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第2部   科学技術活動の動向
第4章   国際交流の動向
2   二国間協力活動


科学技術における二国間協力活動は,環境汚染,食糧不足,資源・エネルギーの枯渇等の全地球的問題や南北問題等を背景としてますます活発化する方向にある。先進国との協力においては,各国とも環境汚染,資源・エネルギー問題等先進諸国に共通な問題の解決を迫られており,これに対応した国際研究協力を推進する機運が年々高まつている。こうした情勢を反映して,最近までアメリカを中心として展開してきた我が国の協力活動は,西ドイツ,フランス,カナダ,オーストラリア,ソ連等の諸国にまで多角化され,協力の形態も定期協議,科学技術協力協定の締結等の形で急速に具体化しつつある。

開発途上国との協力においては,アジア地域からの我が国に対する援助要請の高まり,中近東地域との経済交流関係の深まり,更には,中南米・アフリカ諸国との交流の緊密化等が予想され,また,我が国が得意とする分野も幅広いことを考えると今後更に効果的な協力活動を推進することが望まれている。

(1)開発途上国との協力

我が国の開発途上国との技術協力は,留学生の受入れ,研修生の訓練,専門家の派遣,開発調査の実施,機材の供与等を通じて開発途上国の科学技術能力の向上に協力する一方,開発プロジェクトの実施にも協力するなど,多角的な活動を展開してきた。しかし,諸外国の協力実績に比較すると,我が国はこの分野における協力をより一層強化すべき状況におかれている。更に,開発途上国における技術を巡る環境条件等の制約から,技術が定着に至らなかつた例も少なくなく,今後は,開発途上国が自力で科学技術を発展させる能力を育成することに留意する必要がある。

まず技術協力の実績を資金面から見ると,1973年における我が国の技術協力総額は156億6百万円であり,1972年の109億74百万円に比べ,42.3%,46億32百万円゛と大幅な増加を示した (第2-4-1図)

第2-4-1図 我が国の二国間技術協力実績の推移

しかし,政府開発援助額に占める二国間技術協力額の比率では,DAC(OECD開発援助委員会)諸国平均の24.3%に比べ,我が国は5.7%にすぎず,我が国の技術協力は先進諸国に比べ依然として立ち遅れているといえる (第2-4-2図)

また,DAC諸国における二国間技術協力額を見ても,我が国は全体の2.5形とフランス(30.0%),アメリカ(26.7%),西ドイツ(13.1%),イギリス(7.8%)に比べて一段と低い現状にある (第2-4-3図)

第2-4-2図 DAC (OECD開発援助委員会)加盟国の二国間技術協力額の政府開発援助額に占める割合(1973年)

次に,技術協力の動向を,開発計画に関する技術協力,訓練指導に関する技術協力,その他の技術協力に大別して概観する。

開発計画に関する我が国の技術協力は,大別すると,第1に開発途上国の開発計画の作成及び具体化に対してコンサルティングを行うことを目的とするもの,第2に企業の進出,建設工事等への参加を通じて相手国の産業開発等に寄与するものとに分けられる。

第2-4-3図 DAC加盟国の二国間技術協カ額対比(1973年)

第1のタイプの技術協力には,政府ベースのものと民間ベースのものとがある。政府ベースでは,まず,総合開発計画調査制度があり,関係各省庁がそれぞれの領域に応じ(財)国際開発センター(IDC)に委託し,国全体の各セクターにまたがつた総合的な計画立案のための調査を行つている。また,各産業部門の開発計画作成のためのマスタープラン作りやフィージビリティ調査及び実施設計について,相手国の要請に基づいて協力する制度がある。

これには主として電力を含む鉱工業部門のプロジェクトを対象とする海外開発計画調査と,道路,港湾,通信,農業部門等を対象とする投資前基礎調査があり,技術調査団の派遣等積極的な協力が行われている。このほか,資源有望地域の地質,鉱床に関する基礎調査を実施し,その結果を相手国に提供する資源開発協力基礎調査がある。

以上に述べた開発プロジェクトに関する調査を中心とした協力のうち,民間ベースで行われ,政府がこれを補助している事業としては,中小企業業種の工場建設のための基礎調査から技術指導まで一貫して協力する海外中小企業技術協力事業,コンサルティング企業の海外活動を通じて開発計画の作成及び具体化に対する技術協力を促通する海外コンサルティング活動振興事業等がある。

第2のタイプに属する技術協力は,専ら民間ベースのもので,海外投資等調査補助制度がある。本制度は開発途上国の法制,工場立地条件,資源の賦存状況等の実情をは握するための調査事業を対象としている。

訓練指導に関する技術協力は,留学生・研修員の受入れ,専門家の派遣等の形で展開されており,これら各種の技術協力事業は政府ベース,民間ベースで行われている。

1974年度における政府ベースと民間ベースによる研修員受入れ数は,ほぼ2:1の割合になつており,そのうち海外技術協力事業団(OTCA,現国際協力事業団)を通じて実施したものは2,155人で,前年度の2,079人に比べ約4%の伸びを示した。近年の傾向としては,アジア地域への集中度が低下しており,中南米及び中近東・アフリカ地域への技術協力の拡大が著しい (第2-4-4図)

なお,コロンボ計画加盟を契機として,我が国政府が技術協力を開始した1954年度以来,OTCAベースで実施した研修員受入れ数の累計は21,973人となつた。

第2-4-4図 地域別研修員受入れ実績(OTCAベース)

第2-4-5図 地域別専門家派遣実績(OTCAベース)

一方,専門家派遣については,政府ベースによるものが多く,1973年度においてOTCAを通じて実施したものは743人で(専門家派遣事業,海外技術協カセンター事業,医療協力事業,農業協力事業,開発技術協力事業によるもの),前年度の687人に比べて約8%増加した。地域別に見ると,研修員受入れと同じく,近年,中南米及び中近東・アフリカ地域の占める割合が増加している (第2-4-5図)

なお,前述の事業のほか,開発調査事業及び日本海外協力隊事業を含めたOTCAベースによる専門家派遣実績の1955年以来の累計は10,616人となつた。

以上の技術協力の中で保健協力は,経済ベースの協力を越え,人道的見地からも積極的に推進されており,政府ベースの主としてOTCAによる医療協力事業のほか,民間ベースでは,-アジア救ライ協会,日本キリスト教海外医療協力会等の各種保健協力事業がある。

OTCAによる医療協力事業は,1966年以来プロジェクト協力方式を重点的に推進しており,専門家の派遣,機材供与を中心に着実に事業規模を拡大し,1974年度には20か国41プロジェクトに協力している。開発途上国からの我が国の協力に対する要望は強いものがあり,実施中のプロジェクトの充実やフォローアップに対する協力の要請のみならず,新規プロジェクトに対する協力の要請も年々増大してきている。これに対応して,近年,我が国の保健協力は量的にも質的にも充実しており,高く評価されるに至つている。

こうしたこととともに開発途上国との研究協力については,農林省が1970年に熱帯農業研究センターを設置して本格的な研究協力を開始したのに続いて,通商産業省工業技術院は,1973年度から,開発途上国との共同研究プロジェクトを開始し,開発途上国産品の工業的利用に関する研究等を行つている。このほか,韓国との間で,日韓科学技術大臣会談を通じての協力が見られるが,我が国は今後,開発途上国のニーズに適合したテーマを取り上げ,共同研究を行う等,我が国の研究ポテンシャルを開発途上国の発展のために振り向けるよう,更に努めなければならない。

(2)先進国との協力

先進諸国との協力活動は,協定等に基づき活発に展開されており,協力分野は先進諸国共通の原子力開発,新エネルギー開発,天然資源開発,環境問題への対処,,宇宙開発,海洋開発,交通問題の解決等多方面にわたつている。協カ国はアメリカ,フランス,西ドイツ,イギリス,・カナダ,オーストラリア,ソ連等の国があり,主として原子力開発利用の面で協力を行つてきていたが,近年では,科学技術全般に関する協力活動が活発化しており,ソ連,西ドイツ,フランス及びアメリカ(エネルギー研究開発のみ)との間で科学技術協力協定が締結されている。

以下,先進諸国間との協力活動についてその動向を述べる。

(1)日米協力

科学協力に関する日米委員会は,科学の一層の進歩のため,両国の科学者が直接に自然科学の全分野について相互協力を行うことを目的としている。この協力活動は 第2-4-1表 に示す8部門について行われており,主たる実施機関は日本学術振興会である。

第2-4-1表 科学協力に関する日米委員会の研究協力分野

第13回会合は1975年夏に東京で開催される予定であるが,1974年6月,東京において第2回小委員会が開かれ,著名科学者の交流計画等について討議が行われた。

また,第3部門の科学技術情報については,1974年10月,ワシントンで「科学技術情報サービスを拡充するための方策」に関するセミナーが開催された。

天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)は,行政的ニーズの観点から協力を進めているものであり, 第2-4-6図 に示す17技術専門部会と1つの委員会を中心に研究協力が行われている。

1974年10月,ワシントンで第6回UJNR事務担当官会議が開催され,新エネルギー部会のエネルギーの研究開発に関する日米協力(1974年7月,締結)への移管,建築防火専門部会の新設,第2次5カ年報告書作成等について審議が行われた。

公害に関する日米公害閣僚会議は,両国の環境担当閣僚が環境問題の解決のための協力について協議を行うもので,下水処理技術委員会,廃棄物処理委員会,光化学大気汚染委員会及び自動車公害対策委員会予備会合の4専門委員会で技術的な検討が行われている。1974年5月,東京で第3回会議が開催され,環境アセスメント,大気汚染気象,汚染物質の健康影響,有害物質の識別と規制,有害汚染物質を含む推積汚泥処理の5分野での協力を新たに進めることとなつた。

第2-4-6図 UJNR専門部会の組織

日米運輸専門家会議は,1969年に設置されて以来,両国に共通した運輸問題について双方の専門家が情報交換又は共同研究促進という形で協力し,問題解決へのアプローチを行つている。1974年6月,ワシントンにおいて第7回会議が開催され,運輸部門におけるエネルギー節約,新都市交通システム,大都市物流及び新貨物輸送,新幹線及び磁気浮上を中心とする鉄道技術等に関する問題についての討議が行われた。

日米医学協力委員会は,アジア地域の保健に関する分野における協力活動として,コレラ,らい,低栄養,寄生虫疾患,結核,ウィルス性疾患及び突然変異,がん原の7部会が設けられている。

1974年8月,第10回合同委員会が東京で開催され,日米医学協力計画の研究成果の評価及び将来にわたる本計画の優先順位の問題について検討が行われた。

原子力の分野では,1973年12月に発効した日米原子力協力協定に基づき,発電用原子炉に必要なウラン濃縮役務を受ける契約を締結したのをはじめ,原子力施設規制問題,原子炉安全性研究等の分野で情報交換を通じての協力を行つた。

宇宙開発の分野においては,1969年の「宇宙開発に関する日本国とアメリ力合衆国との間の協力に関する交換公文」に基づく技術協力を進めるとともに,日米宇宙会議を2度にわたつてそれぞれ両国で開催した。また,1974年10月,宇宙開発委員会は米国航空宇宙局長官を招へいし,日米両国の相互理解を深め,今後の協力に資することができた。このほか,我が国のポストアポロ計画に対する参加協力の可能性についても検討を進めている。

エネルギーの研究開発に関する日米協力は,1974年7月に発効した「エネルギーの研究開発の分野における協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」に基づき,専門家交流を行つたほか,現在,各協力分野における専門家会合,専門家の交流を中心とした協力を行うための実施取極め作成を検討中である。

なお,1975年4月,日米科学技術協力審査委員会第1回会合が東京で開催され,以上述べた日米両国間の各分野の協力についての背景,現行プログラムの評価及び将来の日米協力の在り方についての意見交換が行やれた。

(2)欧州諸国,オーストラリア等との協力

近年,我が国の科学技術が高度化したことにより,巨大科学技術,環境科学技術等の分野における協力活動が西ドイツ,フランス等の西欧諸国やオーストラリアとの間で進展しつつある。

フランスとの協力については,原子力の分野では1972年に日仏原子力協定が発効して以来,原子力平和利用の面で積極的に協力が行われている。また,宇宙開発の分野では,1974年3月に国立宇宙開発センター総裁を招へいするとともに,同センターを中心に協力を推進することとし,専門家の交流等を通じて協力の具体化のための検討が行われている。

更に,1974年7月,日仏科学技術協力協定が締結され,引き続いて,第1回日仏科学技術混合委員会が開催された。同協定の下で,基礎科学,生物学医学(ライフサイエンス),海洋科学技術等の分野で協力活動が進められている。

西ドイツとの協力については,1967年以来交互に科学技術担当大臣会談を開催してきており,更に具体的に協力関係を推進するため,1974年10月,日独科学技術協力協定が締結された。協力分野は,海洋科学技術,新エネルギー,原子炉安全,生物学医学科学技術,原子力船,環境保護技術等で,専門部会方式により実施されることになつている。

そのほか,我が国と,欧州宇宙研究機構(ESRO)は,1972年に書簡の交換を行い,これに基づき宇宙科学技術及び宇宙計画に関する情報の交換,専門家の交流を図るとともに,行政官会議を,開催し,具体的な協力を進めるべく検討が行われている。

オーストラリアとの協力については,1972年7月に発効した原子力協定に基づき,専門家派遣,情報交換等の形態で協力を行つているほか,一般5の科学技術分野で研究者の交流が行われている。

(3)ソ連等との協力

1973年10月に締結された日ソ科学技術協力協定に基づいて1974年12月,今後の協力の具体化方策を検討するため,科学技術調査団がソ連に派遣された。また,我が国研究機関とソ連科学アカデミー研究機関との学者研究者の交換に関する交換公文に基づいた研究者等の交流も行つている。

以上のほか,近年,東欧諸国からの我が国に対する科学技術協力の要請は強く,1975年4月にはルーマニアとの間で科学技術の分野における協力に関する取極めが結ばれたほか,チェコスロバキア,ポーランド,ブルガリア等から科学技術協力協定の締結申し出があり,現在,協力方式等について検討が行われている。


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