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第1部   科学技術発展の回顧と新たな課題
第1章  科学技術発展の回顧
第2節  科学技術の発展傾向
1  技術開発の担い手の国籍:技術導入中心型から技術導入・自主開発混合型へ


戦後間もなく発表された「技術白書」は,我が国の産業がアメリカに比べて技術的に20年の遅れがあると報告した。この技術的ギャップを埋めるために,先進的な外国技術が積極的に導入された。導入の対象となった技術は,戦時から戦後にかけて欧米先進国で開発された新技術(高分子化学,エレクトロニクス,オートメーション,原子力など)だけでなく,戦前既に欧米諸国で一般化されていたが我が国では工業化が遅れていた技術(乗用車,火力発電機など)もかなり含まれており,昭和30年代の経済成長の原動力となった技術革新は,これらの外国技術に負うところが大であった。第1-1-1図に示すように,導入技術によって製造された商品の売上高の全売上高に占める割合は,昭和35年において10.8%にも達しており,特に,化学(19.8%),石油精製(60.5%),ゴム(22.1%),鉄鋼(23.2%),電気機械(33.3%)などの重化学工業部門では,導入技術による貢献が大きかったといえる。

第1-1-1図 導入技術によって製造された商品(主要商品)の売上高の全売上高に占める割合の推移

しかしながら,昭和40年代に入ると,先進外国技術の消化,吸収,改良研究などを通じて,あるいは戦前からの技術蓄積を活用して,優れた国産技術が続々と開発されている。前者の例としては,LD転炉ガス回収技術,ティンフリースチール技術,トンネルダイオード,パルスモーター,フエライト・コアメモリなどを,後者の例としては,大型タンカー,EEカメラ,新幹線などを挙げることができよう。

我が国の自主開発力が高まりつつある傾向は,次に示すように,研究投資,特許出願及び技術貿易の動向分析からもうかがい知ることができる。


(1) 研究投資

我が国の研究投資は着実に伸びており,国民所得に対する比率も,過去10年間に0.52%(昭和39年度1.63%,昭和49年度2.15%)の伸びを示している。一方,技術導入に伴う年々の支払額も上昇傾向(ここ2〜3年は横ばい)にあるとはいうものの,国民所得に対する比率では,ここ3年漸減傾向(昭和46年度0.26%,昭和49年度0.19%)にある。この変化は,国民所得に対する比率であるため大きな数字では現れていないが,自主開発の方向に向いつつあることを示すものといえよう (第1-1-2図)

第1-1-2図 研究投資,技術導入額の対国民所得比の推移


(2) 特許出願
第1-1-3図 我が国における特許登録件数に占める外国人分の比率の推移

(1)国内の特許登録件数に占める外国人分の比率

特許は,研究開発の成果としてとらえることができる。外国へ出願される特許は,質的に精選されることから,国内の特許登録件数に占める外国人分の比率の絶対値をもって我が国の自主開発の程度をは握することはできないが,時系列変化は,一般的には自主開発の成果の一つの傾向を示すものということができよう。このような観点から,特許登録件数に占める外国人分の比率の推移を,外国全体及び外国人の登録の中で比重の高いアメリカ及び西ドイツについて示したのが第1-1-3図である。この図から明らかなように,この比率は昭和46年から減少を続けている(昭和46年32.0%,昭和50年20.8%)。このことは年々自主開発の比重が高まりつつあることを示すものといえよう。

(2)特許出願の対外収支バランス

上記(1)は国内での特許競争の状況を示すものといえるが,貿易収支の例に倣って日本人の外国出願件数を収入とし,外国人の日本での出願件数を支出として収支バランスをとると,国際的な場での出願競争の状況を知ることができる。これを図に示すと第1-1-4図のとおりであり,その収支バランスは著しく好転している。


(3) 技術貿易

(1)技術貿易収支

技術の輸出入に伴う対価受取額・支払額の比率は,一国の技術開発力を示す重要な指標とされている。この比率(対価受取額/対価支払額)を昭和40年代について見ると,アメリカは約10倍,イギリスとフランスはほぼ同額,西ドイツは3分の1強,日本は10分の1強という傾向にあるが(詳細については, 第2部第3章参照 ),ここ2〜3年,我が国では注目すべき動きが出てきている。すなわち,第1-1-5図に示すとおり,我が国の対価受取額の対価支払額に対する比率は,長い間10%強であったものが,昭和49年度には15.7%,50年度には22.6%(いずれも日銀統計)と急速に上昇している。これは対価支払額が昭和49年度から横ばいとなったのに対し,対価受取額が着実に伸びていることによるものである。対価受取額の伸びの内訳は,第1-1-6図に示すとおり,ヨーロッパ諸国(特に東欧)への技術輸出が着実な伸びを示している。


注)(1)で特許登録,(2)で特許出願と使い分けているのは,以下の理由による。国内での特許出願は約半数が拒絶され,それらの中には防衛目的の出願なども含まれており,自主開発の指標としてはやや不確定性がある。このため(1)においては,速報性に乏しいが不確定要素の比較的少ない特許登録を用いた。一方,外国への特許出願は本文でも述べたとおり質的に精選されており,更に速報性をも併せもつことから,(2)においては特許出願を用いた。

第1-1-4図 特許出願の対外収支バランス


第1-1-5図 我が国における技術貿易の推移

第1〜1-6図 地域別技術輸出の推移

(2)クロスライセンス契約

クロスライセンス契約は,相互に特許権などの工業所有権の使用を許す契約で,対等の技術開発力を持つ企業間で結ばれるものである。この種の契約の増加傾向は,我が国の企業の技術開発力が外国企業に認められ,工業所有権の相互許諾の関係に入ることが多くなったことを示すものである (第1-1-1表)

第1-1-1表 クロスライセンス契約件数(甲種)の推移

第1-1-7図 我が国の民間企業の技術水準

以上のような自主開発への努力の結果,我が国の技術水準についての企業の認識は,第1-1-7図に示すとおり,“国際水準並み”が大勢を占めるに至っている。


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