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第3部   政府の施策
第2章   政府機関等における研究活動
4   多分野の協力による研究開発の推進


近年,科学技術に対する社会・経済からの要請が多様化,複雑化しており,このような問題の解決に科学技術が貢献していくには,研究開発の目標を明確にし多数の研究分野の協力の下に総合的組織的な取り組みを行うことが必要となつている。

特に,原子力開発,宇宙開発,海洋開発及び新エネルギー技術開発というビッグプロジエクトにおいては,多額の資金と多数の人材を必要とするだけでなく,開発にも長期間を要するため,産業界,学界との緊密な連携の下に進めていくことが必要となつている。このほか,ライフサイエンス,ソフトサイエンス等新しい分野の科学技術,通商産業省等の大型プロジエクト等及び科学技術庁の特別研究促進調整費による研究開発も多分野の協力による研究開発として重要である。

(1)原子力開発

我が国における原子力開発利用は,原子力委員会の決定した原子力開発利用長期計画及び原子力開発利用基本計画(年度計画)に沿つて,一元的かつ計画的に推進されている。昭和49年度には,原子力開発利用の進展に対応して,安全確保・環境保全のための研究開発を一層進めるため前年度予算に比べ,倍額の101億円を安全・環境関係予算として計上した。

(1)安全の確保

原子力開発利用は,放射能の危険性を十分に認識し,開発当初から,放射能を確実に管理する対策を講じるなど,安全の確保を最重点にして,技術の開発が行われてきており,他の産業分野には見られない厳しい安全確保に対する法的な措置も講じられてきた。特に,原子力施設を建設する際には,原子力委員会が,設置する場所の地質,地形,気象などの自然条件,人口分布などの社会的条件,原子炉の工学的安全性,平常運転時の被曝評価,事故時の災害評価について,事前に安全性に関する評価を行つている。

一方,運転開始後は,環境における放射線量が一般の個人に容認される線量限度を十分下まわつていることを確認するためモニタリングが実施されている。

原子力に係る安全研究については,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団及び放射線医学総合研究所をはじめとする国立試験研究機関において行われ,また,民間機関への委託により研究されている。

第3-2-20表 原子力関係予算の推移(単位千円)

軽水炉施設の安全研究については,日本原子力研究所において主として原子炉の重大事故及び想定事故時の安全評価の実証的研究を行つており,昭和49年度には,軽水炉冷却材喪失事故時の非常用炉心冷却装置の効果に関する実験研究を行い,また,原子炉異常出力上昇時の安全性評価のための原子炉安全性研究炉(NSRR:Nuclear safety Research Reactor)を建設した。このほか,実用軽水炉燃料の安全性評価のための試験施設の建設に着手した。

原子力施設から環境へ放出される放射性物質の安全問題については,実用可能な限り放出量の低減化を図るため回収技術の研究開発及び低レベル放射性廃液の処理技術の開発等を実施している。

原子力施設から環境へ放出される放射性物質による一般公衆に対する被ばくは,法令に定める限度を十分下回るよう努力がなされている。更に,このような低レベルであつても長期にわたる被ばくの人体に及ぼす影響が一部に懸念されているので,「環境放射線による被ばく線量の推定」と「低レベル放射線の人体に対する危険度」を主な調査研究テーマとして,放射線医学総合研究所を中心として研究が行われている。

原子力施設から発生する放射性廃棄物の処理処分は,原子力開発利用を進める上で早急に解決すべき課題であり,処理処分体制の整備のための調査を行うとともに,アスファルト固化に関する研究,新固型化材料に関する研究開発が行われている。また,試験的海洋処分の見通しを得るため海洋調査も行われた。

(2)動力炉の研究開発

軽水炉の在来型は,天然ウラン燃料の持つエネルギーの1〜2%程度しか利用できない。これに対して,燃料の有効利用などの点で大きな期待がかけられているのは高速増殖炉である。この炉は,在来型炉がウラン235などの核分裂によつて生じる高速中性子を軽水などにより減速するのに対して,減速過程を経ないで核分裂反応を続けるもので,核分裂により発生する中性子が多いため,核分裂を起こさないウラン238を核分裂性のプルトニウムに効率的に変えることができ,使つた燃料以上の燃料が生成される。このため夢の原子炉と言われている。この高速増殖炉による燃料の有効利用により,天然ウランの持つエネルギーの60〜80数を活用できる。

しかし,高速増殖炉の実用化までには長期にわたる研究開発が必要であり,我が国では,軽水炉と高速増殖炉の中間段階として,軽水炉技術の経験によつて早期に実現が可能な新型転換炉の開発を行つている。

高速増殖炉と新型転換炉は,「動力炉開発業務に関する基本方針」,「同第2次基本計画」に基づき,動力炉・核燃料開発事業団を中心にその研究開発が進められている。

高速増殖炉については,昭和51年臨界を目標に大洗工学センターに高速実験炉「常陽」(目標熱出力10万kw)の建設を進めるとともに,原型炉「もんじゆ」(電気出力30万kw)の建設に必要な関連研究開発等を進めている。この研究開発の主なものとして,ナトリウム技術開発試験,蒸気発生器試験,核燃料材料の開発試験,安全性試験などがある。

新型転換炉については,昭和52年臨界を目標に福井県敦賀市に原型炉「ふげん」(重水減速軽水冷却型,目標電気出力20万kw)の建設を進めている。

(3)核燃料の確保

我が国の原子力発電が本格的な実用期に入つたことに伴つて,核燃料の安定的供給の確保とウラン資源の有効利用等のための核燃料サイクルの確立が,ますます重要な政策課題となつている。

ウラン資源の乏しい我が国は,そのほとんどを海外に依存せざるを得ず,当面は短期・長期の購入契約による確保を図るとともに将来は所要量の3分の1程度を資源保有国との互恵原則に基づいて開発輸入することとしている。昭和49年度においては,動力炉・核燃料開発事業団が,カナダ,オーストラリア,アフリカ等の有望地区において引き続き鉱床調査を行つた。ここ当分の間,原子力発電の主力は濃縮ウランを燃料とする軽水炉であることから,我が国の原子力発電によるエネルギーの安定確保のために濃縮ウランの供給確保が重要な課題となつている。そのため我が国は,アメリカとの協定による供給確保に努めるほか,供給源の多角化を図るため,国際濃縮計画への参加の可能性について検討を行つている。更に濃縮ウランの究極的安定確保を図るため,昭和60年までに,我が国において国際競争力のある濃縮工場を稼動させることを目標に,遠心分離法によるウラン濃縮技術の開発を国のプロジエクトとして積極的に推進している。昭和49年度においては,動力炉核燃料開発事業団を中心に,遠心分離機の標準化,高性能化等の開発を進めるとともにカスケード試験装置による試験を開始した。

使用済燃料から,燃え残りのウラン及び生成されたプルトニウムを取り出す再処理施設については,動力炉・核燃料開発事業団が東海村に建設を進めてきたが,昭和49年度には,その工事をほぼ終了し,各種試験を進めている。

(4)核融合

核融合は,海水の中に含まれている重水素等を燃料とするため,世界に偏在する化石燃料,ウランといつた地下資源に依存することなく,永久的にエネルギーの安定供給が可能となる。また,高い安全性が見込まれることから立地上の制約が大幅に緩和されるとともに,定常時の放射性廃棄物処理の問題もなくその実現が期待される。

我が国においては,昭和43年7月に決定された「核融合研究開発基本計画」に基づき,日本原子力研究所を中心として研究開発を推進してきたが,昭和47年4月,日本原子力研究所に完成した1-カマク型の中間ベータ値トーラス装置(JFT-2)は既に高温プラズマの閉じ込めについて顕著な成果を収めている。昭和49年度においてはJFT-2の磁場増力を行う改造工事を終了し,実験を行つた。また,非円形のプラス断面を持つ高安定化磁場試験装置(JFT-2a)の製作を完了し,実験研究を開始した。このほか,昭和50年度から始まる第二段階の主力装置である臨界プラズマ試験装置の予備設計を実施した。また,工業技術院電子技術総合研究所ではスクリュー・ピンチ装置(TPE-1)により,高ベータ・プラズマ閉じ込めについて着実な成果を収めている。

(5)原子炉の多目的利用

現在のところ原子炉は発電に利用されているが,原子炉で発生した熱をプロセス・ガス・プロセス・ヒート・又はプロセス蒸気などの形で,製鉄,化学工業などのエネルギー多消費産業のほか,海水淡水化,地域暖房などの熱源として多方面に利用することが考えられる。

このような原子炉の多目的利用の例としては,イギリスのコールダーホール原子力発電所からウイズケール工場へのプロセス蒸気の供給,ソ連のシフチェンコ原子力発電所の高速増殖炉BN-350(電気出力相当30万kw)による12万トン1日の淡水製造がある。これらの原子炉の利用は,いずれも100〜200°C程度の比較的低温域での熱利用であるが,更に,将来1,000°C以上の高温ガスを取り出すことのできる高温ガス炉が実用化されれば,製鉄などの高温利用から海水淡水化などの低温利用まで段階的に高温を利用する原子力コンビナートも可能と考えられている。

我が国では,炉心出口温度1,000°Cの多目的高温ガス炉の開発を目指して日本原子力研究所で研究が進められており,昭和49年度には実験炉(熱出力50MW)の概念設計を行うとともに,燃料材料の開発,安全性の研究,高温ヘリウム取扱技術及び伝熱流動の研究など研究の進展を見た。また通商産業省では,このような高温ガス炉等を熱源とした製鉄への利用プロセスについての研究開発を行つている。

(6)原子力船

船舶の大型化,高速化に伴い,燃料所要量が増大し,貨物の積載量を犠牲にすることになるため,原子力エネルギーを船舶の動力源として,採用する気運が高まり,ソ連の砕氷船レーニン号,アメリカの貨物船サバンナ号,西ドイツの鉱石運搬船オット・ハーン号の3隻が建造された。

我が国においても「原子力第1船開発基本計画」に基づき,原子力船の運転経験を得るとともに乗組員の養成を行うことを目的として,原子力第1船「むつ」の建造及び定係港施設の工事を終了した。昭和49年8月26日,「むつ」は出力上昇試験を実施するため定係港を出港し,8月28日臨界に達した。

しかし,その後ゼロ出カ上昇試験における諸試験の実施申,微量な放射線漏れが起きたため,試験を中断した。政府はかかる事態を深刻に受けとめ,直ちに「むつ放射線しやへい」技術検討委員会を設置し,原因究明に当たつてきたが,昭和50年2月,放射線漏れは原子炉容器と上部一次遮蔽体との間隙からの中性子の漏洩に起因すると見られるということを内容とする調査報告書が出された。また昭和49年10月には総理府に「むつ」放射線漏れ問題調査委員会が設けられ,放射線漏れの原因調査に当たつていたが,本年5月に今後の原子力船開発の進め方について6項目の提言を内容とする報告書が出された。

原子力委員会は,同調査委員会の提言を貴重な見解として尊重し,今後の施策にできる限り反映させてゆくとともに,「むつ」からの放射線漏れを1つの契機として原子力行政について国民全般に広く不信感が発生したことを遺憾とし,かかる不信感を払拭するとともに,技術開発に対し,厳しい気持で臨むべきことを強調した。「むつ」の当面の措置については,技術的総点検と必要な改修を進めることとしている。また,今後の原子力船開発の基本方針の見直しについては,本年3月に原子力船懇談会を設け検討を進めている。

(7)原子力行政体制

安全確保の緊要性に鑑み,科学技術庁並びに通商産業省は安全審査,検査関係の強化・拡充を図るとともに,原子力行政の基本的な在り方を検討するため本年2月,内閣に原子力行政懇談会が設置された。

第3-2-21表 主要国の原子力関係予算の推移(単位億円)

(2)宇宙開発

近年,宇宙技術の急速な進歩発達により,宇宙空間は人類の新たな活動領域として登場してきており,科学衛星及び通信,気象等の実用衛星をはじめ有人衛星,有人月探査,惑星探査等が次々と実現され,もはや宇宙空間の利用は人類の発展に欠くことのできないものとなつている。

更に,最近は水,空気,土地利用等の状況調査を含む広い意味での地球観測が進められており,宇宙開発は,環境管理や資源探査においても大きな役割を果たすことが期待されている。

また,宇宙開発は,米国のアポロ計画が成功りに終了してからは国の威信をかけたビツク・プロジエクトとしての性格が薄れ,一時のような華やかさがなくなつたものの,人工衛星の打上げがアメリカ,ソ連のほか10数か国にも達し,すそ野が広くなつている (第3-2-22表)

第3-2-22表 国別年次別,人工衛星等打上げ成功数(1974,12,31)

我が国における宇宙開発は,宇宙開発委員会が定める宇宙開発計画 (第3-2-23表, 第3-2-24表参照) 及びこれに基づいて内閣総理大臣の定める宇宙開発に関する基本計画に沿つて宇宙開発事業団,東京大学宇宙航空研究所をはじめとする各機関において推進されている。昭和49年度における各機関の活動の概要は,次のとおりである。

宇宙開発事業団においては,技術試験衛星I型及び電離層観測衛星の製作並びに技術試験衛星II型,静止気象衛星,実験用中容量静止通信衛星及び実験用中型放送衛星の開発を進めるとともに,実験用静止通信衛星の開発に着手した。また打上げ用ロケットについては,Nロケットの開発,製作を進めた。Nロケットの開発,打上げに資するため,昭和49年9月及び50年2月にそれぞれ試験用ロケット(Q)1,2号機を打ち上げた。これによりN口ケット第2段の推進系の性能及び誘導制御系の機能が確認されたほか,ロケットと関連地上設備との整合性が確認された。

Nロケットは,約130kgのペイロードを静止軌道に打ち上げる能力を有する液体燃料を中心とする3段式ロケットで,性能向上のための改良発展の可能性が比較的高く,将来,大型静止衛星の打上げを行うロケットを開発するために不可欠なステップとして開発が進められているものである。

地上施設,設備については,種子島宇宙センター及び筑波宇宙センター等の建設等諸施設,設備の整備を行つた。

東京大学宇宙航空研究所においては,昭和49年8〜9月に5機のロケットを打ち上げ,科学観測及びMロケット改良のための飛しよう実験を行つた。

また,昭和50年1〜2月には,3機の科学観測用ロケット及び第3号科学衛星を戴せたM-3Cロケット2号機を打ち上げた。

Mロケットは,科学衛星打上げ用の全段固体燃料のロケットで,M-4Sロケット(4段式)により既に「たんせい」,「しんせい」及び「でんぱ」の3衛星が,また,M-3Cロケット(3段式,推力方向制御装置付き)によつて「たんせい2号」及び「たいよう」が打ち上げられている。

今後はこれらの技術蓄積をもとに,漸次推力方向制御装置の付加,構造の軽量化,推進薬の改良等を行い昭和54年までにより高性能のM-3Hロヶット及びM-3Sロケットを順次開発することになつている。

第3-2-23表 我が国の人工衛星打上げ計画


第3-2-24表 我が国のロケット開発計画

このほか,気象庁,郵政省においては,静止気象衛星,電離層観測衛星,実験用中容量静止通信衛星及び実験用中型放送衛星の運用に必要な地上施設,設備の開発,製作を進めた。

また,科学技術庁,気象庁,農林省,林野庁,建設省及び大学等の研究機関により,リモートセンシング情報利用技術の開発に関する総合研究を進めた。

一方,宇宙開発に関する国際協力については,昭和49年3月にフランスの国立宇宙開発センター(CNES)総裁を,昭和49年10月にアメリカの航空宇宙局(NASA)長官を我が国に招へいし,日仏間及び日米間宇宙協力の推進を図つた。

第3-2-25表 宇宙関係予算の推移     (単位千円)

第3-2-26表 各国の宇宙予算の推移


また,国連活動の一環として,教育用衛星放送システムに関する国連パネル会議が東京で開催されたほか,衛星通信に関するフェローシップの提供が行われた。

なお, 第3-2-25表 に我が国の宇宙関係予算を 第3-2-26表 に主要国の宇宙関係予算をそれぞれ示す。

(3)海洋開発

海洋は,生物,鉱物,エネルギー等多種多様の資源を包蔵し,その開発は国民福祉の増進,社会経済の発展に極めて大きな役割を果たすものである。とりわけ陸上資源に恵まれない我が国にとつて,エネルギー,食糧等各種資源の安定確保が強く叫ばれている今日,その意義はますます大きなものになりつつある。また1973年から開始された第3次国連海洋法会議では領海の幅員,経済水域の設定,深海海底資源等につき審議が進められているが,その帰すうは我が国にとつて極めて厳しいものとなることも予想され,新たな海の秩序の樹立に積極的に対応していかなければならない。こうしたことから,我が国は海洋開発の強力な推進に取り組んでいかなくてはならないといえよう。

政府においては,このような認識の下に,各般の海洋開発施策を進めている。これらの施策は,まず,関係省庁が,それぞれの行政目的に即して推進しているが,海洋開発に関する基本的かつ総合的事項については,内閣総理大臣の諮問機関である海洋開発審議会で調査審議を行うこととなつている。同審議会は,昭和48年10月,我が国海洋開発推進の基本的構想及び基本的方策について答申を行い,この申で,我が国海洋開発推進の基本的構想,総合的な海洋開発計画の樹立,重要研究開発課題の設定等海洋開発推進のために講ずべき重要施策を提示している。

海洋科学技術の研究開発については,関係省庁で構成する海洋科学技術開発推進連絡会議の策定した海洋開発のための科学技術に関する開発計画(実行計画)に沿つて関係省庁により進められている。同会議は,前述の海洋開発審議会の答申に即し,昭和49年2月,第2次実行計画を策定したが,この計画における重要プロジエクトとして,海洋探究に関するものとしては沿岸海域の総合調査研究,日本周辺海域の総合調査研究,大洋域の総合調査研究及び調査研究機器技術・情報管理技術の開発の4プロジエクト,技術開発に関するものとしては海洋生物資源開発システム,海底石油開発システム,海洋構造物の建造技術,海洋環境保全に関するシステム的調査研究及び技術開発,深海調査システム及び機器,海中住業システム及び機器の6プロジエクトを挙げている。

政府における海洋科学技術開発の推進状況を見ると,まず,海洋探究に関するものとしては,日本沿岸海域を対象として25万分の1又は1万分の1の海の基本図の作成が進められており,49年度には東京湾,宗谷海域等について行われた。また,東シナ海を対象として,その水塊特性,海洋生産物生産機構等について研究が進められている。これらのほか,地質調査専用船「白嶺丸」による日本周辺大陸棚の海底地質の総合研究等多数の海域における各種の調査研究が進められ,また,データを伝送するのに必要な超音波,レーザを用いた海中情報伝送等の研究が行われている。

海洋生物資源開発システムに関するものとしては,各沿岸を対象に栽培漁業の研究が進められている。これとともに,新漁場開発,おきあみ等の未利用資源開発に関する研究が進められている。

海底石油開発システムに関するものとしては,水深200〜250m,掘削深度8,000〜9,000mの能力を有する大深度遠隔操作海底石油掘削装置の研究開発,生産設備の全部又は一部を海底に設置する海底石油生産システムの開発が進められている。

海洋構造物の建造技術に関しては,各種浮遊,有脚式海洋構造物の特性,設計法に関する研究,大型浮遊式海洋構造物を大陸棚以深に設置するための係留法に関する研究等が進められている。

海洋環境保全に関するシステム的調査研究及び技術開発については,タンカー事故等から生ずる大量の油流出に備えて30,000klの油を処理し得るシステム及び機器,機材の開発が進められている。また,沿岸海域を対象として汚染物質の流入による生態系の変化とこれを利用した生物指標の開発に関する研究が行われている。このほか,沿岸防災の研究等各般の研究が進められている。

深海調査システム及び機器に関しては,深度6,000mまで潜航可能な潜水調査船の調査研究が進められている。

海中作業システム及び機器に関しては,飽和潜水の方法を利用した潜水作業システムを開発するため,シートピア計画が進められており,昭和47年には水深30mの,同48年には60mの海中実験を終了し,昭和50年に実施予定の最終段階である100m海中実験を目指して模擬実験が開始された。このほか,海中で使用するマニュピレータの開発,水中における推進技術,制御技術等の研究開発が行われている。

以上のプロジエクトのほか,多段フラッシュ法による海水淡水化や温度差発電に関する研究開発が進められている。これとともに,我が国海洋科学技術開発の中核的機関として昭和46年10月海洋科学技術センターが設立され,官・民協力の下で運営されている。同センターでは,海洋工学,潜水技術,海洋環境保全技術等に関する総合的試験研究,水深500mまでの潜水を模擬しうる潜水シミュレータ等の共用施設の運用,潜水技術者の研修等を実施している。

第3-2-27表 海洋開発係経費

なお, 第3-2-27表 に我が国海洋開発関連予算, 第3-2-28表 に各国の海洋開発関連予算を掲げる。

第3-2-28表 主要国の海洋開発関連予算の推移(単位億円)

(4)ライフサイエンスの振興

(1)我が国におけるライフサイエンスの振興

生命現象が,物理的,化学的に解明されて行くにつれ,生物の諸機能を工業技術に応用したり,他の科学技術の社会への適用に当たつて,生物に関する知見を配慮するなど,生物科学は,社会活動と密接な関連を持つに至り,ライフサイエンスとして,新たな総合的科学技術分野を形成してきた。このようにライフサイエンスは,生物に関する知見を基にして,諸々の社会的問題の解決を目指しており,近年,特に注目された,食環境,人口などの諸問題の解決は,今日の社会では最も強く要請されているものであり,ライフサイエンスのもたらす成果の寄与するところは大きいと期待されている。

我が国においては,昭和46年4月,科学技術会議が,諮問第5号「1970年代における総合的科学技術政策の基本について」に対する答申において,ライフサイエンスの重要性を指摘して以来,国としてライフサイエンスを積極的に推進することとしている。

その後,科学技術会議は,昭和48年7月,ライフサイエンス部会を設け,ライフサイエンスに関する長期的かつ総合的研究目標及び目標達成に必要な研究で特に重要なものの推進方策の基本に関して審議を行つてきた。その審議検討の結果は,昭和49年12月,中間報告としてまとめられた。ライフサイエンスに関する重要な研究目標は 第3-2-29表 に掲げるとおりであるが,このほか,目標達成のため研究活動の整備拡充方策として,ライフサイエンスの振興全般についての財政的措置の充実及び民間独立研究機関の助成をはじめ,流動研究員制度の活発化とその拡充,研究開発成果の応用の促進,国際協力の強化などを挙げている。研究開発の円滑な進展を図る上に必要な研究支援については,研究支援技術者等の養成,実験生物の供給体制の高度化,リサーチ・リソーセスの確保などの重要性が指摘されている。更に,ライフサイエンスの研究一般の支援あるいはその総合的推進を図るために,ライフサイエンス研究推進センター (仮称)及び基礎生物学研究所(仮称)の新設を提唱している。

第3-2-29表 科学技術会議ライフサイエン部会中間報告に示されたライフサイエンスに関する研究分野及び研究目標


一方,科学技術庁では,ライフサイエンスの具体的振興を図るため,ライフサイエンス推進委員会を設け,老化制御の研究,人工酵素による化学合成システムの開発,人工臓器等医用生体工学的治療体系に関する研究など目的指向的に進めるべき研究課題を総合的に行う機関として,ライフサイエンス研究推進センター (仮称)の設立を検討してきた。その検討結果は報告書としてまとめられ,ライフサイエンス研究推進センター(仮称)の推進する研究分野と役割及び形態が具体的に述べられている。更に上記のライフサイエンス研究推進センター (仮称)の設立を含めてライフサイエンスの具体的振興を図るために,49年度には,理化学研究所内にライフサイエンス推進部を設置し,「ライフサイエンス研究推進センター]構想を具体化する上で必要な基本システム調査を行つた。この調査において,我が国におけるライフサイエンスに関する研究機関及びその研究分野,研究課題,研究スタッフ,研究費などの現状が調査されたほか,我が国におけるライフサイエンスの研究分野別の実験生物の現状と問題点,将来への展望について基礎的な調査研究が行われた。このほか,緊急にその研究に着手すべき研究課題である,  「老化制御の研究」については,調査研究会を設け,今後の研究開発に資するために,老化機構の分子生物学的研究,臓器の老化機構と老化測定法の研究及び集団レベルでの老化研究など老化に関する広範な研究課題を調査し,これを体系化し,「老化制御の研究」計画を得ることとしている。老化の研究は,諸外国でもかなり進んでおり,人口問題とも関連して老年問題の重要性が,広く認識されている。特に,我が国においては,人口の急速な老令化が予想されており,このような状勢に対処する上でも,早急に対策を講ずる必要がある。

なお,ライフサイエンス推進部は,今後更にライフサイエンス研究推進センター(仮称)の基本計画を得るとともに,「人工酵素による化学合成システムの開発」などプロジエクト研究して推進すべき課題について,体系化,計画化を行うこととしている。

このほかライフサイエンス関係の試験研究については,各省庁によつて進められているものも多く,その内容は多岐にわたつている。それらの課題を例示すると, 第3-2-30表 のようになる。

第3-2-30表 関係各省庁におけるライフサイエンスに関する特別研究等


(2)主要国におけるライフサイエンスの振興

ライフサイエンスの重要性については,世界的にも広く認められており,特に,アメリカや欧州各国については,科学技術会議の調査によつて各種の振興方策がとられていることが報告されている。

アメリカにおいては,ライフサイエンスの基礎から応用にわたつて幅広い研究が行われており,その質も全般的に高く,研究者の層も我が国よりもはるかに厚いことが随所にうかがわれる。基礎的な研究については,国立科学財団(NSF)が特定分野に偏らないように均衡の取られた発展を図る方針で助成しているほか,ユニークな民間研究機関であるソーク生物学研究所では,生命のより深い理解を得るために学際的な研究グループが組織されている。

西ドイツにおいては,分子生物学研究センター,放射線環境研究センター,ドイツがん研究センターの3大センターを新設あるいは拡充整備し,目的指向的な研究を推進するとともに,各種大学及びマツクスプランク研究協会を中心として基盤的な研究を実施している。

なお,欧州諸国間の研究協力を目的とする政府間ベースの協定による欧州分子生物学機構(EMBO)があり,分子生物学研究所をハイデルベルクに設置するための準備が進められている。

また,フランスでは,この分野の研究を「生命の科学」(Science de laVie)の名の下に分子生物学から免疫学などに至る基盤的な研究を推進する一方,食糧・飼料技術開発研究センターの新設などに見られるように,バイオニクスや生物工学など応用面の研究開発にも重点を置いている。

イギリスは,伝統的に生物科学を重んじており,ケンブリツジに分子生物学研究所を設立するなど基礎・応用両面にわたつて広範な分野の研究を着実に推進し,社会的な要請にいつでも対応できる態勢を取つている。

(5)ソフトサイエンス及びテクノロジーアセスメントの振興

(1)ソフトサイエンス

現代社会における複雑な政策課題の解明を目的としたソフトサイエンスは,情報科学,行動科学,システム工学,社会工学等最近急速に進歩しつつある意思決定の科学化に関する諸分野の理論や手法を応用して,自然科学的方法によつて,人間や社会現象を含めた幅広い対象を学際的に研究,解明しようとする総合的科学技術であるが,我が国においては,昭和46年4月,科学技術会議の諮問第5号「1970年代における総合的科学技術政策について」に対する答申においてその推進の必要性が強調され,その研究開発及び利用の促進のための施策が進められている。

特に,科学技術庁,経済企画庁及び通商産業省の3省庁は,ソフトサイエンスの総合的な振興及び民間シンクタンクの育成を図るため,昭和46〜48年までの3カ年間にわたり,総合研究開発調査を実施した。

また,昭和49年には,政府と民間との共同出資により総合研究開発機構が設立された。ここでは,現代の経済社会及び国民生活の諸問題の解明に寄与するため,広範な分野の専門知識を結集して行われる総合的な研究開発の実施及び助成等が行われ,今後ソフトサイエンスの振興が図られるものと期待されている。昭和49年度においては,エネルギー問題,日本企業の海外活動に関する問題,その他地域問題に関する諸テーマ等に関し研究開発の実施及び助成が行われた。

また,ソフトサイエンスに関する国際的な動きも活発化しており,1970年のローマクラブのボストン大会において,「成長の限界」というレポートが発表された後,食糧,環境,エネルギー等の問題が顕在化したこととあいまつて,世界各地で同じテーマに対して試みられたいろいろ異なつた方法による成果が報告された。1973年の東京大会では,ローマクラブと直接関係のあるものだけで6グループ,その他,間接的につながりのあるものも含めると約20グループが中間報告という形で研究報告を行つた。また,1974年のローマクラブ,ベルリン大会においては「世界社会のより公平な発展に向つて」というテーマの下にシンポジウムが開催され,「転機に立つ人間社会」を初めとして25グループの研究発表が行われた。

更に,我が国を含め13か国からの共同出資によるIIASA(国際応用システム分析研究所)がオーストリアのウイーンに設立され,また,欧州諸国の共同出資によるIIMT(国際技術管理研究所)がイタリアのミラノに設立された。これらの機関は最近活動を開始しているが,既に,現代社会の複雑な諸問題の解決を図るためのソフトサイエンスに関する国際的な関心を高める役割りを果たしており,更に,ソフトサイエンスの研究開発,人材の養成等にも大いに貢献するものと期待されている。

(2)テクノロジー・アセスメント

科学技術の急速な進展とその適用によつてもたらされている環境問題,資源問題等の諸問題の発生に対処し,テクノロジー・アセスメントの導入が重要課題として取り上げられている。

既に,テクノロジー・アセスメント導入の必要性については,昭和46年4月,科学技術会議が諮問第5号「1970年代における総合的科学技術政策の基本について」に対する答申の中で指摘されているほか,経済企画庁における国民生活審議会の答申「成長・発展する経済,社会のもとで健全な国民生活を確保する方策に関する答申」(昭和45年11月)及び通商産業省における産業構造審議会の中問答申「70年代の通商産業政策の基本方向はいかにあるべきか」(昭和46年5月)においても指摘されている。

これらの答申にこたえて,科学技術庁及び通商産業省が中心となり,テクノロジー・アセスメントの推進に取り組んでいる。すなわち, 第3-2-31表 に示すように,事例研究を実施することにより方法論の開発を図り,その成果を基に,それぞれの行政に関連した技術課題について試験的実施を行うとともに民間への普及啓発に努めている。

第3-2-31表 政府関係におけるテクノロジー・アセスメントのケース・スタデイ


また,民間においてもテクノロジー・アセメントの導入の必要性が強く認識されるようになつてきており,テクノロジー・アセスメントに関するセミナー等を通じて人材の育成が行われている。

このようなテクノロジー・アセスメントに関連した活動を更に一歩進めて,総合的,長期的視野からのテクノロジー・アセスメントの定着を図るため,科学技術会議総合部会にテクノロジー・アセスメント分科会を設置し,テクノロジー・アセスメントの導入の在り方等について検討を始めた。また,通商産業省の産業技術審議会のテクノロジー・アセスメント部会においても産業技術行政におけるテクノロジー・アセスメントの導入を推進するため,「テクノロジー・アセスメント推進の望ましい制度及び実施方法について」の中間報告を行つた。

一方,国際的な動きを見るとOECDでは,1971年10月の科学大臣会議において決定された基本方針に基づき,テクノロジー・アセスメントの推進を重点事業として取り上げ,これに積極的に取り組んでいる。特に,一般的方法論の開発が急務であるとの認識に立ち,1974年にはテクノロジー・アセスメント実施のガイドラインを取りまとめ,更に,新都市交通システム,通信技術,労働環境をテーマとしたケース・スタディを実施している。

このような活動とは別に,各国のテクノロジー・アセスメントの専門家レベルの情報交換の促進が図られるようになつてきている。すなわち,各国の専門家を構成員とする国際テクノロジー・アセスメント協会(ISTA)が1972年に設立され,1973年5月にオランダのハーグで第1回国際会議が,1974年11月には東京において第2回の国際会議が開催された。

(6)大型プロジエクト等の推進

大型プロジエクト等は,社会・経済の要請に即応する研究開発で,かつ,その開発規模が大きく,企業化に伴うリスクが大きいため,民間のみによる開発に期待し得ないものに対し,国が中心となり学界や産業界との共同研究体制を確立して取り組むものである。

昭和49年度から新たに,農林省の「高能率施設園芸に関する総合研究」通商産業省の「新エネルギー技術開発計画」及び建設省の「小規模住宅新施行法の開発」の各プロジエトが加えられた。

大型プロジエクト等のテーマ,研究目標,予算額及び研究期間は, 第3-2-32表 のとおりである。

第3-2-32表 各省庁における大型プロジエクト等





(新エネルギー技術開発計画) 

エネルギー危機を克服し,エネルギーの安定供給の確保を図るとともに環境保全対策を進めていくためには,省エネルギー化に努める一方,従来の化石燃料資源に過度に依存することなく,これに代替し得る豊富かつ無公害な新エネルギーの開発活用を強力に推進しなければならない。

このような認識に立つて,通商産業省では新エネルギー技術開発計画すなわちサンシャイン計画を昭和49年度から発足させた(工業技術院計上分初年度予算22億7000万円)。この計画モは西暦2000年に至る長期間にわたり総合的,組織的かつ効率的に研究開発を推進し,数10年後のエネルギー需要の相当部分を供給することのできる諸技術を開発することを目標としている。

当面,研究開発の対象として取り上げる技術は,太陽エネルギー技術,地熱エネルギー技術,石炭のガス化・液化技術及び水素エネルギー技術とし,その他の新エネルギー技術については,技術的発展段階に応じた研究開発又はフイージビリティスタディ等を行いつつ,その成果を踏まえて適宜本格的に取り上げることにしている。サンシャイン計画に係る当面の実施計画は, 第3-2-33表 のとおりである。

第3-2-33表 新エネルギー技術開発計画

(7)特別研究促進調整費による研究の推進

特別研究促進調整費は,特に推進する必要のある特別な研究について各省庁の所管に係る研究業務の総合的推進を図り,その相互間の調整に必要な経費であり,多領域にまたがる試験研究及び境界領域に属する試験研究等の効率的推進に重要な役割を果たしている。本調整費による試験研究には,2つ以上の省庁が協力して進める総合研究,事業年度当初に予見し難い事態の発生に緊急に対処する緊急研究及び各種研究に共通する基礎的試験研究であつて国が助成する必要があるものなどに交付する助成研究がある。

昭和49年度は,海洋科学技術,宇宙科学技術,電子技術,極限科学技術等の将来の社会的要請に対応する科学技術分野の研究開発に活用されるとともに,特に,近年社会的要請が増大してきている,防災科学技術,生物科学等の国民生活に密接に関連する科学技術に重点を置いて活用されている。

本調整費の活用状況を 第3-2-34表 に,研究課題及び経費を 第3-2-35表 に示す。

第3-2-34表 特別研究促進調整費活用状況 (単位千円)

第3-2-35表 昭和49年度研究促進調整費による研究課題及び経費




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