ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   安定的発展への新たな要請と科学技術
第4章   産業の新展開に貢献する科学技術
第4節   共通的基盤的科学技術の動向
8   微生物利用技術


微生物を利用する技術は,生物科学の発達とともに,食品工業,化学工業,医薬品工業などに導入され,著しい発展を見せてきた。最近においては,公害,エネルギー,原材料等の問題,あるいは量産方式による産業の伸び悩みなどのために,既存の化学系の企業等が微生物利用工業に部分的転換を志向する傾向も見られる。このように微生物利用技術は,広範な分野における基盤技術として一層の発展が見込まれるとともに,その重要性を増しつつある。

近年の微生物利用技術の応用は,溶剤,有機酸等の製造への応用から,抗生物質,アミノ酸,核酸関連物質などの製造へと推移してきたが,その主体原料は,でんぷん,糖みつなどの糖質類であつた。しかし,最近では,これら農産物以外に,石油,天然ガスなどの炭化水素やメタノールなどの石油製品あるいは炭酸ガスなどを原料とする技術の開発が進められている。また,利用する微生物も従来の細菌,酵母などから,藻類,原生動物,プランクトン,更に,動植物の細胞組織にまで及んでおり,生産される製品の種類も多様化している。

微生物の持つ物質の分解,合成,集積などの機能は,ホルモンなど生理活性物質の製造,各種化合物の転換,あるいは,鉱石の湿式精錬などの新しい分野にも利用されてきている。更に,これらの機能は各種廃水の処理にも利用され,石油化学コンビナード廃水の処理や,有害,有毒物質の分解処理などにその応用範囲を拡大している。

微生物が生産する酵素の利用も著しいものがある。ブドウ糖を果糖に変えるグルコース,イソメラーゼ,てん菜糖の収率に寄与するメリビアーゼなどをはじめ,新しい酵素が開発される一方,酵素を不溶化する技術の進展によつて,酵素を通常の無機触媒のように反復使用すること,あるいは,連続反応を行わせることも可能となつてきたため,その工業的応用は大きく進展するものと予想されている。

そのほか,微生物を利用する食糧資源の製造,燃料資源の製造,微生物利用による農業病害虫の防除等も研究されており,微生物利用の技術分野は,今後ますますその範囲が拡大されるすう勢にある。

このように微生物の利用技術が発達したのは,有用な微生物,酵素の探索技法の進展,微生物の代謝様式,機能についての知見の蓄積及びそれに基づく代謝制御法の発達,微生物,酵素等の高度利用を可能とした微生物工学技術の著しい進歩などのためである。

微生物利用技術においては,今後,食糧あるいはエネルギー資源等の開発,新酵素の開発と高度活用,微生物の機能の効率的利用などが期待されている。

これらの期待にこたえるには,微生物に関する知識の一層の集積を図るとともに,利用のための培養工学技術を更に発展させることが必要とされている。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ