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第1部   安定成長下における技術開発推進への課題
第2章  科学技術活動の停滞
第1節  技術導入の停滞傾向とその要因
2  外国技術導入の停滞傾向の要因


近年における外国からの技術導入の停滞傾向が,今後も続くとすれば,従来の我が国における科学技術水準の向上が外国技術によって大きく支えられてきたことから見て,安定成長下における科学技術に対する国民の期待にこたえることのできる十分な技術進歩を望むことができなくなるおそれがあると言えよう。そのためには,国内における技術開発の促進を図ることが重要となってくるが,ここでは技術導入の停滞傾向についてその要因を分析し,問題点の所在を明らかにすることを試みる。そこで,技術導入停滞傾向の要因を,景気変動に伴うより短期的な経済的側面,構造的な技術的側面及び対外的側面の三つの観点から分析することとする。


(1) 経済的要因

技術導入の停滞傾向をもたらしている経済的要因としては,これまで積極的に優秀な外国技術を取り入れてきた民間企業が,国内の経済情勢を反映して,技術導入の意欲を減退させていることを挙げることができる。この状況をは握するため,設備投資の停滞及び個人消費の低迷が技術導入停滞傾向とどのように関連しているかについて見ることとする。

まず,民間企業の設備投資意欲の減退が技術導入の停滞と結びついていることを指摘することができる。第1-2-4図は民間企業の設備投資額(実質ベース:昭和45年価格)の推移と,設備投資動向に大きな影響を受ける「一般機械」(特に「金属加工機械」)分野における技術導入件数の推移を示している。これによれば,民間企業の設備投資額は48年度まで順調に伸びてきたが,48年度以降は低迷に転じ,51年度もやや上向きになったというものの前年度比3.4%増の微増にとどまっている。一方,「一般機械」分野及び同分野のうちの「金属加工機械」の技術導入件数の推移は,導入技術を組み込んで設備投資を行うというパターンから予想されるとおり,47年度をピークに停滞傾向に転じている。特に「金属加工機械」では,技術導入件数が47年度から51年度までの4年間に65件から19件へと3分の1以下に大幅に落ち込んでいる。

第1- 2 - 4図 設備投資の停滞と技術導入

また,個人消費の低迷は,消費関連の技術導入の意欲を減退させていると言えよう。第1-2-5図に示すとおり,実質ベースの個人消費支出の対前年度伸び率の推移を見ると,耐久消費財ブームに象徴される旺盛な需要に支えられて,昭和47年度までは伸び率が7〜10%台の高水準を保ってきたが,48年度以降は3〜5%台と伸びが低くなった。この個人消費支出の動向を反映して,消費関連( 「服飾・デザイン」,「雑貨・家具・化粧品」,「レジャー・楽器関係」,「家庭電化製品」の諸分野)の技術導入件数も平行的に推移しており,40年代中頃まで大幅な伸びを示したが,47年度を境にして,停滞傾向に転じている。

第1-2-5図 消費の低迷と技術導入


(2) 技術的要因

技術導入の停滞傾向をもたらしている技術的要因としては,我が国の技術水準が着実に向上しつつあること,及び海外における技術開発が停滞しつつあることによって,我が国と主要国との技術格差が縮小していることを挙げることができる。以下,この要因について考察を進めていくこととするが,国内における技術水準の向上については,前章で詳述したとおりであるので,ここでは海外における技術開発の停滞の動向を探ることとする。海外の動向については,我が国に大きな影響を及ぼすアメリカの技術開発の動向と主要国の特許出願活動について述べる。

主要国の中で最大の技術供与国であるアメリカの技術開発の動向に,近年,停滞傾向が認められる。我が国の技術導入に占めるアメリカの割合は,件数で約5割,対価支払額で約6割となっており,アメリカへの技術的な依存関係が非常に大きい。このため,アメリカの技術開発の停滞傾向は,我が国の技術導入の動向に大きな影響を及ぼすことになる。

アメリカにおける技術開発の停滞を物語るものとして,まず,アメリカの実質ベースの研究投資が1970年代に入り停滞傾向にあることを指摘することができる( 第2部第2-1-2図参照 )。

更に第1-2-6図の示すところによれば,アメリカにおいて集積回路,抗生物質などのように新しい原理,原則に基づく革新型の技術進歩が減少していることが認められ,技術開発の成果面でも質的に停滞傾向にあることをうかがい知ることができる。

第1-2-6図 アメリカにおける革新型技術の減少傾向

次に,特許出願活動のうち外国へ出願される特許は,質的に精選されることから,優れた研究開発成果としてとらえることができるので,主要国における対外国特許出願の動向を見ることとする。

対外国出願にも対日本出願にも似たような傾向が見られ,1970年代におけるアメリカの大幅な低下傾向と他の主要国のゆるやかな低下傾向が認められる( 第2部第2-3-15図 , 第2-3-19図 参照)。このことは,アメリカのみならず他の主要国においても優れた研究開発成果の出現が停滞傾向にあり,我が国に対しても優秀な技術が供与されにくくなりつつある状況にあると言えよう。我が国においては,第1-2-7図に示すように外国人による特許出願件数と技術導入件数との間に明らかな相関関係(相関係数0.958)が認められ,第1-2-8図に示すとおり,外国人による特許出願件数の1970年代に入ってからのゆるやかな低下傾向が,外国からの技術導入を減少させる方向に作用していると見ることができる。

第1-2-7図 我が国における外国人による特許出願件数と外国からの技術導入件数との相関

第1-2-8図 外国人による特許出願活動の停滞と技術導入


(3) 対外的要因

ここで取り上げる対外的要因に基づく外国からの技術導入の停滞傾向とは端的に言えば「技術導入をしたいという魅力を感じる優秀な外国技術はあるが,付帯条件が厳しいとか,相手方に技術を供与する意志がないなどの理由により,技術導入が困難な状況になりつつあること」である。このような状況を,技術導入に伴う付帯条件から見ることとする。

諸外国からの技術導入に伴う付帯条件(対価の支払条件,輸出市場の制限など)及びこれに準ずる要求(クロスライセンス契約の要求,株式取得の要求など)のうち,輸出市場の制限の状況とクロスライセンス契約件数の推移から,導入条件が厳しくなりつつあることを読み取ることができる。まず,輸出市場の制限については第1-2-9図に示すとおり,導入技術に基づく製品の販売先は「日本のみ」に限定し,輸出禁止を伴うものの割合が漸増し,昭和43年度においては全体の10%にすぎなかったものが,51年度には39%と全体の約4割を占めるに至っており,明らかに導入条件が悪化している。また,クロスライセンス契約(一方的な技術導入ではなく,技術を相互に供与し合う技術援助契約)件数は,第1- 2-10図に示すとおり,増減を繰り返しながらも傾向的には増加している。これは優秀な技術を供与できる我が国の技術開発力の向上を裏付けると同時に,一方的な技術供与ではなく見返りの技術を要求するといった外国側の技術貿易に関する厳しい姿勢をうかがい知ることができる。

第1-2-9図 技術導入に伴う輸出市場の制限状況の推移


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