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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第4章  社会開発基盤の強化
第5節  安全の確保
2  研究開発の動向



(1) 人工的要因による事故や災害を防止する科学技術
1 人間の諸特性を解明し,人間一機械系の安全を確保する科学技術

人間と機械の特性の解明については,作業時における人間の疲労や応答速度等の生理的,機械的諸特性の研究,例えば配電作業やクレーン作業の場合の誤操作,疲労等人間側の諸特性と機械や作業の特性を明らかにする研究,また交通事故については,主として運転者側の運転機能の研究及び事故発生の人的,構造的不安全要素の摘出の研究等が進められている。安全を確保する設計手法については,人間と機械の特性のは握から,例えば人間をブラックボックスと仮定し,この上に立つてシステムの設計法を研究するなど安全,快適な人間一機械系を創出する手法の研究が進められている。また,人間の視認や操作の確保化等を目指した研究が進められ,自動車等にその成果が採り入れられている。


2 交通における安全の確保

陸上交通については,まず自動車を見てみると,日米政府間協定により安全自動車の開発が進められるなど各方面で安全な自動車を目指した研究開発が積極的に進められ,既に試作車も数例発表され一応の成果を収めている。

しかし,一層の性能向上とコスト・ダウンを図るため,引き続き強力な研究開発の行われることが望まれる。このほか,自動車の高速走行時に発生する原因不明のフロントガラス破損事故について究明が行われ,前もつて傷の入つたものに強い風圧が加わつたため発生するものであることが判明した。

次いで,第2節の「交通」において述べたように,環境面,能率面からの要請を満たしつつ安全な運行が図られる交通システムとして新都市交通システムの開発が進められている。

更に,かなり強い地震が発生した場合,電車を緊急に停止させる技術が開発され,一部で実用化されている。

海上交通については,特に問題となつている狭水路での船舶の運行についてレーダを用いて誘導を行う方式の研究が行われている。また,航行衛星を使用して安全に運行させる技術の研究も進められている。

海上遭難事故の防止については,漁船にバルジを付け,復元力を増し,転覆を防止する技術の開発が行われ成果を収めた。また,大型専用船の安全設計条件の解明等の研究が進められている。

航空輸送については,航空機の機体に十分な強度と耐久性を持たせるため,機体形状,使用材質について研究が行われている。また,パイロットのミスによつて大きな事故が発生しているが,これを防ぐため,パイロットが外界を見ながら,かつ同時に計器からの情報をは握し得る新しい操縦情報表示装置の開発が進められている。更に,離着陸がますます混雑するとともに航空機が一層高速化する状況に対処して,パイロットの慣れやカンに頼らず安全に着陸する自動着陸装置の必要性が叫ばれているが,人間の判断を必要とした従来のオートパイロットに代えて,多種サーボ系を軸とする自動着陸システムの開発が進められている。

これとともに地上支援の面でも,航空管制の改善,衝突予防装置,非常救命装置の開発等が行われている。


3 労働災害及び産業災害を防止する科学技術

労働,産業災害については生産施設の大規模化,集中化が著しい中で,いつたん事故となつた場合のじん大な人的被害,物的被害の発生の危ぐされている。このため様々な労働,産業災害防止技術が開発されている。

まず,鉱山保安については,ガスや炭じんの爆発,火災条件の解明とともに爆発を事前に感知,防止する装置や救命器具の開発が進められている。工場等で発生する労働災害の防止につい七は,プレス機械による人身事故についてテレビカメラを使用した制御装置の開発や研削と石等加工機械の安全化,電撃の防止,保護具の改善,危険箇所へのロボットの利用等の研究開発が進められ,その成果が活用されつつある。

これらとともに,作業を行う場合,どのような形態が能率的かつ安全であるかを解明し,安全作業標準動作を確立しようとする研究が進められている。

更に,とりわけ可燃物に対するものへの取組みが積極的になされている。

まず可燃性液体については,静電気帯電によつて発生する着火,爆発事故を防止するため,放電と着火の関連,電荷緩和装置の効果等について究明するとともに静電気測定法,管理法に関する研究を行いまた,パイプの流量を測定することによりパイプラインの漏れを検出する装置の開発等が行われた。可燃性ガスについては,着火,爆発条件の解明,滞流防止法の開発,タンク割れ発生防止法の開発,タンク等の非破壊検査法の開発, LPガス貯そうについて設置基準の作成等をも目途とした研究が進められている。

火薬類については,爆薬以外に爆発危険性のある塩素酸塩等も含めて着火,爆発条件の解明,爆風被害の解明,爆風被害の防止法の開発,技術基準作成のための研究が取り組まれている。このほか危険物の非常処理システムの開発,不安定物質の爆発災害防止等の研究が行われている。


4 火災を予防し,被害の発生を防止する科学技術

近年,交通事故等とともに火災による死傷がひん発している。最近の特徴としては,いわゆる新,建材,衣料など化学物質を使用した材料の増加やビル建築の増加によつて煙で死亡する事例が顕著となつていることである。まず,火災発生の予防については,防火性,断熱性,耐久性に優れた無機建材や火災に安全な木質材料の開発,難燃性繊維製品の研究,建物の耐火設計法の研究,火災探知器等感知設備の開発がそれぞれ進められている。

火災拡大の防止については,各種消火装置の開発が進められているが,これとともにヘリコプターからの空中消火に使用する機器の開発,消化用合成気泡剤の開発等が行われた。また,大火時に発生する火の粉のたつ巻きが研究され,発生,移動条件が解明されつつある。

近年被害の著増している煙害については,火災の際,発生する煙の量,成分,挙動の解明が図られるとともに,煙に対する設計法の開発が行われており,また防煙,排煙等の機器の開発が行われている。このほか高性能呼吸器具の開発,高層ビルからの避難器具の開発等被害の発生,拡大を防止する技術の開発が進められている。


5 消費財の安全性を確保する科学技術

まず電気製品については,火災,感電からの安全を確保するための材質の絶縁性,難燃性に関する研究,構造上の絶縁性の研究や安全性の向上の観点からの試験法の研究等が行われている。また石油ストーブ等の衝撃に対する安全性を確信するための基礎的な研究としてインパクトセンサーの信頼性の研究が行われている。

毒性に関連しては,浄水管等の銅パイプの腐食に関する研究,プラスチック包装材料の重金属や可塑剤等の成分の移行に関する研究,合成洗剤の安全性に関する研究等が行われている。

繊維製品については,現在柔軟加工剤や衛生加工剤による皮膚障害等についての研究が進められている。

家庭用化学品に関連しては,PCB等の難分解性毒性物質の事前チェックのため微生物による分解性テスト,こいを使用した蓄積率の解明等の研究が行われている。

一方,消費財のうち,添加物等化学物質を含む食品などは,それ以外のものと異なり,その作用が化学的なものであるので,障害が発生する場合にも通常その進行は緩慢であり,危険性の認識が困難であつて,かつ,その障害の原因として認識することが困難である。このため,気付かないうちに大量の障害者や重症の障害者の発生する危険性が大きい。

これに対しては,食品について,亜硝酸ナトリウム,食用色素1号等の動物投与実験及び挙動調査による食品関連物質の安全性に関する研究,酸化防止剤,漂白剤,着色料,こ科,甘味料等食品添加物の適正使用法の研究等が進められている。薬品については,厚生省において薬品の効果と危険性の見直しが進められているか,これとともに薬剤成分の相乗効果及び毒性に関する研究,混合製剤中の配合成分の安定性,相互作用の解明等が進められている。


(2) 自然的要因による災害を防止する科学技術
1 自然の物理的メカニズムを解明する科学技術

地震,豪雨,台風等の自然災害を単にその現象面の研究だけにとどまらず,発生機構にさかのぼつて研究することが被害を防止する上で有効であるため地質学,気象学,海洋学等基礎的学問を駆使した研究が行われている。この分野の研究は身近な例では天気予報といつた形で応用されている。

地震予知については,固体地球物理学面からの解明が必要となつており,現在有力なものとして 海洋底拡大説 ショルツ理論 がある。この検証と実測データ収集のため,地球内部ダイナミックス計画(GDP:国際協力によつて地球の動力学的解明を行う計画)の一環として西太平洋海底の構造,島孤の動き,マントル対流について解明が進められている。また,マントルの形成とその構造や地殼変動の解明に関する研究が進められている。

気象に関しては,地球大気開発計画(GARP:国際協力によつて気象変化の物理的機構を解明する計画)の一環として冬期に台湾と南西諸島の間で発生する“台湾坊主"′を取り上げ,積雲対流効果の解明,海面からのエネルギー供給量の推定等の研究が行われている。また,大気循環モデルの開発,局地気象現象の研究等が進められている。このほか,異常潮位の発現機構の解明が取り組まれている。


2 地震災害を防止する科学技術

地震については,現在その発生を防止することはできないので,できるだけ迅速かつ正確に発生を予知し,この情報が警報,避難等の各段階に円滑に伝達されること,建造物等の耐震化を図ることが必要とされている。予知及び警報,避難については本章第2節「防災のための予知・予測」において述べているので,ここでは,耐震化を中心として述べることとする。


注1)海洋底拡大説は,マントルと呼ばれる地球深部からわき上がつてきたマグマが,海嶺部で冷え固まつて新しい海底を作り,古い海底は横に移動して,海溝部で大陸又は島弧の下に潜り込み,全体として海底は絶えず更新されているという説。


注2)岩石に周辺から圧力が加わると,小さなひびが入り,岩石は膨脹し,その割れ目に周辺から入り込んだ水の圧力が岩石の強度を弱め,地震を起こすという理論。岩石が膨脹する際,地盤が隆起したり,弾性波速度等の物性が変化するので,これら前駆現象を地震予知に利用することが期待されている。

まず,高層建築物については,既に剛構造理論から柔構造理論による設計へ転換が行われ,耐震性は向上している。また,各種土木建築構造物について土の動的特性,構造部材の動的性質及び耐震強度,地盤と構造物の相互作用,構造物の振動性状と耐震強度等の解明からなる総合的な耐震設計法の開発が進められ一部実用に供されている。更に地震火災の延焼性状の研究,消防活動の効果の研究,避難方法の研究等が進められ,その成果の活用が図られている。


3 豪雨,強風災害を防止する科学技術

豪雨は洪水あるいはがけ崩れといつた形で多くの人命を奪つてきた。集中豪雨以外の豪雨についてはある程度の予知,予測が可能となつている。しかし,集中豪雨については予知,予測は困難であり,斜面崩壊による死傷に見られるように大きな被害を出し問題となつている。このため,その発生機構の解明を含めた的確な予知,予測法の開発が行われている。斜面崩壊に対してはその崩壊機構の解明,危険度判定手法の開発等が行われている。また,昭和47年に各地で異常な豪雨災害が発生したが,これを対象として災害要因,地質特性,豪雨特性の解明等が進められている。

一方,強風災害については,積雲対流がもたらす災害の発生機構に関する研究,台風の機構や災害態様の解明等が進められている。また橋りよう等の構造物や建築物の耐風性の解明と耐風設計法の開発が行われている。


4 雪害,その他の災害を防止する科学技術

都市における狭あいな道路においても使用可能な除雪機械,融雪法及び省力屋根雪処理技術の開発が行われている。また,除雪実験道路の研究,雪氷の状況からの雪害量の算定法等に関する研究が行われている。

津波や波浪による被害については,海岸堤防につき波圧等の条件を解明し,また離岸堤につき配置効果等を明らかにし,海岸構造物の設計法を前進させている。火山噴火による被害については,観測機器の開発が進み,噴火数日前に警報を発せられるようになつているが,更に高度の観測方法の開発を目指して研究が進められている。

山林火災については,その特性の解明,防御技術や消火機器の開発が行われている。


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