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第1部   安定的発展への新たな要請と科学技術
第2章   健康・安全など国民生活の向上に貢献する科学技術
第4節   安全性の確保


科学技術の進歩により,我々の衣食住をはじめとする日常生活は便利になり,交通や産業も高度化してきた。

しかし,日常生活において,便利な「モノ」を無条件に受け入れた結果,身の回りには我々がほとんど知識を持ち合わせない製品がはん濫することとなり,便利さに隠れていた多種多様の安全問題が新たな問題として発生することとなつた。また,交通や産業も高度なマン・マシン・システムへと移行し,事故の規模も大型化する傾向にあり,事故の発生が重大な社会問題につながることとなつた。

更に,このような進展を見せた社会は,都市の過密化,地盤沈下等の現象を引き起こし,それらは火災や自然災害による2次災害を拡大する結果ともなつている。

しかし,このような状況に対して,全般的に便利な「モノ」の使用をやめたり,あるいは高速輸送機関の利用をやめることはできない。また,自然災害から逃れるため,自然現象の制御を期することも現状では不可能である。

したがつて,安全性を確保するということは,日常生活の便利性及び社会機能を高め,産業活動を活発なものとし,それと表裏の関係にある事故や災害などの危害の防止をも同時に達成しなければならないということである。

これらのことから,現在,安全性の確保は,我々の最も重要な課題の一つであるとともに,社会の進歩に対応した極めて複雑,多様化した課題であると言えよう。

安全問題は,これまで,どちらかと言えば,事故や災害が起き,しかも広く知れわたつてはじめて安全問題として取り上げられるというように後追い的な性格を持つものであり,不良品回収や部分的改良,又は,救助,避難方法の強化といつた対症療法的あるいは受け身的な性格が強かつたが,近年逐次それらの未然防止という観点からの措置が講じられてきている。

安全問題への対応では,人間の能力の限度,人間の側に起因するミスと機械の故障,経済的な限界など多種の要因があり,いわゆる絶対安全を期すことには実際問題としては限界があるため,危険な状況の発生を事前に回避することに力点が置かれなければならない。このためにはあらかじめ十分な予測を立て,これを予防するという取り組み方が重要である。

このように先取り的な安全性の確保をより一層充実強化するためには,安全問題に関する国民意識の向上はもとより,安全基準の強化などによる国の規制や安全性に関する広報活動の活発化,製造側の自主的努力,教育訓練による人間資質の向上など総合的な対策が必要であるが,これらの実効を上げるためには技術開発に依存する部分が大きい。

一口に安全技術と言つても,生活用品,食品,医薬品の安全性を確保する技術や交通,産業の安全性確保,更には自然災害の防止を図る技術の内容には大きな相違がある。したがつて,安全技術は画一的にはとらえにくく,分野ごとに安全問題の特性を十分に分析した上でそれに応じた調査研究,技術開発を行うという対応が必要であろう。

この場合,分野のいかんにかかわらず,今後の安全性確保のための技術開発は,基本的には,危険性の予知,予測に努め,予防技術を開発するという方向を強めることが必要である。

具体的には,各種安全装置や機器,試薬の開発,分析,計測技術及び判定方法の向上,更には,試験方法や実験供試体の開発等に努めることであり,製品やシステムの開発に際して,十分にテクノロジー・アセスメントを実施することであろう。

更に,マン・マシン・システムの安全性を確保するためには,人間の良い機能が生かされるよう人間が配置され,人間の不得手な部分は機械によつて自動化されるようにシステムを構成することが必要であろう。

以下においては,安全問題のうち,日常生活の安全性確保の観点から生活用品,食品,医薬品の安全問題及び火災,交通安全問題を,次いで自然災害防止の問題を取り上げる(産業における安全化技術については, 第4章第3節参照 )。


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