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第1部   科学技術発展の回顧と新たな課題
第1章  科学技術発展の回顧
第1節  戦後の科学技術発展過程の概観
4  昭和30年代後半から石油危機まで


昭和35年12月,政府は36年度からの10年間で国民経済の規模を実質価値で倍増しようとする国民所得倍増計画を決定したが,その後の我が国の経済は,計画をはるかに上回るめざましい発展を遂げていった。しかしながら一方では,このような急速な経済活動の拡大につれて各種公害や自然環境の破壊,交通事故,過密・過疎などのいわゆる高度経済成長のひずみといわれる諸問題が顕在化した。

この期の科学技術面での特徴としては,トランジスタなどの電子部品の発達による情報化の進展と科学技術の巨大化をあげることができる。

本期における生産装置は,いよいよ巨大化し,国際競争力が著しく強化され,我が国の工業製品は世界市場をせっけんし,経済の国際化が進んだ。また,このような生産活動の巨大化によって海外原料への依存度が増大し,量産製品の販売・輸出の便利さなどから鉄鋼,造船,化学,石油精製などの工業は,太平洋岸ベルト地帯に集中し,多くの新興工業都市が誕生した。基幹産業における生産装置の巨大化の例としては,鉄鋼部門では,超大型の高炉・LD転炉の建設,コンピュ-タ・コントロールの採用と水島,堺,君津,福山,鹿島,大分などの大規模新鋭製鉄所の稼働,造船部門では,超大型化・高速化の進展,電力部門では,火力発電設備の大容量化の進展,自動車工業部門では,乗用車専用工場の新設と生産規模の急速な拡大をあげることができる。

更に,工業部門以外でも巨大化傾向は著しく,その例としては,交通部門では,自動車専用道路の建設,東海道新幹線の建設,ジャンボ・ジェット機,エアバスなどの大量輸送機の登場,通信部門では電話機の普及とダイヤル自動化の進展,建設部門では,新幹線富士川鉄橋,関門橋などの長大橋りょう及び新幹線六甲トンネル,同新関門トンネル,中央高速道恵那山トンネルなどの長大トンネルの建設,超高層ビルの建築などをあげることができる。

農業部門では,農業基本法の制定に伴い,労働生産性向上のための諸施策が実施され,土地基盤整備,機械化などが進み,農業の装置化ということが言われ始めた。すなわち,水田のほ場整備技術,動力耕うん機, トラクター,田植機,自脱型コンバイン,火力乾燥機などの農業機械の急速な普及,省力化された大規模畜産経営(豚,鶏)の増加,ハウス栽培の高度化(ハウスの大型化,暖房機の利用,かん水・施肥の自動化)などがその代表的なものであり,これらの技術の進歩が農業労働力の減少,兼業農家の増大が進む中で高能率農業を育成し,農業生産力を維持増進した。

一方,昭和30年代に緒についた原子力開発,宇宙開発,海洋開発などのいわゆる巨大科学技術は,40年代に入って本格化するとともに,巨大科学技術以外の分野においても科学技術開発は巨大化・高度化・総合化傾向を強め,長期の研究開発計画に基づいて多数の専門分野を組織化し,大量の資金を投入する大型研究開発が活発に行われるようになった。

他方,経済の急速な成長に伴い,各種公害や自然環境の破壊,人口の都市集中による過密・過疎問題,交通事故,産業災害などの人為災害の多様化,大規模化,更に食品添加物,医薬品,農薬,その他各種化学物質などによる国民の健康や自然環境への悪影響などが顕在化し,重大な社会問題となってきた。

このような動きに対応して多面的な対策が講じられてきたが,科学技術面では,環境科学技術,ソフトサイエンス,ライフサイエンスの振興が関心を呼ぶとともに,科学技術の適用に当たって事前にその影響を評価すること(テクノロジー・アセスメント)の重要性が認識された。


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