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第2部   科学技術活動の動向
第4章   国際交流の動向
1   国際機関における活動


(1)国際連合及び専門機関

(1)国際連合(UN) 

国連の科学技術活動は,主として経済社会理事会(ECOSOC)の総括の下に,各種専門機関,委員会等を通じて進められている。特に,近年,南北問題解決め大きな鍵となる開発途上国の研究開発能力の育成及び全地球的視野で解決に当たる必要がある環境問題等に関する活動が積極的に展開されている。

まず,開発途上国に関する活動については,開発のための科学技術委員会(CSTD),国連開発計画(UNDP),国連貿易開発会議(UNCTAD),国連工業開発機関(UNIDO),国連教育科学文化機関(UNESCO),国連食糧農業機関(FAO)等を中心に推進されている。国連は1970年代を「第2次国連開発の10年(UNDDII)」として国際開発戦略を決定しており,これに規定される開発への科学技術の適用促進のための諸措置に基づき新たな活動を展開している。

このUNDDIIにおける科学技術の研究開発の推進方策として1971年2月には,「開発への科学技術適用のための世界行動計画」が策定され,1972年8月には,アジア地域についての「開発への科学技術適用のためのアジア行動計画」が策定された。これらの諸計画の具体化については,CSTD,アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)等で検討されている。

1974年3月,ニューヨークで開催された第2回CSTDにおいては,1973年3月の第1回CSTDにおいて採択されたECOSOCへの勧告案(開発途上国に対する科学技術協力等のための量的目標として,1)開発途上国はGNPの1%を科学技術活動に支出すること,2)先進国はGNPの0.05%の科学技術活動援助を行うこと,3)先進国はその研究開発費の10%を開発途上国の研究開発のために振り向けることを勧告した)等に関する討議が行われた結果,各国の科学技術統計を整備する必要性が認められ,経済協力開発機構(OECD),ユネスコ等の協力を得て統計整備を行うことになつた。また,同委員会において,1978年又は1979年に「国連科学技術会議」を開催する旨採択され,1975年に政府間ワーキンググループ会合が開催されることとなつた。

そのほか,1974年7月には,第3回UNCTAD技術移転政府間グループ会合が開催され,特許制度,技術移転に関する行動基準等について検討が行われた(なお,1974年8月,第14回UNCTAD貿易開発理事会において,同政府間グループの技術移転委員会への改組が決定された。)。

次に,環境問題については,「国連人間環境会議」(1972年6月,ストックホルム)で採択された「人間環境宣言及び行動計画」が環境計画管理理事会等の下で実施段階に入つている。1974年3月の第2回環境計画管理理事会においては,国際環境計画のガイドラインが策定され,人間居住機構の設立,第2回国連人間環境会議開催問題等につき討議が行われた。また,国連人間居住会議・博覧会が1976年,バンクーバー(カナダ)で開催されることになつており,その準備が進められている。

一方,この環境問題に加えて,近年,資源・エネルギー問題,人口問題及び食糧問題といつたことが人類共通の課題としてクローズアップされてきており,1974年4月には資源問題について「第6回国連特別総会」がニューヨークで,また同年8月には「世界人口会議」がブカレスト(ルーマニア)で,更に同年11月には「世界食糧会議」がローマで相次いで開催された。

「第6回国連特別総会」は,資源と開発をテーマとして審議され,開発途上国が持つ天然資源の恒久主権と国有化の権利等をうたつた資源総会宣言,行動計画,特別計画の決議案が採択された。

「世界人口会議」の目的は,急激な世界人口の膨張に対応して人々の生活の質を向上させるため,人口の側面から何を成し得るかについて国際的な目標と合意を見出そうというものであつた。会議では,具体的な課題として「世界人口行動計画」が討議され,人口の目標と政策,社会経済政策,各国政府の役割,国際協力の役割等を内容とする決議が採択された。

「世界食糧会議」は,近年の食糧需給のひつ迫と,開発途上国における飢餓の発生に象徴される世界の食糧問題を解決することを目的として開催され,「飢餓及び栄養不良解消に関する世界宣言」,国際農業開発基金の設立,備蓄,食糧情報システム,世界食糧理事会の設立等に関する決議が採択された。

国連ではそのほか,原子力開発,宇宙開発,海洋開発の分野での科学技術協力あるいは国家間の調整についても,それぞれ,国際原子力機関(IAEA),宇宙空間平和利用委員会,政府間海洋学委員会(IOC)等において協力活動が進められている。原子力分野においては我が国はIAEAの理事国として,総会,理事会に代表を派遣し,その活動方針策定に積極的に参加するとともに,各種専門家会合への参加,技術援助計画に基づく専門家の派遣,国際原子力情報システム(INIS)への参加等,IAEAの各種活動に参加している。1974年11月には,東京でIAEA主催の「第5回プラズマ物理及び制御核融合研究国際会議」が開催された。

また,核不拡散条約(NPT)に基づく再検討会議が1975年5月に開催され,我が国もオブザーバーとして参加している。

宇宙空間平和利用委員会は,これまでに,宇宙条約,救助返還協定及び宇宙損害賠償条約を成立させ,また,開発途上国援助の一環としての宇宙応用計画の推進を行つてきた。1974年の同委員会では,宇宙物体登録条約が成立したほか,月条約案の審議,直接放送衛星に関する法原則案の審議及び衛星による地球資源探査に関する法的,技術的検討を行つた。我が国は,これらの審議に積極的に参加するとともに,宇宙応用計画推進の一環として,開発途上国からの衛星通信分野のフエローを受け入れるなど,積極的な協力を行つている。

政府間海洋学委員会(IOC)はユネスコに設置された組織で,加盟国の共同活動を通じ,海洋の性質及び資源に関する知識を増すための科学調査を促進する活動を行つており,1973年11月にパリで第8回総会が開催された。

「第3次国連海洋法会議」は,伝統的な海の国際法を根本的に再検討し,新しい時代の要請にこたえる海洋法を作ることを目的として1973年以来開催されている。まず,1973年12月,ニューヨークで第1会期(組織会期)が開かれ,実質審議を行う体制を整えた。次いで,1974年6月から8月にかけてカラカス(ヴエネズエラ)で第2会期が開かれ,領海幅員,船舶通航,群島水域,資源管轄権(経済水域,大陸棚),深海海底開発制度,海洋汚染防止,科学調査等についての実質審議を行つた。

しかし,実質的合意に至るにはほど遠く,更に,1975年3月から5月にかけてジュネーブで第3会期が開かれ,活発な審議が行われた。第3会期においても各国の利害が直接関連する問題が多いため,意見の隔たりが大きく,実質的な交渉の段階には至らなかつたが,会期末に各委員長作成の単一草案が提示された。1976年ニューヨークにおいて開催される第4会期での交渉は,この単一草案を軸に行われることになろう。

なお,今次海洋法会議には約140か国が参加しており,我が国は,新しい時代の要請や開発途上国の主張を配慮する一方,我が国の大局的利益が確保されるような公正な新海洋法秩序の確立に努力している。

そのほか,国連食糧農業機関(FAO),世界気象機関(WMO),政府間海事協議機関(IMCO)等が,直接,間接に海洋の開発・利用に関与している。

(2)国連教育科学文化機関(UNESCO)

ユネスコの自然科学関係事業は,科学及び技術の発達,環境科学及び天然資源の研究の2本の柱の下に,多様な事業が実施されているが,これらの諸事業の内容は,大別してグローバルな国際共同研究事業と開発途上国援助事業に分けることができる。前者については,「国連人間環境会議」以来資源の合理的利用と環境保全に関する調査研究が次第に拡充されてきており,特に,人文・社会科学との学際的研究を推進することが重視されてきている。

後者については,「第2次国連開発の10年」に基づき,国連開発計画(UNDP)の資金による事業のみならず,ユネスコの正規予算中に占める比重も一層増大しつつあり,アフリカ,ラテンアメリカ,アラブ諸国,南アジア,東南アジアの各地域科学技術事務所の強化と地域協力事業の拡充が進行している。

そのほか,最近の科学技術の発達とその社会的意義について再検討するため,「1970年代の科学・科学進歩の人間的意味」に関する事業が進められている。また,1974年秋の第18回ユネスコ総会においては,「科学研究者の地位に関する勧告」が採択された。

次に,各事業分野における活動の状況について概観する。科学技術情報の分野では,各国の科学技術情報量の飛躍的増大に対処するため,1973年からその国際的流通を円滑迅速にすることを目的とした世界科学情報システム事業(UNISIST)が発足し,先進国間の情報交流と開発途上国援助の両面から多角的に展開されつつある。我が国は,UNISIST運営委員会の委員国に選出されており,1974年に東南アジア地域の科学技術情報ネットワーク形成のための研修コースを日本で開催したほか,国立国会図書館を中心として国際逐次刊行物データシステム(ISDS)に参加している。

基礎科学の分野では,国際原子力機関(IAEA)との協力による国際理論物理学センター(トリエステ)での開発途上国の研究者への援助事業が拡充されつつあるほか,ライフサイエンス(脳細胞の研究及び微生物学,分子生物学)及びコンピュータ科学等が重点的に推進されている。我が国はこの分野では,1973年10月以来大阪大学を中心として「微生物学国際大学院研修コース」を開設している。また,1975年から微生物学及び天然物化学の分野において,東南アジア諸国の研究機関間のネットワーク形成のためにユネスコに信託基金を提供することになつた。

技術及び工学における研究・教育の分野では,エネルギーの効率的利用,特に太陽エネルギー等新エネルギーの利用に関する国際協力事業が拡充されつつあるほか,工学教育の内容,方法に関する検討も行われている。この分野では我が国は,東京工業大学で「化学・化学工学国際大学院研修コース」を1965年以来継続開設しているほか,九州大学において「地熱エネルギー研修コース」を1969年以来毎年実施している。また,1973年10月に発足した東南アジア工学教育協会には日本工学教育協会が参加している。

環境科学及び天然資源研究の分野では,人間と生物圏事業計画(MAB),国際地質対比計画(IGCP),政府間海洋学委員会(IOC)の諸事業がそれぞれ進展している。また,国際水文学10年計画(IHD)の終了に伴い,1975年から新たに国際水文学事業計画(IHP)が発足することとなつた。

これらの計画はいずれも人類の生活環境としての地球の実態を明らかにし,天然資源の合理的利用と環境保全のための科学的基礎を提供しようとする長期的な国際共同研究事業であり,MAB国際調整理事会,  IGCP委員会,IOC総会・同執行理事会,IHP政府間理事会がその国際調整に当たつている。我が国はこれらの理事会等のすべてに理事国,委員国の立場で積極的な参加を行つている。1975年3月には,IOCの事業である黒潮共同調査(CSK)の第10回国際調整グループ会議が東京で開催され,  CSKを1976終了した後,西太平洋海域作業委員会を設置して地域協力を進める旨の勧告を採択した。また,IHPに関しては1975年秋に代表流域・試験流域における研究研修コースを日本で開催する予定である。

そのほか,自然災害の分野でのユネスコの事業の拡大も検討されているが,この分野では,我が国は地震学,津波警報組織等の面において積極的な貢献を行つてきている。

(3)その他

アジア極東経済委員会(ECAFE)は,近年における活動分野並びに加盟諸国の広域化に対処するため,1974年9月,名称をアジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)に変更した。

これは,近年,経済開発と同時に社会開発の重要性が強く認識されてきたことと,太平洋諸国が次々に加盟したことにより,この動きを反映するため「社会」と「太平洋」を追加したものである。

ESCAPとしての最初の総会(第31回総会)は1975年2月〜3月にニューデリー(インド)において開催され,ESCAP地域の開発政策の計画及び展望,食糧及び農業・天然資源等の各分野における活動の検討等が主要議題として審議された。

世界気象機関(WMO)は,気象観測及びそれに関連する地球物理学的観測並びに情報サービスの調整,統一,改善を図ることを目的としている。我が国は世界気象観測計画(WWW),地球大気開発計画(GARP)等の計画に参加,協力しており,その一環として静止気象衛星の打上げを計画している。

また,国連大学については1973年12月,「第28回国連総会」において大学本部の日本設置が決定され,1974年12月,東京・帝国ホテル内に本部仮事務所が開設された。現在,本部設置のための協定案,研究訓練センターの受入れ等について検討が進められている。

(2)経済協力開発機構(OECD)

OECDは,その目標として高度経済成長と生活水準の向上,開発途上国援助,世界貿易の拡大を掲げており,これらの目標達成のためには科学技術の振興が不可欠であるとして,加盟国間の科学技術に関する協力を積極的に進めている。

OECDにおける科学技術に関する活動は,科学大臣会議,科学技術政策委員会(CSTP),環境委員会,OECD原子力機関(OECD-NEA),国際エネルギー機関(IEA)を通じて加盟国間の政策調整,情報及び人材の交流,統計資料等の作成,共同研究等の形で行われている。

1975年6月,「第5回科学大臣会議」が,「複雑な諸問題解決のための科学技術」をテーマに,1)政策策定における科学技術の役割,2)研究システムの管理運営,3)科学技術及び社会,4)市民参加の必要性,5)天然資源の新しいビジョン,6)国際協力を主要議題としてパリにおいて開催される予定である。

1970年に設置された環境委員会では,経済政策,産業政策,科学技術政策等の幅広い視点から環境問題を検討しており,大気管理,水管理,都市環境,有害化学品の各セクターグループ,廃棄物管理政策グループ等でそれぞれの分野の専門家による政策的,技術的検討を行つた。1974年11月には「第1回環境大臣会議」が開催され,環境政策に関する宣言及び10項目の行動計画(化学物質の環境に与える潜在的影響の評価,エネルギーと環境,汚染者負担の原則の実施等)を採択した。同会議により, OECDにおける環境問題の検討に新しい方向が与えられたと言える。

原子力分野については,OECD-NEAで協力活動が行われており,我が国は正式加盟国として各種会議に出席し,情報交換等に努めるほか,共同事業のハルデン計画,新国際食品照射計画,中性子データ編集センター及び計算機プログラムライブラリーに参加している。

また,国際エネルギー計画(IEP)の実施機関として1974年11月にIE AがOECDの枠内に設置された。IEPは,1974年2月に開催されたワシントンエネルギー会議のフォローアップ機構として設置されたエネルギー調整グループ(ECG)が策定したもので,緊急対策として石油の備蓄,需要抑制,石油の融通を挙げ,長期協力として合理化等による省エネルギー,代替エネルギーの開発,その他の研究開発課題を挙げている。

(3)国際学術連合会議(ICSU)等

国際学術連合会議は,非政府機関の国際学術連合組織として,科学を人類の福祉に役立たせるためにその国際的な奨励を目的とし,特に,自然科学の分野における学術団体の活動の促進及び諸国際学術団体の調整のための機関として重要な地位を占めている。会員は現在64のナショナルメンバー(各国科学アカデミー,学術研究会議等)と17のサイエンティフィックメンバー(各種の国際学術連合)とからなり,我が国では日本学術会議がナショナルメンバーとしてこれに加盟している。

ICSUは,現在,内部の各種の科学委員会や他の組織との協力委員会を設置するなどにより,国際共同事業を発展させ,国際的規模による学術活動を促進している。国際協力事業としては,南極地域観測,国際生物学事業計画(IBP),国際地球内部ダイナミックス計画,(GDP),地球大気開発計画(GARP),太陽地球環境国際観視計画(MONSEE)等がある。また,1976年から1978年まで国際的な太陽,地球系空間観測事業の一環として,国際磁気圏観測計画(IMS)の推進を決定し,目下計画の調整を行つている。以上の国際協力事業のほかにも共同研究として,宇宙飛しょう体による宇宙空間観測計画,海洋研究計画,国際水資源の研究と合理的利用の問題研究,複合領域内における特定問題の研究,人間生物の生存環境に関する問題の研究,環境問題の研究及び科学教育に関する研究を実施している。

更に,開発途上国における科学技術の促進のための活動,科学技術のデータの国際的な収集,配布等の活動を続けている。

アジア科学協力連合(ASCA)は,アジア,オセアニア諸国間の科学技術協力を推進するため各国の科学技術政策に関する情報交換等を行うとともに,科学技術分野の共同研究開発の実施について積極的に検討を進めている。1974年4月,ニューデリーで開催された第3回会議では,特に,研究開発の共通優先分野(主要食糧の高収量品種,食用たん白,低コスト住宅,新エネルギー源,金属腐蝕,農産物貯蔵調製技術,科学情報,低品位鉱の高品位化,薬用植物等の26分野)が明らかにされ,その実施方策等について検討を行うこととなつた。

1974年2月に東京で開催された東南アジア基礎科学地域協力専門家会議では,ユネスコの下で基礎科学協力を促進させるため,域内大学及び研究機関間の連携強化,ネットワークの構成等について検討を進めることとなつた。

東南アジア開発閣僚会議は,1974年11月,マニラで第9回会議が開催され,第8回会議に引き続き東南アジア医療保健機構,東南アジア工科大学設置問題等を検討した。


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