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第1部   科学技術発展の回顧と新たな課題
第1章  科学技術発展の回顧
第2節  科学技術の発展傾向
2  技術開発の対象分野:国民生活に密着した分野における技術発展の萌芽の出現


技術開発の対象分野の変化の傾向を見る一つの方法として,産業界の製品分野別の研究投資動向を分析する方法があるが,製品分野別の研究投資を統計の対象としたのは昭和44年度からであり,比較対象の期間が短いため,大きな変化は認められない (第1-1-2表) 。業種別の研究投資動向を分析する方法もあるが, 後述 (4技術開発の中心的担い手の項) のとおり企業の多角経営化は研究開発分野の多角化となって現れているため適当ではない。そこで一つの試みとして,特許及び実用新案の出願件数の伸び率の変化に着目して,最近における技術開発の対象分野の変化の傾向を分析すると,第1-1-8図のとおりである。これは,昭和41〜43年(出願年)の平均公告件数と昭和46〜48年(出願年)の平均公開件数(公告制度から公開制度への切替えに対応し,所要の補正を加えたもの)の伸び率を示したものである。

第1-1-2表 製品分野別研究投資シエアの推移           (単位%)


特許又は実用新案の出願件数の伸び率の相異により,五つのグループに分けると,次に示すとおり国民生活に密着した分野の特許・実用新案の伸びが高いことをうかがい知ることができる。

(1)  Aグループ:特許・実用新案ともに伸びが著しく,技術進歩が急速なグループである。このグループは,公害防止・環境保全関連分野(汚物の焼却を中心とする「汚物処理」,菌体による浄水装置を中心とする「上水・下水」,排ガス対策を中心とする「内燃機関」,排ガス・廃液処理を中心とする「化学一般」),社会基盤の強化関連分野(オプトエレクトロニクス分野の情報処理通信を中心とする「光学装置」,輸送用の「パイプ」),生活用品・生活環境関連分野(「冷暖房・換気」,空調装置を中心とする「熱交換」,時計を中心とする「時間の測定」,避難・救助を中心とする「防護」,「テレビジョン」)で構成されている。

第1-1-8図 特許及び実用新案の出願件数の技術分野別の伸びの状況


(2)  Bグループ:特許・実用新案ともに伸びており,特許の伸びが実用新案の伸びを上回っているグループである。このグループは,生産・流通合理化関連が中心となっている。すなわち,生産の高度化・自動化・省力化・新材料関連分野(生産力向上を目指した人工魚礁を中心とする「水産」,自動化・省力化関連の「工具」,工業用ロボットや立体倉庫を中心とする「移送・扛重」,一連の計測技術,新材料関連の「セラミックス」,エネルギー関連の「原子力」),流通の合理化関連分野(自動販売機を中心とする「貨幣・札類の取扱い・制御」,「容器」,「包装」)などである。これ以外には,公害防止・環境保全関連分野(廃液ろ過,集塵,海上流出油の回収分離を中心とする「破砕・混合・分離」,公害計測を中心とする「材料の分析・試験」),社会基盤の強化関連分野(建材関係の「セメント」,リニア・モータを中心とする「発電・電動」,「水工」,交通信号を中心とする「信号・表示」),生活用品・生活環境関連分野(「清掃・洗濯」,「自転車」,ショッピングカーを中心とする「雑運搬」,液晶や火災報知機を中心とする「信号・表示」,VTRのカセット化や電子楽器を中心とする「音響装置」,スチール製ラックや多目的家具を中心とする「家具・家庭用雑貨」,「運動具・娯楽具」)が含まれている。

(3)  Cグループ:特許・実用新案ともに伸びており,実用新案の伸びが特許の伸びを上回っているグループである。このグループは生活用品・生活環境関連分野(「儀礼・装飾」,「飲食具・食卓用品」,「製本・書類整理」,「文房具」,電気カミソリを中心とする「美粧・理髪・身体の清浄」,ホームソーイングを中心とする「被服」,スキー靴の改良を中心とする「履き物」,電卓を中心とする「電気的ディジタル計算」,医用電子機器や人工臓器を中心とする「治療・衛生」,自動消火機構や誘導加熱調理器を中心とする「加熱」,冷蔵庫を中心とする「冷却・製氷」,「自動車」),社会基盤の強化関連分野(海中タンクや低温液化ガスタンクを中心とする「揚水・噴霧・タンク」,「車両一般」,特殊貨物船や油回収船を中心とする「船舶・潜水」,建築部材や地盤の強化を中心とする「構築」)が中心となっている。これ以外には,生産力向上を目指した施設園芸を中心とする「山林・園芸」,自動化・省力化関連分野の「ポンプ」,「切削・研削」が含まれる。

第1-1-9図 公害防除研究投資の推移

第1-1-10図 流通・消費関連技術及び公害防止関連技術の技術導入の推移

(4)  Dグループ:特許・実用新案ともに小幅な伸びが見られるグループである。このグループでは,金属関係の「冶金・合金」,「鋳造」,「金属の加工」や化学・飲食品関係の「顔料・塗料」,「ゴム・可塑物」,「飲食品・栄養剤」,「飲食品製造機」,重電関係の「送電・配電」,「一般的電気部品」,「電線・ケーブル・配線」,「電気絶縁」,弱電関係の「ファクシミリ」,「電信・電話」,「伝送回路・計数」,「電子管・半導体」,「電気的諸装置」などの分野が目立っている。

(5)  Eグループ:特許・実用新案ともに落ち込みが見られるグループである。このグループでは,繊維関係の一連の分野や化学関係の「無機化合物」,「有機化合物」,「ガラス・ほうろう」,「染料」,「高分子化合物」,「医薬・毒薬」などの分野が目立っている。

なお,産業界における公害防除研究投資の増加傾向 (第1-1-9図) 及び技術導入に占める流通・消費関連技術及び公害防止関連技術のシェアの増加傾向 (第1-1-10図) もこのような国民生活に密着した分野における技術進歩が活発化するきざしにあることを示すものといえよう。


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