第3章 研究成果関連の動向

 論文発表数、特許の出願・登録、技術貿易、ハイテク製品貿易等は、科学技術に関する研究活動の成果を示す。その状況は、当該国の研究活動の活力及び水準を反映し、関連統計は研究開発水準・技術力を示す重要な指標と考えられている。
 以下に主要国のこれらの動向と我が国の状況を述べる。

第1節■論文

 論文は研究開発、特に基礎研究の成果の現れの一つといえる。論文については、研究者の常用している言語、執筆された言語等により、単純な比較はできないが、ここではThomson Scientific社の作成したデータベース(注)をもとに、発表数及び被引用回数の各国比較を行う。

(主要国の論文数、被引用回数の動向)

 1981年(昭和56年)から2005年(平成17年)の間に世界の主要な科学論文誌に発表された論文のうち、我が国の論文数及び被引用回数の占有率は第2-3-1図に示すとおりである。1981年(昭和56年)の我が国の世界に占める論文数占有率は、米国、英国、ドイツに次いで世界第4位であったが、1990年(平成2年)に英国を抜いて以来、世界第2位の地位を守り続けている。
 また、優れた論文は、一般に他の論文に引用される回数が多くなる傾向にあることから、被引用回数は論文の質を表す指標の一つと考えることができる。我が国の論文を発行年から2005年までに引用された回数で見ると、発行年が新しくなるほど占有率は拡大する傾向にあるが、主要国の中での順位は1990年(平成2年)以来、米国、英国、ドイツに次ぐ順位で推移しており、論文数の占有率と比較しても低い水準にとどまっている(第2-3-1図)

第2-3-1図 主要国の論文数占有率と被引用回数占有率の推移

(論文の相対被引用度)

 1論文当たりに引用される平均回数は、相対被引用度と呼ばれる。我が国の値は1を下回っており、主要国と比較しても低い位置にあることが分かる。1981年(昭和56年)以降、日本や米国においては、相対被引用度がほぼ横ばいであるのとは対照的に、他の主要国では伸びが比較的大きく、特に英国、ドイツ、フランスにおいては近年その伸びは堅調である(第2-3-2図)

第2-3-2図 主要国の論文の相対被引用度の推移

 また、我が国の相対被引用度を分野別に見ると、宇宙科学、免疫学、材料科学、動植物学及び物理学分野が1を超えているものの、全体的に低調な結果となっている(第2-3-3表)

第2-3-3表 我が国の分野別相対被引用度

(分野別論文数)

  第2-3-4図は、主要国の2001年(平成13年)から2005年(平成17年)までの論文数を、分野別に示したものである。ライフサイエンス分野と言われる医学、生物学、農学・動植物学などの研究分野の論文割合について、米国、英国では全体の6割程度と比較的高くなっているのに対し、日本、ドイツ、フランスにおいては、ライフサイエンス分野の論文は5割程度で、物理学、化学分野の占める割合が3割程度と比較的高くなっていることが特徴である。

第2-3-4図 主要国の分野別の論文数割合

 また、第2-3-5図は、2001年(平成13年)から2005年(平成17年)において、我が国の論文数の世界に占める割合を分野別に示したものである。材料科学、物理学、薬理学、化学などの分野では、全分野の平均を上回っており、相対的に研究が盛んであると推測される。

第2-3-5図 我が国の分野別の論文数占有率

(論文の相対比較優位)

 分野別の論文生産の変化を見る指標として、相対比較優位という指標がある。これは、当該国の論文数の分野別割合を、世界全体の分野別割合で除した値であるが、1であれば、その分野に対する特化の程度が世界標準程度であることを意味する。第2-3-6図において、我が国の論文の相対比較優位の推移を示しているが、化学の値が大きく減少傾向にある一方、地球/宇宙がゆるやかな伸びを示してきていることが特徴である。

第2-3-6図 我が国の論文の分野別の相対比較優位の推移

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