第1章 科学技術政策の展開

 第2部では、平成29年度に科学技術の振興に関して講じられた施策について、第5期科学技術基本計画(平成28年1月22日閣議決定)(以下、科学技術基本計画を「基本計画」という。)に沿って記述する。

第1節 科学技術基本計画

 我が国の科学技術行政は、「科学技術基本法」(平成7年法律第130号)に基づき、政府が5年ごとに策定する基本計画にのっとり、総合的かつ計画的に推進している。
 これまで、第1期(平成8~12年度)、第2期(平成13~17年度)、第3期(平成18~22年度)、第4期(平成23~27年度)の基本計画を策定し、これらに沿って科学技術政策を推進してきた。
 平成28年度以降の次期基本計画の策定に向けて、平成26年10月、内閣総理大臣から総合科学技術・イノベーション会議に対して次期基本計画に向けた諮問がなされた(諮問第5号「科学技術基本計画について」)。同会議は、基本計画専門調査会を設置し、約1年間にわたって調査検討を行った。平成27年12月に総合科学技術・イノベーション会議は、諮問第5号に対する答申を行った。これを受けて、平成28年1月22日、第5期科学技術基本計画(以下「基本計画」という。)が閣議決定された。
 第5期基本計画では、現状認識として、情報通信技術(ICT)の進化等により、社会・経済の構造が日々大きく変化する「大変革時代」が到来し、国内外の課題が増大、複雑化する中で科学技術イノベーション推進の必要性が増していることを指摘している。
 また、基本計画の過去20年間の実績と課題として、研究開発環境の着実な整備、青色LEDやiPS細胞などのノーベル賞受賞に象徴されるような成果が上げられた一方で、科学技術における「基盤的な力」の弱体化、政府研究開発投資の伸びの停滞などを指摘している。
 こうした背景の下、第5期基本計画では、目指すべき国の姿として、1.持続的な成長と地域社会の自律的な発展、2.国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現、3.地球規模課題への対応と世界の発展への貢献、4.知の資産の持続的創出を挙げている。また、これを実現するための基本方針として、先を見通し戦略的に手を打っていく力(先見性と戦略性)とどのような変化にも的確に対応していく力(多様性と柔軟性)の両面を重視するとした上で、政策の4本柱として以下を掲げている。

  • 1)未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組
     自ら大きな変化を起こし、大変革時代を先導していくため、非連続なイノベーションを生み出す研究開発を強化し、新しい価値やサービスが次々と創出される「超スマート社会」を世界に先駆けて実現するための一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0(※1)」として強力に推進する。
  • 2)経済・社会的課題への対応
     国内又は地球規模で顕在化している課題に先手を打って対応するため、国が重要な政策課題を設定し、課題解決に向けた科学技術イノベーションの取組を進める。
  • 3)科学技術イノベーションの基盤的な力の強化
     今後起こり得る様々な変化に対して柔軟かつ的確に対応するため、若手人材の育成・活躍促進と大学の改革・機能強化を中心に、科学技術イノベーションの基盤的な力の抜本的強化に向けた取組を進める。
  • 4)イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築
     国内外の人材、知、資金を活用し、新しい価値の創出とその社会実装を迅速に進めるため、企業、大学、公的研究機関の本格的連携とベンチャー企業の創出強化等を通じて、人材、知、資金があらゆる壁を乗り越え循環し、イノベーションが生み出されるシステムの構築を進める。

 これら4本柱の取組を進めていくに際して、科学技術外交とも一体となり、戦略的に国際展開を図る視点が不可欠であるとしている。
 また、第5期基本計画の進捗及び成果の状況を把握していくために、主要指標、目標値を定め、その達成状況を把握することにより、恒常的に政策の質の向上を図っていくとしている。
 政府研究開発投資目標については第2期基本計画以降達成できておらず、この10年程度は我が国の政府研究開発投資の伸びが停滞している状況にある。第5期基本計画では、官民合わせた研究開発投資を対GDP比の4%以上とすることを目標とするとともに、政府研究開発投資について、平成27年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」との整合性を確保しつつ、対GDP比の1%にすることを目指すこととした。期間中のGDPの名目成長率を平均3.3%という前提で試算した場合、第5期基本計画期間中に必要となる政府研究開発投資の総額の規模は約26兆円となる。


  • ※1 Society 5.0とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新たな経済社会であり、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ、経済的発展と社会的課題の解決を両立し、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる、人間中心の社会をいう。

第2節 総合科学技術・イノベーション会議

 総合科学技術・イノベーション会議は、内閣総理大臣のリーダーシップの下、我が国の科学技術政策を強力に推進するため、「重要政策に関する会議」として内閣府に設置されている。我が国全体の科学技術を俯瞰(ふかん)し、総合的かつ基本的な政策の企画立案及び総合調整を行うことを任務として、議長である内閣総理大臣をはじめ、関係閣僚、有識者議員等により構成されている(第2‐1‐1表)。
 また、総合科学技術・イノベーション会議の下に、重要事項に関する専門的な事項を審議するため、平成29年度は、重要課題専門調査会等の五つの専門調査会を設けている(第2‐1‐2図)。

 第2‐1‐1表 総合科学技術・イノベーション会議議員名簿

 第2‐1‐2図 総合科学技術・イノベーション会議の組織図

1 平成29年度の総合科学技術・イノベーション会議における主な取組

 総合科学技術・イノベーション会議では「科学技術イノベーション総合戦略2017」(平成29年6月2日閣議決定)の策定、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP(※2))」及び「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT(※3))」の運営など、政策・予算・制度の各面で審議を進めてきた。
 特に、平成29年度は、平成29年12月25日、総合科学技術・イノベーション会議において、内閣総理大臣から、統合的かつ具体的なイノベーション戦略を、内閣官房長官、内閣府特命担当大臣(科学技術政策)を中心に、関係閣僚と連携して、平成30年夏を目途に策定するように指示を受けたことから、平成30年1月30日、内閣官房長官を議長とし、関係閣僚を構成員とするイノベーション戦略調整会議を開催することとした。
 また、平成30年2月2日、第1回イノベーション戦略調整会議において、内閣総理大臣補佐官をチーム長とし、各会議事務局や各省の幹部を構成員とする科学技術・イノベーション政策強化推進チームを開催することとし、統合イノベーション戦略を策定するための体制を整備した。


  • ※2 Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program
  • ※3 Impulsing PAradigm Change through disruptive Technologies program

コラム2‐1 明治以降の主な科学技術の成果

 明治初期、新政府が誕生したものの、我が国の国際的な立場は依然として弱く、欧米先進国と同様な独立国家を築くことが当時の命題であった。富国強兵のスローガンのもと、新政府は積極的に先進技術を取り入れることで産業力及び軍事力の強化を目指した。これらの先進技術は留学生の派遣やお雇い外国人によってもたらされた。日本の鉄道の父と呼ばれる井上勝は、英国で鉄道技術を学び、帰国後は鉄道庁長官等として我が国の鉄道事業の振興に貢献した。明治3年から、お雇い外国人の技術的指導の下で鉄道建設が進められ、明治5年には我が国初の鉄道が新橋‐横浜間に開通した。主として英国から導入された鉄道技術については、その後、我が国独自の改良が行われ、現在では世界に誇る社会インフラ技術となった。
 明治30年頃になると、工部省や内務省の現業工場の民間への払い下げにより民間資本による産業が発展した。初めは繊維工業などの軽工業が発展し、明治40年頃からは造船業、製鉄業、石炭産業、電力事業などの重工業が発展し始めた。
 大正時代に入ると、第1次世界大戦の影響により、我が国は輸出の急増、海運の好況など空前の好景気を迎えた。国策上重要な産業の育成を目指して理工系の人材が大量に養成され、戦後の科学技術を支える基礎となった。大正11年、農学者の高橋克己が世界で初めてビタミンAの抽出に成功すると、量産化技術が確立され、昭和33年、我が国はビタミンAを含む各種治療薬(夜盲症・眼球乾燥症・角膜軟化)で生産量、品質、技術面において世界トップとなり、世界シェア60%を占めた。
 戦後、昭和31年の科学技術庁設置や昭和34年の科学技術会議設置の時期から、政府のイノベーション政策がインバウンド型のオープンイノベーション政策から自主技術開発にシフトした。スマートフォンやノートPC等、現在では幅広い電子・電気機器に欠かせないリチウムイオン電池は、吉野彰氏により基本概念が確立され、平成3年に我が国が初めて実用化に成功した。一時期は我が国の主要電池メーカーが市場を席巻し、世界シェアの90%を占めた。
 高度経済成長期には公害等の社会問題が顕在化したことなどを受け、規制の導入、環境基準の設定等が行われた。その結果、脱硫などの公害対策や省エネ対策など社会問題の克服に貢献する科学技術も発展してきた。2014年にノーベル賞を受賞した青色発光ダイオードの発明(赤﨑勇氏、天野浩氏、中村修二氏ら)により、白色LEDが実現可能となり、我が国では特に、低消費電力光源として東日本大震災後の電力危機以降、急速に普及している。LED照明は、携帯電話やテレビなどの電化製品や、栄養価の高い野菜を栽培するための農業技術などにも利用されており、社会の中の様々な場面で活用されている。その他、昭和42年の本多健一氏、藤嶋昭氏による酸化チタンの光触媒作用(ホンダ‐フジシマ効果)の発見は、その後の数十年の研究を経て、耐候性に優れたセルフクリーニング技術として確立され、自動車の窓ガラスやミラー、建物の外壁、病院の抗菌タイルなどに広く利用されている。現在では、がん治療などの医療分野や、「人工光合成」と呼ばれるクリーンエネルギー技術への応用に向けた研究が進められている。
 近代、我が国は外国からの技術導入により経済発展を目指してきたが、この150年間、様々な我が国独自の技術が世界で広く利用され、社会問題の解決に貢献してきた。今後も、我が国が目指すSociety 5.0の実現やSDGsの達成に我が国の科学技術が貢献し、世界に存在感を示していくことが期待されている。

 明治初期の新橋機関庫
 明治初期の新橋機関庫
 提供:鉄道博物館

 LED照明で照らされる米ニューヨーク・グランドセントラル駅
 LED照明で照らされる米ニューヨーク・グランドセントラル駅
 提供:東芝ライテック株式会社

 酸化チタン光触媒でコーティングされた東京駅のグランルーフ
 酸化チタン光触媒でコーティングされた東京駅のグランルーフ
 提供:東京大学

2 科学技術関係予算の戦略的重点化

 総合科学技術・イノベーション会議は、政府全体の科学技術関係予算を重要な分野や施策へ重点的に配分し、基本計画や科学技術イノベーション総合戦略の確実な実行を図るため、予算編成において、科学技術イノベーション政策全体を俯瞰(ふかん)し関係府省の取組を主導している。

(1)科学技術に関する予算等の配分の方針

 総合科学技術・イノベーション会議は、中長期的な政策の方向性を示した基本計画の下、毎年の状況変化を踏まえ、科学技術イノベーション総合戦略において、その年度に重きを置くべき取組を示し、それらに基づいて政府全体の科学技術関係予算の重要な分野や施策への重点的配分、政策のPDCAサイクルの実行等を図っている。

(2)戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の推進

 SIPでは、総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省・分野の枠を超えたマネジメントにより、各課題を強力にリードする11名のプログラム・ディレクター(PD)を中心に産学官連携を図り、基礎研究から実用化・事業化までを見据えて一気通貫で研究開発に取り組む。また経済成長の原動力として、社会を飛躍的に変える科学技術イノベーションを強力に推し進めていくものである。SIPの実施に当たっては、総合科学技術・イノベーション会議が定める方針の下で、内閣府に計上する「科学技術イノベーション創造推進費」(平成29年度:500億円)を重点配分する。なお、健康医療分野に関しては、健康・医療戦略推進本部の下で推進する。
 SIPでは、社会的課題の解決や産業競争力の強化、経済再生に資する以下の11課題が選定され、最終年度である平成30年度を迎える。

  • 革新的燃焼技術
     乗用車用内燃機関の最大熱効率を50%に向上する革新的燃焼技術を持続的な産学連携体制で実現。
  • 次世代パワーエレクトロニクス
     現行パワーエレクトロニクスの大幅な性能向上を図り、省エネ、再生可能エネルギーの導入拡大に寄与し、大規模市場を創出。
  • 革新的構造材料
     軽量で耐熱・耐環境性等に優れた画期的な材料開発及び航空機等への実機適用を加速し、日本の部素材産業競争力を維持・強化。
  • エネルギーキャリア
     再生可能エネルギー等を起源とする水素を活用し、クリーンかつ経済的でセキュリティーレベルも高い社会を構築。
  • 次世代海洋資源調査技術
     海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト等の海洋資源を高効率に調査する技術を世界に先駆けて確立し、海洋資源調査産業を創出。
  • 自動走行システム
     次世代都市交通への展開を含めた高度な自動走行システムを実現。事故や渋滞を低減、利便性を向上。
  • インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
     予防保全による維持管理水準の向上を低コストで実現。併せて、継続的な維持管理市場を創造するとともに、海外展開を推進。
  • レジリエントな防災・減災機能の強化
     自然災害に備え、官民挙げて災害情報をリアルタイムで共有する仕組みを構築し、予防力、予測力の向上と対応力の強化を実現。
  • 重要インフラ等におけるサイバーセキュリティの確保
     制御・通信機器の真正性/完全性確認技術を含めた動作監視・解析技術と防御技術を研究開発し、重要インフラ産業の国際競争力を強化。
  • 次世代農林水産業創造技術
     農政改革と一体的に、革新的生産システム、新たな育種・植物保護、新機能開拓を実現し、新規就農者、農業・農村の所得増大に寄与。
  • 革新的設計生産技術
     時間的・地理的制約を打破する新たなものづくりスタイルを確立。高付加価値な製品設計・製造を可能とし、産業地域の競争力を強化。

 また、平成29年度補正予算において措置されたSIP第2期においては、補正予算の趣旨である生産性革命を推進するとともに、Society 5.0の実現に向け、引き続き現在のSIPのコンセプト、制度を、基本的に踏襲しつつ、以下に示す12の課題を推進することとしている(第7章第4節4参照)。

  • サイバー空間基盤技術(PRISMサイバー空間基盤技術の中核プロジェクト) 「ビッグデータ・AI(※4)を活用したサイバー空間基盤技術」
  • フィジカル空間基盤技術(PRISMフィジカル空間基盤技術の中核プロジェクト) 「フィジカル領域デジタルデータ処理基盤技術」
  • セキュリティ(サイバー・フィジカル・セキュリティ) 「IoT社会に対応したサイバー・フィジカル・セキュリティ」
  • 自動走行 「自動運転(システムとサービスの実用化)」
  • 材料開発基盤 「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」
  • 光・量子技術基盤 「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」
  • バイオ・農業 「スマートバイオ産業・農業基盤技術」
  • エネルギー・環境 「脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム」
  • 防災・減災(PRISM防災・減災技術の中核プロジェクト) 「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」
  • 健康・医療 「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」
  • 物流(陸上・海上) 「スマート物流サービス」
  • 海洋 「革新的深海資源調査技術」

  • ※4 Artificial Intelligence 人口知能

(3)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の推進

 実現すれば産業や社会の在り方に大きな変革をもたらす革新的な科学技術イノベーションの創出を目指し、ハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発に取り組むImPACTを推進した。
 研究の企画、推進、管理等に関して大きな権限・責任を持つ16名のプログラム・マネージャー(PM)が、各々の研究開発計画に基づき、研究開発を実施した。

3 国家的に重要な研究開発の評価の実施

 総合科学技術・イノベーション会議は、内閣府設置法(平成11年法律第29号)第26条第1項第3号に基づき、国の科学技術政策を総合的かつ計画的に推進する観点から、各府省が実施する大規模研究開発(※5)等の国家的に重要な研究開発を対象に評価を実施している。また、同会議は、特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する特別措置法(平成28年法律第43号)第5条に基づき、特定国立研究開発法人の中長期目標期間の最終年度においては、科学技術基本計画等の国家戦略との連動性の観点等から見込評価等や次期中長期目標案に対して意見を述べている。


  • ※5 国費総額約300億円以上の研究開発のうち科学技術政策上の重要性に鑑み、評価専門調査会が評価すべきと認めたもの。

(1)大規模研究開発の事後評価(平成29年4月21日決定、通知)

 平成15年に総合科学技術会議が事前評価を実施した大規模研究開発「アルマ計画」(文部科学省)について、事業が終了したことを踏まえ、総合科学技術・イノベーション会議において事後評価を行い、評価結果について事業を所管する文部科学大臣に通知した。

(2)「総合科学技術・イノベーション会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価について(平成17年10月18日決定)」の改定(平成29年7月26日一部改正)

 総合科学技術・イノベーション会議は、「総合科学技術・イノベーション会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価について」の一部改正(平成29年7月26日付)を行った。

(3)大規模研究開発の事前評価(平成29年12月25日決定、通知)

 平成30年度予算の概算要求において、経済産業省が新たに実施することとした大規模研究開発「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発事業」について、総合科学技術・イノベーション会議において事前評価を行い、評価結果について事業を所管する経済産業大臣に通知した。

(4)大規模研究開発の中間評価(平成29年12月25日決定、通知)

 平成23年度から開始された大規模研究開発「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業費補助金」について、新たな研究開発ステージの段階に入ることを踏まえ、総合科学技術・イノベーション会議において中間評価を行い、評価結果について事業を所管する経済産業大臣に通知した。

(5)特定国立研究開発法人の中長期目標期間終了時の見込評価等に対する総合科学技術・イノベーション会議の意見(平成29年12月1日決定、通知)

 平成29年度に終了する理化学研究所の中長期目標期間終了時の見込評価等に対する総合科学技術・イノベーション会議の意見を決定し、当該法人を所管する文部科学大臣に通知した。

(6)特定国立研究開発法人の次期中長期目標(案)に対する総合科学技術・イノベーション会議の意見(答申)(平成30年2月23日決定、答申)

 文部科学大臣から諮問のあった理化学研究所の次期中長期目標案(平成30年4月~平成37年3月)に対し、総合科学技術・イノベーション会議の意見を答申した。

4 専門調査会等における主な審議事項

(1)官民投資拡大を促進する重点領域の設定に向けた取組

 「科学技術イノベーション官民投資拡大イニシアティブ〈最終報告〉」において示された、平成30年度に創設予定の「科学技術イノベーション官民投資拡大推進費」に係る研究開発投資ターゲット領域について、平成29年2月より、科学技術イノベーション官民投資拡大推進費ターゲット領域検討委員会において、検討を行い、同年4月、平成30年度に設定することを前提に準備を進めるターゲット領域として、革新的サイバー空間基盤技術(AI/IoT/ビッグデータ)、革新的フィジカル空間基盤技術(センサ/アクチュエータ/処理デバイス/ロボティクス/光・量子)、革新的建設・インフラ維持管理技術/ 革新的防災・減災技術を決定した。

(2)科学技術イノベーション政策推進専門調査会

 科学技術イノベーション政策推進専門調査会は、第5期基本計画及び科学技術イノベーション総合戦略に沿った政策や施策の確実な推進を図るため、科学技術に関する基本的な政策や施策の推進に係る事項について調査・検討を実施した。

(3)重要課題専門調査会

 第5期基本計画及び科学技術イノベーション総合戦略に掲げられた「Society 5.0」の実現に向けて、共通基盤の構築の推進及び経済・社会的課題の解決を図る取組について、調査・検討を実施した。

(4)評価専門調査会

 平成29年度の大規模研究開発について、事前評価、中間評価及び事後評価を各1件実施し、それぞれの評価結果案を取りまとめた。また、特定国立研究開発法人(理化学研究所)の中長期目標期間終了時の見込評価等や次期中長期目標(案)に対する総合科学技術・イノベーション会議の意見案を取りまとめた。このほか、「総合科学技術・イノベーション会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価について」の改定案を取りまとめた。

(5)生命倫理専門調査会

 ヒト受精胚へのゲノム編集技術を用いる研究についての議論を深めるため、生命倫理専門調査会の下に、「『ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方』見直し等に係るタスク・フォース」を設置し、検討を行い、「『ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方』見直し等に係る報告(第一次)~生殖補助医療研究を目的とするゲノム編集技術等の利用について~」を取りまとめた。引き続き、当該研究についての議論を深めていくこととしている。
 第3節 科学技術イノベーション総合戦略
 総合科学技術・イノベーション会議は、基本計画に定めた中長期的な政策の方向性の下、計画策定後の状況変化等を踏まえ、科学技術イノベーション総合戦略を策定し、各年度に重きを置くべき取組等を示している。平成29年6月には科学技術イノベーション総合戦略2017を策定した(第2‐1‐3図)。
 科学技術イノベーション総合戦略2017は、第5期基本計画を基に、平成29年度から平成30年度において重きを置くべき取組等を掲げている。特に重要な事項を「第1章 重点事項」として取り上げ、第5期基本計画の政策の柱に対応する事項及び科学技術イノベーションの推進機能の強化について第2章から第6章に記載している。

 第2‐1‐3図 科学技術イノベーション総合戦略2017の概要

第4節 科学技術イノベーション行政体制及び予算

1 科学技術イノベーション行政体制

 国の行政組織においては、総合科学技術・イノベーション会議による様々な答申等を踏まえて、関係行政機関がそれぞれの所掌に基づき、国立試験研究機関、国立研究開発法人、大学等における研究の実施、各種の研究制度による研究の推進や研究開発環境の整備等を行っている。
 文部科学省は、各分野の具体的な研究開発計画の作成及び関係行政機関の科学技術に関する事務の調整を行うほか、先端・重要科学技術分野の研究開発の実施、創造的・基礎的研究の充実強化等の取組を総合的に推進している。また、科学技術・学術審議会を置き、同審議会は、文部科学大臣の諮問に応じて科学技術の総合的な振興や学術の振興に関する重要事項について調査審議を行うとともに、文部科学大臣に対し意見を述べること等を所掌している。
 科学技術・学術審議会における主な決定・報告等は、第2‐1‐4表に示すとおりである。
 我が国の科学者コミュニティの代表機関として、210人の会員及び約2,000人の連携会員から成る日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄の下に置かれ、科学に関する重要事項を審議し、その実現を図るとともに、科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させることを職務としている(第2‐1‐5図)。
 日本学術会議においては、「日本学術会議の今後の展望について」(平成27年3月 日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議決定)に基づき、1.政府や社会に対する提言機能の強化、2.科学者コミュニティ内のネットワークの強化と活用、3.科学者コミュニティ外との連携・コミュニケーションの強化、4.世界の中のアカデミーとしての機能強化、に取り組んでいる。

 第2‐1‐4表 科学技術・学術審議会の主な決定・報告等(平成29年度)

 第2‐1‐5図 日本学術会議の構成

 政府や社会に対する提言については、平成29年度に提言を49件、報告を35件公表した(勧告・要望・声明・答申・回答は0件)。また、今後の提言等の公表に向けて、様々な委員会を設置し、審議を行っている(第2‐1‐6表)。
 日本学術会議では、安全保障に関わる事項と学術とのあるべき関係について審議するために設置された安全保障と学術に関する検討委員会において審議を行い、声明「軍事的安全保障研究に関する声明」を平成29年3月24日に、報告「軍事的安全保障研究について」を平成29年4月13日に公表した。さらに、平成30年2月には、大学等の各研究機関において同声明がどのように受け止められているか等を調査するため、科学者委員会においてアンケートを実施した。
 また、ゲノム編集技術を用いた医学領域における基礎研究および臨床応用に関して、我が国の現状を明らかにし、その有用性と倫理的問題点について審議するため、平成28年5月に医学・医療領域におけるゲノム編集技術のあり方検討委員会を設置し、平成29年度までに12回の会議及び公開シンポジウムを実施した。これらの議論を踏まえて、提言「我が国の医学・医療領域におけるゲノム編集技術のあり方」を平成29年9月27日に公表した。
 また、日本学術会議では、協力学術研究団体(2,024団体:平成29年度末時点)等の科学者コミュニティ内のネットワークの強化と活用に取り組むとともに、各種シンポジウム・サイエンスカフェ・記者会見等を通じて、科学者コミュニティ外との連携・コミュニケーションを図っている。
 さらに、国際科学会議(ICSU)をはじめとする45の国際学術団体に、我が国を代表して参画する等、国際学術交流事業を推進している。平成29年度は閣議口頭了解を得て5件の共同主催国際会議を開催したほか、5月に各国アカデミーと共同でとりまとめた「Gサイエンス学術会議共同声明」を内閣総理大臣に提出、6月に「第17回アジア学術会議(SCA)フィリピン会合」、11月に「持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議2017」を開催した。

 第2‐1‐6表 日本学術会議の主な提言等(平成29年度)

2 科学技術関係予算

 我が国の平成29年度当初予算における科学技術関係予算は3兆5,880億円であり、そのうち一般会計分は2兆8,383億円、特別会計分は7,497億円となっている。一般会計のうち、科学技術振興の中心的な経費である科学技術振興費は1兆3,045億円となっている。平成29年度補正予算における科学技術関係予算は3,735億円であり、そのうち一般会計分は3,606億円(うち科学技術振興費は1,513億円)、特別会計分は129億円となっている(平成30年3月時点)。なお、従来、科学技術関係予算は、府省毎の判断に基づいて登録されていたが、平成28年度以降の当初予算について、行政事業レビューシートの記載内容を基に、統一的な基準に基づく再集計を行った。科学技術関係予算(当初予算)の推移は第2‐1‐7表、府省別の科学技術関係予算は第2‐1‐8表のとおりである。

 第2‐1‐7表 科学技術関係予算の推移

 第2‐1‐8表 府省別科学技術関係予算

お問合せ先

科学技術・学術政策局企画評価課

(科学技術・学術政策局企画評価課)

-- 登録:令和元年09月 --