第1章 科学技術政策の展開

 第3部では、平成18年度に科学技術の振興に関して講じられた施策について、第3期科学技術基本計画に沿って記述する。

第1節■科学技術基本計画

 平成18年3月に閣議決定された第3期科学技術基本計画では、世界的な科学技術競争の激化、少子高齢化の進展、安全と安心の問題や、環境問題等の地球的課題への科学技術の役割に対する国民の期待の高まりと、他方で見られる国民の科学技術への関心の低下を踏まえて、「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」、「人材育成と競争的環境の重視−モノから人へ、機関における個人の重視」の2点を基本姿勢としている。
 また、第3期基本計画では、第2期基本計画の掲げた三つの理念(人類の英知を生む、国力の源泉を作る、健康と安全を守る)を基本的に継承しながら、社会・国民への説明責任を果たしつつ、科学技術の成果を還元していくという視点に立ち、理念の実現のために科学技術政策が目指すべき具体的な政策目標として六つの大目標を明示している。そしてその実現に向けて、質の高い基礎研究を重視するとともに、国家的・社会的課題に対応した研究開発については、八つの分野について分野別推進戦略を定めて、計画期間中に集中投資を必要とする「戦略重点科学技術」の選定を行うなど、各分野内の重点化を図ることとしている。また、質の高い研究を層厚く生み出す人材育成と競争的環境の醸成、科学の発展と絶えざるイノベーションの創出に向けた戦略的投資、及びそれらの成果還元に向けた制度・運用上の隘路(あいろ)の解消といった多様な政策課題への挑戦が、今後5年間の科学技術の使命であるとしている。
 さらに、政府研究開発投資について、第3期基本計画期間中も対GDP比率で欧米主要国の水準を確保することを求めており、この場合、期間中の総額の規模を約25兆円とすることが必要であるとしている(第3期基本計画期間中に政府研究開発投資の対GDP比率が1パーセント、同期間中のGDPの名目成長率が平均3.1パーセントを前提としている。)(第3-1-1図)
 毎年度の予算編成に当たっては、今後の社会・経済動向、科学技術の振興の必要性を勘案するとともに、厳しい財政事情を踏まえ、基本計画における科学技術システム改革の着実な実施により政府研究開発投資の効果を最大限に発揮させることを目的として、第3期基本計画に掲げる施策の推進に必要な経費の確保を図っていくこととしている。

第3-1-1図 第3期科学技術基本計画(平成18〜22年度)の概要

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