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第3部  政府の施策
第2章  政府機関等における研究活動
1  国立試験研究機関の研究活動
(2)  国立試験研究機関における研究成果


国立試験研究機関においては,国民の要請にこたえて広範な分野にわたり研究を実施し,多くの成果を収めているが,以下,昭和47,48両年度を中心とした主要な研究成果について,その概要を述べる。


1 警察庁
〔LSD代謝〕

動物肝臓ミクロゾームを用いてLSDの代謝実験を行つた。その結果,2つの新しい代謝産物を確認した。この代謝活性は動物種により異なり,ラット〉モルモット〉家兎の順であつた。

また,ラットを用い,エタノール連続投与によるLSDの代謝活性を確認した。


〔音声の個人識別〕

声紋による個人識別を電子計算機等を用いて処理するための研究の一つとして,ピッチ(声の高さ,音程)が急に変った場合,それが声紋にどのような影響を及ぼすか,男性と女性の声についてそれぞれ検討し,声紋に変化が起こり得る可能性のあることを究明した。


〔交通視覚環境の写真計測〕

道路環境における対象の位置計測を,基線と写真軸がほぼ一致する方向に撮った写真対から計算によつて位置計測を行うという新しく開発した写真計測手法によつて実施し,方法論的に可能であるという結論を得た。写真撮影で通常のライカ版カメラを用い,また5/100mmまで読み取りのできるアナライザーで座標読み取りを行うと5%程度の誤差が生じるので計測用カメラとより精度の高い座標読み取り装置が必要であることが明らかになつた。

以上のほか,犯罪の捜査,鑑識に応用するための「におい」,ラスに見られる電気的溶融,こん跡の識別,ヘムの経時変化などについても研究を行い,所期の成果を得た。


2 北海道開発庁
〔寒地土木〕

災害の防止については,ダム群による洪水調節の検討及び海岸保全に資するための沿岸標砂推定式の妥当性について検討を行つた。また,地すべり機構の解明と抑止工法の検討を行い設計資料に供した。

積雪寒冷地における道路及び交通については,冬季道路交通の諸問題を解明するため,車両の走行速度,通過位置及び吹雪の実態構造に関する継続調査を行い,寒地道路の線形,幅員等について有効な資料を得た。

寒冷地における農用地及び施設整備については,農地造成工法についての試験研究及び特殊土壌地帯のかんがい排水路の実態調査を継続して行い,設計施工に関する基礎資料を得た。

北海道における港湾の設計及び施工については,越波による港内の静穏度に関する実態調査と実験を継続して行い,有効な設計資料を得た。

土木材料及び施工の合理化については,コンクリートの養生基準を作成し,コンクリートエ事管理の基礎資料とした。また,セメント,砂利・パイルの軟弱地盤処理工法への適応性を確認するとともに,深い基礎に適用される鋼管セル型ウエル基礎の各種振動実験を継続して行い,実用設計のための基礎資料を得た。


3 防衛庁
〔短波通信方式〕

時間的に伝搬特性が変動する伝搬路(時変伝搬路)について,選択性フェージングの状況,雑音,受信レベル等のモニター手段を用いて通信容量の予測を行い,能率の良い通信を実施するための可変速度通信方式の実用の目途が得られた。


〔拡散式空気浄化装置(人工えら)〕

気体は透過するが水は透過しない膜を利用して,水中の溶存酸素を分離し,呼吸源にしようとする人工えらは,潜水艦や海中居住装置などの分野において生命維持のため有望であるので,これらの実用化を目指し,海水中の溶存酸素を採集し炭酸ガスを排出するシリコン膜型気体透過部,採集した酸素を分離濃縮する酸素吸脱着部,気密室などからなる拡散式空気浄化装置の研究を進め,その試作に成功した。


〔航空機のきりもみ風胴試験法〕

航空機がきりもみに入りやすいか否か,きりもみから回復しやすいか否かは安全上極めて重要であり,新しく航空機を開発する場合には,きりもみ特性の良否を十分検討しておく必要がある。

形状のみならず,重量,重心,慣性能率などを実機と相似させた模型を,垂直兼用風胴を使用して降下速度と同じ速さの上昇気流の中で自由にきりもみ運動をさせ,更に遠隔操作により適当な操舵を行つてきりもみから回復させ,高速度カメラなどにより計測を行い,機体に固有なきりもみ特性を求める試験方法を検討した。


〔岩石急速掘削〕

刃物による岩石の機械的掘削において,従来の単純切削刃物に約20KHzの超音波振動を岩石面に垂直方向に与えた掘削方式につき実験的研究を行つた結果,小さな刃先押付力で従来の数倍の掘削度が得られ,掘削抵抗も数分の1に軽減され,刃先摩耗も少なくなるという成果を得た。


〔高圧水中音響標準〕

高圧水中音響標準装置として,深い海の中の高水圧下で音の受波を行う水中マイクロホンの感度を校正するための装置を完成し,それによる感度校正法を検討した。


4 科学技術庁
〔航空〕

VTOL機については,遷移飛行の研究を進めるとともにVTOL実験機の概念設計を行う段階に達した。

遷・超音速機関係では,新翼型(高速でも抵抗の少ない)の研究を行い,理論計算に成功し,開発に役立てるための態勢を整備しつつある。航空機の安全性については,特に自動着陸,操縦に関する人間工学及び突風の航空機に及ぼす影響の研究を進め有用なデータを得た。

ジェットエンジンについては,エンジン要素の研究を進めるとともに,公害防止のためのジェットエンジン低騒音化及び排気ガス制御並びに超軽量試作エンジンの性能向上の研究を行い多くの成果を得た。これらに関する諸研究は,通商産業省の大型プロジェクト制度による航空機用ジェットエンジンの開発に貢献している。


〔宇宙〕

固体ロケットについては,スピン(回転)時の影響を取り除くための研究及び推力中断型(着火,消火を制御し得る)固体ロケットの研究を行い,所期の成果を得た。液体ロケットについては,液体酸素ロケットの各要素(燃焼器,ポンプ等)の試験研究を行い多くの成果を得た。これを基に液体水素ロケットエンジンの研究に進むべき段階に達した。また,ロケットの高空性能の研究については,Nロケット第2段用エンジン(LE-3型)の真空状態(高度30Km相当)におけるエンジンの始動,停止時等における試験を行い,所期の目的を達した。

誘導関係については,ジャイロ,加速度計の高精度化の研究に基づき,慣性測定装置を試作し,これらを用いて慣性誘導の研究を開始した。人工衛星については,リアクションホイール(はずみ車)による三軸制御方式の研究を強力に進めている。


〔金属材料〕

15°Kにおいて,電力の損失なしに大電流を流したり,強磁界を発生できる超電導化合物V8 Gaの線材化に成功した。この線材は,現在開発されている超電導材料の中では,世界で最も強い磁界を発生させることができ,強磁界マグネットを必要とする新技術分野に利用されるものである。一方,米国のスカイラブ計画に参加した「無重量環境下におけるシリコンカーバイドひげ結晶金属複合材料の製造実験」で宇宙の無重力環境により,地上では比重の違いから製造が困難な異種物質どうしの均一な複合化の実験を行い,材料物性や技術の研究分野に新しい一歩を踏み出した。

国産金属材料のクリープ及び疲れ強さの標準データを提供するための試験を継続して行つており,今年度はクリープデータシート第2集を刊行した。

このほか,非鉄金属の直接電解製錬法,水中溶接法などの研究について多くの成果を得た。


〔放射線医学〕

原子力平和利用の大規模な進展に対処して,環境放射線の影響に関する諸問題について新たな観点から長期的な見通しのもとに調査研究を進めることとし,研究体制の整備,予備的研究に着手した。

速中性子線の悪性しゅようの治療研究に関しては,昭和49年度からのサイクロトロンの利用に対処するため,バンデグラフ加速器等により速中性子の生物学的な線量効果に関する研究等の推進を図つた。

また,放射線障害に関する研究としては,イリジウム事故被ばく患者について,各種代謝物質の変動を放射線障害の指標としてとらえ,放射線被ばく者の生化学的診断に関し有意義な成果が得られた。

上述の研究のほか,放射線生物学の分野において幅広い調査研究を展開し,各々の研究について成果が得られた。


〔防災〕

地震予知を行う微小地震観測装置の精度が確かめられ,超高感度の連続観測が可能となりつつある。

また,都市における地下埋設管の耐震性について,ガス管路を対象とした実物模型による振動実験を行い,管路形状の耐震性,埋設管と地盤との相互作用の解明を図り,震害対策の基礎資料を得る準備を進めている。

なお,地すべり,がけ崩れを研究するため昭和45年度から整備を進めてきた大型降雨実験施設を完成させた。


〔無機材料〕

カルコゲンガラスに関する研究においては,将来,光学材料,電気材料などに期待されているけい素含有層を持つカルコゲンガラス素材の製造法を開発するとともに,カルコゲンガラス薄板作成法,ガラス質,物質の粘度測定法についても成果を収めた。

また,耐熱材料,電極材料などに期待されているほう化ランタンについては,熱電子放射用ほう化ランタン素材の製造法を開発した。

更に,誘電体材料として期待されている酸化ニオブに関する研究においては,特有ガスに対する化学吸着性,雰囲気の変化に対する表面電気抵抗など表面化学的研究について基礎的及び応用面上興味のある成果を収めた。

これらのほか,酸化けい素,酸化マグネシウムなどの研究分野についても成果を収めた。


5 法務省
〔精神病質の診断〕

非行少年の精神病質診断について,精神病質の基本的要因構造とその類型を追求し,更に精神病質診断の統一基準作成の可能性を検討したが,この結果,診断の過程,手掛りとなる要因,使用されている診断概念,非行性との関連要因,統一的精神病質特性としての因子等を検討し,人格に関し心理学的に精神病質概念を位置付けることを可能にした。


〔受刑経過に伴う人格変容〕

長期間刑務所に収容された無期受刑者を対象に,受刑者の所内における行状,心身に関する訴え,集団適応状況,人格の深層面等の変化を調査し,心理学的な分析研究の結果,これら長期受刑者の処遇のあり方に関する基礎的な資料を得た。


6 大蔵省
〔銀行券,郵便切手,諸証券印刷〕

銀行券の偽造防止については,精密な階調変化に富む凹版原版の作製法及び画線の幅,深さを変化させる手法や階調を付与する手法による彩紋原版の作製法について基礎的な知見を得た。また,銀行券の偽造防止効果を一層発揮させるため,更に盛り上がりの大きいノンオフセット深凹版印刷に適したインカーシステム及びインキを開発し,実験を重ねた結果,良好な成果を得た。

郵便切手印刷については,極めて高密度線数のマイクロスクリーンを用いたオフセット印刷について,きめの細かい階調の印刷物が得られ,今後の製品化が期待される。

製紙技術については,新しいすき入れ方式及びすき入れ原版の作製に関する新方式を研究開発し好結果を得た。


〔醸造〕

清酒については,泡及び酵母の新しい識別法を開発し,醸造上での同酵母の利用を容易ならしめたほか,清酒の老熟機構を解明するために新古酒類の化学成分を比較研究し,熟成に関係のある種々の新物質を分離確認した。また,清酒原料米の各種の性質・成分間の相関を研究し,当面の優良酒造米選択のための指標を設定した。

ぶどう酒については,酸化防止法を開発して亜硫酸の使用量減少を可能にした。


7 文部省
〔緯度観測〕

極運動を含む地球回転運動について,人工衛星ドップラー観測から求められた極運動と従来の天文経緯度観測によるものとの比較をし,両者には本質的な差異のあることを確認した。

極運動の周期項の主要項であるチャンドラー項の周期が見かけ上,2つ又は3つに分離して現われるのは,その項の振幅に大きなうねりのあるためであることを示した。

平均極の変化については,日本列島の太平洋側,日本海溝に沿つての大地震,黒潮の蛇行と平均極の経年変化における突然変曲との対応を指摘し,海洋中の物量変化と地球回転運動の変化との関係を検討した。


〔うるささの数量化〕

航空機騒音の問題を取り上げ,東京都昭島市(横田基地騒音)において調査を行つた。騒音の物理特性から心理的うるささを表現することをまず試み,また,ある地区にどのような物理特性を持つものか,どの位飛来するかを調べるとともに,その地区住民のうるささの心理的反応を調査し,これらを対応付けて,うるささの指標化を試みた。


〔画像入力装置〕

認識のための入力装量として製作された画像入力装置を動作させ,読み込まれた画像データを表示し,また,フォートラン・プログラムからも参照できるようにした使いやすいシステムを完成した。このシステムはx線写真からの自動診断,染色体判別などにも利用できる。


〔遺伝〕

人間環境内に存在する化学的突然変異原,病原物質などに対する鋭敏な検定方法をカイコの突然変異性を利用して開発した。

西南アジア,中近東のネズミ類の第二次探検調査の結果,クマネズミの分布と核型及び血清型の関連性について注目すべき新知見を得た。

人類遺伝学については,ヒトの染色体異常を対象としてその発生条件を分析する研究などにおいて種々の成果を挙げた。

種々の細菌,ウイルス類を対象とする分子レベルにおける各種の特色ある遺伝学的研究がそれぞれ重要な成果を挙げた。

行動を含めた生態遺伝学的研究については,ショウジョウバエの走行性,牧草の適応性等について諸知見が発表された。


8 厚生省
〔人口問題〕

第6次出産力調査をはじめとする各種実地調査,国勢調査,人口動態統計等を利用し,我が国人口問題に関する諸局面比ついて分析を行い,今後の人口問題の研究にとつて有益な知見を得ることができた。中でも,第6次出産力調査の結果分析における1夫婦2児制の定着の実証と人口学的モデルの作成から今後の人口推計等についての基礎的資料を得ることができた。


〔保健医療サービス〕

国民の保健医療を確保するため,医師,看護婦をはじめ各種の保健医療従事者(ヘルスマンパワー)の量と質を将来にわたつていかに計画的に確保すべきかを検討するため,人口構成と人口の地域分布,経済動向,傷病の量と質の変化,医療需要の変化,ヘルスマンパワーの供給等についての現状分析と将来予測に関する基本的手法の開発を進めた。


〔精神衛生〕

代謝異常による心身障害の早期発見のためのスクリーニング法の確立,一卵性双生児による心身発達に関する縦断的研究,精神分裂病者・自閉症児・情緒障害児の家族力動の解明,老人の社会的心理学的実態調査,精神分裂病者・精神薄弱者の社会復帰のためのディケア・ソシアルクラブの活動技術の確立等を進めた。


〔栄養〕

葉酸と脳発達の関連について,ラットを用いた条件学習法により,葉酸の不足がラットの学習に大きな影響のあることを解明した。またナイアシン,トリプトファン欠乏の脳発達に及ぼす影響についても,チロシン水酸化酵素活性の測定により究明した。更に野菜,魚肉中に含まれる各種金属類の一般的調理操作による流出度及び人体において金属類が日常どれだけ摂取されているかの実態を明らかにした。


〔食品,医薬品等の安全性〕

食品中の残留農薬, PCB,かび毒,発がん性物質の分析法の確立及びその汚染状況についての調査研究を行つた。また,食品添加物の安全性を再検討するため,毒性試験,催奇性試験,代謝試験等を行い,成果を得た。

医薬品については,混合製剤の分離定量法の開発,配合剤,種々の剤型の葉剤の製剤的研究を行い,成果を得た。

また,医薬品,化粧品の微生物による汚染対策のための試験法について研究した。家庭用品の衣類等に含まれる化学物質の安全性を確保するため,その理化学的試験,毒性試験を通して可塑剤などの生体に及ぼす影響について研究を行つた。更に鉛,PCBなどいくつかの化学物質が動物のポルフィリン代謝を刺激し,ポルフィリン合成を異常に高める機序を解明し,これに関与するデルタアミノレブリン酸合成酵素の活性を測定できる臨床的超微量定量法を開発した。この定量法が,白血病など血液疾患の診断にも応用できることが判明した。


〔がん〕

環境中に広く分布する強発がん性炭化水素,特にベンツピレンについて研究し,ベンツピレンが,生体内で酸素添加酵素によりオキシベンツピレン遊離基に変わることを発見した。そしてこの遊離基が,光あるいは熱によつて生ずるものと同じものであることを証明した。更にこの遊離基が染色体の中の核酸や蛋白質と結合すること,ラットと発がん性を有することを明らかにした。

また,がん原性物質のスクリーニング法開発のため,マウスあるいはラットの新生児投与法,経母乳あるいは経胎盤投与法,培養細胞の染色体異常及び細菌の突然変異等を用いる方法を検討した。また,動物の各種臓器に選択的にがんを発生させるため,化学物質のがん原性と標的臓器との相関性について研究を行つた。

更に,がんと免疫との関連では,マウスのエーリッヒ腹水がんの研究により,がんにり患した動物の免疫能を低下させる活性物質及び免疫反応を抑制する活性物質の存在を確認した。またこのような免疫の状態を調べる方法として,がん抗原でコートした赤血球を用いたがん抗体産生脾臓細胞の算定手法を開発した。


〔らい〕

電子顕微鏡によるらい菌の微細構造の追究により,宿主細胞内におけるらい菌の増殖過程の一部を解明した。患者血清中にらい菌に対する抗体が含まれていることが蛍光抗体法により明らかにされ,血清診断の道が開かれた。

特定の条件下では,マウス,ラットにらい菌を増殖させ得ることが確認され,新しい薬剤の開発が進められている。また,スルフォン剤抵抗症例に対するリファンピシンの有効性を確認した。


〔細菌,ウイルス〕

各種感染症については,その感染病理の研究,ワクチン,トキソイドの開発改良,血清診断法の改良,抗生物質の研究等を進めた。ワクチン,トキソイド関係ではインフルエンザ,狂犬病等のワクチン及びジフテリア,破傷風,はぶ毒等のトキソイドの改良研究を行い,また風邪に対する総合的ワクチンの開発研究も進めた。血清診断法としては,病原トレボネーマを抗原とする補体給合反応及び免疫粘着反応の実用化を検討した。また,炭そ菌に対する消毒法の研究を行い,ハロゲン系消毒薬の効果を確認した。更に抗生物質の耐性問題解決のため,ペニシリン分解酵素に対する放線菌の生成する阻害物質の探索を行い,1,2の有力な活性物質を分離した。


9 農林省
〔畜産〕

豚の繁殖技術の基礎となる凍結精液を技術化して実用化への道を開いた。

また,子豚を代用乳で育成するための自動給餌装置付きほ育器を開発した。

草地,飼料作関係では,ハーべストア及びビニール脱気サイロを用いた牧草サイレージの大量調製法についての技術を確立した。

家畜衛生関係では,牛の放牧衛生上問題となつているワラビ中毒の早期診断指針を確立した。また牛の呼吸器系,消化器系疾病予防対策の一環として,牛流行熱,牛ウイルス性下痢症の予防液を開発した。


〔園芸〕

なし黒斑病抵抗性,りんご粗皮病抵抗性等永年生木本作物の育種における耐病性早期検定法を確立した。また,なすの青枯病に高度の抵抗性を有し,一代雑種の親あるいは台木として高い利用価値を有する品種を育成した。

農薬によらない防除技術の一環として,リンゴの天敵微生物であるコカクモンハマキの増殖散布に成功した。

このほか,ゆり類球根の開花のための低温処理効果を明らかにしたほか,フリージァ球根の長期貯蔵と休眠打破法を開発し,これによる抑制栽培技術を確立した。


〔水稲〕

米の食味改善に関する研究において,同一品種であつても米の蛋白質含量の増加が食味低下をもたらし,これが施肥時期と密接な関係のあることを明らかにした。また,人工乾燥については,急激な高温乾燥や過乾燥が食味低下をもたらすことを認め,食味に影響のないような人工乾燥温度,乾燥速度等の乾燥条件を確立した。


〔蚕糸〕

桑葉の長期貯蔵技術を開発したほか,非水銀性の桑胴枯病消毒剤の効果を明らかにした。また,蚕の人工飼料育成について県試験場との共通飼育試験を行い,好成績を得た。更に,製糸工程の全自動化のための重要部分技術として,繰枠自動交換運搬装置の開発に成功した。


〔流通利用〕

放射線利用による北海道たまねぎの発芽抑制について,照射線量等諸条件を明らかにし,休眠明け後の内芽の伸長を2cm以内にとどめておけば,照射施設の利用を3か月以上に伸ばし得ることを明らかにした。温州みかんの長期貯蔵のための予措,温度,湿度等の諸条件を解明した。


〔林業〕

亜高山帯の森林は,観光開発等による破壊が問題になつているが,富士スバルライン周辺の森林について赤外線カラー航空写真を利用して林型区分図を作成し,施業及び道路開設の影響を明らかにした。

林地に牛を放牧した場合の林地保全に及ぼす影響の調査を行い,放牧林地では土壌の浸透能が低いこと等を明らかにした。

火災に安全な木質材料の開発に関する研究を行い,難燃材料の初期火災における性能の重要性,各種材料の燃焼性と発煙性,各種難燃薬剤の燃焼性と発ガス性等の基礎的知見を明らかにした。


〔水産〕

魚貝漁法の分野では,海中の表層又は中層に生息する浮魚類(甲殼類を含む。)を,高能率かつ省力的に漁獲するための表中層ひき網を開発した。このひき網は小型船用であるが,将来は大型船にも応用し得るものである。また,水産工学及び増養殖の両分野の協同により,浅海又は内湾の貝類増養殖場の有効な利用を図るため,種苗の採取,害敵の駆除等を目的とした漁場工船(シュノケール式採貝用水中トラクタ)を開発した。

水産物利用加工の分野では,マグロかん詰の品質判定について,現在主として行われている官能検査の基準である核酸関連物質を酵素法により迅速に定量化する方法を確立し,これを日米両国の品質検査担当者の見方の統一に役立てた。


10 通商産業省
〔電子〕

パターン情報処理については,文字図形に対する「場の効果法」という新しい認識方法の開発や音声認識の将来に大きく貢献する発声時の声道推定のための手法の開発を行つた。

情報システムについては,人工知能のための推論機構や言語の開発,マイクロプログラムや並列処理方式を中心とする新しい情報処理システムの研究などが進められた。

ロボットについては,知能を持つ機械の集大成として成果が積み重ねられた。

レーザー技術については,低損失光情報伝送用光ファイバー,誘電体光分岐線路,アモルファス半導体ホログラフメモリの開発を行つた。

電子部品材料については,ホール効果を利用した磁気バブル検出器,表面波を用いた映像走査素子を開発し,また,高融点化合物半導体処理用のプラズマ・マイクロジェットを試作した。


〔高分子工学〕

機能をもつ新高子材料として,フェニルマレイン酸誘導体を用いた感光性樹脂を開発した。この樹脂は増感剤を添加せずに実用感度を示すという極めて高感度なもので,増感剤による環境汚染の心配がない。

同じく機能を持つ新高分子材料として,選択的に金属と錯体を形成して色変化を示す高分子及びセルロース誘導体やキチンを用い,選択的に金属と錯体を形成する高分子材料の開発に成果を挙げた。また,金属イオンにより架橋可能な新しい性質をもつ高分子材料を製造した。

耐熱性高分子の原料となる無水ピロメリット酸の基礎材料であるジュレンの製造及びジュレンの酸化によるピロメリット酸の製造について研究し,工業的製造法を確立するための基礎資料を得た。


〔微生物工学〕

独立栄養細菌である硫黄酸化細菌及び鉄酸化細菌を用いて,ウラン鉱床からウランを短期間に溶出させる実験を行い,人形峠鉱山からウラン溶出活性の高い菌株の分離に成功した。


〔安全工学〕

人間一自動車系の安全性については,高速道路上の一連の道路環境パターンを全電子式でカラー表示のできる新方式の運転訓練用シミュレータを自動車教習所において評価した結果,被験者の実車による教習時間が短縮できる見通しを得た。

自動車安全走行の制御系については,知能自動車の自動速度制御装置と操舵角制御装置を試作し,各種走行実験を行つた結果,良好な作動を確認した。

自動車窓ガラスの曇り止め技術の一つとして期待されている透明導電膜の生産技術については,大型酸化物透明導電膜を作製するための大型真空蒸着装置を試作するとともに,これを用いて電気抵抗50Ω以下,可視光の透過率90%の均一な特性分布を持つ80cm×600cmの透明導電膜を作製するに必要な知見を得た。


〔産業保安〕

鉱山の高温対策については,分布及び経時変化を実測し,温度効果を加味した通気鋼計算用プログラム及び差分法による計算システムを開発し,鉱山開さく計画に利用できるようになつた。

鉱山のガス対策については坑内ゆう出ガスの成分を精査し,アルカン比によるガスゆう出異常現象の解明法を開発したほか,炭層内包蔵ガス抜きの管理精度を向上するガス流量計の開発を行つた。

鉱山の地圧対策については,山はね現象について振動計測による予知を検討した結果,山はね計測器の開発の見通しを得た。

可燃性ガスの爆発防止については,漏洩LPガスの拡散,滞留状態について一応の結論を得てLPガス集団供給におけるガス組成,容器設置基準の資料を提供した。

低温液化ガスの災害防止については,大型LNG貯蔵設備における災害防止対策を目的として蒸気拡散(低温状態)蒸気爆発及び火災対策に関する研究を進め,異状現象時のガスの挙動を明らかにした。

特に防火対策としては,設備火災における貯槽の散水設備基準の基礎資料として活用されるに至つた。

粉体の爆発防止については,各種粉体の流動時における静電現象を追求し,除電対策法について研究を進めた。結果の一部については現場に活用できる見通しを得た。


〔消費科学〕

軽量極限包装技術については,プラスチックフィルムによる単位包装技術(衝撃負荷における基本設計及び輸送を前提とする動力学解析)と,剛性外箱による集積包装技術を検討し,プラスチックフィルムによる液体包装技術の確立に貢献した。

消費財の安全については,建材の燃焼性,プラスチック材料,容器の成分移行,衝撃センサーの信頼性等について研究を続けており,それぞれの安全性を評価する技術の確立に大きく前進した。


〔標準の確立〕

大荷重精密計測技術については2,000トンの大型荷重計開発の一環として,電気抵抗線ひずみ計式の500トン・ロードセルを試作し性能試験を行つた結果,精度0.1%と所期の性能を得,大型はかりの検査用にも使える見通しを得た。また,荷重計自身の校正に使う荷重標準機の高精度化と自動化を図つた。

電気単位の絶体測定については,クロスキャパシタによる容量標準の測定で,2×10-7の高精度を得た。また,電圧天びんによる電圧絶対測定では,直流5.5kV,変動率±1×10-7の精度を得た。


〔新材料〕

シラスバルーンー金属系複合材については,プレパック加圧法によりAl系合金を基地とする複合材について,加圧力をはじめとする鋳造条件及びバルーン粒径や強度が材料に及ぼす影響について究明し,シラスバルーンが均一分散した組織をもつ良質の軽量化複合材の開発に成功した。

光通信用固体材料の製造技術については,レーザー光伝送路としてのガラス繊維について高純度ガラス原料としての酸化チタンの製造条件を明らかにし,またシングルモード伝送に必要な形状をもつクラッド形繊維の紡糸に成功した。


〔機械工業のシステム化〕

機械工業における情報処理技術については,機械部品の工程設計を省力化するための基礎となる部品分類方式のうち,大中規模工場向けの部品分類方式を実際に適用し,改良を加えて実用可能な方式を開発した。

オンライン実時間加工システムについては,適応制御旋盤を開発し,また,数値制御工作機械の旋削加工用自動プログラミング・システムのうち,センター作業用のフアスト・バージョンを完成した。


〔資源開発利用及び国土保全〕

広域深部物理深査技術については,諸航法による位置決定技術,高感度磁気探査技術,測定データの処理技術等を中心とした開発を実施し,国産技術による海域油田の空中磁気探査を可能にするとともに金属鉱床地域探査への導入も行つた。

ラテライトの有効利用技術については,Cr分離法として乾式微粉砕,分級による分離が有効であることを解明した。また,Ni分離については,回転炉による連続硫酸化ばい焼法で85%以上の抽出率が得られることが判明した。

複雑鉱処理の計算機制御技術については,選鉱工程への給鉱や産物の分析を迅速化する分析法,工程に影響を与える種々の要因の計測と制御法を確立し,更に制御用モデルを作成した。


〔住宅関連〕

セラミック材料による建材について,その耐火性をいかし,重量や寸法精度などにおける問題点を改善するための製法の改良を焼成,原料の面から究明し成果を挙げた。

住宅の居住性能については,騒音が睡眠に及ぼす影響,温熱環境及び照明と快適感との関係を明らかにした。

新軽量不燃建材の開発については,シラス及びほうろうゆう薬廃棄物を原料に用い,安価な泡ガラスの製造に成功した。

構造用新材料の生産技術の開発については,繊維-樹脂の混合体を連続的に加圧,加熱して複合材料を連続成形する装置の開発,強度の大きな複合材料の開発を行つた。


〔宇宙開発〕

ロケットとう載用分光装置については,試作したフライトモデルIを気球にとう載して観測実験を行い,有効なデータを得た。

ロケット用歯車については,曲げ疲れ試験を行い歯車の負荷性能を向上させるための歯形の設計方法,転位方法を確立した。

宇宙機器の潤滑剤については,各種の固体潤滑剤の耐久性実験を行い,有効なデータを得た。

パルス型プラスチックロケット2号機を試作し,性能試験を行うとともに,電気ロケットー般の運転技術,利用技術の研究を行つた。また,オージエ電子スペクトロスコピーによる電気ロケット部品の試験技術を開発した。


〔地震予知〕

爆破地震による地震速度については,実験地域の地下構造の特徴として,房総側の走時が著しく遅れること,見かけ速度7.2〜7.3km/secの層が存在するととが判明した。

地殼活構造については,関東地区及び近畿地方において,活しゅう曲及び活断層の調査を行つた。その結果,地質時代の地質構造は,地震前後の地殼変動の累積されたものであることが明らかになりつつある。


〔バイオニクス総合研究〕

水に可溶な外生酵素については,各種の不溶化調整法を検討し,放射線重合を利用することによつて,2週間以上も連続反応が可能な包括型不溶性酵素の新しい調整法を確立した。また,内生酵素については,反応速度解析を行い,新しいバイオリアクター(生化学反応装置)応用技術を開発して,てん菜糖工業に独創的製糖技術を確立した。

生体高分子については,ポリスチレン担体上にアミノ酸ポリマーを植え付けることに成功し,種々の新機能高分子,人工臓器用素材への活用を図つた。

クロロフィルを構造,活性を損なうことなく植物体から分離精製する方法を開発した。

芳香族核を持ったモデル化合物を合成し,けい光及びりん光を測定して,フェノール核からインドール核への励起エネルギー移動の様相を明らかにした。

生体関連物質に関する結晶構造解析を行う過程で,これまでアントシアジンと予想されていた物質を,直接位相決定法に基いて解析する方法を開発することによつて,予想と全く違ったミオーイノシトールであることを突き止めた。


〔海洋開発〕

深海底鉱物資源探査については,マゼラン海山群の中に存在する水深5,600m内外の小平地に多量のマンガン団塊のふ存することを明らかにした。

海底地質調査技術については,九州西方及び五島・対馬辺海域において海底地質構造,表層たい積物の調査研究をし,縮尺20万分の1の海底地質図を作成した。

海洋開発関連技術については,潜水体の姿勢,位置方向制御系について各々のセンサ及び制御回路を試作し特性実験した結果,良好な特性を得たので,3制御系の小型模型を製作中である。

耐海洋性複合材料については,新しく開発した炭素繊維強化プラスチックは既存のものよりも耐海洋性が著しく高いことが判明した。

金属含浸炭素複合材料については,金属材料とその接触部における腐食に対して,著しく高い耐食性を持つ複合材料を開発した。

水中溶接及び水中切断については50mの水深において高能率を発揮する水カーテン式水中炭酸ガスアーク溶接法を開発し,更に水深に全く影響を受けない横置式溶接法も開発した。


〔公害防止〕

窒素酸化物については,燃焼方法の改善によるNOx抑制技術,アンモニアを還元剤とするNOx接触還元技術の両面から研究を行い,前者では燃焼熱負荷35×104Kcal/hの試験炉を設計製作し,排ガス循環量,ガス温度,送入位置のNOx抑制効果について検討し,後者については,酸素存在下でも選択的にNOを還元できる触媒を見いだした。

汚染物質の拡散については,風洞実験,水槽実験,現地調査等を行うとともにシミュレーション等の高度化技術に関する多数の知見を得た。

各種産業排水処理については,泡まつ分離法,オゾン処理法等により実用化規模スケールで試験できる段階にまで進めてきた。また,微量金属の分析についても各種の方法について更に技術の水準を高め,精度向上に多くの知見を得た。

産業廃棄物処理については,プラスチック破砕に関してせん断破砕,低温ジェット粉砕,渦流引きちぎり破砕に関して知見を得るなど破砕特性を著しく向上させるとともに,熱分解による原料ガス,燃料油,モノマー活性炭の回収などに新方式を開発し,また,無公害完全燃焼技術を開発した。

悪臭防止については,効果的燃焼法を開発,熱効率,脱臭率が向上した。

計測関係については,環境汚染発生源用SO2計のJIS原案等にデータを提供するなど,各方面に寄与した。

また,瀬戸内海水質汚濁防止の研究のための瀬戸内海大型水理模型(水平縮尺1/2,000)を完成し,本格的研究に着手する運びとなつた。


11 運輸省
〔船舶〕

大型超高速コンテナ船については建造のための研究に着手した。この船舶は,フルード数が0.33で商船としては前例のない高速であるため,船型の設計はできるだけ理論的な方法を用いる必要がある。このため高速船としての船型計画に必要な理論計算及び抵抗成分分離計測の研究とプロペラが起こす波の計測を実施し,所要の資料を得た。また高速域で作動する高ピッチプロペラの開発及び設計資料を得るために,理論考察を基にして任意圧力分布を有する翼型を求める計算方法を開発し,これを利用して有害なキャビテージョンを防止する上で有利と思われる翼型模型を製作して風洞実験を行つた。

更にプロペラ材料について,材料毎の耐エロージョン性の比較資料を得るとともに特に表面粗度と耐エロージョン性の関連を付けることができた。

舶用機関については,超高速船用中速ギャードディーゼル機関の開発に関連して,過給機及び機関エレメントの基礎研究を実施した。開発目標の機関と相似の模型を用いた実験と理論計算によつて吸排気系の流動損失を低減し,過給機と機関の適合性を向上させる手法の検討を行つた。

また,ディーゼル機関の燃焼条件に最も影響を与える燃料噴射系の特性を試験し,機関の運転範囲で正常な噴射が行われることを確認した。

大型専用船については,波浪外力の実体を解明し,船体構造計算に資料を提供するための研究を行つた。

波浪外力については,二次元模型による大振幅強制上下振動実験及び静水落下衝撃試験を行い,基礎資料を得た。

船体構造については,6万トン級鉱石運搬船の縮尺1/3.44の大型ウイングタンクの二次元模型により,荷重条件及び船側傾斜の影響に重点をおいた破壊実験を行つた。また,鉱石を満載した立体模型により,大きな外荷重が加わつた際の鉱石の挙動について検討を行つた。

原子力船については,原子力容器の安全性を明らかにするために,材料及び溶接部のぜい性破壊特性を求め,特に板厚効果を解明し,工業的小型試験との相関を明らかにした。また,溶接継手部における低サイクル疲労強度を実験的に求めるとともに,圧力容器用鋼の新しい非破壊検査法として,発生又は進行する割れの大きさを推定する検査法について,基礎研究を実施した。

舶用原子炉の小型化のため,自己加圧のメカニズムを究明し,自己加圧型舶用炉の過渡特性について原子力船の運転特性あるいは安全性を評価するに十分な解析コードを作成した。また,内装型蒸気発生器の動特性を研究するため,一体型船舶用炉の模擬装置を製作し研究を進めた。

放射線のしやへいについて,不規則形状物のしやへい効果を実験的に求め,しやへい設計に使用する計算式の適用限界を得た。

海上交通については,ふくそうする海上交通に対して船の衝突確率,乗場確率の解析を行い,特に海上交通における事故の危険度は視程に反比例することを明らかにした。


〔港湾〕

港湾構造物については,耐震設計法を確立するため,原地盤,海岸堤防,大型荷役機械を上載するさん橋等の振動特性を解明した。また,地中構造物と地盤の地震時の相互利用に関し実験研究を行い,構造物のひずみ,応答加速度等をは握した。

港湾計画については,待ち合わせ理論,非線型計画法などをふ頭計画に応用し,港湾システム設計,港湾計画へのソフトサイエンス手法の導入を検討した。

海域環境保全の問題については,東京湾潮流模型実験を行い,埋立て,航路開発等が湾内潮流,汚水の拡散に及ぼす影響をは握した。

港湾,海岸及び海浜の保全における漂砂の問題については,斜め入射部分重複波による質量輸送速度の分布を解明した。また,人工砂浜の維持技術について海浜の最適断面をは握した。


〔自動車〕

安全性については,車両欠陥の発生防止に関する研究を行い,推進軸系の共振について異常振動が生ずる可能性があるか否かについて機械インピーダンス法により調査解析した。

また,高速走行時における操縦安定性については,車両の動的応答特性を求めてその試験方法及び評価方法の研究を進めた。

灯火の性能向上及びげん惑防止に関し,尾灯,制動灯等の視認性の向上について,その必要光度についての資料を得て,自動車の保安基準の改正に役立てた。

公害防止については,排気ガスの清浄装置について,触媒等装置の安全性も含め特性を解明して,中古車の排気ガス対策としての触媒方式及び点火時期,制御方式による清浄装置の試験法を確立した。

ディーゼル機関の排出ガスを主とする実験を行い,排出ガスの測定法及び評価試験方法に関する研究を行つた。

騒音源の防止に関しては,大型バスから二輪車にいたる各種の運転状態における騒音排出状況の実験を行い所要のデータを得た。


〔鉄道〕

鉄道構造物及び軌道の安全確保について,鉄道橋,軌道,その他の構造物の安全度向上のための研究を行つた。また鉄道車両の安全性向上のため,不燃化対策に必要な材料燃焼試験を行つた。

鉄道の自動制御装置の信頼性向上に関し,車上装置,地上装置等走行保安確保に必要な現場試験を実施し,所要の資料を得た。


〔航究〕

ILS及びVORなどの航行援助施設の信頼性を格段に向上させるため,その完全固体化に必要な電子変調器及び電子切換器に関する試験研究を行い成果を収めた。また,ふくそうする管制通信の過負荷に対処するために,通信方式の研究に着手するとともに,更に将来の要求に備えるため,マイクロ波ILS,エリアナビゲーション方式及び航空機の空中衝突防止方式に関する基礎研究を行つた。


〔気象〕

気象,自然災害については,梅雨末期の集中豪雨に関し,豪雨の発生機構の解析を行い,特徴として下層に強風帯を伴うことが分かつた。

地球大気開発計画(GARP)の前段階である気団変質観測計画(AMTEX)における観測に必要なオメガ方式による舶用高層風観測装置を開発した。

地震予知のために,高性能業務用地震観測処理装置を開発した。

大気複合汚染防止について,大気汚染粒子の立体分布を観測できるレーザーレーダー (ライダー)の開発を行つた。

また,有害ガスの選択可能なライダーによる測定法の開発を行うためのヘリコプターとう載用の亜硫酸ガス測定装置,窒素酸化物測定装置を開発し,エーロゾル測定用ライダーと併用して,面上汚染源よりの上方拡散状況,幹線道路付近の水平及び垂直方向の汚染分布スケールの測定を実施し所要の資料を得た。

二次汚染の光化学的形成については,局地的高濃度汚染と局地気象との関連が深いと思われるので,都市大気中に存在する汚染物質を立体的に気象とともに同時観測を行い,光化学スモッグの発生機構の資料を得た。

大気汚染は全地球に及びつつあるが,大気汚染と大気及び海洋浄化能力との関係,気候の変動等への影響について解明するため,極低濃度の気体汚染物質の自動測定測量,大気中の微粒子であるエーロゾルの自動測定装置,光学的手法による大気の混濁度の測定装置の開発を進め,CO自動測定装置,極微量のエーロゾル測定の標準器を製作した。

放射能調査については,降水及び落下じん中に存在するストロンチウム90の測定を続け,冬季北西季節風に伴う降水では日本海側が東京に比べ数倍高いことが分かつた。

フォールアウト中のプルトニウムは土壌表面に強く吸着し,長く地表面にとどまることが分かつた。


〔海洋開発〕

浮遊式海洋構造物に関し,半潜水型,箱型,船型の模型を用い強制動揺,拘束状態での旋回及び波浪中で構造物を固定させた場合等について,構造物に作用する深体力特性を求め,これらの結果を組み合わせ,波浪中における浮遊式海洋構造物の運動を高精度に推定するための資料を得た。

また,各種の浮遊式海岸構造物の波浪中における動揺性能及び定位置保持技術についても調査研究した。更に柱状海洋構造物の波力応答と円形浮体の挙動を解明した。

海洋における鋼構造物の度合の問題については,腐食機構の解明,腐食傾向のは握及び被覆材の防食効果のは握を行つた。

埋立て及び地盤改良については,生石灰を用いた深層混合処理工法の実用化を促進するとともに,過圧密粘土の圧密特性,水平管路による土砂水力輸送の問題等の研究を行つた。

岩盤しゅんせつについては,電磁波による岩盤破砕の研究を進め,岩石の電磁波吸収特性及び破砕特性をは握した。


〔宇宙開発〕

静止気象衛星システムの研究,地上施設の研究,衛星とう載用可視赤外線放射計の研究を行い,48年度以降設置予定の地上施設の基本設計に必要な資料を得た。また,衛星から大気温度の垂直分布を測定するには,衛星の姿勢制御方式として3軸安定方式がより有効であることが分かつた。

航行衛星では,航空衛星,海事衛星の国際的な共同開発の動向を配慮して,新しい分配周波数による変換トランスポンダの開発に着手した。また,狭帯域測距及びデータ伝送方式について,衛星折り返し実験を行い,測距精度が良好であること及びデータの伝送誤り率が少ないことを確認した。


12 郵政省
〔人工衛星〕

52年度に打ち上げが予定されている実験用静止通信衛星(ECS)にとう載予定のミリ波中継器(受信部)について,前年度製作された第一段階のエンジニアリングモデルの開発成果をもとに第二段階として,方式の異なる二つのエンジニアリングモデルの開発を行つた。これらの中継器は,小型,軽量,小消費電力の電気的特性を満足するとともに静止軌道へ打ち上げるときの苛酷な環境条件にも耐えられるよう設計製作されたもので,ミリ波帯衛星通信方式の研究に貢献できるものと期待されている。

また,衛星とう載用デスパン・アンテナの試作検討も現在進められており,これらの研究成果は宇宙開発事業団に引き継がれることになつている。


〔宇宙通信〕

米国NASAによつて打ち上げられた応用技術衛星(ATS-1)を使用して各種の実験を行つた。特に1個の衛星を介して多数の小規模局が随時通信できる周波数拡散多元接続(SSRA)方式は,通話と同時に衛星までの距離及び距離変化率測定ができる利点があり,そのシステム確立のため,その機能を持つSSRR(拡散変調方式による距離及び距離変化率測定)装置の試作を完了した。衛星折り返し実験の結果,この装置による測定精度は米国で開発された同種の装置(ATSR)と比較してもそん色ないことが確認されており,船舶等移動局における将来有望な通信方式として実用化の研究も進められた。


〔宇宙空間〕

通信の媒体である宇宙空間の物理的状態,電波環境を解明するため,地上及び人工衛星で得られた観測結果を基に研究を進めた。特に1972年8月上旬,太陽面に発生した大爆発により誘起された電離磁気圏のじよう乱現象は,種々の観測からつぶさにとらえられたが,これらの貴重な資料を基に総合的な解析を行い,地球物理研究分野において多大の成果を収めた。


〔海中情報伝送〕

レーザーを用いた場合の海中における情報伝送系の構成に関し,基礎的な伝搬特性の測定を行うとともに,この成果を基にして,水中の状況を観測し得る水中レーザー・スコープの開発を進めた。

また,海底居住など高圧ヘリウム空気中で発生した音声は極度に了解性を失うため,これらの環境における音声の性質を明らかにし,簡易なヘリウム音声の復元装置を開発し良好な結果を得た。


〔電波気象〕

対流図に発生する種々の大気じよう乱(気温逆転層,大気波動等)は大気中における電波の屈折率を変化させ,VHF帯以上の電波伝搬に影響を及ぼす。特に対流圏低層(2km以下)については,ソーダー (音波レーダー)がこれらの大気じよう乱を探知するための最適の装置であるので,これを使い連続測定を行い,貴重な資料を得た。

また,気温逆転層については,スモッグ発生とも強い相関があり,ソーダーを用いればその状態を迅速に探知できるところから,スモッグ予報,警報の手段としての検討も進めた。


13 労働省
〔産業安全〕

機械関係では,天井クレーンの巻き上げ作業時における機体各部の動的応力を測定し,アナログ計算機シミュレーションにより解析してクレーン及びつり具設計のための基礎資料を得た。

土木建築関係では,大谷石について,室内及び現場実験により各種破壊過程における微震音発生特性を調べ,微震音の検出による落盤,崩壊の予知のための成果を得た。

化学関係では,焼結金属の消炎性能を検討し,火災防止器の素子として有効性を明らかにした。

また,加圧下における水素-空気混合物の爆発圧力を測定し,初圧の影響等を解明した。

電気関係では,静電気による点火危険性の防止のため,導電性繊維を用いた自己放電式除電器を開発し,室内実験及び現場実験により,その有効性を確認した。


〔労働衛生〕

コンデンサー製造工場における作業環境気中のPCB濃度は, PCBの漏れあるいは特殊な作業工程を除いては,作業環境基準値0.05PPm以下で,おおよそ0.005〜0.05PPmの範囲であることが分かつた。また,このとき行つた作業者の血液中(血清)PCB量の測定によれば,作業者約100名の平均値は,0.4μg/ml血清(血液に換算すると約0.23PPm)で最高価は0.92μgであつた。PCBの使用中止後2年目の感圧紙製造作業者約200名について調査を行つたが,その作業状況から見て,これらの作業者の血液中PCB量はPCB使用当時においてコンデンサー製造作業者と同程度と推定されるが,現在では0.008〜0.03PPmと明らかに減少は見せているものの,なお日本人の平均値といわれる0.004P Pmに比べて相当高い。

また, PCBの代替品SASあるいはKMCの毒性試験の結果は,これらの体内蓄積性は小さく,皮膚・肝臓に対する毒性もPCBに比べれば小さく,現在の作業状況では障害の可能性は少ないと考えられた。


14 建設省
〔測量,地図〕

測量及び地図作成の分野においては,地震予知の実用化を強力に推進するため,観測精度の高度化,観測機器の自動化を図り,地殼変動の連続的観測・記録を可能にするレーザージオジメーター精密自動距離測定装置,地殼の微小変化を検出,記録する重力計等精密測地計器の開発試験を行つた。

また,国土の開発,保全,災害,公害防止等,広域的な国土の利用計画,環境汚染問題等に対処するため,資源衛星写真を利用したりリモートセンシング技法の研究を行つた。

地図情報の迅速化と有効的な活用,地図発行の円滑化を図るため,,各種データの作成,標準メッシュ設定による計量的な情報のは握,情報処理システムの開発,地図印刷の効率化と自動化をは図るための静電写真技法の応用等,地図作成に必要な情報管理と技法の研究開発を行つた。


〔土木〕

河川,湖沼,海域等公共用水域の汚濁の防止に資するため,水質汚濁予測手法の研究を行い,精度向上を図ることができた。

洪水,土砂崩壊,地震による災害の防止については,河川の流出量推定の精度向上,河口閉そく対策工法,斜面の安定度向上,土木構造物の耐震に関する研究等を行い,治水計画策定に資する成果を得るとともに,急傾斜抽調査指針,石油パイプライン耐震基準作成に資した。

交通計画策定のための輸送分担モデルを開発し,また道路の線形設計に人間工学的要素を取り入れた設計法を確立した。

酸性河川水,工業廃水など酸性水に対するコンクリートの腐食防止,海中における鋼材の腐食防止等の防食処理法の指針を作成した。


〔建築〕

防災については,火災時における燃焼特性(焼燃速度,放出ガス,毒性等を解明するとともに煙の挙動解析と煙制御の効果の検討を行つた。このため実大火災実験を実施し建材及び各種収納可燃物の発煙速度,生成ガス等の測定を行い,またダクトなど縦シャフトによつて上階に伝ぱ拡散する煙の流動機構を実験結果と計算結果を対応させ分析した。

居住環境の改善については,日照基準の作成に資するため東京,大阪,神戸の住宅地について住宅地を高・中・低層の三階層に分け,魚眼レンズによる写真撮影を行い,冬至及び春秋分における各住宅の日照時間を調査するとともに,モデル住宅による日照時間と容積率,建ぺい率及び高さ等の関係を分析した。また,住宅地域等における騒音の伝ぱ性状を解析し,騒音に対するしゃへい棟の効果について模型実験を行い,諸データの分析を実施した。


15 自治省
〔消防〕

大地震に伴う木災の延焼被害規模について,確率模型を用いたシミュレーションを試み,市街地が持つている潜在的延焼性を求めた。更に,市街地構成,危険物貯蔵等の地域的特性が延焼性に及ぼす影響について研究を進めている。また,大震時における火災の延焼阻止方策としてヘリコプター利用による空中消火法を開発するため,木造家屋火災の各段階に対する航空消防活動の効果をモデル火災の消火実験により研究するとともに,その運用時における安全性を確保するための機材改良を行つた。

近年のビル火災における死者の増加にかんがみ,煙の充満する階段廊下などに外部から強制送風して排煙することにより火災室の上階在住者の避難路を確保し,人命の損失を防ぐことについて,実大火災実験による実際的な検証と,更にこれを用いての現論的解析を行い,同方法の実用化を一歩前進させた。また,火災現場での避難者や消防隊員,を対象とした軽量かつ長時間使用可能な酸素発生式高性能呼吸器,ビル火災用収納型屋外避難階段の開発等,人命安全確保対策としての研究開発の促進を図つた。

油火災の消火には天然たん白系泡剤が使用されているが,これは老化性という欠点を持つているので,新たな保存性のよい合成系泡剤の開発を進め,実用規模の消火実験により一応の成果を得た。


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