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第1部   安定的発展への新たな要請と科学技術
第4章   産業の新展開に貢献する科学技術
第3節   技術開発の新展開
2   省資源技術


省資源対策は省エネルギー対策と密接なかかわりを持つものであるが,資源は,エネルギーのように使用と同時に消費放散されるのと異なり,使用した後も形を変えて存続するという特徴がある。機器等の使用の合理化や規格の統一,消費の合理化も省資源対策の1つに挙げられるが,特に科学技術の果たす役割の大きい技術開発課題を分類すると以下のように大別できる。

1) 生産プロセスの改良と新プロセスの開発
2) 製品の改良と新製品の開発
3) 廃棄物の回収再生利用
4) 資源の代替
5) 未利用資源の活用

科学技術庁計画局が昭和49年度に実施した民間企業における,従来あるいは今後の省資源化の方法の調査によると (第1-4-7図) ,従来,今後とも生産プロセスの改良がトップを占めており,依然としてその必要性の高いことが認められる。一方,新製品,新生産プロセスの開発とともに,資源の再生利用の比率が増大しており,各企業において積極的に取り組もうとしている姿勢がうかがえる。反面,製品の寸法・規格の見直し及び耐久性の向上については大幅にその比率が低下しており,現在ある程度の段階に達していることを示しているが,耐久性の向上については今後更に研究開発を推進することが望まれる。

第1-4-7図 民間企業における,従来あるいは今後の省資源化の方法

以下,それぞれの課題について研究開発の動向を述べる。

(研究開発の動向)

(1)生産プロセスの改良と新プロセスの開発

生産プロセスの改良・開発は省エネルギー技術の項で述べたが,同時に,省資源効果も期待できるものが少なくない。特に,従来の生産プロセスの直接化を図ることは単に省資源のみにとどまらず,公害防止の上からも極めて有効であり,現在,原油の直接分解技術等の研究開発が進められている。

原油直接分解法は,事前にある程度熱せられた原油を約2,000°Cの高温蒸気で素早く分解し,エチレン等の基礎原料を得るもので,従来のナフサ分解に比較してエチレンの収率が飛躍的に増大するため,省資源効果が極めて大きい。

(2) 製品の改良と新製品の開発

資源の消費効率の良い省資源型機器の開発は省資源対策として重要であるが,その代表的なものとして近年のエレクトロニクス技術の発展が挙げられる。例えば,真空管一トランジスターIC-LSIという技術の進歩は機能の向上を目指すものであつたが,同時に省資源への歩みであつたとも言え,今後はこのように,機能の向上とともに資源の節約を期待できる節約型技術が従来以上に高く評価されてくるであろう。

また,製品等の材質や耐久性を高めることによつても資源消費量の節減が期待できる。現在,新強力材料としてウィスカー等の複合材料の研究開発が進められており,更に強度を高めるための添加剤,あるいは表面処理技術等についての研究開発も進められている(第3章参照)。

(3) 廃棄物の再生利用

都市ゴミ等の一般廃棄物及び産業廃棄物の再生利用は,公害防止に役立つだけでなく省エネルギー効果を期待できる場合もあるが,使用した後も形を変えて存続するという資源の特性上から見て,省資源を図る上で極めて重要な要素の1つと言える。このため廃棄物を成分に応じて素材回収するだけでなく,ガス化,油の抽出等により燃料としても有効に利用する技術の研究開発が活発に推進されている。

都市ゴミ等の一般廃棄物は,紙,金属,ガラス,プラスチック等のほか家電製品や自動車等の粗大ゴミに至るまで実に雑多な要素を含んでいる。そのため,一般廃棄物のリサイクルを効率的に行うには,収集・輸送技術,破砕技術,分別技術並びに再生処理技術等の各サブシステムの研究開発を廃棄物の性質や地域性も考え合わせて推進する必要があるが,それらをいかにしで他の社会システムに適合したトータルシステムとするかが最大の課題である。

ここで特に留意する必要があるのは,廃棄物の再生利用が環境悪化の原因とならないこと,容易に再生利用が図れるよう生産段階で配慮すること,更に,再生物の市場確保を図ることなどである。

収集・輸送技術については,真空,圧送,スラリー方式等によるパイプライン輸送が種々研究開発されている。また,破砕技術については常温での衝撃力,せん断力を利用した常温破砕技術が実用化されているが,騒音,粉じんの発生等の問題があり,液体窒素等の冷媒を用いて低温におけるぜい性を利用した低温破砕技術や,廃棄物の切断にレーザービームを応用する技術が注目されているが,これらはまだ開発途上にあると言える。

分別技術については,磁力,風力,比重比,その他電気的,光学的,熱的特性等の差を利用した技術の開発が進められているが,これらについてもまだ十分実用化されているとは言えない。

最終的な処理技術については,まず物理・化学的方法として,焼却処理の排熱を回収して地域冷暖房及び発電等に利用する熱回収技術,紙類,プラスチック,金属等の有用資源を回収,再生する素材回収技術,熱分解処理により可燃性ガスや燃料油を抽出する燃料回収技術がある。また,生物学的方法として,厨介等のような湿つた廃棄物をメタン発酵法等によりガス化する燃料化技術並びに飼・肥料化技術等がある。

熱分解技術は,廃プラスチックや廃タイヤから単に素材を回収するだけでなく,マイクロウェーブ等の利用により加熱・溶融・液化し,石油,ガス等を回収する技術で,実用化段階に入りつつあるが経済的な面でまだ問題がある。

また,メタン発酵法は,有機性物質の嫌気性処理法として下水処理における汚泥の処理や工場排水の処理等に実用化されているが,活性汚泥法等の好気性処理に比較して消費電力も5分の1から10分の1で済み,回収ガスを燃料にも利用できるため,省エネルギー効果も大きい。

しかし,これらの個々の技術をトータルシステム化したリサイクルシステムについては実用化の段階には至つておらず,現在,種々の方式の研究開発が推進されている。通商産業省工業技術院では,昭和48年度より3か年計画で「資源再生利用技術システムの研究開発」を取り上げ,固型廃棄物の処理・再生利用技術システムの研究開発を推進している。また,科学技術庁資源調査会では,廃棄物を排出時点で分別し,分別したものの収集・輸送・処理を行うという考え方に立つた「生活系排出物の有効利用を図る輸送と処理に関する調査報告(昭和50年3月)」を行つている。このほか,厚生省では,昭和47年度から3か年計画で地域内における一般廃棄物の再生利用システムの確立を主たる目的とした「中小都市の廃棄物処理システムの設計研究」を行つた。

次に,産業廃棄物については,各産業固有の廃棄物を排出するため各産業ごとに再資源化の方法は異なり,前述の処理技術のほか脱硫廃触媒からの金属回収技術の開発等が行われているが,主体は,軽量骨材,建材等の建築用資材としての再利用である。例えば,石油の脱硫過程で副生する石こうから人工建材を作る技術,パルプ廃液やメッキスラッジ,赤泥,金属鉱山スラッジ等からボードを製造する技術,製鉄業の高炉スラグや製鋼スラグをコンクリート骨材として再利用する技術等が研究開発中である。

そのほか,間脱アスファルトを分解して高密度炭素材料や炭素質建材,高強度コークス等を製造する技術や石油精製の残滓である重質油から化学原料を取り出す技術等が研究開発申であるが,今後は,金属回収技術が公害防止の観点からも大きな課題と言える。ただし,産業廃棄物の中には有害重金属等を含有するものも少なくなく,これらの最終処理については現在基準が定められているものの,再資源化を行う場合の基準は設定されていないので,再生利用の形態を取る場合の安全性について,今後,基準を検討する必要がある(公害防止技術の項参照)。

(4) 資源の代替

初期の有機化学工業においては,炭化水素源は主に石炭に求められていたが,近年では石油原料の供給が不可欠の存在となつている。このような原料の代替の可能性は技術や経済性の両面から見て可能なものが少なくなく,省資源を図る上で重要である。その方向としては,豊富でしかも低廉な他の資源に置き換える方法と,人工的に他の資源を開発する方法がある。

化学工業部門は一連の石油危機により様々な教訓を与えられたが,石油化学工業を中心として,以上の観点から再検討することも必要と思われる。例えば,石炭,石灰石,水等から炭素,水素を得,海水から塩化ナトリウム等の無機原料を得て,これらを主原料とした化学工業の体系を築くことも考えられ,安価な電力や蒸気の確保さえできれば技術的には可能であり,将来においては新エネルギーの開発にマッチした研究開発が必要であろう。

また,類似物質による代替については,第3章で述べたような成形コークス技術による強粘結炭の代替,電力・通信ケーブルの銅からアルミニウムヘの代替及び人工ダイヤモンド,人工ルビー等人工物質による代替がある。

そのほかこの分野で近年特に注目されているものに複合材料による代替がある。「アルミより軽く,鉄より強い」と言われるFRPはその代表例である。

FRP(Fiberglass Reinforced Plastics)は種々の合成樹脂に各種補強材を加え,機械的強度を高めた「強化プラスチック」の総称である。現在使用されている合成樹脂及びその補強材は,不飽和ポリエステル樹脂とガラス繊維が90%近くを占めており,各種工業プラント,住宅資材,船舶・車両等に幅広く用いられている。

(5) 未利用資源の活用

未利用資源としては,利用技術が確立されていないため未利用であつた資源と,低品位のため従来の技術では経済性から見て利用されていなかつた資源とが考えられる。

前者の例としては,第3章鉱物の節で述べたシラスの利用のほか,ワラやバガス(砂糖キビの搾りかす)のパルプ化等の研究開発が進められている。

後者については,第3章で述べたようなバクテリア・リーチング技術が注目されている。


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