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第1部   安定的発展への新たな要請と科学技術
第3章   国際的視点に立つた資源・エネルギーの確保に貢献する科学技術
第2節   エネルギー資源


1 エネルギー開発・利用の新展開

(1)現状と課題

我が国は,1970年にアメリカに次いで自由世界第2位のエネルギー消費国となつたが,エネルギー総需要の約85%,石油需要のほぼ100%を輸入に依存するといつた特異な状況にある。また,エネルギー供給に占める各エネルギー資源の割合は,石油78%,石炭16%,水力5%,原子力0.6%(昭和48年度)となつている。

このように石油依存度が著しく高いエネルギーの供給構造を基として,1960年代からの我が国経済は比類なき拡大を遂げてきた。しかし,1973年10月の中東戦争を契機としたエネルギー危機は世界的規模で広がり,更に,今後も予断を許さない状態にある。

このエネルギー危機は,我が国に対して従来のエネルギー確保の考え方の反省とエネルギー資源の多様化の必要性を認識させるとともに,エネルギー利用の合理化を図るため,我が国産業の高度化,節約への国民意識の高揚の必要性を痛感させるものでもあつた。

今後,我が国の社会,経済の安定的発展を期するためには,エネルギーの確保とエネルギー利用を新たな観点に立つて進める必要があり,そのためには,基本的にエネルギー資源の有限性,環境の保全・安全の確保,国際協力の重要性の認識の上に立つて以下のことに留意する必要がある。

1) 今後のエネルギー開発は,量的確保,質的向上,更に,地域開発への貢献度,低廉性その他広く国民の合意を得られるものというように各方面からの要請にこたえられるものであること。 特に,エネルギーの量的確保,質的向上については,在来エネルギー資源の安定した量の確保及びクリーンエネルギー化等質の向上を引き続き積極的に推進すると同時に,新しいクリーンエネルギーの開発に努めること。
2) エネルギーの利用については,産業,運輸,民生部門等での利用の効率化と消費の節約に努めること。

このような認識は,単に1国にとどまらず,世界的観点からも必要なことであろう。したがつて,今後は我が国のみならず世界的にも長期にわたるエネルギー開発,エネルギー利用の見直しが必要であり,それに伴つて,長期的に産業,国民生活のあり方についても根本的な再検討を行う必要があると思われる。

このような場合には,国内的及び国際的にエネルギー資源の生産,輸送,転換,消費等を計画し,管理するための総合的長期的プログラムの確立を図ることが必要,かつ,有効であると思われる。エネルギー技術はこのような総合的長期的プログラム達成の成否の鍵を握るものと言えるであろう。

(2) 我が国のエネルギー技術の課題

上述のような要請にこたえるための我が国のエネルギー技術の課題は,基本的にはエネルギー資源の多様化,エネルギー資源の合理的利用,環境保全・安全の確保の3つを総合的に達成することと言えよう。

(1)エネルギー資源の多様化

エネルギー資源の多様化を図るためには,石油依存度を軽減するため,石油以外の資源の利用を可能にする技術開発が必要である。

このため,化石燃料資源,原子力燃料資源,自然エネルギー資源に関し,その探査,採取,抽出,加工といつた資源の開発技術の向上を図ることが課題となつている。

(2)エネルギー資源の合理的利用

エネルギー資源の合理的利用を図るためには,エネルギーの転換,輸送,貯蔵の効率化を図る技術開発と消費の節約を可能にする技術開発が必要である。

エネルギーの転換では,多様化されたエネルギー資源による発電やガス化,液化といつた技術開発が課題となつており,エネルギーの輸送,貯蔵技術では従来方式の効率向上,水素システム等の新システムの開発等が課題となつている。

消費の節約では,省エネルギー技術,地域冷暖房等の新システムの開発等が課題となつている。

(3)環境保全・安全の確保

環境保全・安全の確保を図るためには,汚染物質の除去・安全性の向上,適正立地を図る技術開発及び新しいエネルギー開発に当たつての予測,評価が必要である。

汚染物質の除去,安全性の向上では,脱硫・脱硝技術,温排水対策技術,放射性廃棄物の最終的処理・処分技術の開発,原子炉の安全確保等が課題となつている。

適正立地では,地下立地,海上,海中立地等の新立地方式の技術的検討が将来的課題となつている。

新しいエネルギー開発に当たつての予測,評価では,環境保全・安全の保証を示すデータの整備が必要であり,こうした対策を講じた上で国民並びに地元住民の合意を得ることが必要である。

なお,上述の技術課題の主なものを示すと, 第1-3-2表 のようになる。

(3)今後のエネルギー研究開発の進め方

エネルギーに関する研究は,今後,大規模かつ長期的に継続される必要がある。その研究は,先駆的技術開発は勿論のこと,人材の養成,基礎研究の拡充から地道な技術の蓄積,テクノロジー・アセスメントにわたつて均衡の取れた形で展開される必要がある。

また,核分裂・核融合エネルギー,太陽エネルギー,地熱エネルギー,石炭のガス化・液化,水素エネルギーといつた,いわゆる新エネルギーの研究開発には,莫大な資金,人材と長期間を要すること,また,その資源が偏在していること及びそれが実用化された際の大量エネルギーの地球への影響ということからも,必要なものについてはナショナルプロジェクトとするなど研究規模の拡充が必要であり,更に,国際協力が有効である。

我が国のナショナルプロジェクトとしては,既に,原子力について新型動力炉及び遠心分離法によるウラン濃縮の研究開発が推進され,大型プロジェクトとしてMHD発電等の研究開発が行われているが,昭和49年度からは「サンシャイン計画」として太陽エネルギー,地熱エネルギー,石炭のガス化・液化,水素エネルギー等について研究開発が始められている (第1-3-3表)

このようなナショナルプロジェクトとしての大規模な研究は,近年,アメリカ,ヨーロツパ諸国等においても推進されている。

また,国際協力については,2国間,多国間において技術情報及び研究成果を交流させるとともに国際共同プロジェクトを計画し,具体化することへの努力が必要である。

このためにも,我が国は国際協力をなし得るだけの技術水準,技術開発力を持つことが必要であると言える。

エネルギーに関する2国間,多国間の科学技術協力の主な動向は 第1-3-4表 に示してあるが,科学技術開発協力の場合,両国が共に関心を持ち,技術の水準も対等であることが望まれるので,実際の協力分野はかなり具体的な項目に絞られる可能性がある。

例えば,アメリカとの関係では,太陽熱発電,石炭の液化,熱化学法及び電解法による水素の製造,地熱に関する探査,掘削技術,熱水利用発電(バイナリー発電),火山発電等の協力が期待される。

第1-3-2表 我が国のエネルギー技術の課題

第1-3-3表 我が国のエネルギー開発ナショナルプロジェクト推進費

西ドイツとの関係では,石炭の液化やプラズマガス化等が考えられ,フランスとの関係では,太陽熱発電システム,太陽電池等の面で協カが期待される。

このほか,民間ベースでの研究協力の例としては,ターゲット計画がある。これは,アメリカの主要ガス会社により,9か年(1967年〜1975年)で低温型の天然ガス燃料電池の開発を目指すもので,大きな成果を収めつつあり,我が国からもガス会社2社が参加している。

第1-3-4表 エネルギー研究開発に関する主な国際協力

2 研究開発の動向

ここでは,前述したようなエネルギー技術課題に関する我が国内外の研究開発の主な動向を,(1)エネルギー資源の多様化を図る技術,(2)エネルギー資源の合理的利用を図る技術((A)エネルギー転換の効率化を図る技術,(B)輸送・貯蔵の効率化を図る技術),(3)環境保全・安全の確保の順に概観する(消費の節約に関する技術は第4章第3節参照)。

(1)エネルギー資源の多様化を図る技術

(1)化石燃料資源

(ア)石炭

我が国の採炭技術は,昭和初期の合理化時代以降普及完成した鉄柱とカッペ(金属梁)を使用する長壁式採炭を中心に発達し,現在は自走支保とドラムカッターないしはホーベルを組み合わせた機械化採炭方式が中心となつている。このほか主なものでは,水力採炭,水圧移動鉄柱,ガス抜き,湧水処理等の実績があり,いずれも技術的に高い水準にある。

鉄鋼業について欠かせない原料炭 注) は,各国とも現在は大半が露天掘りであるが,今後,長期安定供給体制を樹立するに当たつては,露天掘り鉱山の開発と合わせて,アメリカ,オーストラリアに既に実績のある坑内掘り鉱山の開発についても考える必要がある。

こうした状況を見ると,海外炭鉱に我が国の採炭技術の活用を図るよう積極的協力が望まれる。

(イ)石油・天然ガス

海底油田開発は,1900年頃カリフォルニアの海岸で行われたのが起源であると言われている。

現在までに全世界で生産した石油の約20%と天然ガスの約5%は,海底から産出したものであり,今後の需要の増大を反映して海底石油・ガスの開発は重要な技術課題となつている。


注)製鉄用の還元剤及び高炉熱源として使用するコークスを製造するための強粘結炭,弱粘結炭を原料炭という。

海底石油・ガスの生産装置は,これまでに桟橋式から固定プラットホーム式へと順次水深に応じた装置が開発されている。

これらの方式の技術進展により,水深150〜200mの大陸棚石油等の開発も行い得るようになつてはいるが,更に進んで深海底の石油等の開発という将来的課題のこめには,相当画期的な装置の建造が必要になつている。

こうしたことから,大陸棚石油・ガス開発はもとより大深度海底石油・ガス開発の基礎技術の蓄積を図るためにも水没式の生産装置の開発が必要であり,我が国でも一部検討されている。水没式の掘削装置については,通商産業省工業技術院で大型プロジェクトの一つとして基礎的な研究が進められている (第1-3-4図)

第1-3-4図 大深度遠隔操作海底石油掘削装置概念図(9,000m概念図)

なお,この方式は,アメリカ,フランス等でも研究開発が進められており,部分的に浅海域で実験されている。

(ウ)オイルシェール,タールサンド

オイルシェール,タールサンド 注) は,石油危機以後注目され始めた。オイルシェールの採取に関しては,アメリカで長期開発を立てているが,その方法は,環境破壊防止をも考慮して地下抽出法によるものと見られる。

タールサンドは,カナダで露天掘による商業生産が行われているので,オイルシェールより資源開発は進んでいると言える。

石油分の抽出には,オイルシェールの場合約500°Cの熱で乾留抽出し,タールサンドは,約80〜90°Cの熱湯で加熱抽出する。抽出された石油分は,水素添加等によつて高品質化される。

これらの資源は,我が国には賦存しておらず,採取抽出技術の蓄積もないが,これらから抽出された石油分の高品質化に関しては,重質油の改質技術の転用が可能と見られる。重質油の改質技術の研究開発は我が国で最近進められており,こうした成果を基として我が国の開発協力が期待される分野である。

(2)原子力燃料資源

(ア)核分裂燃料資源

核分裂燃料資源にはウランとトリウムがあるが,ここでは現在の原子力発電で実用化されているウランについて述べる。

ウラン鉱石→製錬,濃縮,成型加工→核燃料体→原子炉中での核分裂反応(エネルギー放出)→再処理(使用済み核燃料から核分裂生成物の除去並びに減損ウラン及び新たに生成した核燃料物質の取り出し)→取り出された核燃料物質の再濃縮,成型加工→核燃料体という過程により利用できることが核燃料の特長であり,大きな利点である。このような一連の循環過程を,核燃料サイクルと呼んでいる (第1-3-5図)

第1-3-5図核燃料サイクル


注) オイルシエール,タールサンドは,地表近くにあつて揮発分の気化,空気や天水による変質等によつて粘稠性が高くなつた油層であり,石油を豊富に含有している頁岩質の岩石をオイルシエール,砂岩質の岩石をタールサンドと呼んで区分している。オイルシエールは,アメリカ,ブラジル南部,スウェーデン,イギリス等で発見されている。

タールサンドの最大の埋蔵量を有しているのはカナダで,そのほかベネズエラ,コロンビア等で発見されている。

ウラン鉱石1トン中のウランの量は,せいぜい1kg程度である。ウラン鉱石からウラン成分を選別抽出する製錬技術には,浸出液をイオン交換樹脂が詰まつている塔の中を通してウラン成分だけを吸着させるイオン交換法や浸出液にリン酸トリブチルなどの有機物を加えウラン成分を溶し込む溶媒抽出法がある。また,我が国独自の製錬技術として,鉱石からイエロケーキ(重ウラン酸アンモン)の段階を経ないで直接四フッ化ウランを製造する;いわゆるPNCプロセスについて,動力炉・核燃料開発事業団において開発試験が進められている。

更に,低品位鉱の完全利用のため特殊な微生物の働きを利用して鉱石中のウランを溶出して回収するバクテリア・リーチング法の研究開発も行われている。

また,海水中には約40億トンのウランの溶存が確認されており,海水からのウラン抽出が実現できれば核燃料資源の供給源として大いに期待できる。

このため,海水中のウラン抽出についてイギリス,ソ連等で研究が進められているが,我が国でも各種の吸着剤,イオン交換樹脂等を用いた基礎研究が行われてきており,昭和50年度からは通商産業省でウランを始めとする希少資源の開発調査が開始される予定である。

ウラン濃縮方法 注1) としては,ガス拡散法,遠心分離法,ノズル分離法,レーザ法,イオン交換法,電磁法等の方式が考案されているが,現在,主要国で実用化されている方式は全てがガス拡散法によつており,アメリカのほかソ連,イギリス,フランス,中国で既に実用化されている。殊にアメリカでは年間約2万トンSWUの 注2) 実用化プラントが稼働中である。

遠心分離法についてはイギリス,オランダ,西ドイツ三国が実証プラントの建設に着手しており,最も研究開発が進展しているものと見られる。

我が国では,遠心分離法がナショナルプロジェクトに指定され,動力炉・核燃料開発事業団において遠心分離機の性能向上のための技術開発及びカスケードによるシステム試験が行われているが,ガス拡散法についても日本原子力研究所,理化学研究所において隔膜の高性能化のための試験研究,カスケードシステムの解析研究が行われている。使用済み燃料の再処理については,動力炉・核燃料開発事業団が茨城県東海村において我が国で最初の再処理工場を建設し,現在試運転中である。

(イ) 核融合資源

核融合資源には,重水素(デューテリウム)とリチウムがある。

核融合は,原理的には重水素だけでも反応を起こし得るが,リチウムから


注 1) 天然ウランは,そのままでも燃料になるが,天然ウラン中にはウラン-234,ウラン-235,ウラン-238といつた同位元素が混じつていて,このうちウラン-235だけが核分裂によりエネルギーを出す。ところが天然ウラン中のウラン-235は約0.7%にしかすぎず,軽水炉による発電には適しない。そこでウラン-235の割合を0.7%以上に高める必要があり,これを濃縮という。また,天然ウランに対して濃縮したものを濃縮ウランと言う。


注 2)ウランを濃縮するための仕事量の単位

生成される三重水素(トリチウム)と重水素を組み合せると最適の燃料組成になる。

重水素は,海水中に無尽蔵にある重水 注) より得られるため無限にあると言える。また,リチウムも海水中を始め地上にも十分存在する。

三重水素は,リチウムの中性子照射や核分裂反応により生成される。

三重水素濃縮技術としては電気分解法,熱拡散法,ガスクロマトグラフ法,ガス拡散法,蒸留法等が考えられるが,大規模,連続分離,濃縮のためには熱拡散法が有効と言われている。

(2)-A  エネルギー転換の効率化を図る技術

(1)化右燃料資源のエネルギー転換技術

化石燃料資源をエネルギーへ転換するための技術課題としては,石炭については直接燃焼,ガス化,液化,コークス化等が,石油に関しては重質油の液化,ガス化,アスファルトの燃料化等が挙げられる。また,液化天然ガス(LNG)については,冷熱利用による冷凍・保管技術が挙げられる。

石炭の直接燃焼は流動層方式の焼却炉で石炭を直接燃焼し,その際,石灰又はドロマイトを共存させて脱硫を行う技術であり,外国では主として,アメリカ,イギリスで研究開発が行われ,パイロットプラントや小規模の設備が作られている。我が国でも世界の技術レベルに到達するよう研究開発を進めるべきである。

石炭のガス化については,低カロリーガス化と高カロリーガス化がある。

1,000〜4,000kcal/m 3 の低カロリーガスは,用途が発電用,工業用に適していることから低品位の国内炭の使用ができるため,高カロリーガスよりは我が国に適していると言える。我が国では原料用のガス化には多くの実績があるが,燃料用のガス化の実績は少ない。

8,000〜9,000kCal/77lの高カロリーガスは,低カロリー化プロセスにメタン化工程を加えて作るものでエネルギー密度が高く,エネルギー輸送に適している。我が国ではサンシャイン計画に取り上げられており,パイロットプラント規模に移行しようとしている段階にある。


注)天然に存在する軽水素と重水素の割合は,軽水素が99.985%,重水素が0.015%であり,水に含まれる水素にもこの比で各々存在する。軽水素でできた水を通常の水(軽水)というのに対し,重水素でできた水を重水と言う。

石炭のガス化については,西ドイツでは,ルルギ式の固定床炉により17万kw発電を1971年に実現しており,今後80万kwの開発を目指している。また,加圧流動床ガス化炉の開発及びこれとガスー蒸気複合タービンの組合せの研究,更に,高温ガス炉の熱を利用したガス化研究を行つている。

イギリスでは,空気と水蒸気を用いる流動床燃焼の研究が行われている。

石炭の液化は,第2次大戦中,航空機用ガソリンとしてドイツで工業化されたものである。技術面には大きく分けて直接液化,抽出液化,乾留液化,合成液化の4種の方法があり,前述の西ドイツの場合は,直接液化である。我が国では,石炭の液化は,1956〜61年に通商産業省工業技術院資源技術試験所(現在公害資源研究所)で高圧水素化分解がベンチスケール規模で実施されたことがあるが,全体としてはそれ程研究開発は進んでおらず,現在,サンシャイン計画で取り上げられているが,まだ応用研究段階と言えよう。

なお,西ドイツでは溶剤精製炭の研究,イギリスではアントラセン油等の溶剤を用いる方法や臨界状況のガスを用いての抽出方法の研究が進められている。

液化天然ガス(LNG)の冷熱は,再ガス化する際大量に放出されるもので,最低-160°Cのレベルまで期待できる。冷熱利用については,1)空気の分離による液化酸素,液化窒素の製造,2)食品冷凍加工及び冷凍保管,3)低温脆性を利用した産業廃棄物処理,4)海水淡水化等が考えられるが,このうち,1)については我が゛国でも既に企業化段階に入つているが,その他のものは世界的にも研究段階にとどまつている。

(2)原子力燃料資源のエネルギー転換技術

(ア)核分裂エネルギー技術

ウラン,トリウム等の核分裂によるエネルギー転換利用には,大きく分けて転換炉によるものと増殖炉によるものがある。

燃焼した核分裂物質の量と新しく生成した核分裂性物質の量との比を転換比と言う。この比が1以上の炉を増殖炉(燃料が増えたことになる。)と言い,1未満のものを転換炉と言う。

第1-3-6図 核分裂反応概念図

転換炉のうち,在来の発電用原子炉は,使用する燃料,中性子の減速材,熱を燃料から取り出す冷却材の組合せでおおむね3つの型式に大別される。それは,イギリスで開発された天然ウラン燃料-黒鉛減速-炭酸ガス冷却炉,アメリカの濃縮ウラン燃料-通常の水(軽水)減速-軽水冷却炉及びカナダの天然ウラン燃料-重水減速-重水冷却炉である。こうした開発路線の違いは,大規模なウラン濃縮工場の有無に密接な関係がある。

現在,世界で実用化されている発電炉は,この三者と言つてよく,これらを在来型炉と言つている。

在来型炉に対し,開発を進めている新しい熱中性子,(減速された遅い中性子)炉を総称して新型転換炉と言つている。新型転換炉は,世界的に見て重水炉と高温ガス炉の2系統に大別される。

重水炉としてば,カナダ型のものに対して,新しい型式として冷却材に沸騰軽水,炭酸ガス,有機材等を使用ずる方式の開発が進められている。我が国では,ナショナルプロジェクトとして動力炉・核燃料開発事業団において原型炉 注) 「ふげん」(重水減速-沸騰軽水冷却炉)の建設を進めている。

高温ガス炉は,発電ばかりでなく原子炉から得られる高い熱を利用して製鉄,化学工業,海水の淡水化,集中暖房等の多目的利用に大きな期待が寄せられている,濃縮ウラン燃料一黒鉛減速-ヘリウム冷却炉はその1例であり,ヘリウムが化学的に安定で75°C位の冷却温度を安定して得ることができるため,転換効率も40%位まで上げることが可能である。

アメリカ,西ドイツ,OECD(ドラゴン計画),日本では,発電用とは別に将来の多目的利用をねらつて1,000°C以上に耐える冷却材を得る研究が進められている。日本原子力研究所で計画中の多目的実験炉(熱出力5万kw)もそうしたものの1つである。

高速増殖炉は高速中性子(核分裂で発生したばかりの減速しない中性子)を使うようになつており,しかもエネルギーを発生する一方で消費した以上の燃料を作り出すことになるため「夢の原子炉」とも言われている。このため,各国で実験炉又は原型炉の開発が進められている。

高速増殖炉の開発では,ソ連が既に35万kw相当の炉を開発し,発電とともに海水の淡水化を行つており,イギリス,フランスも各々25万kwの原型炉を完成させている。

我が国では動力炉・核燃料開発事業団が熱出力5万kwの実験炉「常陽」を建設しており,更に,約30万kwの原型炉「文珠」建を設することになつている。

(イ) 核融合エネルギー技術

太陽の中で水素は核融合を起こしてヘリウム等に変つているが,その時に出る熱を我々は地上で受け取つているわけである。そこで水素をヘリウムに変換する過程が地上でできれば「地上に太陽」を持つことが可能になり,これを目指すものが核融合炉である。


注)実用炉とほぼ同じ性能で規模だけ縮小して試作される原子炉。

核融合反応では,重水素(デューテリウム)と三重水素(トリチウム)が加熱されてプラズマ状態になり,両者が反応して一緒になり,それがヘリウムと中性子に分かれる。この時,熱が発生する (第1-3-7図) 。その熱エネルギーを使つて電気エネルギー等を発生させるのが,核融合による発電である。

第1-3-7図核融合反応概念図

核融合炉では,反応によつてできる中性子を使つてリチウムから三重水素を作ると,その三重水素が再び燃料になり,うまく三重水素の補給ができるようになる (第1-3-10図)

核融合エネルギーは,三重水素(トリチウム)の放射能があるが,核分裂生成物等の放射性物質が発生せず,核分裂炉に比べてクリーンなエネルギーであると見られている。

核融合の研究は,言い換えれば高温プラズマの研究であり,しかもブラズマの超高温と一定の(密度×保持時間)の条件(ローソンの条件)を実現させる方法を追求することであるとも言える。

つまり,核融合を起こすためには,重水素,三重水素等の原子を,原子核と電子とにばらばらになつたプラズマ状態とすることが必要であり,更に,温度約1億度,プラズマ密度を1cm 3 当たり10 14 (100兆個)としてプラズマ保持時間を1〜2秒必要とする。

現在,このような超高温に耐える材料は考えられない。したがつて,プラズマを真空中に閉じ込め容器壁から離して保持する必要がある。

このためには,現在磁場によるプラズマ閉込め方式,レーザーによる慣性閉込め方式等が考えられている。

第1-3-8図 トカマク型装置の概念図

磁場方式については,アメリカ,ソ連が最も進んでいると見られており,代表的なものとしてトカマク(ロシア語,電流磁場の意)型がある (第1-3-8図) 。我が国では,科学技術庁原子研究所力がトカマク(JFT-2)による磁界閉込めの研究,通商産業省工業技術院電子技術総合研究所が高ベータプラズマの研究,科学技術庁理化学研究所がプラズマの測定研究等を進めてきている。また,名古屋大学プラズマ研究所をはじめ各大学においてもプラズマ物理及び核融合の基礎研究が行われている (第1-3-9図)

このほか,最近有望視されているものとして重水素,三重水素を液体ヘリウムなどで凍らせて氷の粒として真空中に落下させ,それにレーザー光線を当ててプラズマを作るレーザー方式がある。アメリカ,ソ連では巨大ガラスレーザー,炭酸ガス,キセノンレーザー等の研究が行われているようであるが,我が国でも大学を中心として積極的に研究が進められている。

第1-3-9図 各国のトカマク装置規摸

炉工学技術としては,炉壁材料,リチウム,ヘリウム等による熱出力の取り出し技術,超電導磁石,真空容器等の開発が課題となつているが,我が国では,昭和50年度よりこれらの研究開発を逐次進めることとしている。

第1-3-10図核融合炉の概念図

(3)自然エネルギー資源のエネルギー転換

(ア)太陽エネルギー利用による発電技術

我が国の土地1平方メートルに対する年平均の太陽エネルギー密度は約160Wであり,低密度ではあるがある程度の集熱面積が得られれば,有効利用は十分考えられる。

ここでは,太陽発電システムとして太陽熱発電と太陽光発電について述べる。

太陽熱発電はコレクター  (第1-3-11図) で集熱した太陽熱エネルギーを電力に転換するシステム技術であり,集熱では反射鏡集熱カプセルの反射率,吸収率を高めるための金属薄膜蒸着技術等が必要である。将来,集熱体には高温ヒートパイプが使用されることになろう。

第1-3-11図 太陽エネルギーコレクター概念図

第1-3-12図 太陽熱発電システム概念図

我が国ではサンシャイン計画において昭和49年度から研究開発を推進することとし,コレクター,各種の高温材料,熱輸送システム等の研究が緒についた段階である。

イタリアには熱出力200kwの例があり,西ドイツでは弗素化合物を中心とする蓄熱材の研究が行われている。また,イタリアではECと共同で1,000kwの熱発電計画が進められている。このように,基礎段階ではあるが多方面にわたる研究が進められている。

太陽光発電は太陽電池によつて太陽光を直接電気エネルギーに変換するものである。太陽電池はシリコンなどの半導体の光電効果を利用する。

技術的な問題としては,反射防止膜の改良,耐候性,耐久性の向上があるが,シリコン単結晶の大量低廉な製法の開発が成功の鍵を握つている。

国外では砂漠における大規模発電システムの研究がアメリカで行われ,また,アメリカで行われたような事例や3-V族半導体太陽電池の変換効率を上げる研究がイギリスでかなり進められている。

第1-3-13図 宇宙発電システム概念図

我が国でも,昭和49年度からサンシャイン計画で研究開発を推進することとしている。

なお,特殊目的用の小規模のもの,宇宙開発用のものは実用化の段階にあり,その例としてアメリカ航空宇宙局(NASA)支援によるSSPS計画(The Sate11te Solar Power Station)がある。これの概念図は, 第1-3-13図 のとおりであり,アメリカにおいて,既に第1段階のフィージビリティスタディが終了している。

(イ) 地熱利用による発電技術

地熱発電は,現在,地中地熱源から噴出する蒸気を直接タービンに導いて発電する方式を取つている。また,地熱源から多量に噴出する熱水の利用には,バイナリーサイクル発電システムの開発が必要である。

地熱発電に際しては,周囲の景観,環境を破壊しないよう特に配慮する必要があるが,蒸気の採取に伴つてゆう出する熱水の全量地下還元が今後のパターンとなろう。

地熱発電については,我が国では,既に,松川(岩手県),大岳(大分県),大潤(秋田県),鬼首(宮城県)で計49,500kwの発電所を運転中であり,更に,葛根田(岩手県),八丁原(大分県),森(北海道)等に168,500kwが追加されることになつている。

地熱エネルギーの研究開発はサンシャイン計画の中で進められており,熱水利用発電技術は現在テストプラントの開発を進める段階に達している。海外では,イタリア,ニュージランド,アメリカ,メキシコ,アイスランド等が地熱発電所を有している。

なお,将来,ボーリング技術が発達し,深部の高温度の熱が利用できるようになれば,従来よりも大容量の地熱発電が可能になるほか,地熱流体を含まない高温岩体についても,いわば「地球ボイラー」のごとく,地上からパイプを挿入して水を循環し,蒸気に変えて発電することも夢ではない。このほか,火山のエネルギーを利用する発電方式の研究も進められている。

我が国ではサンシャイン計画により,1985〜90年頃までに超深度地熱発電,火山発電技術等を完成する方針で研究開発が進められている。

(ウ) 海洋,風力エネルギー利用による発電技術

海洋エネルギーでは,干満の潮位差を利用する潮力発電があり,フランスのランス川河口で年間約5億5,000万kw時の電力を生んでいる。

また,海洋エネルギー利用のうち一番早く,しかも日本で実用化されたものに波力発電がある (第1-3-14図) 。これを電源として航路標識ブイが日本周辺海域に既に300個近く浮かんでいるが,1基の出力が最大600Wと小さく,一般的な電源にするにはもう一歩の技術開発が望まれる。

第1-3-14図 波力発電概念図(1枚弁機構)

イギリスでは500W程度の発電が行われている。

そのほか,温度差発電がある。これは世界中でどこも実用化に成功していないが表面と深層の温度差が,20°C以上ある熱帯の海域で将来性のあるエネルギー源とされ,アメリカや日本でも基礎研究が行われている。

風力発電はエネルギー危機で見直され,アメリカ航空宇宙局(NASA)では家庭用風力発電の開発を行つている。燃料が要らずクリーンであるのが魅力で,長さ4.5mの弓状の翼2枚を組み合せた風車を屋根に取り付けようとするものである。

我が国では,NHKが群馬県の雨降山のテレビ中継局の電源用に鉛蓄電池と組み合せて実用化している程度である。

(4) その他

発電効率を著しく向上させる方式には,複合サイクル発電,燃料電池等がある。

複合サイクル発電には,高温複合サイクル発電と低温複合サイクル発電があり,前者には,超高温ガスタービン,金属蒸気タービンによる発電や,MHD発電等がある。後者は,作動流体として,水よりも沸点の低いイソブタン,フレオン,アンモニア等を用いるものである。

ここでは上記のうちMHD発電と燃料電池について述べる。現在有望視されているMHD(Magnetro Hydro Dynamics)発電は,重油等の化石燃料を燃焼して得られる高温ガスプラズマを音速前後の高速で強力な磁場の中を通過させて発電を行う直接発電方式であり,使用済みの高温排ガスを従来の火力発電に結びつけることにより全体の効率を50〜60俗に高めることが期待されている (第1-3-15図)

MHD発電の研究開発が本格的に開始されたのは1959年にアメリカのAVCO-Everett研究所と電力会社が共同して開発計画を進めるようになつてからである。

我が国でも1960年頃から通商産業省工業技術院電子技術総合研究所などにおいて研究が開始され,昭和41年度には通商産業省工業技術院の大型プロジェクトのテーマとなり,昭和44年度には140時間(約2kw)の連続運転及び1,180kw(1分間)の出力運転に成功している。今後は,更に,高出力化を図るとともに,長時間の運転実績を蓄積し,超電導磁石の開発,超高温材料等の研究開発を進める必要がある。

第1-3-15図 MHD発電の概念図

ソ連では既に最大出力6,000kwで連続12時間の運転が達成されているが,今後,出力1万kwで100時間の連続運転を予定している。また,出力1,000MWの産業用装置を1981〜82年迄に建設するための開発も進められている。

アメリカでは,現在AVCO-E verett研究所で平均出力300kwで75時間,平均出力350kwで36時間の運転が達成されている。また,現在10の機関がMHD発電機の開発に参加して出力5万kwを目標としている。

イギリスでは,1967年には2万kwの実験設備を完成したが,その直後に研究開発計画を縮小することとなつた。

フランスでは,発電出力よりはむしろ絶縁材料,電極材料,空気加熱等基礎分野に重点が置かれている。

燃料電池は,陽極に燃料を,陰極に酸化剤を配して電気化学的なイオン反応により燃料から直接電気を生ぜしめるものであり,還元剤(燃料)と酸化剤(空気)を外部より連続的に供給するため,供給が続く限り電気を連続的に発生させることができる。

我が国では,燃料電池の燃料としては,原子核分裂・核融合エネルギー太陽エネルギー等により水を原料として製造する水素が期待されている。また,反応触媒に用いられる白金等の金属が乏しいため,触媒が不要な中高温型の燃料電池に重点が置かれようが,この場合,材料の腐蝕や耐熱性についての技術開発が必要となろう。

(2)一B  輸送・貯蔵の効率化を図る技術

(1)一輸送の効率化を図る技術

輸送に関してはパイプラインによる輸送技術として,石炭のスラリー輸送技術,石油,天然ガスの長距離輸送,海底管の布設等に技術発展が見られるが,更に,材料,溶接,保守管理技術はもとより地震対策方面の技術進歩が期待される。

電力輸送については,今後,大容量長距離送電とともに,用地,環境問題から地中送電が要請されており,更に,1回線当たりの送電容量の増加,送電効率の向上が技術課題となつている。

このような要請に応じるための新送電方式としては,超高圧大容量送電,管路気中送電,極低温抵抗送電,超電導送電がある。

管路気中送電については,我が国では民間において送電容量14万kw,送電電圧50万V級の開発が進められているが,アメリカでは短距離のものについて既に200万kw,34万Vの実用化が行われている。

極低温抵抗送電については,我が国ではケーブルモデルの試作が行われ,超電導送電については100〜500万kw,15万vの基礎実験や液体ヘリウム冷却技術等の基礎研究が行われている。一方,イギリスでは超電導送電について400万kw,27万V級の試験研究が行われている。

(2)貯蔵の効率化を図る技術

貯蔵に関しては,天然ガスの地下貯蔵,大容量石油タンクに関する技術開発が行われている。

電力の貯蔵は,現在,水を位置のエネルギーとして貯蔵する揚水発電が主であるが,海水揚水も検討されている。また,大容量バッテリーの開発や電気エネルギーを圧縮空気エネルギーやはずみ車の回転エネルギーに転換して貯蔵する方法なども課題として挙げられよう。

このほか,輸送,貯蔵の効率化を図るため将来重要になると思われるものに,水素,メタノールの新システムがある。

(3)  水素システム

水素システムは,核分裂,核融合,太陽熱等を一次エネルギーとし,水を原料として電解法や化学的熱分解法等により水素を大量に製造し,これを化石燃料に代替する燃料として広範に利用しようとするものであるが,同時にこれを輸送,貯蔵に不便な電力を補足するものとして使用しようというものでもある (第1-3-16図)

第1-3-16図水素システム

水素燃焼生成物は水のためクリーンであり,一般燃料や燃料電池燃料源,更には,内燃機関燃料としての用途も期待できるなど将来,水素時代を迎えると予測する向きも多く,水素を主要なエネルギー源とする経済,すなわち「水素経済」と言う言葉も現われている。

水素製造技術のうち,我が国では電解法は実用化されているが,総合効率として問題が残つている。外国では改良電解法として複極式法や高温水蒸気法を開発中であるが,我が国ではほとんど研究は行われていない。化学的熱分解法は,我が国でも実験室規模で研究を行つている。

(4)メタノールシステム

メタノールシステムは,天然ガス等をメタノール化し,輸送,貯蔵しようとするものであり,広範な用途が期待できる。

これは,メタノールに硫黄分がほとんどなく,窒素酸化物発生も少ないなどクリーンであること,また,液化天然ガスは,-160°C以下の極低温でしか輸送できないのに対し,常温,常圧で運べ,普通の石油タンクでも貯蔵できるなど経済性に勝れているからである。

我が国は世界第2のメタノール生産国であり,燃料としての利用技術は進んでおり,電力会社では,既に実用化研究を進めている。

(3)環境保全・安全の確保

(1)大気・水汚染防止技術

燃料燃焼による大気汚染では主として硫黄酸化物(S0 2 ,S0 3 等を総称してSOxという。),窒素酸化物(NO,NO 2 等を総称してNOxという。),光化学スモッグ等が大きな問題となつており,水汚染では温排水対策が大きな課題である。

SOxに関しては燃料の改質(重油脱硫及びガス化脱硫)と排煙脱硫に関する技術が,NOxに関しては固定排出源及び移動排出源の脱硝技術が開発されている(詳細は, 第2章第2節 及び 第4章第3節の5 参照)。

温排水対策としては,特に火力発電所,原子力発電所に関して鋭意対策が進められている( 詳細は,本節(4)の(3)参照)

(2)適正立地を図る技術

原子力については,将来の立地離に備えて海上立地,海底立地,人口島立地,地下立地等の新しい立地方式が検討されている。

これらの立地についてはアイデアの範囲を出ていないものもあるが,海上立地,地下立地については我が国でも将来の問題として関心が高く基礎的事項に関する検討が行われている。

海外で建設されている地下式原子力プラントは,スウェーデン,フランス,ノルウェー,スイス等に5カ所ある。建設されたものはほとんど1960年代のもので,フランスを除くと出力は小さい,その立地方法には,水平トンネル方式,垂直シャフト方式,開削・埋戻し方法がある (第1-3-17図)

海上立地については,アメリカフロリダ州ジャクソンビルにおける建設計画がある。これは,鋼鉄の筏の上に全部を組み上げしてまい,これを海の上を引つ張つて所定の場所まで持つて行き,防波堤に囲まれた静止水に浮べて,後は送電線につなぐものである (第1-3-18図)

第1-3-17図 地下立地式原子力発電所レイアウト例の概念図

第1-3-18図 海上立地式原子力発電所レイアウト例の概念図

LNG(液化天然ガス)の地下タンクの型式としては,構造から,1)土壌中の水分を凍結させそれを断熱壁としてタンクの働きをさせる凍結式,2)プレストレスコンクリート式,3)連続地下壁セグメント式の3つがあり,我が国では,3)方式で6万klタンクが建造されている (第1-3-19図)

第1-3-19図 液化天然ガス(LNG)地下タンク例の概念図

石油の海中,海底タンクは今後の研究開発課題に属するものであり,タンク形式や防蝕材料,塗装技術,更には,潮流,波浪など外部荷重等の課題を解決する必要があるが,基本的には,油による海水の汚染防止技術の開発が最も重要である。

(3)原子炉の安全確保及び環境保全に関する研究

安全確保に関しては,原子炉の設置,運転,核燃料物資の使用,放射性同位元素の使用に伴う安全対策等が必要である。

日本原子力研究所では主として冷却材喪失事故,反応度事故等における現象の解明等を行つている。

冷却材喪失事故に関する研究としては,原子炉一次冷却系配管破断事故の際の熱工学的現象の解明を行つてきたが,更に,非常用炉心冷却設備(EC CS)を冷却材喪失事故試験装置に取り付け,冷却材喪失事故時のECCSの作動状況に関する研究が行わてている。

反応度事故に関する研究は,反応度異常上昇時の炉内燃料の挙動,溶融の状態,エネルギーの放出と圧力の伝播等について実証研究を行うものであり,実験に用いる安全性研究炉が建設された。

このほか,科学技術庁金属材料研究所では,原子炉用金属材料の腐蝕防食に関する研究,ステンレス鋼強度に及ぼす中性子照射の影響に関する研究等が行われ,運輸省船舶技術研究所では原子炉圧力容器の疲労寿命,内圧破壊強度,非破壊検査法に関する研究等が行われるなど,関係各省において安全性確保に必要な基礎的研究を実施している。

環境保全に関しては,放射性廃棄物の処理処分,原子力施設周辺の環境放射能モニタリング,温排水対策等が必要である。

放射性廃棄物については,低中レベルのものについては固化処理が行われているが,その処分のための体系は整備されていない。高レベルのものについては,現在,ガラス固化等による固化技術の研究開発が進められているが,今後の主な技術的課題としては固化体中の放射性物質の安定閉じ込め技術,容器及び固化体の高圧下の安定性,容器の耐久性等がある。

温排水については,深層取水,放水口における拡散等の技術開発が必要とされるほか,前述したガスタービン複合サイクルの採用によりエネルギー変換効率の向上を図り廃熱排出を低く抑えることや熱併給発電による効率的な熱利用などに関する研究開発が必要である。更に,極微量の放射能の海洋生物への濃縮及び温排水の漁業への利用について総合的な研究も行われている。

原子炉の安全確保及び環境保全については,平常運転時も,また,大きな事故を仮定した時でも,一般公衆はもちろん従事者に対しても影響を与えないよう配慮されてきているが,更に一段と安全性の確保と環境の保全を進める必要がある。

(4)新エネルギー開発に当たつての予測・評価の必要性

核分裂・核融合エネルギー,太陽エネルギー,地熱エネルギー,石炭のガス化・液化,水素エネルギー等の新エネルギー開発は現在,我々にバラ色のエネルギー未来図を与えてくれるものとして期待されるが,例えば,長期的には,核融合時の三重水素の放射能問題や,高温岩帯発電による地層への影響の問題,石炭ガス化のフエノール排水問題等が考えられ,ほかにも我々が現在では思いも及ばぬ問題が潜んでいないとは誰にも断言し得ないであろう。

このように,新エネルギーの開発を行うに際しては環境保全・安全の確保に万全を期することが必要であり,事前に十分な予測,評価を行い,これらの評価に見合いつつ推進を図る必要がある。

このためには,技術開発等に最大限の努力を払うとともに,環境保全・安全の保証を示す客観的データを完備することが必要であろう。

また,こうした対策が講じられた上で国民並びに地元住民の合意を得ることが必要である。


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