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第2部   科学技術活動の動向
第1章  研究活動の動向
1  研究活動の概要
(1)  研究費


注3)

(研究費総額)

研究費総額は,研究活動の動向を知るために先ず必要となる主要指標の一つである。

我が国の昭和49年度における研究費総額は2兆4,214億円 注4) と遂に2兆円の大台に乗り,前年度の1兆9,809億円と比較して22.2%増加した(第2-1-1図)。この増加率は著しい増加を示した42〜45年度の年平均増加率 注5) 25.4%には及ばないものの,40〜48年度における年平均増加率21.2%に匹敵するものである。

しかし,このような大幅な伸びも近年における物価上昇が著しい経済情勢を考慮すれば,実質ではかなり問題を含んでいる。すなわち,昭和45年度を基準として研究費に占める人件費,原材料費,有形固定資産購入額などについて,インフレによる価格の上昇を示す指数データを求めて研究費のデフレータを作成し,実質研究費を試算すると,45年度以前は,研究費統計に現われた数字(名目研究費)と実質研究費の差はそれほど大きくはないが,48年度以降は,名目研究費と実質研究費とのあいだに著しい開きが生じ始め,49年度には遂に実質研究費の増加率はむしろわずかにマイナスの状態を示すに至っている (第2-1-1図)

このことは,後で述べるように研究者数が増加しているにもかかわらず実質研究費が増加しないために,研究者1人当たりの研究費の実質分がかなりの漸減傾向をたどるといった現象を引き起こしている。なお,参考までにアメリカの研究費の名目と実質の推移を見ると,名目分は増加の一途をたどっているものの,実質分は1967年頃(昭和42年頃)を境に低下の傾向にある (第2-1-2図)

主要国の研究費を比較して見ると,アメリカ,ソ連が群を抜いており,少し離れて西ドイツ,日本,フランス,イギリスが一群となって続いている。なかでも我が国の研究費の伸びは著しく,昭和44〜45年度頃にイギリスとフランスを追い抜き,最近ではやはり伸びの著しい西ドイツに迫りほとんど肩を並べているといった状況にある (第2-1-3図)

次に,研究費の国民所得に占める割合を見ると,昭和49年度は2.15%で,前年度の2.16%とほぼ同じ程度である。ここ数年来の傾向としては着実に増加しているものの,科学技術会議の諮問第5号「1970年代における総合的科学技術政策の基本について」に対する答申のなかで,研究費の国民所得との比率は今後の研究投資の必要性及び欧米諸国の動向を考慮して,我が国は3%を目指すべきであるとし,1970年代のできるだけ早い時期に2.5%を達成することを目標としたが,最近の伸び率の傾向から見てこの目標を達成することは容易でない状況にある (第2-1-4図)

この比率を主要国について見ると,ほとんどの国が2%以上となっている。我が国も1960年代の1%台に比較すれば官民の努力により昭和45年度以降に2%台に乗って欧米諸国の仲間入りをし,かなり向上はしているが,西ドイツ,アメリカ,ソ連などに比べれば,我が国はまだまだ努力が必要であることが明らかである (第2-1-5図)

第2-1-1図 我が国の研究費の推移

第2-1-2図 アメリカの研究開発資金の名目と実質の推移

第2-1-3図 主要国における研究費の推移

第2-1-4図 研究費の対国民所得比,増加率及び指数

第2-1-5図 主要国の研究費の国民所得に対する比率


注1)  人文科学を除く自然科学の研究活動に限る。


注2)  「会社等」とは,法人である会社(資本金100万円以上のもの)及び営業を主たる業務とする特殊法人を言う。会社等に含まれる特殊法人は,国鉄,電電公社,NHK,日本道路公団などである。

「研究機関」とは,国営,公営及び私営(財団法人,社団法人のみ)の研究機関及び研究開発を主たる業務とする特殊法人を言う。研究機関に含まれる特殊法人は,日本原子力研究所,理化学研究所などである。

「大学等」とは,国・公・私立の大学・短期大学・高等専門学校及び国立養護教諭養成所などを言う。


注3)  研究費とは,会社等,研究機関又は大学等の内部で研究のために使用した経費で,支出額と費用額の二つの考え方があるが,本書では支出額を用いている。支出額とは,研究のために要した人件費,原材料費,有形固定資産購入額,その他の経費をいい,費用額とは,支出額のうちの有形固定資産購入額のかわりに有形固定資産減価償却費を計上した額をいう。


注4)  我が国の人文科学部門の研究費総額を参考までに述べると,昭和49年度は2,947億円で自然科学部門の大体8分の1の割合となっている。


注5)  平均年率(r)の算出は,等比級数的推移に適用しうるR=(1+r)n による。Rは最高年次と最低年次の値の比(又は指数)で,nはその年次の差である。

(組織別使用研究費)

使用研究費を組織別に見ると,会社等の占める割合が高く,昭和49年度においては65.6%に当たる1兆5,891億円となっており,次いで大学等が18.4%に当たる4,452億円,研究機関が16.O%に当たる3,871億円となっている( 第2-1-6図 , 第2-1-7図)

また,前年度に対する増加率を見ると,最も高い数字を示しているのは大学等で24.3%,次いで会社等の22.1%,研究機関の20.7%となっている。

(研究費と負担割合)

我が国の研究費を政府(国及び地方公共団体)と民間との負担割合で見ると,昭和49年度は政府26.5%(6,411億円),民間73.5%(1兆7,788億円)である (第2-1-8図 , 第2-1-1表)

民間負担分が多いのは,近年,特に民間企業において研究開発が重要視され,多くの研究費を投入する必要性が認識されている結果を示すものである。しかし営利活動に直接結びつかないような基礎科学の研究,低生産性部門における研究開発,民間企業の負担能力を超えるような大規模又は先導的・基盤的科学技術の研究開発,社会開発関連の研究開発などの重要な分野は今後も増大すると考えられ,このような分野に対しては政府が手を差しのべ積極的に育成していくことが重要であり,この意味からも政府の役割はますます増大するものと考えられる。したがって政府の負担割合を今後も拡充する努力が続けられるべきである。

第2-1-6図 研究費使用額の組織別推移

第2-1-7図 研究費使用額の組織別割合の推移

昭和49年度における研究資金の負担者から使用者への流れを見ると,政府負担の研究費の大部分が,国公営の研究機関と国公立の大学等の公的な組織の内部で使用され,また民間負担の研究費はほとんどが会社等をはじめとする民営の組織の内部で使用されており,政府から民間への研究費の流れは,民営の研究機関と私立大学について僅かに見られるだけで,全体としては非常に少ないことがわかる (第2-1-1表)

主要国における研究費の使用割合と負担割合を見るために,経済協力開発機構(OECD)の統計手法(フラスカチ・マニュアル)における分類方式すなわち産業,政府,民間非営利研究機関,高等教育(大学)に沿ってまとめて見ると,まず,産業の使用割合はアメリカ69.O%(1972年),フランス59.4%(1973年),西ドイツ64.7%(1973年)となっており,我が国の産業の使用割合65.6%(1974/75年)とほぼ同程度である (第2-1-2表)

一方,政府の負担割合は,アメリカ54.O%(1973年),フランス56.9%(1973年),西ドイツ47.1%(1973年),イギリス48.7%(1972/73年)となっており,我が国の政府の負担割合26.5%(1974年度)よりもいずれも著しく高く,欧米先進国では我が国に比べ政府資金が民間へかなりの割合で流れていることがわかる (第2-1-2表) 。ただし欧米先進国の研究費は,国防研 注1) 究費の占める割合が高いので,これを除いた政府の負担割合を比べてもフランス及び西ドイツは40%台,アメリカ及びイギリスは30%台となるが,国防研究費が少ない我が国の20%台とは,まだ格差がある (第2-1-3表) 。いずれにしても研究投資は一国の社会経済の発展の原動力となるものであり,政府としてもこの点への配慮が必要である。

第2-1-8図 研究費の負担額割合の推移

第2-1-1表 我が国の研究費の使用額割合と負担額割合(昭和49年度)

第2-1-2表 主要国の研究費の使用額割合と負担額割合

第2-1-3表 国防研究費を除いた政府の負担割合

(研究費の費目別構成)

研究費は,人件費,原材料費,有形固定資産(土地・建物及び機械・器具・装置など)購入額,その他の経費から構成されている。これらの費目別構成の割合についてここ10年間の傾向を見ると,人件費が最も高く,次いで有形固定資産購入額,原材料費,その他の経費となっている (第2-1-9図) 。人件費は近年その割合が増加する傾向にあり,昭和48年度までは40%台で半分に満たなかったものが,49年度においては遂に50%を超えた。費目別構成の割合を組織別に見ると,大学等において人件費の割合が特に高く,昭和49年度は60%もの割合を占めている。研究機関ば他に比べて有形固定資産購入額の占める割合が高くなっている (第2-1-9図)

(研究費の性格別構成)

基礎研究,応用研究,開発研究 注2) のいわゆる性格別による研究費構成を見ると,この10年間の傾向は,基礎研究及び応用研究の割合が減少しており,逆に開発研究の割合が増大していることが分かる。昭和49年度においては,基礎研究15.O%,応用研究21.7%となっており,この性格別調査が開始された40年度分以来最低の割合となり,開発研究の方は63.3%と逆にここ10年来最高の割合となっている (第2-1-10図)


注1)政府負担割合は, OECDデータによるが,OECDデータには国防研究費に関するデータが含まれていないので,国防研究費を除いた政府の負担割合は,各国資料(第2-1-3表の注参照)によった。


注2)総理府統計局「科学技術研究調査」で用いている用語で,いわゆる「開発(development)」に当たる。

性格別構成の割合を組織別に見ると,会社等,研究機関,大学等のそれぞれの機関としての性格がはっきりと示されている。すなわち,会社等は企業活動としての立場から開発研究の比率がきわめて高くなっているのに対し,大学等は基礎研究が圧倒的な比率を占めている。研究機関はこの中間的存在を保っており,基礎研究と開発研究の途中に位置する応用研究の比率が比較的高くなっている (第2-1-10図)  これを主要国について見ると,アメリカ,イギリスが開発研究に比較的力を注いでいることが分かる (第2-1-11図)

第2-1-9図 研究費の費目別構成比の推移

第2-1-10図 研究費の性格別構成比の推移

第2-1-11図 主要国の研究費の性格別構成比

(特定目的別研究費)

次いで,原子力開発,宇宙開発,海洋開発,情報処理及び公害防除 注) という5つの目的に使用された研究費について見ると,合計額は,昭和49年度において3,408億円で48年度に比べ17.8%の増加を示した。この合計額は,全研究費の14.1%(前年度14.6%)を占め,研究開発分野の重要な位置を占めている。

研究費の多い順に見ると公害防除が945億円で最も多く,次いで情報処理,原子力開発,宇宙開発,海洋開発の順となっている (第2-1-12図) 。公害防除が前年度に続いて49年度も第1位であるのは環境保全に対する関心が高いことを示している。これらを対前年度増加率の大きいものから見ると,宇宙開発が53.3%増で最も多く,次いで海洋開発35.0%,原子力開発14.6%と続いている。この中で,公害防除と情報処理は48年度において大幅な増加率(65.4%及び61.1%)を示したのに比べ,49年度は11%台となっている。


注)総理府統計局「科学技術研究調査」で用いている用語で,いわゆる「公害防止」に当たる。

第2-1-12図 特定目的別研究費の推移

(研究者1人当たりの研究費)

昭和49年度における研究者1人当たりの研究費は,1,017万円で対前年度増加率で16.4%増となっている。一方,研究費総額の項でも述べたように近年の物価上昇は実質研究費の伸びを抑え,昭和49年度においては増加率がマイナスの状態となっており,このような中で研究者1人当たりの研究費も名目では毎年増加を示しているものの,実質的には第2-1-13図の太い点線で示すように昭和47年度以降はかなりの減少傾向にある。

組織別に見ると,研究機関が1,368万円と最も高く,次いで会社等1,216万円,大学等562万円の順となっている。45年度以前は会社等が最も高く,研究機関がこれに続いていたが,46年度にこれが逆転し,以後研究機関が最も高くなっている (第2-1-13図) 。これは,研究機関のなかの特殊法人における研究費が研究者数に比して高く,特に土地建物及び機械器具などの有形固定資産購入額が多いためである。

第2-1-13図 研究者1人当たりの研究費

主要国における研究者1人当たりの研究費を見ると,西ドイツ2,259万円(1974年),イギリス2,126万円(1969年),フランス1,873万円(1971年),アメリカ1,583万円(1973年)となっており,我が国はソ連とともにまだ低位にあるものと言えよう (第2-1-14図)

第2-1-14図 主要国の研究者1人当たりの研究費の比較

我が国の技術水準の向上は研究開発活動に負うところが大きいが,技術導入の効果が存在することも見逃すことはできない。これを研究費の総額と技術導入支払額の合計額の推移で示すと第2-1-15図のとおりである。

第2-1-15図 研究費と技術導入支払額の合計額

第2-1-4表 国民1人当たり研究費負担額

(その他)

研究費の国民1人当たり負担額を見ると,我が国は昭和49年度(1974年度)においては2万2千円である。これを欧米諸国について見ると,アメリカが3万9千円(1973年),西ドイツ3万5千円(1973年),ソ連2万5千円(1974年)となっている (第2-1-4表)


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