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第1部   安定的発展への新たな要請と科学技術
第4章   産業の新展開に貢献する科学技術
第1節   産業技術への新たな要請


戦後において目覚ましく発展した我が国の産業技術は,産業基盤の強化,国民への安価豊富な財,サービスの提供等に大きな貢献をしてきており,その水準は今や多くの分野で先進国に追いついたと言われている。

その発展には,国の諸施策等による重点的なバックアップもあつたが,民間企業が戦後の荒廃から立ち上がり,先進国へのキャッチ・アップを目指し,激しい競争を行いつつ復興と革新への意欲を持つて外国の優秀な技術の導入を図り,研究開発に努力するなど主導的な役割を果たしてきたことによつて達成されたものである。

従来,我が国の産業の発展とそれを支えた産業技術の特質を規定した主要な要件を,次のようにまとめることができる。

1) 勤勉で知識水準が高くて賃金が安い労働力が豊富に存在したため,先進国との間の労働生産性及び技術水準における格差をカバーできたこと
2) 資源・エネルギーが豊富,安価に輸入できたため,大規模化によるメリットの大きい鉄鋼,石油化学,造船,自動車等マス・マーケッティング産業(大量生産産業)に依拠して経済成長が可能であつたこと
3) 我が国と先進諸国との間には技術格差が存在し,しかも先進国においては技術革新が活発であつたため技術導入が容易であつたこと,また,我が国の高い知識水準に依拠して導入された多くの技術の多様な応用が可能であつたこと

しかし,現在,このような要件は,短期及び長期における世界的な資源・エネルギー需給のひつ迫,マス・マーケッティング産業等の発展による環境問題の重大化,賃金水準の先進国への接近,我が国を含めた先進国における技術革新の停滞等によつて大きく事情は変つてきた。

また,社会発展の推進,安全の確保,その他多様化する国民のニーズへの対応等への要請は一層強まつている。

このような状況の下で,我が国が高密度社会を営んでいくためには,環境の保全,安全の確保等国民福祉の向上を図るとともに,資源・エネルギーの消費を抑えつつ貿易立国を進める必要がある。そのための産業技術の課題は,あらゆる産業において省エネルギー,省資源,省力,安全化,公害防止等の技術の開発適用を進めると同時に,高性能で加工度の高い製品を生産し,更には,知識あるいは技術そのものを商品化し,これらを輸出の主体としていくことである。また,そのためには多くの研究開発を支え,あるいは革新的な科学技術の芽を培養するなどにより,科学技術全般の一層の発展に貢献する共通的基盤的科学技術の振興が極めて重要である。

以上のことがらは,産業の発展に直接貢献するのみならず,第2章で述べたように国民福祉向上に貢献すると同時に,新たな需要を生み出し,新しい産業発展の芽となり得るものである。

これらの課題を達成するためには,前述した要件の変化等により,研究開発は従来のように外国からの導入技術の消化吸収に重点が置かれたものから独創性の高い技術の開発に重点を置きつつ技術開発力を高めるものへと移行していくことが必要である。

このような観点から本章では自主技術開発力の強化について述べるとともに,上記の諸課題のうち,他の章で述べたものを除く省エネルギー技術,省資源技術,省力化技術,安全化技術,公害防止技術及び共通的基盤的技術の動向について述べることとする。


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