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第1部   安定的発展への新たな要請と科学技術
第4章   産業の新展開に貢献する科学技術
第4節   共通的基盤的科学技術の動向
2   材料技術


現在の科学技術は,高度な反応を実現させるための極低温,超高圧等の極限状態の利用を必要とし,対象物の高速,大型化等に耐え得るための高強度材料等が必要とされている。更に,ライフサイエンス等の新しい分野に対しては,生化学的機能を持つ材料が必要とされ,このほか電子や光を利用する分野の材料開発が期待されている。

材料技術は,こうした極めて多くのニーズにこたえ,各分野の技術進歩を促進する基盤的技術であり,高分子材料,金属材料,無機材料に関しては新たな素材,加工法及び用途の開発が行われている。また,最近では各々の利料を組み合せた複合材料の発展が目覚ましく,今後の発展が期待される。

(1)合成高分子材料

最近の高分子の完成技術分野では,加工時における歩留まりの向上,使用後の高分子の回収・再利用技術が重要視されている。

研究開発分野では,いまだ合成物では具現し得ない天然高分子材料の高度な性能(例えば,絹の肌ざわり,羊毛の保温性や吸湿性,木材の建材としての強度,廃棄後の自然サイクルへの同化など)への挑戦,あるいは全く新しい,超高機能材料の創出にその方向が絞られてきた。

このような流れの中にあつて,特筆すべき研究の方向の一つに生命科学の領域へのアプローチが挙げられる。

それは,最近の高分子分野における手法の高度化により生体のような複雑な系にもアプローチできるようになつたということばかりでなく,人類福祉のための科学技術という基本的ニーズにもこたえられるものであるからと言えよう。

現在,生体高分子の構造と機能の関係について分子論的解明が成されるとともに,生体高分子自身あるいはそれらと類似の機能を示す高分子(例えばホルモン類,合成酵素など)が次々と合成され, 一部は実用にも供されている。更に,生体組織の機能がシステム的に解析され,完全とはいかないまでもその機能を代用できる機器も開発され,例えば人工腎臓やソフトコンタクトレンズのように既に実用の域にあるものも出てきた。人工腎臓では血液から尿素などの老廃物のみを選択的に除去するために高選択性高分子膜が使用されている。高選択性高分子膜については同時に限外ろ過,逆浸透,水処理など広い応用分野で高度な技術開発が進められている。

高分子合成分野では,光固相重合法により合成される高分子結晶集合体(例えばポリーDSP) 注) が天然高分子に類似する挙動を示し,天然高分子シミュレーションモデとして注目されている。


注) 2.5-ジスチリルピラジン

この外に,複雑なリガンド構造を持つ金属イオン選択吸着用キレート樹脂,感光性樹脂,ペプチド固相合成用支持体,ガスクロマト用固定相の進歩など,年とともに有機,無機,生化学,医学,物理化学的方法の高分子材料領域へのきめ細かい適用が目立つてきている。

例えば,光記録又は記憶用材料に関しては,電算機など電子機器の高密度化に対応する材料として光メモリー,ホログラフ,更にはオプトエレクトロニクス用素子のために種々の合成高分子材料と光導電性物質との複合系が研究されている。

送電材料に関し,では,高効率電力輸送のための低誘電損失耐熱性高分子材料や超電導送電用の極低温での電気特性の優れた材料などの研究が行われている。

高分子複合材料分野では,画期的なFRP用強化材として異方性ドレープの湿式又は乾式紡糸による芳香族系合成繊維が出現している。

また,スピロピラン系低重合体成分と光導電性無機微粉体の組合せによる光電子印電システムが開発されている。

このほか,最近研究開発ないしは市場開発がなされているものとしては炭素中空球,微細含水ゲルと汎用プラスチックからなる難燃性複合材料,天然木材と合成高分子の複合によるW00d Plastic Combination(WPC),モノマー含浸コンクリート,深海用浮力材(シンタクチックフォーム)などが挙げられる。

(2) 無機材料

無機材料は特異な性質を多く有しており,日常生活の申にも多数取り入れられている。例えば,電気コタツ,電子ジャーのサーミスターにはチタン酸バリウムの焼結体が,ガス器具の点火に用いる圧電素子にはチタン酸鉛の焼結体が,カメラの露出計には硫化カドミウムの焼結体が用いられている。

この外にも電気的,熱的,光学的,化学的に特徴のある性能を示すものが数多くあり,その有用性が大きく期待されている。例えば,合成ダイヤモンド,合成水晶などは半導体,光導体,発光素子への応用が考えられ,ホウ化ランタンは熱電子放射陰極材料への応用が考えられる。この外,チッ化ホウ素の研削材への応用やチツ化ケイ素の高温ガスタービン部品への応用,亜酸化アルミニウムの太陽光吸収板への応用など多くの例が考えられる。

これからの無機材料の研究としては,光通信用の光導波路ファイバーグラスや急温急冷に強い結晶化ガラスなどの研究のように,無機材料の特性を生かした新しい用途開発のための研究が進められている。

(3) 金属材料

金属材料の開発については,石油や天然ガスの大量輸送に不可欠なパイプライン用などの高張力鋼の開発が精力的に行われているほか,ウラン濃縮遠心分離機や深海潜水船などに用いられる超強力鋼の研究も進められている。

また,アルミニウム合金では,車両の軽量化を目指した溶接構造用合金への利用が拡大されている。

耐熱耐食材料の研究では,高温ガス炉の開発に伴う熱交換器用耐熱材料やヘリウムタービン用耐熱材料の研究開発に加えて,原子炉化学プラントなどの安全確保の見地から局部腐食に強いステンレス鋼の研究も行われている。

また,高速増殖炉や核融合炉などに用いられるバナジウム,ニオブなどの高融点金属の研究も長期的な展望の下に進められている。

核融合炉やMHD発電装置の開発に必須であり送電ケーブルや電気機械の省エネルギー化にも貢献する超電導材料の開発は,線材加工技術の研究と相まつて急速に推進されており,これと関連して極低温用構造材料の研究も開始されている。

複合材料については,昔から刀剣などに例が見られるが,最近では,金属系複合材料の骨格素材としてタングステン,ボロン,炭素などの長繊維が開発されている。また,短繊維としては,ひげ状の極く細い外観を持ち,無欠陥性の単結晶であるため理論強度に近い高強度を示すウイスカーが開発されている。


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