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第1部   安定成長下における技術開発推進への課題
第3章  技術開発推進への課題
第1節  技術開発の効率的な推進


技術開発を進める上で,直接影響を与える主な要因を体系化して見ると第1-3-1図のようになる。

技術開発を進めていく上での主要な投入資源は資金と人材であり,この両者の充実を図ることを基本としなければならない。しかしながら今後は,既に述べてきたように研究投資面の制約が続くことが予想され,一方,人材面においても我が国の研究者数は,総数ではソ連,アメリカに次いで第3位,人口一万人当たり研究者数でも,西ドイツ,フランス,イギリスなどに比べてかなり多く,ほぼアメリカと並んでおり( 第2部第2-1-17図参照 ),量的にはかなりの水準に達していることから,また,近時の社会経済情勢の変化から考えて,今後,従来以上に大幅な研究者数の増加を期待することは困難であろう。

このため今後,研究投資に対する制約に対処し,効率的な技術開発を進めるためには,まず,優秀な人材に期待されるところが大きい。すなわち,我が国は従来,アメリカなどと比較すると独創的な技術開発が少ないと言われているが,海外技術への依存から脱して独自の技術開発を進めるため,また,近年,ますます高度化,複雑化し,かつ社会とのつながりが緊密化しつつある科学技術に対処するため,今後は研究者の資質の一層の向上を目指して,高度の専門能力を有し,かつ創造力に富んだ人材,既存の技術をシステム化して効果的にまとめ上げ,それを適切に社会に適用していける能力を持ち,異分野にも深い造詣を有する総合性に富む人材など,それぞれの分野に要求される資質に優れた多様な人材の育成を進めていくことが要請される。

次に重視すべき点は研究投資及び人材などの投入資源の最適配分と効率的運用を図り,その効果を最大限に発揮させることである。投入資源の最適配分を図るためには,研究開発の重点目標とその適切な実施手段を明確にすることである。研究開発によって一定の成果を生むまでには長期の懐妊期間を必要とする。一方,科学技術をとりまく社会経済情勢等の変化は,一層流動的となっており,社会経済からの要請とこれにこたえるべき科学技術との間に生ずる時間的なずれが問題の解決を遅らせている場合も少なくない。このため,国は,国民の要請,社会経済の動向等の長期的な将来展望の上に立って,科学技術全般にわたる長期的かつ基本的な計画を策定するとともに,各組織においても長期的な研究,目標を明確にし,これに従って計画的,重点的な技術開発を進めることが重要である。また,投入資源の効率的運用を図るためには,合理的な研究実施体制及び研究管理体制の整備が重要である。一般的な傾向として,我が国の場合は,研究開発実施機関が分散し,相互の連携が十分ではないと言われているが,今後,ますますその重要性を増してくる総合的,学際的な分野の研究開発を進める上で,各分野,各機関の連携の強化が重要なことは言うまでもないところであり,また,研究企画,研究評価などの研究管理機能の充実を図ることが重要である。

第1-3-1図 技術開発の推進システム

更に,技術開発の支援環境としての科学技術情報の重要性である。科学技術の発展とともに蓄積されている科学技術情報も膨大なものとなっているが,これらの情報の流通の円滑化を図り,既存の知識・技術の高度な活用を図ることは,単に研究開発の重複を避けることのみならず,複雑・多様化する科学技術の効率的な推進を図る上で効果的であり,今後,一層の科学技術情報流通体制の整備を進めることが要請される。

さて,以上のように,今後,我が国が限られた研究投資の申で効率的な技術開発を進めていく上で,重視すべき主な課題を述べてきたが,これらはいずれも,我が国が技術開発を進めていく上で基本となるべきものであり,その重要性については従来から繰り返し指摘されており,また,これらの実現を図る上での具体策は既に科学技術会議の諮問第6号「長期的な展望に立った総合的科学技術政策の基本について」に対する答申においても提示されているところである。

技術開発力はその国の社会経済,歴史,国民性などにも根ざすものであり,その向上は一朝一夕にして成るものではない。特に,我が国は第1章においても指摘してきたように,長年にわたって海外からの技術導入に依存してきた結果,独創的な技術開発に弱いという体質が根強く残っており,今後,これに対応する努力を長期にわたって積み重ねることによって徐々に技術開発力の培養に努めていくことが必要となっている。

本章ではこのような持続的な努力と併わせて当面,即効性のある一つの対応措置として特に国内に蓄積されている技術の有効利用とその手段である技術移転の重要性について指摘したい。


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