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第1部   安定的発展への新たな要請と科学技術
第3章   国際的視点に立つた資源・エネルギーの確保に貢献する科学技術
第4節   鉱物資源


1 現状

世界における鉱物資源の利用状況を見ると,ここ数年来,消費量が急速に伸びてきたことが指摘される。銅,鉛,亜鉛,錫,アルミニウム,ニッケル,粗鋼という主要鉱種の年間消費量は,世界全体で3%ないし5%の割合で伸びており,我が国においてはその割合は更に高く約4%ないし13%の平均伸び率を示している。また,我が国の消費量の世界に占める割合は,これらの鉱種のほとんどが10%を超えており,粗鋼に至つては15%(ただし生産量)に達している (第1-3-8表)

このように鉱物資源の消費量が増大した理由は,近年の工業生産を主とする経済活動が活発化したことによるものであるが,反面,鉱物資源の有限性による枯渇問題,環境汚染問題は,消費量増大に対し厳しい制約を与えつつある。

主要鉱種について推定埋蔵量を最近の生産量で除した可採年数は,銅,鉛,亜鉛については20数年〜30数年であり,このまま消費増大が続けばそう遠くない将来枯渇してしまうことが予想されている (第1-3-9表)

また,銅の主な資源保有国であるザンビア,ザイール,チリ,ペルー4か国によりCIPEC(銅輸出国政府間協議会)が結成されたこと及び鉄鉱石についても,その輸出国であるオーストリア,インド,ベネズエラ等10数か国による鉄鉱石供給に関する統一機構結成への動きなど,いわゆる資源ナンョナリズムによる資源保有国の結束は,消費国にとつて新たな関心と配慮を呼び起している。特に,我が国は,金属鉱物をはじめ重要鉱物資源のかなりの割合を海外に依存しており,我が国における鉱物資源の安定確保に関しては厳しい情勢と言わざるを得ない (第1-3-10表)

第1-3-7表鉱物資源の分類

このように鉱物資源利用量の増大に伴う枯渇問題,環境汚染問題,海外情勢への対処等様々な問題を解決しながら,我が国における鉱物資源の安定確保を図つていかなければならない。このためには,資源の消費をできる限り抑制するいわゆる省資源を図る一方,鉱物探査及び採取方法の改良,未利用鉱物資源の資源化,鉱物資源の代替等を推進する必要があり,また,それと同時に環境保全対策も必要とされる。

このため,鉱物資源利用における省資源技術とともに鉱物探査技術及び鉱物資源採取技術,未利用資源の資源化技術,資源代替技術,公害防止技術等の研究開発を強力に推進することが必要とされ,併せて国際技術協力にも意を注ぐことが必要である。

第1-3-8表 我が国及び世界の主要金属鉱物資源の消費量

以下,これらの最近の動きを見ていくこととする。なお,石油,石炭等の化石燃料鉱物については,第2節(エネルギー資源)の項で既に述べたとおりであり,また,省資源技術,公害防止技術については第4章(産業の新展開)で述べる。

第1-3-9表 世界の主要金属鉱物資源の埋蔵量と可採年数

第1-3-10表 我が国の主要金属鉱物資源の海外依存度

2 研究開発の動向

(1) 鉱物資源探査技術

鉱物の探査技術には,物理探査技術,地化学探査技術等がある。物理探査技術には磁力探査法,地震探査法,重力探査技術,電気探査技術等がある。

地化学探査技術は,主として地下水,河川,土壌,草木,樹木等を化学的に分析し,地下資源の発見を行う技術で,物理探査技術に比較して軽装備のためコストが安価であり,物理探査技術と併用することにより効果を発揮するものである。

従来,鉱物の探査は,地面に露出しているかあるいはあまり深くない鉱床を対象として進められてきたが,このような鉱床が数少なくなるにつれて深い鉱床の探査が必要になり,しかも効率向上あるいは自然保護的な観点から広い範囲にわたる探査が要求されてきている。このため,主として地上における小規模かつ詳細な探査に加えて,航空機,バルーン,人工衛星等による高空又は字宙からの物理探査等を応用した大規模な探査技術が有効な手段となりつつあり,更に,コンピュータを導入し,データの効率的整理・分析を行う総合的探査システムの検討が行われている。また,深海底に存在するマンガン団塊等の探査のためのテレビ装置等の開発も進められている。

このうち,空中探査技術は,広域にわたる地質構造の特性を効率良くは握できるので,海外においては盛んに研究開発が行われている。我が国の地形・地質は複雑なため精度の高い情報が要求され,まだ十分に活用されてはいないが,技術の進展によるデータ精度の向上につれて我が国においても有力な手段になるものと考えられる。空中探査は,航空機などに搭載された空中磁力計その他の測定器あるいは測定システムにより地盤から生ずる磁気,電磁気,重力,放射能等の分布状況をは握し,そのデータ分析を行うものである。最近は,影像(写真等)を利用する新しい手法の登場が注目を引いている。

空中磁気探査は,岩相の磁化率の差違によつて生ずる磁気異常を連続的に測定することによつて地質の堆積形状を求めるものである。空中電磁探査は,天然又は人工的に印加された交番磁界(一次磁界)により地下に賦存する電導性鉱床(導体)内に発生する誘導電流(渦電流)を検出することにより電導性鉱床を発見しようとするものである。空中放射能探査は,地表の放射能強度分布をガンマ線スペクトロメトリにより測定するもので,ウラン鉱床の検出のみならず花崗岩質岩体ないしは岩相の差違の弁別が可能である。

影像系の空中探査は,写真地質学的手法等により赤外線領域をはじめとする電磁波の広範囲な利用を行う最も新しい探査技術であり,今後この研究開発が盛んになるものと予想される。

(2) 鉱物資源採取技術

(1) 鉱物採掘技術

鉱物採掘技術には,露天採掘と坑内採掘,それに特殊な方法による採掘が挙げられる。

露天採掘技術は,地表面に鉱床が露出している場合あるいは鉱床が地表面の近くに存在する場合に適用され,採掘に要する機械類は,直径25cm,深さ15m程度の爆破孔を削孔する回転式削岩機,15m 3 の容量のバケットを持つ電気ショベルなどである。砂層の中に含まれる砂金,砂錫,重砂等の有用鉱物の採掘には,ドレッジング,水カジェットと呼ばれる方式がある。

坑内採掘技術は,鉱床が地下深くに存在する場合のもので,鉱床に到達するための坑道が必要であり,立坑,斜坑,横坑(通洞)の方式がある。坑道の掘進は,削岩機を使用するが,最近では,トンネル細進機あるいは大口径ボーリング機も使用されている。坑内採掘は,地下水,地熱,地圧に対する安全技術が必要とされる。

特殊採掘技術は,例えば硫黄採取の際,2重管を地下に降し一方の管に160°Cの過熱水を圧入し,もう一方の管から溶解した硫黄を吸い上げるフラッシュ法(メキシコ,アメリカ等のみで,我が国では使用されていない。),あるいは酸化鉱から銅を希硫酸で溶かし出すリーチング(浸出)法が挙げられるが,新しい採掘技術として注目されているものに微生物を利用したバクテリア・リーチングを挙げることができる。これはバクテリアを含む水を鉱石に注入し,銅を含む流出溶液として取り出し精製する方法で,廃鉱の再開発に利用できる可能性がある。対象となる鉱種としては,銅,ウランだけでなく,その他の金属についてもバクテリアの作用を受けるという研究結果を得ており,実用の可能性が検討されているが,バクテリアが地下水や一般河川等に流出したさいの影響についても併せて検討する必要性のあることが指摘されている。

採掘に伴う事故を防止したり,その要因を探る安全確保のための研究も鋭意進められている。

(2) 深海底鉱物資源・マンガン団塊の採取技術

太平洋など広い海域の深海海底に豊富に存在するマンガン団塊開発については第3次海洋法会議で関心を集め,その国際的取決め等について議論が進められた。マンガン団塊の大きさは人間のこぶし大程度のものが多く,成分はマンガンが30〜40%で最も多く,その他,ニッケル,銅,コバルトが,数%の割合で含まれている (第1-3-11表) 。このマンガン団塊が太平洋の深海海底に多数存在していることを確認したのはアメリカのカリフオルニア大学のJ.L.Mero教授を始めとする学者グループである。

第1-3-11表 マンガン団塊サンプルの(太平洋)の成分比

太平洋のマンガン団塊の埋蔵量は,Mero博士らの推定した結果によれば,約5,000億トンあり,これを利用できるとすると最近の世界の年間消費量で計算すれば,マンガン14万年,ニッケル7万年,銅2千年,コバルト42万年分の供給量に相当するとしている。

海面から2,000mないし6,OOOmの深海底に賦存するマンガン団塊の開発を行うためには,これを効率的に採取する技術がなければならないが,このような深さにある直径数CMの鉱物をすくい上げる技術は従来確立していなかつた。現在考えられている方法としては,エアリフト方式と連続パケット方式が代表的なものである。エアリフト方式はアメリカで考察されたもので,電気掃除器のように海底までパイプを降ろしマンガン団塊を吸い取ろうとするものである。パイプ,ドレッジヘッド,ノズル,バルブ等,船上に石油掘削リグに近い大重量の機械装置を有し,採取は機能的に行われ信頼性が大きい。しかし,機械装置が大がかりとなり,準備,撤収は大作業で長時間を必要とする。これに対して連続バケット方式は日本で考察され,昭和46年の資源協会主催深海底金属塊資源開発調査実施の際,サンプル採取用として実際に試行され,4,000mの深海底表層から団塊採集に成功している。

連続バケット方式は,多数のバケットをロープの輪に取り付け,それをつるべのように海底に届くまで降下させてかき取り,マンガン団塊が入り込んだバケットを順次繰り上げるものである。この方式は,機械装置が比較的簡単で船上のものだけで良いので,保守,点検,修理が容易であり,準備,撤収が短時間で済むという長所を有する。しかし,海中部のロープの漂動に左右されるといつた不確定要素を有する欠点がある。

このような採取技術の開発と並行して開発しなければならないのは,マンガン団塊の探査技術であろう。現在のところ,ドレッジ,ピストンコアラ,深海底テレビによるほかはないが,このうち深海底テレビが最も有効な手段と考えられている。このためアメリカ等をはじめとして深海底テレビの開発を進めており,我が国でもこれの使用を試みているが,実用に供し得るものについての早急な開発が期待されている。

(3) 未利用鉱物資源の資源化技術

世界における元素利用の歴史を調べてみると,西暦紀元前には,金,銀,銅等7元素が利用されていたが,その後,順次利用元素が増加し,現在は71元素が利用されている (第1-3-12表)

現在使用されている鉱物資源の多くは,かつては未利用資源であつたが,人類がその当時の最新の科学技術を駆使して利用できる資源に変えていつたものである。したがつて,現在顧りみられないものでも将来は重要な役割を持つて登場するものがあると考えられる。

第1-3-12表 世界における元素利用の歴史

未利用資源としては,開発技術又は利用技術が確立されていないため未利用のままであつたり,低品位のため従来の技術では経済性から見て利用されていなかつたものが考えられる。前者の例としては,南九州に広く分布している火山灰・軽石の層で,火山噴出物が堆積したものと言われるシラスの利用が挙げられる。例えば,シラスのセラミック化については既に技術開発されており,シラスバルーン(微小中空ガラス球)を作り建設材料とすることが一部実用化されている。そのほか,けいそう土の断熱材への利用が研究されている。後者の低品位鉱の開発技術については,低品位鉱からある種のバクテリアの選択的溶解作用を利用して金属を回収するバクテリアリーチングがあり,既に銅については実用化されている。今後は,更にウラン,亜鉛,モリブデン,マンガン,ニッケル等への応用が研究課題となつている。

これらの鉱物における未利用資源の例を 第1-3-13表 に示す。

第1-3-13表 鉱物における未利用資源

また,黒鉱は,銅,鉛,亜鉛等を含有する鉱物資源であるが,我が国では秋田県を中心としてかなり広く分布していることが確認されており,現在,銅,鉛,亜鉛の国内産出量の一部を黒鉱でまかなつている。しかし,銅,鉛,亜鉛以外の金属も含有しているため,国内資源の活用の面からも黒鉱の利用技術に関する研究開発のなお一層の推進が要望されている。

従来,主として陸地の鉱物資源が対象とされていたが,最近の海洋開発が進むにつれて,海洋鉱物資源が注目されている。

海底には,石油,石炭,硫黄,マンガン団塊及び砂鉄,砂錫等多種多様の鉱物資源が存在している。石油,石炭等の化石燃料すなわちエネルギー資源については第2節で述べたとおりであるが,その他の鉱物資源の中で最も注目されるのは,深海底に存在するマンガン団塊であり,これについては,鉱物資源採取技術の項で述べたとおりである。現在は,海面から数千メートル下の深海底から,マンガン団塊をいかに探索し採取し経済性を高め得るかという調査,試験の段階と言えよう。

また,海水には,多種多様の有用物質が溶存していることから,海水の淡水化による水資源獲得と併せてその回収に経済性を持たせることも期待されている。海水中には,食塩(塩化ナトリウム),マグネシウムとその化合物,臭素等現在回収されている有用成分を始め,カルシウム,カリウム,バナジウム,モリブデン,ウラン等の今後特に実用化が望まれている成分が含まれており,通商産業省工業技術院においては,昭和44年度から海水の淡水化と副産物の利用に関する研究開発を大型プロジェクトとして取り上げている。

(4) 鉱物資源代替技術

資源の代替方法については,豊富で低廉な他の資源に置き替える方法と,人工的に他の資源を創出する方法が挙げられる。

類似物質による代替については,例えば,銅が電気の導体材料として大量に用いられているのは,導電率が優れているためであるが,導電率が最も高いのは銀であつて;次いで銅,金,アルミニウムの順となつている。しかし,銀があまり使用されないのは,資源量として少ない貴金属のためである。銅に次いで導電率の高いアルミニウムは,単位容積当たりの導電率が,銅の約60%であるが,軽量性において銅より優れているため,電カケーブルを始めとし,通信ケーブルへの適用も検討されており,航空機の電気回路には,アルミニウムがかなり使用されている。また,強度不足を補うためアルミ合金などが考えられている。

永久磁石の主原料であるコバルト(Co)は,我が国ではほとんど生産されず,その大部分を海外に依存している状況にあり,供給の不安定性を有している。しかし,フエライト磁石は,主原料である酸化鉄が国内において容易に入手でき,しかも安価であるので,コバルト代替品としてかなり期待を持つことができる。自動車材料においても,普通鋼,特殊鋼,銅等の材料はアルミニウム,プラスチック等の使用により材料原単位でかなり減少したと言われ,1940年から20年間に,乗用車の同じ馬力当たりの平均重量は約25%減少したと言われている。

プラスチックのような性状の全く異る人工物質の創出により,鉱物資源と代替する方法としては,ガラス繊維や炭素繊維でプラスチックを強化するFRPが注目されている。

このような人工物質による代替については,更に人工ダイヤモンド,人工ルビー等が実用化されており,最近では高品質人工水晶の量産化の技術開発が進められている。

また,製品等の材質や耐久性を高めることによつても資源の代替及び消費量の削減が期待できる。現在,新強力材料として高張力鋼,超高張力鋼,クラッド金属,サーメット系金属,ウイスカー金属等の研究開発が行われており,同時に,更に強度を高めるため,添加剤あるいは表面処理技術などについての研究開発も進められている。

(5) 鉱物資源技術に関する国際協力

鉱物資源に関する国際協力については,資源保有国又は開発途上国に対する鉱物探査などの技術協力を挙げることができる。アメリカ,カナダ,イギリス,フランス,西ドイツにおいては,優れた地質調査機関等から多くの研究者,技術者が開発途上国に派遣されている。イギリスの場合は,地質調査所(Institute of Geological Scieflces)が開発途上国に対し空中写真による地質図の作成などの地質調査技術の指導及び育成を行うとともに,地化学探査技術の指導と育成,探査計画の立案等に最も多くの技術者を投入している。フランスにおいては地質調査機関が,物理探査(地上,空中)及びその解析技術の指導を行うなど,探査活動を積極的に進めている。特に鉱山開発と地下水の探査の指導に力を注いでいる。

西ドイツ連邦地質調査所では,地質工学を始めとする地質調査関係の技術者の指導に力点を置いている。このような開発途上国の技術者を留学又は研修により新しい指導者に育成する方法は,西ドイツのみならず,他の先進諸国でも実施している。

我が国でも,開発途上国に対し鉱物資源開発に関する調査を国の委託を受けた国際協力事業団(前称,海外技術協力事業団),金属鉱業事業団等が技術協力を実施しており,例えばビルマ・モニワ地区,フィリッピン・ルソン地区,トルコ東部地区,エチオピア西部地区,ペルー・ミチキジャイ地区等において現地政府の要請等により,鉱物資源賦存有望地区の地質調査,物理探査,ボーリング等の資源開発協力基礎調査を実施している。

国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP:前称ECAFE)の鉱物資源開発センターに対する通商産業省工業技術院地質調査所等からの地質技術者,地球科学専門家の派遣により,太平洋の西岸地域における海底鉱物資源(現在,主に重金属の探査及び石油鉱床の基礎的な調査が行われており,今後は深海底マンガン・ノジュール(団塊)の開発も検討されている。)の探鉱等に関する開発途上国に対する指導を実施している。

開発途上国に対する鉱物資源技術者の育成については,国際協力事業団において,開発途上国の技術研修者の集団研修を実施し,物理探査を主とする海底鉱物資源コース,地下水開発コースを設けて指導を実施していることなどが挙げられる。

海外との鉱物資源に関する共同研究については,日本の地質調査所とインドネシア地質調査所,フィリッピンの鉱山局等との連携により,低品位の銅鉱の精錬の研究,ジャワ島の地質構造の研究などの研究協力を実施している。

以上は,主として政府関係によるものであるが,民間企業においても開発途上国における鉄鉱石などの金属鉱物の共同採掘時において,商取引とは別に間接的な形で採掘技術などの技術援助が行われる場合もある。


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