経済産業省は、研究開発事業について、事前評価、中間評価、終了時評価及び追跡評価を実施している。大綱的指針の改定において、挑戦的(チャレンジング)な研究開発の評価に係る留意事項の追加や、時間軸に沿って描いた「道筋」(ロードマップ)の作成とその妥当性評価等の記述の充実を踏まえ、「経済産業省技術評価指針」及び「経済産業省技術評価指針に基づく標準的評価項目・評価基準」についても、所要の見直しを行い改正した。
 独立行政法人や国立大学法人については、独立行政法人通則法や「国立大学法人法」(平成15年法律第112号)に基づき、業務の実績に関する評価が実施されている。主務大臣による国立研究開発法人の評価については、「独立行政法人の評価に関する指針」を踏まえ、研究開発成果の最大化を第一目的として評価を実施することとしている。

3 客観的根拠に基づく政策の推進

 限られた資源を有効に活用し、国民により信頼される行政を展開するため、政府は「統計改革推進会議最終取りまとめ」(平成29年5月統計改革推進会議決定)等に基づき、証拠に基づく政策立案(EBPM(※1))の推進に取り組んでいる。平成29年8月には政府横断的なEBPM推進機能として、EBPM推進委員会を開催したほか、平成30年度は各府省にEBPMの推進を担う審議官を新設するなど、EBPM推進体制の整備を進めている。また、政策、施策、事務事業の各段階におけるEBPMの実践を進めている。
 総合科学技術・イノベーション会議は、科学技術基本計画、科学技術イノベーション総合戦略等のPDCA構築に必要な情報について、関係府省・機関と連携し、既存の取組を活用しつつ、収集・共有・分析するとともに、俯瞰(ふかん)的な形で整備するための検討を進めている。
 文部科学省は、客観的根拠(エビデンス)に基づいた合理的なプロセスによる科学技術イノベーション政策の形成の実現を目指し、「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」を実施している(第6章第1節3参照)。
 また、公募型資金に関し、政府の競争的資金等については、「府省共通研究開発管理システム
 (e‐Rad)」を活用して、公募・申請等の業務を行っており、e‐Rad上にある研究成果等のデータは、客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の推進に資するよう、総合科学技術・イノベーション会議に提供している。
 科学技術・学術政策研究所は、行政ニーズを踏まえた調査分析を実施するとともに、科学技術イノベーションに関する政策形成及び調査・分析・研究に活用するデータ等を体系的かつ継続的に整備・蓄積していくためのデータ・情報基盤の構築を行っている(第6章第1節3参照)。


  • ※1 Evidence - based Policymaking

コラム2‐13 証拠に基づく政策立案(EBPM)の推進

 証拠に基づく政策立案(EBPM:Evidence‐based Policymaking)とは、政策目的を明確化させ、その目的のため本当に効果が上がる行政手段は何かなど、「政策の基本的な枠組み」を統計や業務データの分析結果等の客観的な証拠に基づいて明確にするための取組のことである。
 我が国は、世界に類を見ない少子高齢化の進展や厳しい財政状況に直面しており、現状や政策課題を迅速かつ的確に把握し、有効な対策を選択し、その効果を検証する必要性がこれまで以上に高まっている。しかし、我が国では、これまで政策形成において統計や業務データ等が十分に活用されているとは言えず、往々にしてたまたま見聞きした事例や限られた経験に基づくエピソード・ベースの政策立案が行われていると指摘されてきた。
 このような背景の下、政府全体におけるEBPMの定着、国民のニーズへの対応等を統計部門を超えた見地から推進することを目的として、平成29年2月に内閣官房長官を議長とする統計改革推進会議が開催され、同年5月には最終取りまとめを行った。これを受け、同年8月には、各府省のEBPM推進体制の責任者等で構成するEBPM推進委員会が開催され、政府を挙げた取組を推進する体制が構築された。また、様々な政策立案や実施を担う各部局長に対し、EBPMの観点から意見を述べ、指導・支援を行うためのハイレベルの体制を整備する必要があるとの考えから、平成30年度中にEBPMの取組を総括する審議官級の責任者を各府省に新たに設置することとしている。
 さらに、今後EBPM推進委員会において、統計等データの利活用と個人情報保護を両立した各府省によるデータ提供等の判断のための基本的ガイドラインやEBPMの実践・推進等に携わる人材の確保・育成に関する基本方針が平成30年度早期に策定される予定である。

4 総合科学技術・イノベーション会議における司令塔機能の強化

 総合科学技術・イノベーション会議では、引き続き「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」及び「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」を強力に推進するとともに、平成29年度補正予算においてSIP第2期のための予算を確保、前倒しで開始した。また、平成28年12月に経済財政諮問会議との合同の専門調査会(経済社会・科学技術イノベーション活性化委員会)で取りまとめた「科学技術イノベーション官民投資拡大イニシアティブ〈最終報告〉」に基づき、三つのアクション(予算編成プロセス改革、研究開発投資拡大に向けた制度改革、エビデンスに基づく効果的な官民研究開発投資拡大)の実現に向け取り組んでいる。このうち、予算編成プロセス改革アクションについては、各府省施策を誘導する民間研究開発投資誘発効果の高い領域の決定等、「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」の平成30年度創設に向けた検討を行った。また、研究開発投資拡大に向けた制度改革アクションについては、大学や国立研究開発法人における多様な資金の獲得や資金・知・人材の好循環の創出に向けた具体的な方策等について検討を行った。エビデンスに基づく効果的な官民研究開発投資拡大アクションについては、科学技術イノベーション政策に関するインプット、アウトプット、アウトカムに至る情報を体系的に収集・分析できる「エビデンス・システム」の構築を開始した。

第5節 未来に向けた研究開発投資の確保

 第5期基本計画では、「これまでの科学技術振興の努力を継続していく観点から、恒常的な政策の質の向上を図りつつ、諸外国が政府研究開発投資を拡充している状況、我が国の政府負担研究費割合の水準、政府の研究開発投資が呼び水となり、民間投資が促進される相乗効果等を総合的に勘案し、政府研究開発投資に関する具体的な目標を引き続き設定し、政府研究開発投資を拡充していくことが求められる」としており、特に政府研究開発投資については、「官民合わせた研究開発投資を対GDP比の4%以上とすることを目標とするとともに、政府研究開発投資について、平成27年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」との整合性を確保しつつ、対GDP比の1%にすることを目指すこととする。期間中のGDPの名目成長率を平均3.3%という前提で試算した場合、第5期基本計画期間中に必要となる政府研究開発投資の総額の規模は約26兆円となる」としている。

 第2‐7‐1図 主要国等の政府負担研究費対国内総生産(GDP)比の推移

 第2‐7‐2図 主要国等の政府負担研究費割合の推移

政府研究開発投資

 平成29年度の政府研究開発投資は、4兆4,686億円で、その内訳は、国が3兆9,615億円(補正予算含む。)、地方公共団体が5,071億円であった(平成30年3月時点。国の研究開発投資の詳細については、第1章第4節2を参照)。

お問合せ先

科学技術・学術政策局企画評価課

(科学技術・学術政策局企画評価課)

-- 登録:令和元年09月 --